イラスト・高橋唯美
感動の海 「鯨の詩」
キャビンの棚 梅雨の一日、釣り文学に耽る
「雨の日の釣師のために―釣文学35の傑作」
船厨 シンプルで味わい深い「海の味」
海の博物誌 自然-3・海流の原因は地球の形
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 もう20年近く前になるが、サックス奏者のポール・ウインターとザトウクジラのセッションとして話題になった「WHALES ALIVE」というCDを聴いた。「鯨の詩」と邦題が付けられたそのCDの曲は、内容は忘れたが、TVCFでも流れるなどして話題になったので、覚えている方も多いだろう。
 実際、ザトウクジラは唱うのだそうだ。その唄は繁殖期の始めに唱うもの、その終わりに唱うものなどではかなり異なっているらしく、また、流行もあって5年もすると元の唄とは全く異なる小節の組み合わせの唄ができあがる。しかも古くなった唄は二度と唱われることがない。その話は、マウイ島に本部を置く、パシフィック・ホエール・ファウンデーションという団体のチェアマンから聞いた。
 1854年まで、ハワイ王国の首都がマウイ島のラハイナにあった。この港町は19世紀の前半、北太平洋の捕鯨船団の補給基地として賑わった。皮肉めいてはいるが、今は、ホエールウォッチングのベースとしてラハイナは賑わっている。殺されることから見せることに代わりはしたが、今も鯨は人間に経済的な援助を行っている。
 なぜ人はザトウクジラを見たがるのか、その理由は分からなかったのだが、チェアマンに案内されてボートに乗り、実際に見に行ったとき、初めて人々がこの巨大な生き物に惹かれる理由を理解した。同時に、以前に聞いたサックスの音色と共に響く「鯨の詩」が頭の中によみがえり、なんともいえぬ切なさに襲われたのだった。不思議な魅力を持つ生き物である。
 ザトウクジラの研究は進み、家族の絆の深さ、困ったときに互いに助け合おうとするコミュニケーション、唄による意思の疎通や求愛といったように、驚くほどの感情表現と知性を併せ持つことが分かってきた。もしかしたら彼らは跳んだり跳ねたり手を振ったり、また唱ったりすることで、一生懸命、人間に何かを伝えようとしているのかもしれない。
 元々、彼らは我らと同じ陸棲のほ乳類だった。そして再び水に帰ることを望み、安住の場として海を選んだ種族だった。なぜそうしたのか、私には分からないが、その選択が間違っていなかったことを心から願う。彼らにとって海が最高の住処であるうちは、我々にとっても、「海」は「楽園」であるはずだから。
 ザトウクジラは1964年以降捕獲が禁じられ、徐々にではあるがその数も増えてきた。遙かアラスカからやってきて、マウイの美しい山々を背に悠々と泳ぐザトウクジラの姿は、我々がハワイの海に求める「何か」と同じものを、彼らもまた、求めてやってきているように見えた。

田尻 鉄男●たじり てつお
外洋帆走部に所属しクルージングに明け暮れた5年間の大学生活、1年間の業界紙記者生活を経て、88年、某プロダクションに入社。以来、日本のボーティングシーン、また沿岸漁業の現場を取材してきた。1963年、東京生まれ。



 昔、「ヨット乗りは雨も好きにならなきゃいかん。傘はさすな。カッパ(オイルスキン)を着て町を楽しく歩け」と先輩ヨットマンが教えてくれた。なるほどと信じ込もうと思ったが、無理であった。どう考えても、このセイラーは変わり者だった。
 だが、雨をただ嫌い、避けているのもどうか。恵みの雨と言うが、生命になくてはならぬ雨、美しい雨。鬱陶しい雨も時に休息を与えてくれる。そして素晴らしい本との出会い。雨も捨てたもんじゃない。
 「雨の日の釣師のために」は亡き開高健が編した釣り文学集である。自身による「黄金の魚」を含め35作品が収められている。
 そのトップバッターとなるのはゼーン・グレイ(本書ではゼイン・グレイと表記)の「一日で七本のカジキ」。カリフォルニアの沖に浮かぶサン・クレメンテ島でのカジキとの格闘を描いたものだ。大物釣りへの憧憬を通り越し、恐怖感さえ伝わってくるその筆致にただ恐れ入るばかり。
 開高健による前書きの「雨もまた愉し」がまた秀逸。もちろんこれは35作品とは別の収録。雨の日の釣り師の生態が描かれているが、その最後に、釣り師にとっての金科玉条が記されていた。実技編、精神編とも笑えるが、読みかえすうちに、それがまた真理であることにも気づかされる。 
 最初の1頁から最後の1頁までゆっくりと読もう。まるで素晴らしく充実した釣行から帰ってきたかのような気分を味わえるはずだ。
「雨の日の釣師のために―釣文学35の傑作」
開高健、D&G・パウナル/編
TBSブリタニカ/刊
定価:¥2,039



「イトヨリのオイル焼き」作り方
材料:イトヨリ、季節の野菜(なす、パプリカ、おくら)、塩、ホワイトペッパー、エキストラバージンオリーブオイル

作り方:1)イトヨリは鱗を取り、はらわたをだす。2)イトヨリに塩とホワイトペッパーを振り掛け、オリーブオイルを薄く塗る。野菜は適当な大きさに切り、同じく薄くオリーブオイルを塗る。3)プレヒートしたグリルパンできれいな格子柄の焼目がつくように向きを考えて焼く。火は中火。4)片面が焼けたらそっとひっくり返し同じように焼く。 
 料理本をぱらぱらとめくっていたら、うまそうな鰺を、ただグリルパンで焼いただけの料理が出ていて、たいそうお洒落に思えた。
 そこで、早速魚屋に出かけた。同じ鰺を選んだのではあまりにも芸がないので、何かうまい魚はないかと探したら「イトヨリ」を見つけた。
 よく西日本の港を取材していると市場で見かける美しい魚だ。元々江戸前の高級料理にも使われる魚にもかからず、近所(首都圏の某市です)の魚屋では見かけることが少なかったので喜んで買って帰った。
 イトヨリ。イトヨリダイ。イトヒキ。ボチョ? 百科事典を引いてみると例に漏れず地方によって呼び名は様々。こんなに美味しいのに、どういうわけだか釣りでは雑魚、外道扱いされることもある。それでも、釣り上げるとき、背びれをひらひらさせながら上がってくるその姿は、なかなか優雅で美しい。
 うまい塩とエキストラバージンのオリーブオイルを塗ってグリルパンで焼くだけ。イタリアンなのに、ご飯にも合う。しっかりと「海の味」がした。



 海流。海の水はなぜ流れるのか。とてもミステリアスでロマンチックなテーマであるにも関わらず、そんなことを疑問に思う人は少ない。
 それもそのはず、海流の研究が始まってからわずか100年、人工衛星とコンピュータのおかげで世界の海のデータを集め、シミュレーションができるようになったのは、ほんの十数年前の話なのである。
 こんな具合なので、海流の仕組みについても不明なところが多く、細かな点は判明次第書き換えらているが、海流の発生する原因はおおまかに次の5つと考えられている。
 1)風 2)海面の傾斜 3)海水の密度の差 4)気圧の差 5)海水が他に流れた後を補うために起きる 
 この中でもっとも強く働くのは風である。なかでも赤道を中心として南北にある貿易風と偏西風の影響が強い。
 その風が起きるのは、地球の大気の暖まり方に差があるためである。地球が丸いため、赤道近くでは太陽の熱を強く受けて気温が上がり、極近くでは逆になる。そこで風は極から赤道に向かって吹き出す(地球の自転の影響を受け向きが捻れる)。その風が海の水を押して海流を生む。従って、地球が丸いから海は流れるのだということになる。
 子供のころのように小瓶に手紙をしたためてみようか。いったい丸い地球のどこに届くだろう。




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ヤマハでは全国に点在するさまざまなマリーナを紹介する、新コーナー「マリーナ百景」をスタート。今後次々と全国のマリーナをご紹介していきます。ご期待ください。



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【編集航記】
最近ジャマイカに接する機会があって、少し勉強した。ボブ・マーリー、レゲエ、ラスタファリズム、ラム、、、、。そして、どうということはない英語なのだが、ジャマイカでは「ノープロブレム」という言葉が頻繁に使われることを知り、実際にジャマイカでそれに気づいた。何でも「ノープロブレム」の一言ですませようとする。おおらかなのか、無責任なのか。だが自分の人生にも必要な言葉だ。「ノープロブレム」。なかなかいい。(編集部・ま)

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