イラスト・高橋唯美
感動の海 ヨットとサバニと美しい海のこと
キャビンの棚 その生き方は男を営むことであった
「旅人 開高健」
船厨 大人数料理の定番「パエリア」
海の博物誌 至高の銀杯のお値段
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 初めて沖縄を旅したのは今からおよそ20年前、学生のときだった。神奈川県の三崎からクラブのヨットで訪れた。沖縄の前の寄港地・奄美大島を出港し、南下を始めたときには、沖縄の南の海上から台風が北上していて、ちょうど台風と沖縄ですれ違うような格好となった。北からの風に乗って豪快かつ快適なスピン・ランで沖縄を目指したことが懐かしく思い出される。
 最初に入港したのは中部の運天港だった。そのときに抱いた印象、南の島の空と海の美しさ、素朴な港の風景、おまけに台風による凄まじい風雨は、若かった僕の魂を激しく揺さぶった。
 以来、沖縄に惹かれ、また海と関わりのある仕事に就けたおかげもあって、毎年のように沖縄を幾度と訪れるようになった。


 沖縄県は明治以前までは琉球国という独立国であった。古くから独自に中国大陸と貿易を行い、また離島という特殊性から独自の歴史、文化や伝統を築き上げてきた。たとえば最近ブームになりつつある泡盛という酒も、シャムと独自に交易をしていたゆえに生まれた独特の酒だ。
 海洋文化も同様だ。沖縄には独自の船型を持つ「サバニ」という船がある。エンジンを付けているものが主流だが、現存している伝統的な船だ。小型で細身だが、波切りが良く驚くほどの航行能力を持つ。現代のヨットやボートのデザイナーも参考にするほどの設計思想、造船技術が盛り込まれている。
 以前、沖縄の海を描こうと試みて「この海を描く絵の具はない」と筆を投げた画家がいたそうだ。沖縄の海はまさしく世界に誇ることのできる美しさを持つ。しかし、その海も、特に本島周辺では変化を余儀なくされている。特に世界に誇ることのできる珊瑚の壊滅は深刻と言われる。ほんの20年前ででも、確かに、那覇の泊港に入港したときでさえ「美しい海」だと感じたはずなのに。
 サバニの造船技術、操船技術を後世に残そうとサバニのレースが行われている。主催者も参加者も燃えている。今年で6回目を数え、美しい「帆かきサバニ」(帆と櫓で走るサバニ)が数多く復元、または新造された。
 現代社会において人が快適さや便利さを捨てることは難しい。だから、素晴らしい物事を残すためには、知恵と努力が必要だ。
 だとすれば、世界に誇ることのできる美しい海を保つために、私たちは何をすればよいのだろうか。考えさせられる。


田尻 鉄男●たじり てつお
外洋帆走部に所属しクルージングに明け暮れたの大学生活、1年間の業界紙記者生活を経て、88年、某プロダクションに入社。以来、日本のボーティングシーン、また沿岸漁業の現場を取材してきた。1963年、東京生まれ。



 開高健氏が潮気というものを意識していたかどうかは定かでない。しかし、ソルトウォーターかフレッシュウォーターかなどというつまらぬ拘りを超越したダンディズムに、多くの男が惹かれたことは確かである。男にとって開高健は、まさに男であった。書くこと、旅をすること、魚を釣ること、食うこと、飲むこと、そうした男の営みを、独特のダンディズム、開高流で体現していたのだと、よくよく思う。
 「旅人 開高健」の著者、写真家の高橋昇氏も、男・開高健にほれ抜いていた男の一人である。1977年に開高健のアマゾン釣行に同行、名作「オーパ!」が生まれたが、以降開高健とともに11ヵ国を旅し、延べ443日間をともに過ごした。
 著者は本書の中で開高健を「人誑し(ひとたらし)」と称した。「女をたらし込む」「女たらし」の「誑し」である。高橋氏はまさに開高健に誑された。同じく、多くの人が開高健に誑された。
 小説家が己の生き様を美化し文学化することは簡単だが、第三者からその作品だけでなく生き様までも、これほど称えられる作家も希有ではあるまいか。
 全編に渡るエッセイと写真は楽しくもあり、少しもの悲しくもある。愛する人を、憧れていた人を失った男の悲哀が、否応なしに漂っているからだろうか。
 「旅人 開高健」

 著者・写真/高橋昇
 発行/つり人社
 定価/2,100円(税込)



 食通の友人が、海岸で颯爽とパエリアを作り上げるのを目の当たりにして、感動したことがある。今ほどアウトドア料理など流行っていなかった頃で、当時、海辺にたむろすがさつな友人の多くは(私も含めて)「これがいいんだよね」などとビールを振りかけながら、自慢げに焼きそばを作っていた。そんなときに、中華鍋をお洒落にしたようなフライパンで作られたパエリアに出会ったことで、海辺の料理に対する考え方が多少なりとも変わったのだった。料理において「豪快さ」を勘違いしてはいけない、と。
 さて、「パエリア」はスペイン料理の定番メニューのひとつ。魚介と米とをフライパンで炊き込む。例の中華鍋をお洒落にしたものは「パエージャ」という。ごく普通の大きさのモノから直径1メートルはあろうかというモノまで売っているので、人数に合わせて手に入れたい。
 ヨーロッパでは米を主食と言うより野菜と捉えるむきがある。なるほど、ワインやビールによく合うのも納得。いまではすっかり野外料理の定番ではあるが、見た目も華やかだし、楽しい夏の一日にお勧めの料理なのだ。

「パエリア(カレー風味)」

●材料(4人分):タイ米またはインディカ米2カップ、鶏もも肉500g、ムール貝8コ、海老8尾、にんにく(みじん切り)1かけ、たまねぎ(みじん切り)1/2コ、パプリカ1コ、サラダ油大4、塩小1強、ローリエ1枚、水3カップ、白ワイン大3、パプリカ(粉)小2、カレー粉小1、トマトペースト大2、パセリみじん切り少々、レモン

●作り方:
1) 鶏肉は一口大に切る。ムール貝はたわしで殻をこする。海老は殻をむき背ワタを取る。2)フライパンにサラダ油を熱し中火でにんにくとたまねぎを香りがでるまで炒め、ローリエと塩を加える。
3)鶏肉を加え強火で焼き色を付け、ムール貝、海老、パプリカを順に加え炒め合わせる。に分量の水を入れ強火で煮る。火が通った具からボウルに取り出す。
4)全ての具を取り出したら残りの煮汁をボウルに移し水を足して3カップにし、フライパンに戻して火にかけ煮立ってきたら、白ワイン、パプリカ、カレー粉、トマトペーストで味付けする。
5)強火にしてタイ米はとがずにぱらぱらとひろげて入れる。煮立ったら2 3分加熱し、中火でふたをしないで6~7分炊く。
6)煮汁全体から米が顔を出し始めたら弱火にし で取り出した具を米の上にふたをするように乗せ、弱火で15分炊く。7)フライパンからピチピチと音がしてきたら火を止め、好みでパセリ、レモンを添える。



 どんなレースでもスピードを競い、順位を争うこと自体が楽しいものだが、勝者に与えられる賞もまた華やかなムードを盛り上げる要素の一つである。たとえそれが、メダルと名誉だけだとしても。
 数あるヨットレースの中でも最も華やかなアメリカズ・カップ・ヨットレースの賞典は、高さ70センチ、重さ4キログラムの銀のトロフィー(いわゆるアメリカズ・カップ)。1851年に100ギニーで作られたというから、今の金額に換算すると70~80万円、しかも勝者の持ち回りである。今でも、アメリカズ・カップは世界の注目を集める一大イベントとして、参加者(カップ防衛側、挑戦側とも)、スポンサー、開催地の誰もが魅力を感じるレースになっているが、この小さなカップがあるからこそ140年の伝統の行事になり得たのであり、多くの人々にアピールすることができたのである。
 その他の大きなヨットレースでも、賞はたいてい「名誉賞」。最近では賞金レースも行われるようになってきたが、まだまだ数は少ない。競う楽しさと、勝つ喜びがヨットレースには生きているのである。
 さて、次回アメリカズカップは第32回となり、2007年にバレンシア(スペイン)で開催される予定だ。防衛シンジケートはスイスのチーム・アリンギ。さる4月29日にエントリーが締め切られ、12の挑戦シンジケートが顔をそろえた。残念ながら今回も日本のチームは参加していない。




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【編集航記】
事務所のある東京はほどよく雨も降っているようだが、なにしろ暑い。その暑さから逃れるため、台所のフード・プロセッサーで作る自家製フローズン・マルガリータとフローズン・ダイキリにはまっている。休みの日は朝からリゾート気分。端から見ると休日を台無しにしているように見えるらしい。(編集部・ま)

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