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日本全国津々浦々で行われている沿岸漁業を漁法別にご紹介します。

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日本のクリブネ・その(1)

大漁ニュース 第94号掲載

 さて、前回までは船のこと、エンジンのことなどをお話ししてきましたが、これから数回にわたって浜のみなさんからお聞きした日本の船のことについて、ご紹介しましょう。

 従来の木造和船の構造を大きく分類すると「いかだ造り」、「板船造り」、「くりぶね造り」、「その他」となります。今回はこの中でも特に目立つ「くりぶね(刳り船)造り」について見てみましょう。
 クリブネは大きな一材をくり抜いたものから、船底部分をクリブネとして棚材を接合したものまでいろいろあります。また、その推進方法も、櫓、カイ、帆などから次第に動力化が進み、船外機や船内機が搭載されています。
 クリブネの分布は、昔は木材が安価で巨木が入手容易な地域で利用されていたようで、現在も数多くのクリブネが残っている日本海側だけではなく、太平洋側でも数多く出土されていることから、以前は全国的に分布していたと考えられます。また海外ではフィリピンのバンカ・ボートをはじめとして、丸木船をカイで漕いだり、セイリングしている様子を見ることができます。

<図>

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 北海道と青森のクリブネは、ムダマ造りといった構造や、クルマガイによる操船方法が同じでした。青森での使用方法は不明ですが、北海道では磯漁を中心に使用されています。
 磯船はコンブをどの程度積むのかによって船の幅が広くなったり、狭くなったりします。コンブの需要が高まるにつれて船の幅も広くなり、積載量の増加に対応するように変化しています。
 この磯船は、浜揚げができるように船尾部分が反り上がっていますし、船首部分は船のバランスから見ても大きな乾舷が確保できるように高くなっています。最初、これは単に浜揚げ条件の形状だと思い込んでいましたが、操業時の性能にも大きな影響を与えていることが、FRP船の磯船を開発し、性能を改善していく中で分かってきました。
 船尾の反りの大きさは、船をクルマガイで操船する時の切り回し性能に影響し、操船時の水線長が短くなり、旋回性能を上げています。さらに操船時の風に対する挙動は、釣り船のように風に対して立てる必要よりも風と平行して流れることが大切になります。風上に立てることは、クルマガイで船が容易に旋回するので、それほど重要視されません。
 風に対して平行に流れるためには、操業時の姿勢、喫水で横から見た船の水面下と水面上の、それぞれの面積中心の位置ができるだけ前後方向にずれない方が良く、それが完全に一致していれば風を横から受けた時でも船は平行に風下に流れていきます。
 この水面下と水面上の面積の中心の位置を一致させるために、船首と船尾の反り、反り具合、高さが関連しあっていたのです。現在ではコンピューターでシミュレーションを行い、短時間で船の形状を決定することができますが、その昔ひとつひとつ試行錯誤で作られたクリブネには、多くの時間が費やされていることがわかります。
 私たちも北海道の磯船開発では何回も現地に足を運び、皆さんの意見に従って型を修正することで、船を完成することができました。木材とFRPという材質こそ異なるものの、設計の根底には、北海道で培われた磯船の歴史と技術が受け継がれています。
 今回は、北海道のクリブネを中心にお伝えしましたが、京都のトモブネ、沖縄のサバニといった地区のクリブネについても次回以降ご紹介したいと思います。


※「設計室だより」は大漁ニュース掲載号の原稿を掲載している為、内容がお客様の船に合致しない場合がございます。漁船、エンジン、艤装品の詳細については必ず最寄りの販売店にてご確認をお願いします。

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