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底曳き・桁曳き漁

日本全国津々浦々で行われている沿岸漁業を漁法別にご紹介します。

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ナマコ桁曳き漁

北海道稚内

右舷からの網入れ。この作業の一連で、網の天地が逆になると岩で網が切られてしまうので、毎回確認しながら慎重に流し入れます

ホタテ、タコと同じく、北の湖の恵みにナマコが入っていることは一般的には知られていません。それは中華の高級食材として輸出されることがほとんどだからです。今回はこのナマコ漁が盛んな稚内を訪れました。

 稚内のナマコ漁は桁曳き網です。漁期は3月半ばから8月まで、日曜定休で、出漁の判断も風や波浪によって安全を優先し漁協によって決められます。稚内漁協に所属する約300の漁家のうちナマコ漁を営むのは45名です。
 稚内の足立一雄さん(62歳)もその一人。稚内港にもやわれた〈第百十八大聖丸〉(DX-51A-0C/MD750KUH)は平成19年2月に進水。ナマコ漁と9月のホッキ貝、タコ漁を営んでいます。春から夏に行われるナマコ漁は日の出の時間と集荷、出荷時間を考慮して、出港は午前4時、帰港は午後12時までと決められています。
 「一番近いところは0.3海里も離れていない野寒布沖かな、遠くても7海里で、40分もかからないよ。水深は40m前後。ナマコは岩場の付け根に生息しているから、網を岩に引っ掛けて切られることのないように、網を守る房を付けた面が下側、つまり海底に当たるように網を流すのさ」
 網が2.1m、チェーンが1.3m、八尺が2.8m。それを直径18mmのロープで曳きます。網は右舷から流し入れ、船尾に廻します。ロープの長さは100m前後。エンジンは1,000回転にして、3ノットの艇速です。
 「デリック、巻取りドラム、網の仕掛けなどを合わせると重さは300kgにもなるけれど、この船は安定しているし、一人での作業にはちょうどいい大きさだな」 網を入れ、流し、巻き取りドラムで船尾に寄せてから左舷に廻し引き揚げます。ナマコと雑多な収集物を選別し、網の上下が逆になっていないかを1回ごとに確認し、それらを繰り返し行います。1回の網入れで多いときで20kgのナマコを揚げます。
 「網は海岸線に沿って曳く“浜なり”。昨日行って獲れなかったところに、今日行ってみると獲れたりな。潮なのかなにか理由があるんだろうけれど、それが分からない。それが面白いところでもあるんだ」
 北の豊かな漁業は、海岸線1,500m沖からは共同漁業権の水域で、多くの漁船が海からの貴重な食糧源を獲りに集まります。「15年くらい前には600kgも獲ったこともあるけれど、ここ数年は100kg獲れればいいところだ」
 漁協前の岸壁に船を着け、ナマコの入ったバケツを手早く陸に上げながら眼を細めて話す足立さん。第百十八大聖丸は吹きすさぶ“たま”(北風)の中で、春の海明けの日を待ちます。

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網がすべてのナマコ漁。足立さんも入念に確認します

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舷から入れた網が船尾に廻ったらドラムのロープを出します。その長さは約100m。エンジンは1,000回転で艇速は3ノット前後です

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網を流している時間に、ナマコの選別と水洗いを行います

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稚内で水揚げされたナマコは中華料理の高級食材(干しナマコ)として中国に輸出されています

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船名の由来は「よその港で見た漁船の名前で、気に入っちゃって。ちょっと字を変えたけど」とのこと。あれこれと工夫しながらする漁業が大好きという船主の足立一雄さん。62歳

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「負荷のかかる漁だけれど、まったく問題無く働いてくれる。行き帰りも早いしな」と足立さんもその走行性能に太鼓判を押します

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