イラスト・高橋唯美
感動の海 「海はこんな色にもなるのか」
キャビンの棚 海に心奪われる幸福 「海辺 生命のふるさと」
船厨 潮干狩りの成果を頂戴する「アサリのリゾット」
海の博物誌 自然-2・イルカの人情」
YAMAHA NEWS ヤマハ「ラクシア」/「BaySports16」新発売
5月の壁紙 『Salty Life』読者限定壁紙カレンダー

 夜中にカンクンのホテルにチェックインし、翌日、部屋のカーテンを開けたら、目の前にカリブ海が見えた。隣にいたカメラマンと二人で「うぉ~っ!」と喚き、「すっげえ!」と叫んで、ハイタッチを交わした。初めて見るカリブの海が与えた衝撃は、それほど凄かった。
 モルディブや沖縄など透明度の高い海の美しさは、それはそれで感動だが、カンクンの海はまた違った美しさを放っていた。文字通りのミント・ブルー。絵に描いたような「青」い海がそこにあった。まるで偏光フィルターをかけて撮影したポジフィルムを見るような海を、肉眼で見ることができた。
 カンクンは、この海と白い砂浜、洗練されたホテルが建ち並ぶ一大カリビアン・リゾートだが、つい30年ほど前までは人口120人ほどの漁村であった。現在は20万人ほどが暮らしているというから、その急変ぶりには驚くばかりである。
 この文句なしの素晴らしいリゾートで、撮影の仕事を急ピッチで済ませ、半日だけ釣りをすることができた。
 ハワイやフロリダのような完璧なスポーツフィッシャーマンは少ないが、それでも毎日海に出ているベテランのキャプテンとメイトが案内役だ。期待しよう。
 マングローブに囲まれた水路を通ってラグーンから沖を目指す。ホテルから見たあの海を突き進み、さらに沖を目指すと急に海の色が紺碧へと変わり、大型回遊魚の気配を感じさせる。
 タックルは決して上等とはいえない。ルアーは使用せずにデッドベイトを選ぶ。ビーズを通したリーダーにサヨリのような魚の塩漬けを付けて流す。この日は本当に時間が無く、坊主を覚悟していた。
 メキシコ滞在中にすっかり体に馴染んでしまったサルサのリズムに心を躍らせ、キンキンに冷えたコロナビールを喉に流し込む。こちとら坊主の時の楽しみ方も心得ているつもりだ。が、カリブの太陽と風に身も心もとろけそうになったころ、きた。
 メーターオーバーのシイラを手始めに、まるまる太ったカツオなどが大当たり。そして白カジキ。小型だったが、いとも簡単にベイトにアタックしてきた。
 久しぶりのカジキにキャプテンもメイトも大張り切り。実は、相手というとお見せするのもはばかれるような新芽の小型カジキだったが、向こうはサービスだから大いにこちらを盛り上げてくれる。デッキの上はみんなノリノリだ。
 何という楽しい釣り! 釣りのスタイルとか、獲物がどうだったというよりも、陳腐な表現との指摘を覚悟でいえば、すべてにおいて「ラテン」なんだな。このとき、共にカリブの海に感動したカメラマンは昨年、天国へ旅立ったが、彼は一番、その「雰囲気」を気に入っていた。
 この釣りで手に入れたカツオを持ち帰って和食レストランでさばいてもらった。そのときの味を越えるカツオの刺身には、未だ出会っていない。

田尻 鉄男●たじり てつお
外洋帆走部に所属しクルージングに明け暮れた5年間の大学生活、1年間の業界紙記者生活を経て、88年、某プロダクションに入社。以来、日本のボーティングシーン、また沿岸漁業の現場を取材してきた。1963年、東京生まれ。



 『海辺は、寄せては返す波のようにたちもどる私たちを魅了する。そこは、私たちの遠い祖先の誕生した場所なのである。潮の干満と波が回帰するリズムと、波打ち際のさまざまな生物には、動きと変化、そして美しさがあふれている。海辺にはまた、そこに秘められた意味と重要性がもたらす、より深い魅力が存在している。』

 海辺は生命の不思議と出会うことのできる場所だった。夏休みに出かけた磯は子供にとって遊園地以上のファンタジーを体験させてくれた。広大な海を住処とする魚を目の前で見るということは、たとえそれがどんな小さな雑魚であっても、感動せずにはいられなかった。クワガタムシやカブトムシと違ったのは、海辺の生物はあくまでも「あちら側の住人」であって、彼らの暮らしぶりを想像することすら、困難であったことだ。
 大人になった今でも海辺には魅了される。つい先日も座間味の美しいビーチの波打ち際に足を浸して遊んでいたら、1センチほどの小魚の大群が、キラキラとその体を輝かせながらものすごい勢いで足元を泳いでいった。珊瑚礁に潜む色とりどりの魚ではなく、何の変哲もない、それこそ水と同化しそうな透明色に近い小魚のその群れが、なぜか、愛おしかった。膝にも満たない浅い海辺で遭遇した生命に、心動かされるのである。そして、そのとき、レイチェル・カーソンの「海辺」を思い出した。
 1907年生まれのレイチェル・カーソンはいち早く農薬の使用に警鐘を鳴らした「沈黙の春」を1962年に出版、一世を風靡したアメリカの生物学者である。本書「海辺」は彼女の三作目で、海辺の生物の入門書として広く親しまれてきた名著である。
 カーソンの著書の根底に貫かれているのは「生命への畏敬」である。そこに女性らしい繊細さ、さらに元々作家志望だったという筆致が加わり、科学書を越えた「文学」として完成度を高めている。まるで詩集を読んだかのような読後感が、なんとも心地よいのだ。
「海辺 生命のふるさと」
「海辺 生命のふるさと」
レイチェル・カーソン/著
上遠恵子/訳
平河出版社/刊
定価:¥2415



 ボートで潮干狩りに出かけたと行って、友人がしこたまアサリをくれた。東京湾でもボートで行ける穴場がそこそこあって、潮時と休みが合えば、ちょくちょく出かけるという。
 春の大潮は潮干狩りの最盛期。たとえば千葉・木更津周辺の遠浅の海岸は、有料の潮干狩り場なるものがあって、シーズンになると観光バスが乗り付けて、みんなで貝掘りを楽しんでいる。前もって漁協が貝を蒔いておいてくれるので、取りっぱぐれはまずない。が、やはり潮干狩りはボートで行きたいもの。
 今では各々、好きな日を選んで出かけているが、本来はイベントとして旧暦の3月3日に行うところが多かった。農村、漁村の村人たちは、旧暦3月3日になると重箱にごちそうを詰め、総出で海辺に出かけ、ちょっとした宴会を開きながら貝を掘ったらしい。また、その日は沖合に船を出して遊び暮らしていたともいう。なんとも楽しげな習慣ではないか。
 さあ、潮干狩りに行こう。必要な道具はそう多くはない。ウェアはウェダーブーツがあると便利。そして熊手。掘った貝を入れるためのバケツや網。少々腰が痛くなるのはご愛敬。アサリをたっぷり捕ったら、真水で洗い、保冷剤を入れたクーラーボックスで持ち帰る。真水で洗うのは衛生上の問題から。真水につけておくと死んでしまうので洗うだけにすること。帰ってから食塩水につければアサリは砂を吐き出してくれる。
 アサリの酒蒸し、みそ汁、またボンゴレソースを作ってパスタやリゾットにするのもよし。季節を味わいたい。
「アサリのリゾット」作り方(4人分)
●ボンゴレソースを作る
材料:白ワイン200CC/殻付きアサリ400g/にんにく1かけ/オリーブオイル適量/トマトソース缶(400cc)
1)あさりは濃い塩水で砂を吐かせ、洗った後ざるに空ける。2)熱した鍋にオリーブオイルを適量入れ、スライスしたニンニクをきつね色になるまで炒める。そこにアサリを入れ、白ワインを入れ蓋をして2分ほど蒸す。3)アサリと鍋に残ったスープ(後で利用)を取り出しそれぞれ別々に容器に分ける。4)トマトソース缶を開け、鍋に入れて温めた後、取り分けておいたアサリを戻して混ぜ合わせソースを完成させる。
●リゾットを作る
材料:先に作ったボンゴレソース600cc/米2合/先に作ったアサリのスープ60cc/水700cc/ピザ用チーズ60g/ローリエ1枚/パルメザンチーズ適量/オリーブオイル適量/パセリ適量
1)熱した大きめの平鍋やフライパンにオリーブオイルをひき、研いでざるに空けておいた米とローリエを炒める。オイルが米に馴染んできたらアサリのスープと水を加え、さらに沸騰したらボンゴレソースを加える。2)沸々としてきたら弱火にし、蓋をせずにしばらく煮て、スープが無くなりそうになったら火を止め蓋をして10分ほど蒸す。3)ピザ用チーズを入れてもう一度蓋をし、チーズが溶けたらかき混ぜる。4)パルメザンチーズ、パセリをふりかけてできあがり。 



 海の人気者・イルカは頭が良く人なつっこいため、船乗りとイルカの間には友情や信頼関係ができた、といった伝説が多い。昔の話はなかなか確かめようがないが、近年、裏付けになりそうなことが続いて起きている。
 1988年11月、インドネシアのタンカーがジャワ島沖で高波を受けて転覆。14人の乗組員のうち2人が救命胴衣を頼りに漂流していると、イルカが周りを囲んでつっついたり、押したりしながら、近くの島まで案内したという。
 また、同じインドネシアのスマトラ島では、時化で遭難した漁師がサメに囲まれたのをイルカが助けているが、イルカはサメを追い払った後、やはり漁師を島まで送り届けたという。
 もう一つは、これもつい最近のこと、オーストラリアのシドニー近くでサーフィンをしていた少年が鮫に襲われたが、イルカの群れがサメを追い払ってくれたそうだ。
 こんな話はごまんとあるようだが、やはり日頃から、イルカとは仲良くしておいた方が良さそうだ。




ヤマハニューモデルが2機種を新発売
ヤマハではボートショーで参考出品したボート2モデルの商品化を進め、このほど「LUXAIR」および「BaySports16」として新発売しました。



今月の壁紙
『SALTY LIFE』読者限定
5月の壁紙カレンダーはこちらからダウンロードできます。


バックナンバー
『SALTY LIFE』のバックナンバーはこちらからご覧になれます。


【編集航記】
手前味噌な話ですが、毎回、唯美さんのタイトルカットをとても楽しみにしています。前号のイラストのテーマは「花見」でしたが、今年はやや花が咲くのが早かったようで、関東以西ではあのイラストを見た後では花見は間に合わなかったかもしれません。今月は進水式をテーマに選びました。これから手に入れるマイボートに夢をはせるか、現在のパートナーとの様々な思い出を振り返るのか。皆さんは何を思いましたか。(編集部・ま)

■ 『SALTY LIFE 』について
 メールマガジン配信サービスにご登録いただいているお客様に定期的に配信するマリン情報マガジンです。

■ お問い合わせに関するご案内
 『SALTY LIFE』は送信専用のアドレスより配信しております。
「配信の停止」についてはhttps://www2.yamaha-motor.co.jp/Mail/Saltylife/をご参照下さい。

『SALTY LIFE』
〒438-0016 静岡県磐田市岩井2000-1
発行:ヤマハ発動機販売株式会社 マリン営業部


Copyright(C) 2004 Yamaha Motor CO.,LTD. All rights reserved.
掲載文章および写真の無断転載を禁じます。