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今回のコラムは、チャンピオンとして書いているよ!この1カ月は、今までの人生のなかで最も楽しくて、最も大変な日々だった。何という1カ月!
2008シーズンは南アフリカ、イギリスと初めてのサーキットがあったが、他のライダー同様、僕も今季3番目の新コースとなるアイルランドに興味津々だった。競馬場のなかにあるフェアリーハウスは、もう何週間も雨が降り続いていると聞いていたから、マディのレースを想像していたんだ。ところがいってみると、まったく違っていた。コース・レイアウトもいいし、ジャンプもOK。でもウッドチップが敷き詰められているため、コースがとても柔らかくて滑りやすく、ほとんどグリップしないんだ!さらにラインがどんどん変わってしまうので、どうやって攻めていいのかなかなか分からなかった。そんな状況で順調な走りを見せたのは、デ・ディッカーだけだったよ!
レースでは、路面自体が問題だったので(雨はまったく降らず、決勝日も快晴だ)、かなり慎重になったし、ライバルであるラモンとデ・ディッカーのポジションに絶えず注意を払っていた。本当は自分のレースをしたかったけれど、しっかり計算しながらポジションを考えなければならなかったんだ。マシンはとても好調でスピードもあったが、第2ヒートではクラッチに問題が出て、高速セクションでは思うようにスピードがついてこない。デ・ディッカーが僕のすぐ後ろにいたんだけど、彼とバトルをするのは避けたかったので、彼にパッシングポイントを教えるようにしてリスクを最小限に抑えることにした。僕にとって最も重要なのは完走することで、リタイアするわけにはいかないし、できるだけスムーズにゴールを目指したかったからね。でもそのあとは、かなり落ち込んだんだ。だって重要な残り3レースの初戦で、僕は他のライダーにわざわざポイントを与えるようなことをしたんだからね。そしてこの結果、ポイント差がかなり縮まってしまったんだ。
月曜日に飛行機で戻り、すぐまたリーロップへ向けて出発の準備を始めた。シーズン3度目のサンドコースになるリーロップはわだちや凹凸が多く難しいコース。それに備えてロンメルでトレーニングをするため、僕はアリスと一緒にベルギーに滞在することにした。またマシンをテストし、特にクラッチの問題解決に取り組んだ。
リーロップはラモンが昨年、チャンピオンを決定したサーキットなんだけど、僕がここでレッドプレートを失うだろうと思っていた人は多かったようだね。でもその人たちが知らなかったのは、僕が実はこのコースが大好きだという事。過去2年は転倒しているので、何をすべきか、何をしてはいけないかがよく分かってるんだ。ここでは多くのライダーがミスをおかすので、とにかくコンスタントに走ることが重要になる。
レースはスタートから気合いを入れてハードにプッシュしていった。ラモンをパスした時にはすごく興奮して、自分でも「素晴らしい!」と思って3位を確信した。でもチームの関係記者によると、ラモンは脚にちょっと問題があったみたいだね。
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リーロップは転倒しやすいコースで、僕も実際、ジャンプのテイクオフで危うくコースアウトしてしまうところだったけど、何とかこらえる事ができた。第1ヒートが終わってみると、ラモンをかなり突き放していたので、アイルランドで失ったポイントをまた取り返すことができたんだ。
第2ヒートはドルーバーとバトルをしながらも落ち着いて走りきって2位。これ以上ないというほどの出来だった。デ・ディッカーが僕よりも前にいたが、ポイントにすれば小さいものだ。このレースを終了した時点でラモンに14ポイント差、デ・ディッカーに25ポイント差をつけてトップに立ち、次のファエンツァでいよいよタイトルが現実的になることも分かった。ここまでの28ヒートのなかでノーポイントに終わったのは1度だけ。だから、ライバルはみな手強いけれども、可能性は十分にあると思っていた。
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でもこの頃になると、アリスはかなり神経質になっていた。いらいらするらしく爪を噛んではがしてしまったりするので、手袋をするようになっていたんだ。彼女は僕のために一生懸命に働いてくれて、支えてくれてくれている。そのことが彼女に大変な緊張を強いているんだ。
オランダからは直接イタリアへ移動。僕としては、なるべく静かに、誰にも邪魔されずにいたかった。ある意味とても長く感じた1週間だったが、いつもと同じように過ごしながら、自分ひとりになれる場所を探してプライベート・コースでトレーニングをしたりしていた。大勢のファンが僕に応援のメッセージを贈ってくれていることや、ファエンツァまで観戦に来てくれることなどが耳に入り、うれしい気持ちの一方で、同時にプレッシャーも大きくなってきていることを感じていた。だからサーキットへは早めに入り、モーターホームをパドックからなるべく遠いところに停めた。
土曜日の予選は13位と不調に終わった。予選がウイークポイントなのはシーズンが始まったときからわかっていたけど、そのことが実際に大きな問題になったかといえば、そうでもないと思っている。だから2009年以降も、たった1ラップのタイムだけに固執するようなことはしないと決めているんだ。
その土曜日の晩は、お酒の力も借りてとてもよく眠れた。日曜日は雨になりそうだという噂だったけど、何度もあのコースを走っている僕の経験からすると、きっと晴れると確信していたんだ。その通り日曜日は雨が上がり、コースの状態は良く、しっかりグリップしてくれた。そして暑すぎず寒すぎず、まさに絶好のコンディション!
ウォームアップでは確かな手応えがあったので、心を惑わす事なく「何としても完走したい」と考えていたんだけど、チームの周りには大勢のファンが集まってサインを求められたりなど大忙しだったんだ。それでMX2の第1ヒートの間に急いでコース周辺を回り、ライバルがどんなラインをとっているのかなど観察した。
レース前には僕自身もかなりナーバスになっていたんだと思う。長いシーズンを戦い、多くのレースでファイトし、必死になってポイントを重ねてきた。そして今、最後の戦いのときがやってきたんだからね。サイティングラップをスタートすると、大勢が僕を応援しているのが見えた。しかしそのあとは心の扉を閉じ、コースだけを見て、マシンの音だけを聞いて集中力を高めていったんだ。
第1ヒートの序盤はかなり緊張していた。でも調子は良く、ライン取りがうまくいっていたし、スピードも十分だと感じていた。8番手から3番手まで上がって、2位も可能だと思っていたが、トップのデ・ディッカーを狙っていくことはしなかった。彼がどんな走りをしてくるのかちょっと心配だったんだ。彼が追って来ているときは、何度も振り返って確認し、真後ろに来た時には、スロットルを戻して彼を先にいかせることにした。そしてゴールラインで僕らは握手をした。彼がフェアなレースをしてくれたことは気持ちがよかったし、彼自身もランキング2位に上がっているので満足していることだろう。
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その時点で、ラモンがひどいことになっていることは知らなかった。サインボードでは彼は近づいていないとのことだったので、僕はただデ・ディッカーだけを気にしていたからだ。結果として、第2ヒートは楽になった。僕は3ポイント、つまり18位以内に入ればそれで良かったんだ。それでもプレッシャーはあって完璧というわけにはいかなかったが、タイトルはすぐそこにあった。昼休みはまたひとりになって、話をしたのはチームの仲間だけ。最後の修正が残っていたからだ。
第2ヒートは好スタートを切ったが、できるかぎり安全に、気負わずに走ることを心がけた。それでも危ない場面はあって、なぜそんな事になったのか分からないんだけど、クレメント・ドゥサルがフロントホイールにぶつかってきたんだ。僕はスタート前、ラモンとデ・ディッカーのポジションを教えてくれるようにメカニックのジェラルドに頼んであった。ラモンは2番手、デ・ディッカーも僕より前にいたが、僕も慎重に走りながら10位以内をキープしていたので不安はなかった。何しろ、このレースの戦略はただ完走を目指すことだけだったからね。
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ラスト2周はとても長く感じた。すでにゴールラインに大勢が集まっているのが見えて、そこからはもう感動と興奮でほとんど何も覚えていない。ただただ、うれしかった。マシンを飛び降り、父と兄、それから大勢の記者たちに囲まれた。人が多すぎて他には何も見えなかったが、最後にようやくチーム・スタッフやアリスのところにたどり着くと、みんなが泣いていた。あっという間の出来事だったが、チームの面々や彼らの特製Tシャツが印象に残っている。それから表彰台に上り、記者会見、そしてチームのところへ戻った。
テントでは小さなパーティーになり、そこではもう笑いが止まらなかった。僕の身に起ったすべてのことを受け止めるのに、しばらく時間が必要だったほどだ。それからチームのみんなや家族と、サーキットから数キロのところにあるレストランで食事。食事が終わったときには心身ともにすっかり疲れきっていたけど、またサーキットに戻って、KTMのトラックのなかでタイラ・ラトレイとパーティー!午前1時まで飲み通したよ。
そして月曜日、モーターホームに乗ってのんびりと家路についた。その夜は家族だけでお祝いし、シャンパンをたくさん飲んだんだ。次の日にはその片付けが待ってたけどね。
今は電話がひっきりなしで、インタビューの依頼が殺到している。そのことが、僕が本当にチャンピオンになったことを気づかせてくれる。
また、モトクロス・オブ・ネイションズに出場出来ることになった。土曜日にプレゼンテーションを行い、それからドニントンパークへ向かう。アメリカのライダーたちとレースをするのがとても楽しみだし、イタリア・チームをできるだけ引っ張っていきたいと思っている。楽なレースではないし、天候やコースのこともしっかり判断しなければならないだろうね。
家の内装は9月の末には完成しそうだ。そして10月の2週目には地元のバーでパーティーを予定している。
最後になったけど、シーズンを通じて僕をサポートしてくれたすべての人に、マントバやファエンツァに見に来てくれたファンにお礼を言いたい。本当にありがとう。またヤマハ・モンスター・モトクロス・チームでの初めてのシーズン、彼らのサポートとプロフェッショナルな仕事に対し、どんな言葉がふさわしいのか分からないくらい感謝している。来シーズンもまた、尊敬する彼らとともに在りたいと願っている。
DP19
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