イラスト・高橋唯美
感動の海 「地の果て」行きの飛行機で見た笑顔
キャビンの棚 奥行きのある海の表情に心動く
「LLA MER DEBUSSY ORCHESTRAL WORKS」
船厨 泡盛の芳香で南国の海へ
海の博物誌 自然-1・アマゾンの200倍水量が流れる「黒潮」
YAMAHA NEWS 全国展示・試乗フェア実施中/
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  乾いた荒れ野に奇跡的な成長を遂げたサボテンがそびえる。僕らが抱くイメージ通りのメキシコの風景のその向こうに、青い海、年間4万本のカジキが上がるといわれる豊穣の海が見えた。時刻は午後7時を回っていた。陽は傾き、景勝地として知られるエル・アルコに優しい光を投げかけていた。もう5年以上経つが、そのときの風景は今も感動を持ってよみがえる。
 カボ・サン・ルーカスはバハ・カリフォルニアの最南端、メキシコにある人口3万人ほどの小さな町だ。1730年、スペインからやってきた宣教団がここに町を建てて以来、人々は漁業を生業として静かに暮らしてきた。しかし、1940年代になって訪れた旅行者が、海にカジキがうようよ泳いでいることを発見してからは、世界中のカジキ・アングラーからカジキの宝庫として注目されだした。
 この海にカジキが多い理由は、金華山沖が世界三大漁場といわれるのと同じ理屈である。半島の先端では暖流と寒流がぶつかり合い複雑な海流を生み出している。海底の地形も複雑なようだ。また、カジキの数ばかりでなく種類も豊富。メインのターゲットとなるバショウはスタンディングでキャスト、トローリングでクロカワ、マカジキ、シロカジキ、メカジキと、グランドスラムも夢でない。
 ここは日本にも紹介されており、比較的ポピュラーなリゾートになりつつある。滞在中ハネムーンと思われるカップルを数組見かけた(ここで釣りをする以外に何が楽しいか皆目見当もつかないのだが、これはやっかみ半分、個人的、自分勝手な印象でして)。また、アメリカからの家族連れらしき旅行者も見かけるが、カボ・サン・ルーカスの港では男性同士のツーリストが目立った。いや、ゲイのカップルではなく、釣りをするためにやってきた男たちである。
 ロサンゼルスから乗ったエアバスに、短パン、Tシャツ姿でどやどやと乗り込む男たちのグループに出くわした。こともあろうに、手荷物はタックルボックスのみ。まるで早起きして近所の小川に釣りにでも行くような出で立ちだった。今でもカボ・サン・ルーカスを思うとき、その海の豊穣さや質素だが陽気な町の雰囲気とともに、この楽しそうなアングラーの集団を思い出してしまう。そして人に、カボ・サン・ルーカスがどのようなところかを語るとき、この男たちのことを語ることにしている。
 僕がカボ・サン・ルーカスにとった宿は「ホテル・フィニステラ」といった。海を見下ろす丘に建つ、優しく素敵なホテルだったが、それはスペイン語で「地の果て」を意味する。ロス発のエアバスでみた大男たちの、まるで少年のような期待感をたたえた顔を思い出すと、再び地の果てまで旅するのも悪くない、と思う。

田尻 鉄男●たじり てつお
外洋帆走部に所属しクルージングに明け暮れた5年間の大学生活、1年間の業界紙記者生活を経て、88年、某プロダクションに入社。以来、日本のボーティングシーン、また沿岸漁業の現場を取材してきた。1963年、東京生まれ。



 24時間、海は一時として同じ表情を見せることはない。太陽、雲、波の動き、潮の流れ、風、そういった異なる「力」の組み合わせにより、海は刻々と変わていく。
 早朝に見た海は、薄暗い空と同化して、まるでブルーのフィルターをかけたような沈んだ青さで人を拒絶していた。それなのに、太陽が少しの光を海に投げかけただけで、静かに、だが生き生きと、出航前の我らを迎える準備を始める。
 荒れた海。とても沖には出られそうにない。そんなときには風と波の対話に耳を傾ける。凄まじいパワーが交錯する海を眺めているだけで、力が漲る。
 海をこよなく愛したといわれるドビュッシーは、どのような海を表現したかったのだろう。彼の円熟期、1905年に完成した「海(LA MER)」は作者の得たシンプルな海の印象を音で描いた、海を愛するが故に生まれた交響詩である。第一曲は霧のかかった夜明けの海、まさしく、人を拒絶する海から、人を迎え入れる海への変貌を描く。第二曲では波の戯れを、第三曲では弦と管とにより、優しい凪から凄まじい嵐までを描ききる。
 目を閉じ、自分の海のイメージを描いてみたい。
「LA MER DEBUSSY
  ORCHESTRAL WORKS」
作曲: Claude Debussy
指揮: Charles Dutoit
アンサンブル:Montreal Symphony
Orchestra



~ 泡盛の飲み方あれこれ ~
●泡盛の芳醇さを味わうのにもっとも相応しいのはストレートかオンザロック。琉球ガラスのロックグラスで風情も一緒に味わう。もちろん水割り、お湯割りもよし。トニックウォーターやソーダで割ってもよし。無責任な言い方だけど、何でもいける。
●写真は「残波」のシロ(沖縄県読谷村・比嘉酒造)。アルコール度数が25度と低目でストレートやロックでもさらりと飲める。口に含むとほのかにバナナのようなフルーティな香りが、、、。南国らしい味わいが楽しめる。
 海に似合う酒の代表格といえばやはりラムだろうか。以前にもホットバタードラムの項で取り上げたが、大英帝国海軍御用達の酒として船乗りに愛飲されていた。
 泡盛は決して海人(うみんちゅ)の酒、というわけではないのだろうが、素晴らしい海の国・琉球の酒であるからして、必然、口に含み、いや香りを嗅いだだけでも、美しい南国の、島の海が思い出されるのである。異論あるまい。
 今から600年以上も前の記録にすでに泡盛は登場している。シャム国や中国福建省との交易が盛んだった琉球には古くから蒸留酒の製造法が伝わっていた。泡盛はシャムから伝わったとされている。独特の味と香りを放つ泡盛の原料はタイ米と黒麹。白麹菌を使っている米焼酎との決定的な違いがここにある。
 現在、沖縄県内の酒造所は48軒。それぞれの島、そして土地に、独自の泡盛が生まれ、育っている。
 数ある中から迷いに迷って酒屋で選んだ泡盛のボトル。眩しく光り輝く海を眺めながら、オンザロックに泡盛を注ぐ。シークァーサーを軽く絞ってもいい。キリッとした、爽やかな喉ごしの中に、深みのある、男臭い味わいを見つける。夏が似合う男の酒だなとしみじみ思うときである。肴には島辣韮の塩漬けがあればいい。ああ、たまらん。



 日本の遙か南、台湾の東あたりから沖縄の西を通り、本州の太平洋岸沖を北上する「黒潮」。水面の温度は15~20度の暖流で、日本の気候を温暖にし、カツオを始め豊かな海の幸をもたらす。であるから、カジキ釣りファンにとってはまことに気になる、濃い藍色の美しい海流でなのある。
 さて、海流は海の川ともいわれるが、その規模は陸の川とは比較にならないほど大きい。黒潮の幅は150~300キロメートル、深さは400~900メートル、流れの速さは1時間に1~4海里(時速1.85~7.4キロメートル)である。
 黒潮によって運ばれる水の量は1秒間に2,220万立方メートルで、これは世界一の水量を誇るアマゾン川の200倍に達する。これを熱量に換算すると1秒間に3,800億キロカロリー、すなわち石油を38,000キログラム燃やしているようなものだといわれている。また、その海水に含まれる塩分は788,000トン。塩を満載した10トントラックが毎秒78,800台が通り過ぎている勘定である。




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【編集航記】
春の一日、久しぶりに東京湾に出た。本当は鉄鍋を積んでいって、どこかで料理でもしたかったのだけれど、船を止めて料理できる場所を知らなかったので、相方が作った弁当を持っていった。釣りの方は全く駄目だったけれど、船を止めるとぽかぽかと暖かく、弁当が美味くて最高の気分。あ、もちろん釣れなかった負け惜しみです…。(編集部・ま)

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