ソルティライフ ソルティライフ
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イラスト・Tadami
いつでも潮気のある生活を過ごしたい。
MONTHLY COLUMN 潮の味に大魚の予感。
キャビンの棚 海の音に包まれる夜「FROM MOON TO OCEAN 海に降る月」
船厨 居酒屋さんの裏メニューに挑戦「いかチャーハン」
海の博物誌 海の強壮剤!? マグロ
YAMAHA NEWS 「大人のマリン塾」中部地区、横浜地区開講のご案内/マリンクラブ「Sea-Style Light(ライト)」ネット入会受付開始!/「マリーナ百景」更新/「カジキ釣講座」更新/「大漁ネット」更新
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MONTHLY COLUMN
 それはちょっとした冗談であった。いつもの戯れでもあった。
 友人の40フィートになる大型のスポーツフィッシャーマンで夏を迎えようという梅雨明けのそこは三浦半島の先端、三崎港から大島波浮の港へコンパス進路240度で南下した大海原。絵に描いたような、穏やかなエメラルド色の海が広がっている。太平洋高気圧が安定している夏でなければありえない美しい海が迎えてくれていた。昔から梅雨明け10日が穏やかで最高の海と言われる。沖に台風もなく優しい表情を見せる海。
 東京湾を10キロほど南下した先には沖の山(おきのやま)といわれる海底の山がある。水深30mから200mの台地だ。黒潮からの支流が当たり昔からいい魚場だ。また、大島の南には大室(おおむろ)ダシという昔から魚が湧くという魚場がある。大島と同じぐらいの大きな海底台地だ。南薩摩では黒染めの潮と呼ばれた黒潮の支流のなかだ。三宅島と八丈島の間の急流は「黒瀬川」と呼んだと聞いた。
 初めてフネに乗ったキャプテンの友人の、うら若き女性はフライブリッジのヘルムステーションのナビシートから後ろを振り返り、自分の乗るフネが作る白い航跡に見とれている。青い水の色に白い航跡、そのコントラストの美しさに誰もが見とれてしまう。
 今日はその年初のトローリング。大室ダシの西端から流し始める。流し始めて1時間、何も来ない。僕はコクピットから身を乗り出して海水をすくってなめてみた。爽やかな甘味のある塩味だ。
「駄目だね、魚いないね、場所変えようか」
 全く冗談で移動のきっかけを作った。結局その日は何のあたりのないまま大島波浮泊まりを決めた。
 フネの固定が終わったら一休み。キャプテンはシャンパンを持ち出した。「とりあえず明日のために」。理由は何でもいい。乾杯をする、それが楽しい。お酒の飲めないメンバーは新品のロッドとリールをチェックし始める。発電機が静かに回りサロンの中はエアコンが効いて快適そのもの。
「磯の鵜の鳥や 日暮れにゃ帰る……」
 野口雨情の唄や伊豆の踊り子で知られた歴史的な波浮の港にいることが楽しさに深みを増す。明日のための漁具のチェックを食事の前にする。ルアーの確認、ファイト用のハーネス、皮手袋、ギャフ……。周りを深い緑の崖がおおっている。どことなく神秘的なのだ。食事のお手伝いの変わりに僕はここの知る人ぞ知る名物揚げたてコロッケを買いに行く。漁協裏の雑貨屋さんがそれ。注文してから衣をまぶし揚げてくれる。いろいろ種類があるがどれも上手い。それをツマミにビールが進む事。二日酔いにならない程度にして翌朝の作戦会議。
「水温はこのあたりでも26度と充分なんだけれどカジキの群れはまちがいなくいる情報も入っているし、新島・式根島の南西のヒョウタン瀬あたりだね」「海の水なめてわかるの?」
「昔の漁師は塩味で魚がいるかどうかを判断したんだよ。それが経験という奴さ」
 冗談でしている行為に意味はない。大笑いのままその後は時折聞こえるチャポチャポというフネのハルにあたる水の音を聞きながらそれぞれのベッドでぐっすり。
 爽やかな朝日が波浮の港を射している。5時には出港するフネのエンジンや人の声で港にざわめきが起きる。夏山のキャンプ地のようだ。出港する時は心が躍るものだ。波浮から出た我々が見た海は朝日に輝いて煌く海になっている。「気持ちいいね」ゲストの女の子が叫ぶ。振り返ると大島が朝日に照らされている。何かの「予感」がある。
「キミがアングラーだよ。大丈夫?」キャプテンが笑いながら5セットのリールのドラグを点検している。
 不思議なことに誰もがありえない「予感」を共有していた。でももう西側から流し始めて南から東側の縁を往復2回目になっている。僕はまた塩水をすくって飲んだ。濃密な中に何かのアジがした。「これはいるよ。来るね」冗談のつもりで言った。ノーヒットの長い時間の空気を換えるためだ。ギャン!鋭いクリック音。右舷側のショートにヒットだ。ヒットした以外のロッドのルアーを引き上げる。のんびりしていたコクピットはいきなり戦場となる。「早くここに座って!」ヒットしたロッドを持ってビギナーの女の子はファイティングシートに座る。リールを巻き始める。ラインの張りを見たデッキハンドは「……シイラだよ」と。70cmほどのシイラがあがる。初アングラーは「初めてお魚釣ったよ」と嬉しそう。狙いはシイラではない。キャッチ&リリース。
 煌く海がまぶしい。気温は27度ある。時間は午後1時を回ろうとしている。ユリちゃんはまた上でうたた寝をしている。ギャン!いきなりだった。「ヒット!」「今度は本物だ!」デッキが戦場になる。笑いをこらえた笑いがある。
 「ユリちゃん!」。今後は本物だった。一時間の格闘の末無事に上がった100kgのクロカワカジキは23歳の初アングラーのビギナーズラックだった。
 それにしても魚がいる塩味がした、あのアジを覚えている。日高旺氏の「黒潮の文化誌」(南方新社)に南薩摩や土佐の漁師達が見た黒潮の話としてこんな記述がある。

黒潮の狩人の魚場は
まるで 藍甕の汁を
流し込んだように
深々と 黒かった

練達の船頭が
その汁をひしゃくで汲み取り
ソッと口に含み
魚の気配を読んだ

間もなく水平線に
鯨のお供をして勇む
鰹群の行列が見えた
大漁のお出ましだ


口に潮を含む、まんざら嘘ではなかったのだ。
黒潮の中の島々。日本の海には奥深い物語がある。


山崎 憲治●やまざき けんじ
別冊太陽「自動車紳士録」(平凡社刊)編集長、自動車専門誌「ロードスター」(少年画報社刊)編集長、自動車専門誌「Tipo」創刊編集長等を歴任。日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員長を6年間務める。2000年にボート専門誌「パーフェクト・ボート」を創刊。現在、「オーシャンスタイル・パーフェクトボート」スーパーバイザー。1947年、京都生まれ。



キャビンの棚
 海と月、というのは切っても切れない縁にある。朝夕は月の引力が引き起こすものだし。何よりも夜の海に月が投げかける光は、まことに美しい。青い空に真っ白な雲が沸き立つ海もいいが、月夜の海は切ないほど、美しいと思う。
 「FROM MOON TO OCEAN 海に降る月」は、月の光が投げかける海で録音された。全編を通して自然音だけを録音した不思議なCD。波の優しい音が聞こえてくる海辺のコテージにいるかのような錯覚に陥る。もちろん、月には音がない。それでも目を閉じて聴いていると、月に照らされた波打ち際の、どこか神秘的な光景が浮かんでくる。
 本作のプロデューサー・中田悟氏は海に限らず、自然が生み出す音をひとつの音楽ととらえて活動しているサウンドアーティストだ。
 ヒーリングサウンドというものが信じられない方にも是非試していただきたい。

FROM MOON TO OCEAN 海に降る月
中田悟
定価:2757円(税込)
発売:プレム・プロモーション



船厨
 海に行かずとも潮気の漂う店(飲み屋)というのがあって、筆者の事務所の近くにもなかなかに気の利いた店がある。魚屋さんが経営していると聞いているがメニューも豊富で、旨い。大将も、その姉妹だという女将も元気が良くて、楽しいときが過ごせる。フネの仲間と行けば、自然と潮気の濃度も高まろうというものだ。
 気に入って何度か通っているうちに「裏メニュー」も教えてもらった。その一つが、いかチャーハンだ。いかの胆炒めを頼むと、その残り汁で作ってくれる。これがめっぽう旨い。早速、真似て作ってみるが、その味はいまだ、なかなか再現できないでいる。塩加減、油の量、そのほかにも隠し味のようなものがあるのだろうか。それでも、ちょっとした得意料理になって、食卓を楽しくしてくれているのだけれど……。
いかチャーハンの作り方
●材料(4人分)
ご飯(茶碗4杯)、するめいかの胆(2ハイ分)、にんにく(1かけスライス)、日本酒(適宜)、醤油(適宜)、塩、こしょう(適宜)、卵(1個)
●作り方
1)イカの胆を取り出し、適当な量の日本酒で溶いておく。
2)大きめのフライパンにバターを多めにひき、つぶしたニンニクを入れ、香りがたったら取り出す。
3)ご飯を入れて炒める。
4)ご飯に油がなじんだら、日本酒に溶いたイカの胆を入れ、よく混ぜ合わせて炒める。
5)醤油、塩、こしょうなどで味を調える。
6)大きめの器に盛った後、生卵をおとし、軽くかき混ぜながらいただく。
※胆を取り出したするめいかは輪切りにして炒めたり、イカリングにするなど調理して、チャーハンに添えるとよい。



海の博物誌
 日本人の好物であるであるばかりか、世界中で人気の寿司。日本ではその寿司の中でも断トツに人気なのがマグロでしょう。いまでこそ高級品とされるトロ(脂身)は江戸時代には下等扱いで、昭和の初期までは赤身が上物とされていたのはご存知の通りです。
 さてこのマグロですが一言でいってもクロマグロ(ホンマグロ)、ミナミマグロ(インドマグロ)、メバチマグロ、キハダマグロ、ビンナガマグロ、タイセイヨウマグロ、コシナガと実に7種類もの仲間がいます。マグロは、ソルトウォーターゲームの王様、カジキ類とは別の仲間で、よく耳にするカジキマグロという名前は存在しません。
 マグロにはDHA(ドコサヘキサエン酸)が多いことでも知られています。DHAが老化防止や学習効果に役立つといわれているのは、DHAの成分が直接脳細胞まで達し、作用するからだそうで、これらは特にトロ、カマのような脂質含有量の多い所と目玉の後ろに含まれているといわれています。
 またマグロにはセレンという物質が比較的多く含まれています。セレンは人間の体内における含有量は少ないのですが、ビタミンEを組み込むと老化の原因とされる過酸化脂肪を抑え、発ガン性物質も防止します。そして意外なことにもこのセレンという成分が生殖機能を正常に保つということです。もしセレンが不足すると性的な機能が衰え、精子形成障害などが現れるそうです。健康ドリンクが即効剤ならば、さしずめマグロは持久剤といったところでしょうか。



ヤマハニュース

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【編集航記】
西日本で初めての本格的なビルフィッシュトーナメントとして開催された「勝浦ビルフィッシュトーナメント」が第20回を迎えます。今でこそ、二桁の釣果は当たり前となったこのトーナメントですが、第1回は「本当にカジキなんて釣れるのだろうか」と半信半疑で集まったチームがほとんどだったと聞いています。ボート、タックル、技術、そして情報量もこの20年で大幅に進化し、競技としても本格化の一途をたどってきました。第20回大会は7月5日から7日に開催されます。今年はどんなドラマが待っているのでしょう。(編集部・ま)

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