海と繋ぐテクノロジー

EXULTの系譜に名を連ねる
今、最も求められているボートを。

日本経済が復活の兆しを見せている今、ビッグボートへのニーズも徐々に高まりつつあります。そのニーズに応えるために誕生した「EXULT38 CONVERTIBLE」。かつて短期間に50艇以上を売り切った大ヒットボート「Y-38 CONVERTIBLE」をグレードアップ。YAMAHAビッグボートのフラッグシップ・ブランドを冠するまで進化したポイントはどこにあるのか。開発を担当した佐竹秀紀に話を聞きました。

佐竹 秀紀
ヤマハ発動機株式会社
ボート開発設計

開発コンセプト

もっと自由に、もっと楽しく、もっと快適に。
海を楽しみ尽くす理想を追求して。

まず特性としてEXULT38 CONVERTIBLEに求められていたのは、端的にいえば「外洋でのロングクルージングでも楽しめること」、そして「スポーツフィッシャーマンとしての性能向上」でした。もともと開発のベースとなった「Y-38 CONVERTIBLE」は、スポーツフィッシャーマンボートとしての性能は定評がありましたから、その特徴を生かしながらさらにボートとしての魅力を高めていくことが目標となりました。
営業サイドから伝えられていたユーザーニーズから見えてくるポイントをまとめると、今求められているのは「もっとストレスなく海を楽しめるボート」。つまり、操船技術の熟練や経験の有無やクルーの必要性などを越えて、もっと気軽に自由に楽しめる船が欲しいということです。
このニーズは、ある意味ビッグボートのひとつの理想形といえるかもしれません。現在の日本の経済動向を考えると、これから新しいお客様層が誕生してくる環境が整いつつありますから、この理想を追求することは大きな意味を持ってくると私たちは考えました。
そこで開発ポイントとして設定したのが、以下の四つです。

  • イージー操船→IPSジョイスティックシステムの搭載
  • 揺れない機能→ジャイロシステムのオプション採用
  • 揺れない船型→ハル新設計
  • 室内居住性の向上→魅せるインテリア

この四つの要素を総合的に連動させることで、これまでにない魅力を持つコンパーチブルとして形にすることができたと考えています。

イージー操船

IPSジョイスティックシステムで実現した
一人でも出港できるほどの自由度

まず最初にお伝えしたいのが、「IPSジョイスティックシステム」ですね。ポイントはいくつかあって、まず一つは「電動ステアリング」を採用していることです。従来の油圧方式とは異なり操縦性が非常に高くなっています。そして、「電子制御」となっているため角度制御が非常にスピーディーに行えるようになりました。つまり、ジョイスティックによって、自分のイメージ通りに思うままに操船することが可能になっています。  通常、このサイズのボートでは、オーナーさまの他にクルーが同乗することが不可欠です。一人では、操船が難しいですからね。でも、EXULT38 CONVERTIBLEならば、オーナーさまひとりでも十分なくらい、離・着岸の際の船のコントロールは思うままに操ることができます。  たとえば離岸する場合を思い浮べてみてください。ボートは前進すると後部が軌道より外に出ますから、必ず後進して離岸することになります。この時、潮や風の状況も影響しますから、クルーと共に協力して繊細な操船をしなければなりません。前後に別の船が係留されていたりすると、さらに難易度は増すことになります。つまり、楽しむために海に出るその前の段階で、経験と熟練した操船技術が必要だったわけです。  でも、IPSジョイスティックがあれば、真横に動かすことが可能ですから、従来のようなストレスをまったく感じなくて済むわけです。「海に出て楽しむ」という歓びとオーナーさまを、ダイレクトに結ぶことができる。そんなバリューを実現することができたのです。

離着岸は、アフトジョイスティックで。状況を眼で確認しながら簡単に操作が可能。

着岸

離岸

アンチローリングジャイロ(OP)

30~40%横揺れを抑えるジャイロシステム
一日中、海で楽しんでも疲れにくい

そして、もう一つの大きなポイント「アンチローリングジャイロ」です。こちらはEXULT-36で採用したオプションですが、装着率が90%を超えるほどに好評をいただいています。今回、EXULT38 CONVERTIBLEでも、ボートとしての特性を大きく向上させる重要なデバイスとして位置づけています。IPSシステムを採用することで搭載スペースを確保することができました。
ジャイロシステムの機能を一言でいえば「30~40%横揺れを抑えることができる」ということです。数値で言うとピンとこないかもしれませんが、実際に体験してみると身体で確実に実感することができるレベルです。すぐに、揺れが少ないと分かります。もっと分かりやすくメリットを説明すると、「疲れにくい」ということに尽きると思いますね。
例えば、一日中外洋でフィッシングなどを楽しむ場合、ずっと揺れているボート上にいるとかなり疲れます。それがジャイロが効いていれば、本当に疲れにくくなります。個人的な経験ですが、ビルフィッシュトーナメントで三日間競技に参加していても、疲れることがありませんでした。オーバーにいえば、岸に上がってもさらに遊べるほど余裕がありました。これは、「オーナーさまと海の歓びを結ぶ」という意味では、とても大きなメリットだと思います。
加えて、船体の設計でも、揺れを抑える工夫を随所に施しています。幅を広げて安定性を増していることをはじめとして、「ロングクルージングを快適に楽しむことができる船」という点を、徹底的に追求しています。

ハル新設計

マイナーチェンジでありながらほぼ新作。
性能的には生まれ変わった次元。

EXULT38 CONVERTIBLEは「外洋でのロングクルージングを快適に楽しむ」ことと、「スポーツフィッシャーマンとしての性能向上」が大きな命題でした。それを実現するために船型を考えています。具体的にいえば、波が高くても低速安定性を保つカタチを追求したわけです。変えているポイントは、以下の四つです。

  • ハルを長くして、物理的な縦揺れを抑制したこと
  • 船首側のVを深くして、波当たりを柔らかくしたこと
  • キール部分にウェーブスラクターブレイドのような摘み出しを入れて、波に落ちる時の衝撃を柔らかくしたこと
  • 通常のチャインの少し上にWチャインを織り込んで、低速の安定性を高めていること

もともとY-38 CONVERTIBLEは定評あるボートでしたから、その基本性能をベースにしてさらにグレードアップする発想で開発に取り組んだわけです。結果、開発としてはマイナーチェンジという位置づけでしたが、ハルに関してはほぼ新設計といっていいレベルまで作りこんでいます。いってみれば、基本性能上では、生まれ変わったといっていいと思っています。

居住性の向上

IPS採用で実現したもう一つのメリット。
居住快適性の向上を実現。

さらにもう一つ、変わっていること。それは、居住空間の拡大を実現していることです。これは、IPSシステムを採用することで可能になっています。
Y-38 CONVERTIBLEはインボード・シャフトドライブでしたが、IPSを採用することでスターンドライブに大きく変わっています。ミッドシップ式だったエンジンが後方に移動したことで、キャビン下にスペースを確保することが可能になったのです。それが、ジャイロシステム搭載を可能にしていますし、もう一部屋をプラスすることも可能にしています。
さらに、サロンの下にエンジンがなくなったことで、騒音振動も無くなっています。加えて、IPSシステムによってエンジン効率が高くなっているために、容量が少ないエンジンでも従来の性能を確保することが可能になっているため、エンジンそのものも静粛性を高めることになっています。いってみれば、基本性能の段階で、居住快適性を高めることに成功しているのです。
また、IPSシステム採用のメリットは、別の面でも出ています。通常、大型ボートは、耐食性の問題から係留保管に向かないのですが、IPSシステムを採用することでこの問題も解決することができています。これは、インボードの進化形として世界的に主流になっているポイントでもあります。

私たちは、EXULT38 CONVERTIBLEの開発に際して、「お客様のニーズがどう変化しているか」という点と「私たちが出せる開発シーズは何か」という点を、ベストバランスさせることを追求しました。そして、「今求められているボートを、いち早くお届けする」ために、Y-38 CONVERTIBLEをベースに開発を進めてきました。その意味でいえば、当初の開発目標をほぼ100点で実現できたのではないかと考えています。ぜひ一度、体感していただきたいと思います。

取材日:2014年8月20日