ヤマハ発動機株式会社

とじる

EXULT 38 CONVERTIBLE

DESIGN

海での時をデザイン

EXULTの名前を冠するために。
「進化」を目指したデザインとは。

すでにベストセラーとなり高い評価が定着している「Y-38 CONVERTIBLE」。このボートをEXULTブランドにふさわしくグレードアップするために、デザインはどんなアプローチが必要なのか。開発レベルはマイナーチェンジと位置付けられながらも、「進化」を義務付けられた「EXULT38 CONVERTIBLE」。様々な制約を越えて、どのような変化を遂げたのか。デザインを担当した薄雅弘に語ってもらいました。

薄 雅弘 ヤマハ発動機株式会社
ボートデザイナー

【デザインコンセプト】コンセプトのキーワードは、継承と革新と挑戦。

 今回、デザイン開発の前提として、大きな制約がありました。「Y-38 CONVERTIBLE」のデッキデザインは踏襲することが条件になっていたのです。デッキデザインは、ボートの個性を決める上で重要な意味を持ちますから、デザインの自由度はかなり制限されることになります。その上で、デザインコンセプトとして、大きく二つのテーマを設定しています。一つは、「EXULTアイデンティティの継承」。そしてもう一つが、「新世代コンバーチブルの具現化」です。 1. EXULTアイデンティティの継承  これは、外装デザイン全体の方向性に関するテーマです。すでにベストセラーとなって定評がある「Y-38 CONVERTIBLE」をベースにしながら、YAMAHAビッグボートのフラッグシップブランドへとグレードアップするわけですから、守る所は守りながらEXULTブランドとしてふさわしいルックスを実現する必要があるわけです。デザインコンセプトとしては絶対に外せないテーマでした。
 私は、EXULTブランドのラインナップに共通しているイメージを端的に言い表すと、「猛禽が獲物を狙う時のようなシャープなイメージ」と言えるのではないかと考えています。そのイメージを、どうやってカタチにしていくか。デッキデザインを守りながら、表情を変えていく作業には非常に苦心しました。 2. 新世代コンバーチブルの具現化  これは、今回のデザイン開発において「革新」といえるテーマでした。
「Y-38 CONVERTIBLE」はスポーツフィッシャーマンとしての性能が高く評価されていたボートでしたから、これを“EXULTブランド”として進化させるためには、コンバーチブルとしての要素をさらに強化する必要があったわけです。
 これはいわばEXULT38 CONVERTIBLEに課せられた大命題でしたね。
 幸い、IPSシステムの採用によって、キャビン下のスペースレイアウトに大幅な余裕がうまれ、かなり変えることができるようになっていました。
 これらの要因もあり、このテーマへの取り組みがこれまでにやったことのないチャレンジ(革新)につながったのだと思っています。従来と同じことをやっていては、この進化はなかったでしょう。
 デザインとして基本的な部分を踏襲しながらも、新しく変えていく。 「静」と「動」、この相反する課題を融合させるという意味では、今回のデザインは一つの挑戦だったといってもいいかもしれません。

【外装デザイン】新作部分で大胆に挑戦。
見た目以上の進化とは。

 外装デザインとしては、「Y-38 CONVERTIBLE」のデッキデザインを踏襲していますから、目に触れる部分を大きく変えていくということはできません。その分、個々のディテールをきめ細かく見直して、新たにデザインを新作できる部分ではかなり思い切って、エッジを効かせたデザインを施すなどしながら、全体のイメージをまとめていきました。
 新作となった部分では、ルーフオーニングがあります。平面のガラスが立っている形状だったものを、流れるような曲面フォルムに変えています。フロントウインドウも曲面化させながら後ろに倒していくような発想で、ヘアーフローが流れていくようなフォルムにチューニングし直しています。
 そして、もう一つの新作部分がハルです。今回、IPS採用となったことでシステムに合わせて船型を作りこんできています。結果、ハルの形状が、後ろ側の下部が広がっていて面がねじれるようになっています。その船型を製造するために、成形時に型の中央を割って外す、いわゆる「センター割れ方式」を採用することになったのです。これが、プラスに作用しました。例えば、ハルに彫刻的なモチーフを取り入れることで、モダンな印象を作りこむことができました。これまでのYAMAHAとは、違うハルのデザインが実現したのです。
 さらに、エアインテークやサイドウィンドウグラフィックを変更するなど、細かな部分の表現を変えることで全体の表情を変えています。特にサイドウィンドウは、掘り込みを入れるようなカタチで型の抜けをよくするために付き出したりするんですが、センター割れを採用しているためのこの表現が可能になっています。これに合わせてフロントウィンドウも面を統一するようなデザインにしています。このデザインは、見た目だけではなく、波が割れにくくて着岸時にもぶつけにくいというメリットにもなっています。こうした細かなデザインの変更が、機能的にもプラスになっています。波が強くでも、コックピットに波が上がってきにくくなったのです。波の流れが変わったんですね。外装デザインとしては、踏襲する部分が多くなっていますが、確実に進化させることができたと感じています。

【インテリアデザイン】クラシカルではない新しさを追求。
最先端技術へのチャレンジも。

 「新世代コンバーチブルの具現化」がインテリアデザインのテーマですから、とにかくクラシカルなイメージを払拭して、新しさを追求したかった。
 最も大きく変わったポイントのひつとが、明るさです。IPS搭載によって、エンジンがアフトデッキに移ったことで、フロントウィンドウが標準採用できるようになったのです。サイドにもウィンドウを配していますから、インテリアの印象はかなり変えることができるようになりました。彩光が変わったことで、インテリアそのもののデザインも従来にないアプローチが可能になりました。例えば、オーク材を横目で使うことで明るい色調と横に広がるワイド感を表現することができました。この基本色調に合わせて、本革のソファも明るいカラーを選択。ポイントとしてブラックを差すことで、印象を締める使い方をしています。さらに、フローリングはダークブラウンを採用して、落ち着きのある室内を演出しています。また、木質部分は、7部つや程度のハーフグロスで仕上げて、さりげない高級感を醸し出すデザインにまとめています。こうした色調は、イタリアのサロンクルーザーなどでよく見られるトレンドです。「EXULT38 CONVERTIBLE」は、新世代コンバーチブルを標榜していますから、これまでにないイタリアンモダンな印象を作りたかったのです。
 そして、インテリアにはもう一つチャレンジがあります。それは、サロンテーブルの天板です。これは、YAMAHAグループ企業である(株)ヤマハファインテックの最先端の木材加工技術を採用しているのです。この天板は、レーザー加工による0.02mmという微細な象嵌細工で出来ているのです。ここまでの精密な象嵌表現は、ヤマハファインテックの技術がなければ不可能です。今回の開発には、オールYAMAHAで取り組んでみたいという思いがあって、新たなチャレンジとして取り組んだのですが、大きな成果が出たと感じています。

【機能デザイン】船での時間をより楽しく。
機能も作りこんだデザイン。

 今回の「新世代コンバーチブルを具現化」するというテーマは、空間的な余裕を作り出すことにもポイントがありました。IPSシステムを採用することで、ミドルに生まれた空間を有効利用することができるようになりました。床下に一人が寝られる空間もあるサービスルームをプラスできて、収納も使えるようになっています。つまり、船の中で過ごす時間が変わってくるわけで、その点も考慮してデザインの整合性を作りこんでいます。
 たとえば、サイドウィンドウを設置していますが、これは船の中の人の動線、立ち位置を考慮てし、人間工学に基づいてレイアウトしています。左舷にはトイレルームがあるのですが、そこを外して窓を設置しています。つまり、必然的に今の位置になっているのです。いわば、船の中と外の機能を考えながらリスタイリングしているということですね。
 そのほかにも、サロンテーブルを電動で昇降可能にしてダブルベッドにできるようにしていたり、床下に収納スペースをプラスしていたり、ロッドスペースを拡大していたり、フロントウインドウに下から上げるタイプのカーテンを設置していたり、細かな点で機能的で利便性に配慮した設計を施しています。ちなみにカーテンは、設置可能な窓にはすべて設置していてデザインも統一しています。

 「EXULT38 CONVERTIBLE」は、デザイン開発レベルとしてはマイナーチェンジという位置づけです。その制約の中で、これまでにないチャレンジを一つひとつ積み重ねて作り上げています。デザインとして見た目以上に新しい価値を産み出せているのではないかと思っています。ぜひ、一度体感していただきたいと思います。

取材日:2014年8月20日

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