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FJR1300ヒストリー:FJR1300AS/A

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2000年9月13日、南ドイツ・バイエルン州で開かれた二輪車ショー『インターモトミュンヘン2000』はFJR1300の世界デビューの舞台だった。2001年モデルとして登場すると、以後進化を遂げながら2015年には世界で10万台を超える出荷数を記録。そして今、最新のFJR1300AS/Aには、ヤマハの最新の電子制御技術の粋に裏付けられた卓越のハンドリングの世界がある。この16年の進化をふり返る。

2000年9月ドイツでデビューしたFJR1300

1984

ルーツは1984年のFJ1100

FJR1300のルーツを探るとFJ1100(1984年欧州モデル)に辿り着く。「当時、”横剛性こそ安定性に繋がる”というひとつの技術ポイントを導き出していました。それに基づき開発したのがFJ1100。セカンダリーロードを2人乗りで素早く走り抜ける操縦性とアウトバーンでの安定性が評価されました。また初代FJは “操縦性と安定性の両立”という考えを、開発に初めて織込んだモデルでした」と当時の開発スタッフは語っている。

空冷DOHC4気筒・4バルブ・ダイレクト駆動カムのエンジンは、角チューブのワイドフレームに搭載されタイヤは前後16インチ。ラテラルフレームと呼ぶ角パイプフレームは、ステアリングのヘッドパイプが、フレーム骨格の先端より内側にある独創のレイアウトだった。

1991年には欧州スポーツツーリングの頂点に立つモデルとして”Top of sport touring” をコンセプトに熟成。1,200ccとなりヤマハ4ストローク車初のオーソゴナルエンジンマウントの採用で振動を低減、ABSも装備され日本仕様も誕生した。

こうしてFJ1100/1200は、スポーツツーリングファンを拡大していき、その潮流は2000年の「インターモトミュンヘン2000」へと繋がっていくのだった。

初代FJ1100(1983年東京モーターショー)
ラテラルフレーム
FJ1200A(1991年)

2001

タンデムロングツーリングを提唱した初代FJR1300

初代の2001年モデルFJR1300は、欧州向けに誕生した。タンデムを含めたツアラー性能、ストレスのない快適性と走行性を狙いに開発された。当時、欧州市場に登場していた大型ツアラーの乾燥重量は約300kg程度だったがFJR1300は乾燥重量237kgという軽量ボディで軽快な走行性を支え、タンデムでのロングツーリング用途に優れ人気を博した。全域でのトルクフルかつシルキーなエンジン特性と優れた操縦安定性、快適性が支持され“スポーツGT”や“スポーツツアラー”と呼ばれる新カテゴリーを創造する端緒となったである。

新設計水冷1298cc・DOHC・直列4気筒・FIが搭載され、エンジン幅をコンパクトに出来るサイドカムチェーン方式を採用。ボアストロークはXJR1300より3㎜ストロークが長い79.0×66.2㎜で、放熱性に優れたメッキシリンダー、組立式ショックアブソーバ内蔵2軸バランサー、4-2-1-2マフラーなどが装備された。シャフトドライブには、機械式カムダンパー内蔵ミドルシャフトが投入されトルク変動に対する滑らかな特性を実現した。

フレームは軽量で強度・剛性バランスに優れるアルミ鋳造ダイヤモンド型。足回りはフロント48㎜インナー採用正立サスペンション、リモコン調整式リアサスペンション、前後17インチラジアルで固められた。シールド高とアングル調整も可能な電動式ウインドスクリーン、25リットル燃料タンクなどがおごられ長距離ツアーの新しい可能性を提唱。これらフィーチャーのバランスによるシルキーな高速巡航性とシャープな運動性能が人気となった。2003年にはABSを装備したモデルが追加された。

2001年モデルFJR1300

2006

“世界最高水準の欧州縦断ツアラー”へ進化

FJRは2006年モデルで大きく進化する。“世界最高水準の欧州縦断ツアラー”がコンセプト。標準モデルFJR1300Aに加えクラッチのレバー操作なしで変速できるYCC-S(ヤマハ・チップ・コントロールド・シフト)を搭載したFJR1300ASが誕生した。

エンジン性能と高次元の走りの性能という特色そのままに、“ツーリング機能”と“利便性・高級感”を大幅に向上。スクリーン可動範囲拡大、可動式ミドルカウル追加、ラジエター回りの設計変更、可変ライディングポジション、ユニファイドブレーキシステムなどが織り込まれたが、単なる装備追加の枠でこれらは語れず、”走りのクオリティ”に直結するのだった。スタイルも“インテリジェント・ハイパフォーマンス・ツアラー”のコンセプトのもと、“面とライン”の巧みな組み合わせが特徴なボディとなった。

2006年モデルFJR1300

煩雑なクラッチ操作を開放するYCC-S

FJR1300ASは市街地などで煩雑なクラッチ操作からライダーを開放、ツーリング機能と快適な運転を支援することを照準に開発された。慣れが要求される発進時の微妙な半クラッチ操作が要らなくなり、スロットルを操作するだけで、システムは回転数とスロットル開度に応じてクラッチを最適に制御する。微速発進から全開加速まで多様な発進に対応してくれる。変速時も”クラッチを握る・半クラッチ・レバーを離す・アクセルを調整する”といった操作は不要だ。手元のスイッチボタン操作、または左足のシフトレバー操作だけでスムースかつ効率的なギアチェンジが可能となった。

「ロングツーリングでアドバンテージとなる」「日本のような交通環境下にこそ欲しかった装備かも」「変速の時のショックがなくタンデムの人にやさしい」「ATの楽しさとミッションのトルク感の調和がいい」「長年バイクと付き合ってきた人も、すんなりと受け入れられる」といった声はジャーナリストから。欧州を中心に、ロングツーリングを快適に楽しみたいというユーザーから人気を得たのだった。

2013

YCC-T(電子制御スロットル)搭載

2013年モデルは7年ぶりのモデルチェンジ。エンジンスペックに大きな変更はないが、吸排気系の変更で出力は2.0kWアップ、またライナー部を廃止できて優れた放熱性が得られる直メッキシリンダーを採用、ピストンリング(トップ、セカンド)も張力調整され摺動抵抗が低減された。

2013年12月より国内仕様も登場。最大の特徴は、何といっても電子制御技術の投入。その象徴がYCC-Tである。滑らかな発進性を支えるトラクションコントロール、クルーズコントロール、ヤマハD-MODE(走行モード切り替え)なども採用されるが、これらの装備はYCC-Tの機能を存分に活かしたものだ。

YCC-Tとは、アクセル操作を検知したECUユニットが最適なスロットルバルブ開度を瞬時に演算、モーター駆動でスロットルバルブを作動させ吸入空気量を細かく調整する。結果、スムースなレスポンス、スポーティーなパワー感を感じとれるものとなり、優れたドライバビリティに貢献。中でもクルーズコントロールは魅力だ。3~5速状態で50km/h以上走行時にセットが可能。気づかぬ間に車速がアップしてしまうことを避けてくれ、郊外での走行や高速巡航でも「安心感」ある走りを楽しめる。その他、新設計フロントフォークとリアサスペンションのセッティング変更、電動駆動が滑らかになったスクリーンなどが採用され、スタイルも一新された。

電動調整サスペンション搭載(FJR1300AS)

YCC-S搭載のFJR1300ASも基本性能を向上、シフトペダル、ハンドシフトレバーのどちらでもシフト操作が常に出来る仕様となった。(従来は選択式)また低速走行からの停止時に自動的に1速となる“STOP MODE”シフト機能も採用。電動調整サスペンションも採用され、これにあわせフロントは倒立式に。走行条件変化に伴うサスペンション調整の手間が省かれるのだ。荷重設定は4種あり、その中で「強」「標準」「弱」と減衰力調整ができる。しかも前後それぞれの調整ではなく、「フロントの減衰」「リアのイニシャル・リアの減衰力」を統合的にバランスさせた点が特徴だ。さらにYZF-R1等で実績ある左右独立の減衰機構をもつ。圧側減衰を左側フォーク、伸側減衰を右側フォークで発生させ性能安定化に貢献。メーターのドット表示で確認しながら調整できる利便性を備えた。

YCC-T搭載2013年モデルFJR1300A、ヤマハ国内モデル初のクルーズコントロール採用
前後統合バランスの電動調整サスペンション採用FJR1300AS(2013年モデル)

2016

FJR1300は、2001年の発売初年度から2015年5月末までで、世界で累計10万台以上の出荷実績を記録。21世紀のヤマハのフラッグシップとして揺るぎない地位を築いてきた。

そのFJR1300AS/Aは、2016年モデルとしてまた大きく進化した。トランスミッションは従来の5速から6速となり、フルLED灯火器が採用された。新リアコンビネーションランプや新デザインのマルチファンクションメーターで、クオリティ感も一段とアップした。

6速のトランスミッションは現行5速に「オーバートップ」を加えたのではなく、1300ccのトルクを効率よく駆動力に反映するよう各ギアを設計。全域で繋がりのよいギアレシオとした。

さらに、ヤマハ初のセパレートドッグ構造のトランスミッションが採用される。ギアとドッグを別体としたものでギアの噛み合い姿勢改善となる。そして各ギアにはヘリカルギア(はすば歯車)が新採用された。ヘリカルギアは、従来のスパーギア(平歯車)よりも噛合い率を十分に確保できるので、ミッションのコンパクト化が可能、従来の寸法を維持したまま6速化が可能となったのだ。6速化による構成部品増にもかかわらず、トランスミッション単体の軽量化も達成。

標準車のFJR1300Aには、YZF-R1や大型クルーザーで実績のある“アシスト&スリッパークラッチ”を採用した。クラッチの《オン・オフ》作業の要である「ボスクラッチ」と「プレートプレッシャー」双方の噛合い部分が斜めのカムとなっており、軽いクラッチ操作荷重による市街地走行での発進・停止の軽快感、バックトルク発生時の車体挙動緩和などの恩恵をもたらしている。

コーナリングランプ採用の2016年モデルのFJR1300AS

ヤマハ初のコーナリングランプ(FJR1300AS)

2016年モデルFJR1300ASの大きな特徴が、夜間のコーナーで、ライダー負担軽減を図るコーナリングランプの採用だ。(海外仕様のFJR1300AEにも搭載)走行中、バンク角に応じて、イン側前方を照射する“コーナリングランプ”が順次自動点灯し、照射エリアを広げ、夜間走行でのライダーの負担軽減を図るもの。バンク角の検出はYZF-R1/Mにも搭載の「IMU」(Inertial Measurement Unit)の高速演算処理で行い、CAN通信でライトコントロールユニットにより作動。ロービーム、ハイビームいずれも場合も、浅いバンク角ではイン側のコーナリングランプ1個が点灯、バンクが深くなるにつれて2個目、3個目が追加点灯する。

コーナリングライト採用FJR1300AS

スポーツのDNAと制御技術の融合

このように “進化し続けるスポーツツアラーのパイオニア”としてFJR1300AS/Aはエンスージャストから大きな支持を得ながら進化し、2016年モデルが誕生した。頂点スポーツツアラーとしてのさらなる熟成である。と同時に1980年代から培ってきたヤマハスポーツバイクのDNAと、最新の制御技術が凝縮されひとつになった姿でもある。

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