ソルティライフ ソルティライフ
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イラスト・Tadami
いつでも潮気のある生活を過ごしたい。
MONTHLY COLUMN 伊豆半島西回り東回り 再見!カツオ岩
キャビンの棚 北に生きる民族の誇りを追う「極北の狩人」
船厨 怪物だって旨けりゃいい「蛸のトマト煮」
海の博物誌 最後の食糧資源
YAMAHA NEWS 特殊小型免許取得体験レポート!講習編/マリンジェットツーリングIN西表島/出動!マリンクラブ釣査隊/「カジキ釣講座」更新/漁船や沿岸漁業の情報「大漁ネット」更新/ネットTV「Captain’s World TV 」
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MONTHLY COLUMN
 慣れた散歩道を逆ルートで歩いてみる。いつも連れ歩く犬も戸惑っているように思えるのは、こちらの勝手な印象だろう。いつもの路地で立ち止まる。ご主人様の顔を見上げて、「右なの左なの、どっちなの!」と困り顔で問う。それはリードから伝わるご主人様の迷いを感じ取っているからなのです。人生、半世紀の時を重ねると、決まりきったことしかやっていないことに気がつくことがある。これを習慣という。散歩道もしかり、歯の磨き方や体の洗い方までそうなのです。

 9月初めに、オーナーをくどいて西伊豆へのヨットクルーズを企てた。ホームポートは三浦なので、往路はクルーが、いわゆる回航をした。海況はおおむね順調で、中継の下田で、最終目的地の沼津での連夜の大食による体重2kg増は今もここにある思い出の残滓。
台風による日延べの結果、10月半ばになった。秋の西伊豆温泉で癒し、魚介に舌鼓の連打、との誘い文句にオーナー夫妻以下5人の胸は期待に膨らむ。

 西伊豆の風景は、誰もが言うように東とは違う。それは当たり前のようでなんだか不思議だ。雲見、波勝など東海岸には無い光景が続く。相模湾で見るよりも細身の富士山を背景に写真なぞ撮ってみたり。初日は松崎に入港し、昼酒をあおり、満天の湯に浸る。半世紀の時を重ねても、この至福は滅多に無かった。


 2日目は松崎を出て更に南下。今日は下田までのショートレグだ。昨日と同様の風をもらって順調に走る。「北東、30ノットは覚悟したほうがいいですよ」沼津のハーバーマスターのアドバイスは航海3日目にあたる明日のはずだった。
 海原を皿に見立てて、それに載せられたカツオのアタマの格好をしたカツオ岩を廻るところから、海況が一変した。なぜか私はキャビンに入ってカッパを着始めていた。艇体が煽られ体がよろつく。ライフジャケットを付けてデッキに出ると、風景ばかりか日付まで変わってしまったかのような別世界に放り出された感じだ。
 入れ替わりにオーナー夫妻がキャビンに入る。我らクルー3名は戦闘モードだ。石廊崎が見えた。神子元も確認できた。風は下田港から吹いてくる。海水を頭からかぶるのも久しぶりだ。緊張感とともに、気心とそれなりの技量を認め合う仲間といることの充実感も感じる。早く港に入りたいというはやる気持ちを戒め、なにより安全に行こうと自分に言い聞かせていたとき、メインセールのバタつく音が大きくなった。はて。第2バテンあたりからセールが横一文字に裂けている。
 ジブ1枚では上れない。あと3時間で港に入れるか。時は12時。残念ながら下田をあきらめ、反転し、西伊豆に戻ることにした。ジブ1枚ながらも時折サーフィングして、艇体のコントロールに集中していると前方に岩が現れた。
 位置関係からそれがカツオ岩であることにすぐ気付いた。ぐんぐん近づく。波勝も、雲見も見えてくると風は凪いで、空高く、波穏やかになった。
 振り向くと、そこにはカツオ岩があった。その皿には南下時には無かった大波模様が描かれていた。
 その日は妻良に入港しメインセールを持って記念撮影ののち、タクシーで予約しておいた宿へ行き、温泉と新鮮魚介を堪能した。

 いま船はマリンピア沼津にある。週末を利用して、ホームポートに帰る旅が待っている。オーナー夫妻は乗らない。大学ヨット部時代からの仲間たちとの晩秋クルーズだ。 カツオ岩を載せる大海の皿はただただ青一色であることを願い、そして見るのは、今年はこれで最後にしたいと思う。


東嶺 義忠●ひがしみね よしただ
海の上では安全第一ながら、陸にいるときは飲むより飲まれることを好む酔いどれヨットマン。半世紀を過ごしたこれからは、21世紀にふさわしい快楽とは なにかを求め、夕暮れの街や週末の諸磯近辺を徘徊しています。1954年8月東京生まれ。



キャビンの棚
 本書を読みながら、曾野綾子の小説「哀歌」の中の1シーンを思い出した。ルワンダの修道会で現地のシスターと日本人のシスターが鶏の肉の処理について、語り合う。要約すると、日本人は「私は鶏を殺したことがない」という。ルワンダ人は「じゃあ、どうやって鶏を食べるのか。誰かが殺さなければ鶏を食べることはできない」と、日本人の「鶏を殺さずに鶏が食べられる」と考える虚偽性を非難するのだ。
 極限の自然環境の中で、イヌイットたちが殺すのは、アザラシやイッカク、ホッキョククジラなど、世界の人口のごくわずかでしかない一部の先進国の人々が「かわいらしい」または「貴重」と思う動物がほとんどだ。イヌイットたちにとって生きることは、まず、これら動物の生命を奪うことからはじまる。殺すことで生きることが可能となる彼らにとって、愛くるしく頭の良い動物たちは生きるための糧に他ならない。それだからこそ、自然の大切さを知っている。
 「自然を守ろう」と多くの人は言う。とても大切なことだ。しかし、そこには「なぜ」という視点が欠けていることが多い。結局、私たちは、自然、特に他の生き物の命に依存せざるを得ないのだ。
 極限状況に生きる人々の「北に生きる民族の誇り」を追った椎名誠のルポルタージュ。心優しい人々の中に潜む、潔い生命力に圧倒されるとともに、いわゆる「文明国」に住む我々の矛盾と傲慢、脆弱を改めて思い知らされる。

「極北の狩人」
著者/椎名誠
発行/講談社
定価/2,300円(税別)



船厨
 日本では「出雲国風土記」にも名前が見えるほど、タコは食用として重宝されてきた。確かにその見た目から、何かと曰くのある水産物ではあるが、「タコ坊主」とか「タコ踊り」など、どことなく愛嬌のある風采を示すときだってある。
 反面、西洋では少々事情が違っていた。周囲の色に合わせて同化、近づく魚をだまし討ち、捕食することから、キリスト教世界では誘惑者や裏切り者、時には悪魔と同一視されて忌み嫌われてきたのだとか。自分の手足を食べ、しかもそれが再生するという俗信は今でも信じている人がいるようだし、19世紀初めには、「巨大なタコが船を襲って海中に引きずり込む」と偉い博物学者が真剣に唱えていたそうな。日本近海にも体長3メートルにもなるタコがいるというから、「恐ろしい生き物」と思うのも無理はない。
 ところが、タコはとても旨い。謎の怪獣であろうと、悪魔の手先だろうと、結局、この旨いという事実にはさすがの西洋人も抗えず、誰が最初かは知らぬが、口にした。
 ご覧のトマトソース煮はイタリア料理の紹介本で知った。ダッチオーヴンで煮たらおどろくほど、肉がほろほろになって軟らかい。ワインと一緒にどうぞ。
蛸のトマト煮
●材料(3~4人分)
蛸1匹、カットトマト缶詰600g、ブランデー30cc、白ワイン150cc、ニンニク3片、赤唐辛子(輪切り)1/2本、セージ小さじ1、オリーブオイル、ハーブソルト、胡椒など適宜

●作り方
1)鍋にオリーブオイルをひき弱火で薄切りにしたニンニクを香りがたつまで炒める
2)ぶつ切りにした蛸を入れサッと炒め赤唐辛子、セージを加える
3)ブランデー、白ワインを入れアルコールを飛ばす
4)カットトマトをつぶしながら入れて煮る。アクを取ったら蓋をして30分程煮る
5)ハーブソルト(普通の塩でも可)、胡椒で味を整える


海の博物誌
 大気と海洋が相互に関係することが指摘されはじめて約半世紀。気象学上、今世紀最大の発見であるエル・ニーニョ現象、どうやらいま現在、赤道付近の水温は上昇の傾向にあるようです。
 さて、エル・ニーニョ現象が現れるペルー沖は「湧昇」が起こる、世界でも有数の漁場のひとつに挙げられています。この「湧昇」という聞き慣れない言葉は、海洋学では好漁場の絶対条件とされ、海洋の1%にも満たないこの海域での漁獲高は世界の総漁獲高の50%を占めています。
 湧昇海域では貿易風や卓越風などにより海表面が沖に流され、普段は落下していく一方のプランクトンも、海底の冷水が上昇するのにともなって上層に押し上げられ、海の食物連鎖の活性化を促す起爆剤となり、魚たちにとってのオアシスを形成しています。
 この「湧昇」の原理を応用した、ジャイアント・ケルブの海中牧場がアメリカ軍により1972年から2年間ほど運営され、2.5キロ平方メートルの海洋牧場は毎年3000人を養うのに十分な食物を生産できることを実証しました。海洋学者ウィルコクスは「海洋の食糧、エネルギー農場は究極的に200億人以上を支えることができる」と発表したほどです。
 自然災害による飢饉、飢餓や人口増加による食糧危機に直面した時代、人間の胃を満たしてくれるのは地表の72%を占める海の産物かもしれません。



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【編集航記】
 ボート・シーバス。楽しいのだけれど、僕の場合、あまりにもルアーをロストすることが多すぎる(環境破壊と言われたら困るのだけれど)。ラインブレイク、根掛かり、原因は主にこの二つ。もう一つ、困っているのは最近使い出した PEラインのトラブルの多さ。10 lbでショックリーダーはフロロの16 lbというパターンが多いのですが、どうもよろしくない。結局、ナイロンの方が楽しく釣りができる気がします。もしよろしければ皆さんのラインシステム、教えてくれませんか。(編集部・ま)

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