ソルティライフ ソルティライフ
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イラスト・Tadami
いつでも潮気のある生活を過ごしたい。
MONTHLY COLUMN 身体の記憶
キャビンの棚 海洋民族の誇りを取り戻す「サムライの海」白石一郎
船厨 手作りの醍醐味「フィッシュ・アンド・チップス」
海の博物誌 潜水名人のゾウアザラシ
YAMAHA NEWS 「ジャパン インターナショナル ボートショー 2007 イン横浜」のご案内!/「カジキ釣講座」更新/漁船や沿岸漁業の情報「大漁ネット」更新/ネットTV「Captain’s World TV 」
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MONTHLY COLUMN
 ダンゴ三兄弟の作詞者として知られるメディアクリエーターの佐藤雅彦さんが「隣の校庭」という表題のエッセイでこんなことを書いていた。

 自宅のマンションで外出の支度をしていた佐藤さんは、窓から隣の中学の校庭でサッカーの試合をしている様子に目を留める。スリリングな展開に思わず試合に見入っていると、ロングパスを受けた一人の選手が素晴らしくきれいなシュートを決めた。仲間に揉みくちゃにされる生徒の笑顔を見た佐藤さんは、以下のように記した。

 「ゴールを決めた生徒にとって、あの数秒の出来事は、これから生きていく未来の所々で何度も思い出される瞬間になるのではないだろうか。その位、その生徒にとって、濃密な時間が流れていた様に思われた」(「毎月新聞」佐藤雅彦著・毎日新聞社刊)

 その光景を目にした佐藤さんはそのエッセイの中で、憂鬱な気持ちで身支度をしていた自分に流れていた時間の薄さと、数百メートル先の中学生に流れていた時間の濃さとのコントラストに思いを馳せていくのだが、私はこの「これから生きていく未来の所々で何度も思い出される瞬間」という記述に強烈な共感を覚えた。

 バレーボール漬けだった高校時代、ブロックに弾かれたボールを背走して追い、一か八かで飛び込んだ指先に吸い付くようにボールが当たってラリーが繋がり、油断した相手のコートに味方のスパイクが突き刺さる。あのとき、ボールが当たった指先の感触は、今でもはっきりと覚えている。佐藤さんの記述どおり、その瞬間の記憶は以後20年間の人生の所々で思い出された。

 バレーだけではない。少年野球で大飛球を溝に落っこちながら捕球したグローブの感触。小学生時代に習っていた柔道の昇級試験で、上級生相手に放った捨て身の体落としが決まったとき、思い切り引き込んだ引き手に残る相手の柔道着の汗ばんだ質感。スポーツにまつわる体験の断片は、実に生々しい感触や質感を伴って鮮烈に記憶されている。これは、スポーツが肉体を伴った極めて身体的な活動だからだろう。
 大学ヨット部1年の秋、3年生スキッパーのクルーとして乗った470級(全長4.7mのレーシング・ディンギー)で、生まれて初めてプレーニングというものを経験した。急激に強まってきた北風の中、スピネーカーを揚げてトラピーズに乗っていたそのとき、ヨットは水面から浮き上がったように加速した。水の呪縛から解き放たれたように、パパパパパッという聞いたこともない水音と共に、ヨットは自由自在に水面を滑り出した。ヨットを始めて半年の私は、何が起こったのかわからないまま、ひたすらスピンシートを握りしめた。

 「アレはいったい何だったんですかねえ?」スピネーカーを収納しながら先輩スキッパーに問うと、「あれか? あれがプレーニングってやつだよ」と得意げに鼻を膨らませながら教えてくれた。専門誌で「プレーニング」という言葉は目にしていたが、実際に体験したのはそれが初めてだった。ほんの数秒の出来事だったはずだが、ガンネルを通して伝わってきた、波を弾くような独特の振動は、鮮烈な身体の記憶として今も足の裏に残っている。

 競技スポーツ独特の緊張感によって感覚が研ぎ澄まされていることが、記憶に鮮烈な感触を伴わせる一つの要因のような気がする。セーリングのように、海という完全な自然環境の下で行われるスポーツでは、風や波といった森羅万象に対する感覚も研ぎ澄まされるためだろうか、身体に刻まれる記憶は截然たる肌触りを伴う。

 これらスポーツの場面で手にした身体の記憶は、おそらく人生の最期までことあるごとに蘇り、鮮烈な感触とともに当時の歓喜の瞬間に引き戻してくれる。競技スポーツに真剣に取り組んだ者だけが手にすることのできる、掛け替えのない財産である。


松本和久●まつもとかずひさ
1963年生まれ。愛知県出身。ヨット専門誌「ヨッティング」編集部を経て、1995年にフリーランスの写真記者として独立。現在「舵」誌でヨットレー スを中心に取材。ヨットレースの他にも、漁業や農業など第一次産業の取材も得意とする。



キャビンの棚
 「四面環海という立地条件に恵まれながら、日本は、海を防壁としか考えない国家となった、日本人は、そろって海に背中を向け、狭い国内だけをみつめて過ごす習性を身につけた。そのためものの考え方も陸地中心に限定され、はるかに広い海を忘れてしまった」
 白石一郎は著書「海のサムライたち」の中で、そう嘆いた。その反面、氏は歴史上、紛れもない「海洋国家」であった日本の姿をあぶり出し、その気概を多くの読者に与え、共有したいと願ってやまなかったように見える。「海狼伝」「海王伝」しかり、「南海放浪記」「戦鬼たちの海」もまたしかり。以前本欄でご紹介した「航海者」もまたそうであった。いずれも海を活躍の場とし、自在にフネを操る日本人の勇壮な様が描かれ(航海者の主人公はイギリス人の三浦按針)、海好きの読者を引きつける。
 「サムライの海」もそのような海洋小説の一つだ。著名な砲術家の妾の子として生まれ育った主人公が、幕末から明治維新にかけて、西洋の捕鯨技術を日本に導入し、捕鯨の近代化に情熱を注ぐストーリーが、勝海舟、坂本竜馬、高杉晋作、榎本武揚など幕末の偉人との出会いを絡めながら展開していく。
 小説としての魅力もさることながら、海や船の描写や主人公の海に対する思いに、共感し、引き込まれていくのは白石一郎の作品ならでは。日本人が海の民族であることを、思い起こしたい。

「サムライの海」
著者/白石一郎
発行/文春文庫
定価/650円(税込)



船厨
 以前オーストラリアのとあるハーバーで、フィッシュ・アンド・チップスをむしゃむしゃやりながら、何気なくチップスの一切れを海鳥に投げてやったら、どこからともなく鳥たちが群がってきて、さながらヒッチコックの映画のようになってしまった。ちょっとした恐怖感を抱いたものだった。それからというもの、その辺を飛んでいる鳥には決してえさをやるまい、と決めている。
 さて、フィッシュ・アンド・チップスは、イギリスを代表する庶民的な料理のひとつ。鱈などの白身魚のフライと、フライドポテトを合わせてた料理で、本場では酢を付けていただく。19世紀に半ばにはロンドンに専門店があったという由緒あるファーストフードである。が、所詮はファーストフード。「ジャンクフード」などと、陰口をたたかれる向きもあろう。
 それでも、自分で作れば「ジャンクフード」などとは言わせない。白身魚は近海で捕れた新鮮な鱈を使う。メカジキやシイラなどを使っても旨そうだ。ジャガイモは北海道から、きたあかりを取り寄せた。できたてのアツアツ、ホクホク、少々カリカリのを、ビールと一緒にやる。あのときのチップスがこんなに旨かったら、むざむざ鳥なぞにお裾分けなどしなかっただろう。
 
フィッシュ・アンド・チップス
●材料(2~3人分)
たら6切(そのほかの白身魚、メカジキなどでもOK)、じゃがいも4個、小麦粉1カップ、卵1個、水120cc、サラダ油、ハーブソルト、スパイス、塩、胡椒、バルサミコビネガー(酢でも可)各適宜

●作り方
1)じゃがいもはよく洗い皮付きのままくし形に切り、5分程水につける
2)たらは半分に切りキッチンペーパーでよく水気を取っておく
3)小麦粉、卵、水、塩(小さじ1)を混ぜあわせる(好みでハーブソルトやオールスパイス、ナツメグ等を加えても良い
4)鉄鍋や深めのフライパンにサラダ油を深さ2cm程入れ、中温に温め、水気を拭き取ったじゃがいもを入れ蓋をする。5分程たったら蓋を開け蒸気を飛ばし、美味しそうななキツネ色になったら取り出し塩、胡椒をふる
5)4)の油で中温のまま、たらに3のころもを付けてキツネ色になるまで中火で揚げる。
※塩、胡椒、バルサミコビネガー(酢)等を付けて頂戴する



海の博物誌
 水族館や動物園などで心を和ませる妙技を見せ、看板スターとして活躍するアシカやアザラシなどの鰭脚類。
 ゴマフアザラシやタテゴトアザラシなど一般にアザラシと呼ばれている仲間は19種を数えます。そのなかでもひときわ大きいのが、体重2.5t、体長5mという中型車並の体型を持つ、ゾウアザラシ(ゾウのような巨大な鼻が名前の由来)です。
 ゾウアザラシの平均潜水深度は500m、雄の最高深度にいたっては1500mを超え、クジラの中では最も深く潜るといわれるマッコウクジラの1137mをはるかに上回る潜水能力を備えています。
 その距離を水中でわずか24分で往復し、金属製の容器も押し潰す水圧の中を自由に泳ぎ回るゾウアザラシは、一方で巨大なハーレムを形成することでも有名です。
 集団生活の頂点に立つ雄は1000頭にも及ぶ雌の支配権があり、1回の繁殖期に100頭もの雌を妊娠させると推定されています。1度頂点に立つと4年間は君臨するということは裏を返せば多くの雄は雌とつがう機会にまったく恵まれないということです。
 「ゾウアザラシの潜水回数が夜に集中するのは、ハーレム社会が原因である」という仮説が妙に真実味を帯びるのもわかるような気がします。



ヤマハニュース

「ジャパン インターナショナル ボートショー 2007 イン横浜」のご案内!
入場チケット1,000組プレゼント(2/8~)

今年から、横浜みなとみらいで開催となりました。(3/15~18)

「カジキ釣講座」更新
2007シーズンの主なビルフィッシュトーナメント情報を公開

漁船や沿岸漁業の情報「大漁ネット」北海道野村湾北海シマエビ漁
さまざまな漁法で活躍するヤマハ漁船とその船主の方々をご紹介。

ネットTV「Captain’s World TV 」 楽園のレスキュー隊~タヒチ島公開
マリンレジャーやマリン文化をテーマに最新の映像でレポートしています。


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【編集航記】
まもなく、バレンタインデーですね。こうした華やかイベントに一切縁がなくなって久しい編集子ですが、やはり気になる日ではあります。バレンタインデーの起源には諸説ありますが、本来「女性が男性にチョコレートを贈る日」でないことは確か。本物志向の皆様には、ぜひ男女問わない「愛の日」として、2月14日を有効に過ごしていただきたい、などと思うのであります。デートは是非、海辺で。すばらしい日となりますことをお祈りしております。(編集部・ま)

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