イラスト・高橋唯美
感動の海 モルディヴの風
キャビンの棚 冬の海で聞く「SEASCAPE」
船厨 韓流ブームにノってみる。
冬の港(ハーバー)で「海鮮チゲ」
海の博物誌 “海里”は地球の寸法を基にした単位
YAMAHA NEWS ヤマハのクリスマスプレゼント/マリーナ百景更新/第16回水辺の風景画コンテスト入選作品発表
12月の壁紙 『Salty Life』読者限定壁紙カレンダー

 初めてこのインド洋の楽園に来たのは6月で、雨期だった。空には幾分、霞がかかり、よく見るモルディブの写真の抜けるような青空に比べると、その美しさには物足りなさを覚えた。それでもキャプテン、クルー、コック付きのクルーザーを仲間とチャーターし、1泊2日のサファリ・フィッシングに出かけ、GTとの格闘を存分に楽しんだ。そして、その釣りの思い出の他、風との戯れを、よく思い出す。
 もしもモルディブに行くことができたら、ドーニにぜひ乗ってみたいと思っていたのだが、滞在したリゾートの船着き場に、帆を下ろしたドーニが舫われていて、早速、セーリングに連れ出してもらった。
 ドーニは、古くからモルディブの人々の足として活躍してきたこの地方独特のキール船だ。ヤシ材で作られた10メートルから13メートルほどの船で、低いマストに三角形の帆が張られている。
 モルディブ共和国は南北820キロ、東西130キロの環礁群にある二千もの島々からなる国家だが、人の住む島はこのうち二百ほどで、一つ一つの島は驚くほど小さい。一般的に住民同士がお互いに島と島を行き来することは希だというが、それでも人々にとって、ドーニが重要な交通機関であることには変わりない。文字通りドーニは人々の足といえる。トランスポーテーションとしての役割だけでなく、漁船や観光用のダイビングボートなどにもドーニは現役として活躍中だが、純粋に風の力だけで走っているものは、今は、皆無に等しい。たまに白いセールを上げたドーニを見かけても沖ゆくスピードが速い。ほとんどが機帆走で走っているらしい。

 ついさっきまで笑みを浮かべながら操船していた船長の表情がほんの少し険しくなる。セールを操るクルーも同様だ。少しばかり風が強くなってきたようだ。ちょっとカメラが心配だったけれど、こちらのノンビリとした気分は変わらない。スキッパーとクルーを務める男は、もちろん現地人で、一人はパレオをスカートのように腰に巻きつけている。これだけが理由ではないが、風の表情や海の美しさ、そして彼らの姿のすべてがどことなく優しげで、緊張とは無縁になってしまう。
 タックするごとに古い帆がバタバタと騒々しい音をたてて位置を入れ替える。岸に向かってクローズド(といってもアビームに近い)で走り始めると、身体に心地よいスプレーがバウから飛び込んできた。モーターボートの機動力も捨てがたいが、独特の爽快感を味わうことのできる、この風で走る乗物は、モルディブの海にとても似合う。


田尻 鉄男●たじり てつお
外洋帆走部に所属しクルージングに明け暮れたの大学生活、1年間の業界紙記者生活を経て、88年、某プロダクションに入社。以来、日本のボーティングシーン、また沿岸漁業の現場を取材してきた。1963年、東京生まれ。



 ジョニー・マンデルは、元々ジャズのトランペット、トロンボーン奏者であったが、映画「いそしぎ」の主題歌「THE SHADOW OF YOUR SMILE」の作曲家としての方が有名だろうか。そんなマンデルの最大の功労は、ビル・エヴァンスが残した一枚のアルバム「I WILL SAY GOODBYE」の3曲目に収められた「SEASCAPE」を書いたことだと、勝手に思っている。
 多くの人が海にある役割を望むが、この曲を弾きながら、ビル・エヴァンスは何を海に求めただろう。
 青い空、真っ白な入道雲、輝く太陽、空飛ぶ鳥、沖を通るヨット、白いウェーキを描くボート、、、こうした海のイメージはこの曲からは思い浮かばない。
 誰もいない海岸にたたずむ。北から運ばれる冷たい風が、顔に当たる。鉛色の空から時折陽が差すものの、その光は決して暖かくはならず、むしろ、心細さを増幅させるだけだ。
 けれども、そうした時間の連続の中から、海は人に語りかける。海とはそんな存在だ。表面的な美しさを越えた神秘性や人の心を包み込むような神々しさ、そんな海の深い存在感を、この曲を海で聞くと得ることができる。
「I WILL SAY GOODBYE」
 BILL EVANS TRIO

 Bill Evans, piano
 Eddie Gomez, bass
 Elliot Zigmund, drums



「海鮮チゲの作り方」

1)昆布と煮干しで出汁をとる。
2)先に作っただし汁を沸かし、酒、キムチの汁、コチジャン、韓国唐辛子、赤味噌、たかのつめを入れ、味を見ながら量を調整。好みでゴマやニンニクを加えても良い。
3)以上スープを作るのが面倒なら、市販のチゲの元を買えばよい。○ラン○ンなどは海鮮用もあってとっても美味い。
4)後は普通の鍋と同じ。白身魚、蛤、牡蠣、イカ、蟹、エビなど。一口サイズのイイダコは見た目も味もGOOD。野菜は白菜、キムチ、ニラ、長ネギ、シメジ、春菊など。 

以上、分量は適当。
 冬の料理の代表格といえば「鍋」があげられるだろう。何のといっても、簡単で美味い。鍋を作ってまずかったら、料理のセンスを疑うべきだ。それほど簡単。日本酒、ビール、焼酎にもよく合い、気の合った仲間とキャビンで鍋を囲めば、心も体も温まる。
 日本では古くから鍋を火にかけながら食事をする習慣があったようだが、文献の上では江戸の後期、天明の時代から見られるようになったといい、すき焼きや牛鍋も同じく江戸の終わり頃に登場している。
 さて、巷では「韓流ブーム」なのだとか。急に「美味い焼き肉が食べたいなあ」ってことになって、ソウルに旅したのが、昨年末。今年も暮れになったら行ってみようと思い立ち、航空便の予約をしようとしたら、ほぼ満席で諦めた。今思えばソウルの露店で、眼鏡をかけた俳優のカレンダーをよく見かけたが、あのときは、日本がこんなことになるとは夢にも思っていなかった。
 韓国でも鍋料理は多く、また美味い。キムチチゲ、トブチゲ、サムゲタン、などは特に日本でも人気? ちなみにチゲとは鍋のこと。だからチゲ鍋という使い方は正しくない。チゲを囲めば大抵誰かしらの言う蘊蓄だから今さら語るまでもないか。
 ここは、一つ潮気を売りにしたコラムだから、やはり海鮮鍋(ヘムルタン)をご紹介しようか。白身の魚や蟹、タコ、イカ、蛤、牡蠣を白菜キムチやニラと火にかけた。マシイッソヨ!



 陸上で一般に使われている距離の単位・メートルは、“光が真空中で299,792,458分の1秒間に伝わる距離”とされている。その前はクリプトン86原子から出る光の波長だった。そのまたは前は国際メートル原器というものがあった。さらにその前は地球の子午線(北極と南極を結ぶ線)の長さを基にしていた。
 海上の距離は今でも海里を使用している。領海200海里などと言うときの海里がそれで、緯度1分にあたる地球表面の距離である。1海里は緯度の60分の1の長さにあたり、1海里=約1,852メートルと決めている。
 また、スピードを表わすときはノットを使う。1ノットは1時間に1海里進む速さ。国際的な単位がメートルに統一されている今でも海里やノットを使うのは、海上の位置を“統計160度、北緯45度”のように緯度と経度で表わすためである。たとえば速さ10ノットの船が6時間真北に走ると、緯度1度移動したことになり、わかりやすい。
 なお、海里は英語でノーティカルマイル、あるいはシーマイルであるが、陸上のマイル(1.6キロメートル)とは異なるのでご注意を。




ヤマハのクリスマスプレゼント
感謝の気持ちを込めてヤマハからみなさまにクリスマスプレゼントをご用意しました。 ジグソーパズルに挑戦して、完成させた方の中から抽選でボート免許受講券やスクーターなど豪華賞品を差し上げます。振るってご応募ください。

マリーナ百景更新
全国のマリーナをご紹介するマリーナ百景。今回は三河湾の「ラグナマリーナ」をご紹介しています。

第16回水辺の風景画コンテスト入選作品発表
JMPF主催「水辺の風景画コンテスト」の審査会が終了しました。入選作品はこちらからご覧になれます。子供たちの優しい感性に触れてください。


今月の壁紙
『SALTY LIFE』読者限定
12月の壁紙カレンダーはこちらからダウンロードできます。


バックナンバー
『SALTY LIFE』のバックナンバーはこちらからご覧になれます。


【編集航記】
11月最後の日に、クリスマスに華やぐ街を歩いたら、見当違いの騒ぎに少々嫌気がさした。
今回、「キャビンの棚」でご紹介した「I WILL SAY GOODBYE」に収められた「SEASCAPE」は、今年の春に亡くなった私の尊敬するグラフィックデザイナーが好きで、仕事中に水割りを飲りながらよくかけていた曲だ。ビル・エヴァンスのピアノと同じく、彼の仕事は耽美主義的だったことを思い出す。
今年も残り1ヶ月、忙しいけれど、あと一回は海に行きたい。「SEASCAPE」をかけながら、海と船がつくる時間の美しさに思いっきり浸ってやろう。(ま)

■ 『SALTY LIFE 』について
 メールマガジン配信サービスにご登録いただいているお客様に定期的に配信するマリン情報マガジンです。

■ お問い合わせに関するご案内
 『SALTY LIFE』は送信専用のアドレスより配信しております。
「配信の停止」についてはhttps://www2.yamaha-motor.co.jp/Mail/Saltylife/をご参照下さい。

『SALTY LIFE』
〒438-0016 静岡県磐田市岩井2000-1
発行:ヤマハ発動機販売株式会社


Copyright(C) 2004 Yamaha Motor CO.,LTD. All rights reserved.
掲載文章および写真の無断転載を禁じます。