イラスト・高橋唯美
巻頭エッセイ/『心に響く、海』『海を眺めながら仕事これが最大の贅沢』
  海洋ジャーナリスト・大野晴一郎
船厨ダッチオーブンの活躍の場を広げる
キャビンの書棚数奇に満ちた女海賊たちの生き様「女海賊大全」
ボーティングチップスNo Wake!
YAMAHA NEWS パーソナライズホームページのサービス開始/
ヤマハボートの2004年ニューモデル登場/
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海洋ジャーナリスト大野晴一郎
 僕の場合、仕事は海に向かい合う事がとても多い。
 かつて出版社に勤めていた頃は、印刷会社や写真のプロラボ(現像所)とのしがらみの点では、便利この上ない環境に、都内の勤め先に不満は無かった。もちろん仕事仲間と顔を突き合わせてする打ち合わせにも好都合だった。
 取材で各地のマリーナや港を飛び回った後、直行で都内の会社に戻って、一気に記事を作り上げ、印刷会社へ入稿。これが当たり前の生活ではあった。頭の中には、つい数時間前までいた海辺の風景が未だ浮かび、手元の取材メモと2時間で現像が上がってくるフィルムを睨み選ぶ。
 数年前、遠方取材が立て続けに押し寄せた。アメリカを3度往復した直後に、イタリア、オーストラリア、そして沖縄と走り回る事になった。3ヶ月間で日本に居られたのは僅かに15日間。それぞれの取材地は、時差の点で一番きつい太平洋越えを繰り返すにしても、身体に鞭を打つに充分過ぎる魅力があった。
 問題は締め切りの時間。現地で仕事を完結しないと、手掛けていた雑誌は出ない事になる。当然、パソコンとデジタルカメラが活躍するわけだが、トラブル対応で「何でも2セット」主義の僕としては、重い機材を担いでの遠征となった。昔はアナログの頑丈なカメラとメモ用紙だけで済んだ取材が、逆に今は荷物が増えている。
 
 1980年代、南の島に凝っていた僕は、何回となくグアム以東のポナペやコスラエ、マジュロに通った。一応は東京とのしがらみを断ち切ったつもりで、グアムからボーイング727の半カーゴ便に乗り込む。でも頭の中にはどうしても「原稿締めきり」の一言が残っていて、同行した仕事兼遊び仲間からは、「東京を持ってくるな」とよく非難された。その通りだった。
 ポナペでは、深いマングローブの間を行くクルーズが気に入っていた。ナンマドールという遺跡を抜け、エイの産卵海域、さらにジョイアイランドというリーフ内の無人島を目指す。ジョイアイランドは日本人の鈴木一族が所有していて、何度となく島のバンガローに滞在させてもらった。夕方になると目の前に沈む南海の巨大な夕日を眺めながらバンガローの軒下で原稿を書きはじめる。ただし灯りは乏しいので日没と共に原稿書きは終了。すぐにビールタイムとなる。短時間でもペンの進みは速くて、「現場完結」的な仕事のメリットに驚きもした。ただ写真家としても活動していた僕としては、当時まだアナログ全盛時代で、帰国後の現像が実は待ち遠しかった。

 アメリカ、イタリア、オーストラリア、沖縄とデジタル機材を担いでの遠征は、それぞれの場所でマリーナを見下ろすホテルや、リゾート地での滞在が続いて、ポナペで経験してきた現場完結的仕事が進んだことは言うまでもない。
 リアルタイムでの仕事の進め方は作業方法としてはメリットは大きい。でも気が付いた点がひとつ。それは精神的には自然と向き合って日常の仕事をすることの効果が絶大であるということだ。いつでも豊かな自然を眺めながら仕事をする。そのためにその環境を手に入れる。これが僕にとって今の時代の最大の贅沢だと思っている。かつて取材先からトンボ帰りして、都内で作り上げた原稿。そこにはどうしても都会の香りが、知らないうちについてしまっているものだ。
大野晴一郎●おおのせいいちろう

1956年、東京生まれ。海洋ジャーナリスト。写真家。海洋専門雑誌の編集者、編集長を20年超。現在ジャーナリスト集団「フォレスタ」主宰。海を中心とした「自然」をテーマにフォトジャーナリストとして活動中。



<蛸の炊き込みご飯>
(4~5人分)

●材料:生たこ(小1匹※蛸のサイズによって適当に)、米(4カップ)、水(3・1/4カップ)、酒(大さじ3)、塩(小さじ1)、醤油(小さじ1)、みりん(大さじ1) ※醤油、みりんはお好みで。その他油揚げ、ゴボウ、ニンジンなどを加えてもOK。蛸の旨味だけでも充分だが。

1)米は研いで1時間ほど水に浸しておく。
2)手のひらいっぱいの塩で蛸を十分に揉み、ぬめりを取り落とし、
水洗いする。内蔵は胴体をひっくり返して抜き取る。
3)ダッチオーブンに研いだ米、調味料、ぶつ切りにした蛸の足を入れる
4)蓋をして火にかける。最初は中火で。
5)沸騰して蒸気が勢いよく吹き始めたら弱火にして約15分炊く。
6)最後に強火にして約1分。火を止めた後、約10分間、蒸らしてできあがり。


 数年ほど前からキャンプ場などでダッチオーブンをよく見かけるようになった。西部劇などに良く出てくるし、「大草原の小さな家」ではお母さんのキャロラインがこれで良く料理をしていた。鋳鉄製の鍋で、炭火の上にどかっと置いて使われたりとヘビーデューティなアウトドアの調理器具として人気だ。がっしりと重く、煮る、焼く、蒸す、なんでもできる。蓄熱率、熱伝導性が抜群、密閉性にも優れているので、素材のうまみを驚くほど引き出す。「魔法の鍋」などと形容されるが、一度使ってみるとそれも納得なのだ。鍋そのものへの愛着も手伝って料理が楽しくなるし、食事をファーストフードやそこいらで買った弁当で済ませるのが惜しくなる。食卓を劇的に変えてしまう、その意味でも「魔法の鍋」なのだ。
 ダッチオーブンの中で鍋の底に足のついたタイプは「キャンプ」と呼ばれる。これは蓋の上に炭火を置いたりできて料理の幅が広がる。一方、「キッチン」は、足がついていないタイプ。しかしこれならば、ボートのギャレーに備え付けの電磁調理器でも使える。ガスバーナー等でも使いやすい。家庭のキッチンでも活躍するのでお勧めである。海辺で使う際の注意点といえば「錆」だろうか。ボートに置きっぱなしは良くない。十分に手入れをして、毎回持ち帰りたい。
 ソルティライフでダッチオーブンをご紹介できるとあって、今回は数あるシーフード料理の中から「蛸の炊き込みご飯」を選んだ。要するに「蛸飯」である。蛸は釣り方にしても道具にしても、ザリガニ釣り感覚の簡単さがあり、仲間同士、家族で楽しめるゲームフィッシュ(?)だし、料理そのものも簡単かつ豪快。また蛸の素晴らしい風味を鍋に閉じこめることができるので、ダッチオーブンにふさわしい料理だと思う。釣れなければ港の近くの魚屋さんで新鮮な活蛸を買えばいい。
 舞台裏の話で恐縮だが、今回はネットの通販で漁師さんから捕れたての蛸をクール便で送ってもらった。世の中便利になったものである。(滝学)




「女海賊大全」
 編著者/ジョー・スタンリー
 訳者/竹内和世
 発行/東洋書林
 定価:¥4,500 (税別)
 カリブ海の地図を見ていると、「ピーターパン」のフック船長が、海の荒くれを率いて活躍したシーンが思い浮かぶ。ウォルト・ディズニーの描く絶海の孤島。あくまでも青い空と海、白い砂浜、緑したたる椰子の葉。巨万の財宝を積んで沈んだ帆船、埋められた財宝と骸骨。ファンタジーに登場する海賊は、少年少女にとってどきどきするような魅力あふれる脇役だった。
 すれっからしの大人になってもその余韻は残っていて、「海賊」とタイトルにある本にはつい手がでてしまう。ましてや「女海賊大全」ときては。このタイトルには例によって男の想像がつくりあげた妖しい倒錯の雰囲気がある。男装の女海賊が、セクシーな魅力を振りまきながら、むくつけき海の男達と共に掠奪にあけくれるというハリウッド製イメージ。しかし本書では4人の女性作家が、史実をたんねんに読み解き、男の想像の産物であるイメージとはかけ離れた女海賊の真実を追求する。
 歴史に登場する海賊たちは、そのほとんどが冷酷無情な掠奪者だ。スペインの未開地への冷酷、非情な掠奪、その富を狙ったイギリスやフランスの、国の事業としての海賊行為。食い詰め者が徒党をくんでの私掠船。ここに登場する女海賊も、伝説に彩られているとはいうものの、時には男以上に残忍な海の上の悪である。「偉大なる略奪者にして最高司令官、そして海における窃盗と殺人の指導者」と言われたアイルランドのグレース・オマリーをはじめとする数奇に満ちた女海賊たちの生き様。秋の夜長、海賊ご愛飲のラム酒を飲みながら、悪の華の不思議な魅力に触れてみよう。(肥田康一)





 ある運河沿いのマリーナの桟橋で後かたづけをしていると、川上のマリーナを目指し、勢いよく沖を通り過ぎるボートがあった。やれやれ。桟橋にいたオーナーは身を挺してボートのガンネルを掴み、船が桟橋に叩きつけられるのを防ぐ。一緒にいた子供は揺れる桟橋で尻餅をつき、ボートのデッキにいた奥方はあわてて何か掴むものを探した。ハーバーマスターは沖ゆく船を怒鳴りつける。悲しくも、毎度おなじみの光景である。係留していたのがボートだけだからまだ良い。ヨットの場合、隣のマスト同士がたたき合い、絡まってしまったり舵が壊れたりすることもある。危険きわまりない。
 ホームポートへ急ぐ気持ちはわからないでもない。しかし、運河沿いのマリーナの宿命であるから、河口からホームポートまでの所要時間はデッドスローであることを頭に入れて計算して欲しい。引き波を立てることがどんなに他人に迷惑をかけ、悲しい気持ちにさせ、危険な目に遭わせているかを、少しばかりの想像力を用いて考えて欲しい。人は元来、自分勝手な生き物だが、それ故に、ルールやマナーというものを生みだし、互いに気持ちよく生きていけるよう工夫をする。
 ボート免許の講習内容をベテランほど軽視する傾向はないだろうか。免許制度には意味がある。教わったことを守ることで、安全が確保でき、事故やトラブルの発生率が下がる。それらを忠実に守ることは格好悪いことでも何でもないし、キャプテンとしての責務であり、むしろ尊敬に値する。
 「港内徐行」と防波堤にあるのをよく見かけるが、徐行とは舵の効く最低限のスピードと考えればよい。港内、または運河などで岸に係留船があるときは一旦ボートを停止させ、そこから引き波を立てないように、さらに舵が効く最低限のスピードで航行する。徐行とは2~3ノットであることに気づくはずだ。
 そんなことは当たり前、言われるまでもない、というボーターの貴方は素晴らしい。(編集部)



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マリン製品をご愛用の貴方に貴方専用のホームページをご用意しました。
貴方の「海」に必要な情報・サービスの提供と便利な機能でお楽しみください。ヤマハ製品に限らずご利用いただけます。
ヤマハボート'04ニューモデル遂に登場!
04年ニューモデルが発表されました。お近くの新艇発表会で是非体感してください。
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【編集航記】
人が何かをやっていて幸せそうにしていると、それほど楽しいのならと自分もやってみる。ヨットもそうだったし、釣りもそうだ。いまはある釣り人から教えてもらったダッチオーブンに夢中だ。野外だけでなくキッチンでも大活躍。SALTYというにはいささか無理のある調理器具だが、あまりに美味く、簡単に、楽しく作れてしまうので外食が減った。今回ご紹介した鮹飯はスタッフから職権乱用だと罵られながら作り、舌鼓を打ったわけだが、絶品であった。是非お試しを。(編集部・ま)


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