本文へ進みます
サイト内検索

船体や艤装

日本全国津々浦々で行われている沿岸漁業を漁法別にご紹介します。

MENU

『横揺れの問題はどう解決すればよいか?』

大漁ニュース 第18号掲載

 船の横揺れについての問題はその状況によって対策方法が異なります。

まず船の横揺れの状況を作り出すおもなものをいくつかあげてみますと

1)横揺れ周期が早いため、船が小刻みに揺れ乗っていて疲れる。
2)つねに海洗具が浸かるほど大きく傾き、波の中での横揺れ角度が大きい。
3)波の中でいつまでも横揺れして、収まらない。
4)横揺れスピードの変化が激しい。
5)横揺れ周期が早くはないが、傾き角度は大きく、また横揺れスピードも早い。

などが挙げられます。そしてその主な原因は下記のA,B,Cのように分類できます。

A)動揺周期が短いか、又は海の状況から波の周期と船の動揺周期が近似値である場合。
(波に同調してしまい、うなり現象を起こし動揺が大きくなる)

B)基本的に腰(復元力)が弱い船の場合。
(この場合は船を傾ける波の力が小さくても船は大きく傾いてしまう)

C)船型と重量配分について修正の必要のある場合。
(この場合は、一度船が傾くといつまでも揺れ続け、なかなか止まらない)

 横揺れの原因と状況がわかっただけですが、それではどうしたら、この横揺れを防ぐことができるかを考えてみましょう。
 最初にも述べたように、その対策方法は状況(症状)別に異なります。

 第一に動揺回転周期を変える方法としては、


a:GM(復元力)の指標を変える。
b:見せかけの慣性モーメントを大きくする。


があります。
 aのGMを変えるには、重量物の上下方向への移動とか。吃水面での船体幅を変更します。周期とGM、慣性モーメント、回転半径(環動半径)の関係は、


周期(S)=T、回転慣性モーメント(tm2)=I、回転半径(m)=r、排水量(t)=W
とすると、
T=2.0lr/√GM、I=Wr2 で表されます。


回転半径を変えるには、重量物の横方向への移動(実際には難しいことですが)や見せかけの回転慣性モーメントを変える方法があります。(船底にキール等をつけることで、周囲の水を動かし、回転慣性モーメントを増加させたと同じ効果が得られる)

 第二に復元力を強くする方法としては、第一のT(周期)を換える方法の中でGMを大きくする方向、すなわち重量物を下方に移動し、船体の水面幅を広げる方法があります。

 第三に横揺れの減少を早くする方法として、船底の形状を平面や凹状に近づける<図1>。もしくは船底にビルジキールをつけるとか<図2>アンチローリングタンクをつけるなどの方法が考えられます。アンチローリングタンクはタンク内の液面の移動周期と動揺周期を同一にすることで、波による船の横揺れが生じるとタンク内の液面が動かされる仕組みとなっていますが、そのタイミングがちょうど逆になるため、動揺の減り具合が大きくなることになります。

以上のように横揺れの問題を解決するには、

●動揺回転周期を変える
●腰(復元力)を強くする
●横揺れの減衰を早く行う


という三条件を検討して対策を講じなければいけません。

理論的には複雑で難しい問題を含んでおりますが、漁業家のみなさんの揺れに対する希望も漁種や感じ方の違いによってさまざま有り、各艇を分析してその改善したい内容が明確になれば、皆さんの希望に添うような対策が可能となります。

図1

イメージ

図2

イメージ

※「設計室だより」は大漁ニュース掲載号の原稿を掲載している為、内容がお客様の船に合致しない場合がございます。漁船、エンジン、艤装品の詳細については必ず最寄りの販売店にてご確認をお願いします。

ページ
先頭へ