イラスト・高橋唯美
感動の海 「静かな海のパシフィック・ブルー」
キャビンの棚 ハルに描く光のオブジェを思う
「FAURE Les 13 Barcarolles」
船厨 「江戸前の穴子といえば羽田沖に限る」
海の博物誌 船長はサバイバルに強い
YAMAHA NEWS

「海の思い出アルバム2004」、「水辺の風景画コンテスト」作品募集中

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  ビッグアイランド、カイルア・コナからほど近いホノコハウ・マリーナの早朝。桟橋のあちらこちらからインボード独特の、低くこもったエンジン音が聞こえてくる。カジキが釣れないかもしれないなどと、想像すらしない傲慢なアングラーたちは、ランチボックスとドリンクの入ったビニール袋をぶら下げてボートに乗りこむと、早速ボートの空間の中に自分の居場所を探し始める。
 「用意はいいかい?」
 デッキハンドが声をかけながら舫いを解くと、ボートはゆっくりと桟橋を離れていく。
 カイルア・コナの海が他のマーリンスポットと大きく異なるのは、ここからだ。マリーナを出てすぐに設置された緑の航路浮標をかわすと、クルーは休む間もなくすぐにアウトリガーを展開し、タックルをセットすると、ルアーを流し始める。マリーナの目の前から、すでにパシフィック・ブルーのポイントなのだ。
 マウナ・ケア、マウナ・ロアというハワイ島の顔ともいえるふたつの火山は、標高4000mを超える。その山々からのドロップオフは、ハワイ南西岸を良好な釣り場に至らしめている。さらに特筆すべきは、その穏やかな海の表情だ。マウナ・ケアは太平洋上を通る貿易風を見事なまでにシャットアウトし、カジキの回遊するその海は年間を通してフラットなのだ。実際、20フィートクラスのセンターコンソーラーが、巨大なキハダやブルーマーリンを難なくキャッチして帰ってくるのである。
 魚影の濃さだけを見れば、今や日本の三陸沖や常磐沖の海は世界に誇ることのできる釣り場といえるだろう。しかし、この「快適な」海に加え、コナにはカジキ釣りの「伝統」があり、素晴らしいチャーターボートとマリーナ、加えてリゾートホテルなど「インフラ」が整備され、そして、グランダーに魅せられ世界中からやってきた「乗り手」が、この海でそのスキルを高めているのである。
 現在、コナで営業するチャーターボートは約80隻。そのほとんどが、コナの中心街から車で5分ほどのところに位置するホノコハウ・マリーナに舫われている。ボートはハトラス、バイキング、バートラム、カボなど、世界の名だたるプロダクション・ボートは無論のこと、メリット、ライボビッチなど目を見張る美しい木造のカスタムボートまで、選択肢は幅広い。
 まずカジキが釣りたいのなら「日本人が多いから嫌いだ」などとかっこつけないで、ぜひハワイ島を訪れたらいい。ちなみに某キャプテンがそっと教えてくれた話だが、彼らが、嫌うお客のパターン。
 まず体力のないアングラー。「ある程度はキャプテンのテクニックでカバーできるが、一番困るのはここだけの話、体力の無いアングラーだね。リバースをかけてもラインを巻き上げられないアングラーじゃ、こちらもお手上げだよ」
 それとやたらと口を出したがるアングラーもちょっと困るそうだ。世界のあちこちで釣りをしながらコナに流れ着いたベテランがたむろすマリーナだ。カジキに限らずすべてのチャーターフィッシングにいえることだが、ベテランのガイドやキャプテンのアドバイスには素直に従ったほうが、精神的にも良い釣りができるものだ。
 健闘を祈る。


田尻 鉄男●たじり てつお
外洋帆走部に所属しクルージングに明け暮れたの大学生活、1年間の業界紙記者生活を経て、88年、某プロダクションに入社。以来、日本のボーティングシーン、また沿岸漁業の現場を取材してきた。1963年、東京生まれ。



 夏休みの海辺はお休みにして、街にいて、酒をゆっくり啜りながら、波を、風を、光と水の戯れをイメージする。夏の海辺を楽しむには年をとりすぎてしまった。
 街路樹に、公園の木々に気まぐれに風が渡り、乾いた地面に緑色の波を踊らせている。優しく、洗練されていて、涼やかな音楽が欲しい。フランス近代音楽の三巨匠から海を選んで心を漂わせよう。ドビッシーにはもちろん“海”があり、ラヴェルには“水の戯れ”“海原の小舟”がある。そしてフォーレには“舟歌”がある。彼にはラヴェルやドビッシーの官能はないが、高貴な抒情性、優美さといったものが感じられる。
 もっとも美しいレクイエム、そして“シシリエンヌ”“エレジー”を作曲したフォーレ。彼が残した“舟歌”は13曲、21年間に渡って作曲された。彼の作品は3~4の時代に分けて語れるが、“舟歌”はそのすべての時代に書かれ、それぞれの時代の美しさを伝えている。
 第1番イ短調。舫われた小舟が静かに揺れている。白いハルに、さざ波が光のオブジェを描いている。物憂い夏の海辺の昼下がり。きれいに陽焼けした少年が一人、ポンツーンに座っている。風が時々髪を金色に光らせる。海は少年の瞳に、ただ映っているだけ。憂いを秘めた甘美な歌が流れていく。
 第2番ト長調。第3番変ト長調と、清澄な酔いが続いていく。
(K.H)
「FAURE Les 13 Barcarolles」
Jean-Phillipe COLLARD
『フォーレ/舟歌』
ジャン=フィリップ・コラール(ピアノ)
●東芝EMI
●定価:¥1785



穴子丼の作り方(4人分)
1)まずタレを作る。だし昆布を入れ、醤油100cc、みりん100cc、酒100ccをあわせひと煮立ちさせ、昆布を取り除き弱火で煮詰める。甘いのが好みなら砂糖をいれる。
2)穴子は開いて竹串を刺し炭火で身の方から焼く。
3)ひっくり返して皮も焼く。
4)タレをつけてこがさないように両面を焼く。
5)暖かいご飯にタレとともにのせる
 東京湾の夏の風物詩のひとつが穴子釣り。東京湾に限らず全国的に夏の釣魚として親しまれている。ボートオーナー諸氏もお好きな御仁が多いことだろう。比較的はずれの少ない釣りだし、食べ方もいろいろで、白焼き、天ぷら、蒲焼き、炊き込みご飯、ちらし寿司など多彩に楽しめる。ボートでなくとも岸壁から竿を出せば釣れるポイントも多いから、夕涼みがてら出かけるのも楽しいだろう。
 さて、江戸前の穴子といえば羽田沖の穴子が一番といわれている。結構悪食の魚で、何でも食べるらしい。だから旨い穴子の見分け方に、腹の膨れたものは避けるというのがある。太っていればいいというものではなく、スリムな格好いい穴子が旨いのだ。過食で腹の出た穴子は腐るのも速く、味も今ひとつということだ。
 釣った穴子をシンプルに穴子丼にした。まずは頭を目釘で止め、胸びれのすぐ上から包丁を入れ、背開きに骨をそぎ取る。そしてたれを塗りながらゆっくりと炭火で焼く。香ばしい何ともいえぬ香りが漂い、調理までがイベントだと思える。たくさん釣れたから穴子は贅沢に二段重ね。感動的な旨さ。



 アメリカ軍の『サバイバル・マニュアル』は、遭難したときの心得として、必ず生還するのだという強い意志を持て、と繰り返し説いている。海に限らず、山や戦場でも、遭難者が死亡するのは飢えや寒さのためよりも、遭難してしまったという恐怖とショックによることが多いという。
 海での遭難では、生存者の中にはたいてい船頭や船長がいる。文化12(1815)年に南米で保護され、カムチャッカ経由で帰国した尾張の国・督乗丸の船頭・小栗重吉、天明2(1782)年にアリューシャン列島に漂着し、10年後にロシアの使者と共に帰国した伊勢の船頭・大黒屋幸太夫などは有名な例である。また、現代の遭難報道でも、船長や艦長が最後までしっかりしてたという例はたくさんある。
 そういう立場の人は経験もあり、体力もある人が多いということもあるだろうが、なによりも「生還しよう、生きて帰らなくては」という意思が、他の人よりもずっと強いものである。その責任感が困難と戦う勇気を生み、生存につながるといわれている。




「海の思い出アルバム2004」作品募集中
みなさんのこの夏の思い出の写真やエピソードを募集中です。締め切りは9月17日(金)の消印・または送信分まで。ふるってご応募ください。

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ヤマハが支援する財団法人日本マリンスポーツ普及教育振興財団(JMPF)では、幼児、小学生を対象とした恒例の「水辺の風景画コンテスト」を開催し、作品を募集中です。


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【編集航記】
 都会で酷暑にだらしなく不平を募らせていたら、新潟や福井などを集中豪雨が襲い、被害が凄惨をきわめた。雑誌のグラビアなどで深刻さを知るにつれ、暗澹たる思いにさせられる。ブラジルの作家、パウロ・コエーリョの「第五の山」という小説の中に「試練の意味はそれを乗り越えたときにはじめてわかる」という行があって座右の銘の一つとしてきた。自分が恐ろしいまでの自然の猛威のただ中に立たされたとき、そんな言葉を思い出せるか、甚だ怪しいが、無責任を承知で「がんばってください」と言いたい。人間にはその力があると信じる。被害に遭われた方々に、心よりお見舞い申し上げます。(編集部)

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