イラスト・高橋唯美


感動の海 モルディブの月と星、そして魚の思い出
キャビンの棚 海を巡る民俗学から、人の魂と海との接点を探る
「渚の思想」
船厨 キャビンでのんびり正月気分を味わう「はらこ雑煮」
海の博物誌 満潮と干潮の差が8メートル
YAMAHA NEWS 国際ボートショー・今年も1000組にチケットプレゼント(1/13~)/マリーナ百景/今回は新西宮ヨットハーバー/マリン規制緩和情報/「海と、光と、風と、舟 Ⅱ」~柏村勲、Tadami、矢部洋一 三人展
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 モルディブ・北マーレ環礁のリゾートで迎えた最初の朝、全長15メートルのクルーザーが、私たちを迎えにきた。2段ベッドのついたシャワー付きの船室5部屋、広いダイニング付きのメインサロンを備えている。クルーは、キャプテン以下コックを含む4名。そして釣り人は僕と、世界を釣り歩く旅人、Zさんの二人。この居住性抜群のボートで、1泊2日のサファリ・フィッシングを楽しむのだ。ターゲットとなるゲームフィッシュは、もちろんGT(ジャイアント・トレバリー)である。私にとっては初めての釣りであった。
 いつもシーバスフィッシングで何かとお世話になっているマリーナの社長から、ご自身のGT体験を聞いたことがあった。「周りはみんな釣っているのに、自分だけがなかなか釣れなかった。ばかでかいルアーを何度も遠投するものだから、へとへとになる。今回はもうダメか、と思った最終日の最後の最後に、やっときた。本当に感動したよ」
 そのときは何気なく聞いていたが、この1泊2日のサファリで、そのエピソードをそのまま体験することになるとは。Zさんのルアーには次々とGTやレッドスナッパーなどがチェイスするのに、私のルアーにはなかなか魚が出てくれないのだ。
 夕方、日が大きく傾いて納竿。ボートを島の風裏に持っていき、アンカリングした。ここで一夜を過ごすのである。大きなFBのアッパーデッキで、ビール片手にリクライニングベンチに身体を預けながら海抜のほとんど無い島に夕日が沈むのを眺める。風が優しくデッキの上を通り過ぎる。コックの作った食事とビールを堪能したあとは、船室からシーツと枕を抱え出し、再びアッパーデッキに昇った。美しい月、そして星のきらめきの中で眠りにつく、という贅沢を味わう。こんな体験もサファリ・フィッシングの魅力のひとつ。ボーズの担保がしっかりと用意されているのである。
 GTとの強烈なファイトを体験できたのは二日目も昼を過ぎた頃だった。リーフエッジをめがけてポッパーをフルキャストし、大きくトゥイッチングを入れながらファストリトリーブで巻き上げる。前日から延々と続けてきた動作。さすがにここまでくると、釣れる気がしない。そんなとき、「ガッポーン」と強烈な音と共に海面を切り裂いてGTがルアーに襲いかかった。
 へとへとになりながらも何とかランディング。釣れない私を気づかって、何となく重い空気が漂っていた船上は、なにかの呪縛が解けたかのような明るさである。キャプテンもクルーたちも大喜びだ。魚を釣って、こんなに他人に喜ばれたのは生まれて初めてであったし、釣れなかったことを申し訳ないと思ったことも初めての体験だった。
 苦笑、、したつもりであったが、GTとクルーたちと共に写真に収まった自分の顔をあとから眺めたら、これまでに見たことのない、幸福感に満ちた笑顔をたたえていた。
 


田尻 鉄男●たじり てつお
外洋帆走部に所属しクルージングに明け暮れたの大学生活、1年間の業界紙記者生活を経て、88年、某プロダクションに入社。以来、日本のボーティングシーン、また沿岸漁業の現場を取材してきた。1963年、東京生まれ。



 東京湾は絶好のシーバスフィッシングのフィールドとして知られるが、皮肉にも、それは人口のストラクチャーの存在が、その要因の大部分を占めている。しかし、1mたりとも自然の海岸線がない有様は、やはり異様であると認めざるを得ない。ボートで遊んでいる分にはまだよいが、大企業の私有地が大部分を占める東京湾奥の海岸線は、どこもかしこも立ち入り禁止であって、陸岸からアプローチするのは至難の業である。人が東京で海と戯れる場所は、何とかそのために特別に確保した場所、わずかな公園のみである。
 「海の彼方からより来るものへの切実な期待と畏怖の情は、日本人の心理の底深く宿っている」(あとがきより)
 民族学者、谷川健一が著した「渚の思想」によると、「渚」は「常世」と「現世」の接点にある。そして「常世」とは、死者の国であると同時に、日本列島に黒潮に乗ってやってきた祖先たちの記憶である、という。自分の中の自然を感じ、海の呼ぶ声が聞こえ、思わず歩き出してしまう、と。その意味を考えたとき、渚との接点がないということは、常世への道を閉ざされ、現世を闇雲にさまよわざるを得ない状態を意味しているのではないか。
 湾奥のマリーナから、水路や河川を経て海に出るとき、少しだが、「渚」を感じることができる。つまり、現世から未だ見ぬ期待への旅立ちを感じることができるのだ。渚を失った都会の人々にとって、ボートという乗り物がどれほど大切なものであるかが、解ってくる気がする。
「渚の思想」

 著者/谷川健一
 発行/晶文社
 定価:2,100円+税



「はらこ」雑煮の作り方(4人分)

●材料:切り餅(好きなだけ)、塩鮭二切れ、イクラ(好きなだけ)、大根、ネギ1本、塩(小さじ1弱)、薄口醤油(少々)、お砂糖(小さじ1/4)、酒(大さじ3)

1)鮭はぶつ切り、ネギは白髪ネギに、大根は薄い短冊切りにする。
2)鍋に昆布でとった出し汁6カップを入れ、沸騰したら鮭を加えて火を通し、大根を入れ煮る。
3)砂糖、酒、醤油を加える。塩鮭から味が出るので味を見ながら、塩を加える。
4)白髪ネギを加え、一煮立ちさせる。
5)器に焼いた餅を入れ、汁を装い、その上にイクラを載せる。
 新しい年を迎えてからの、最初のマリーナ通い。気の合ったいつもの仲間と、また、家族と、キャビンのテーブルを囲む。三が日は過ぎたが、今年はじめてのフネだから、思いっきり、愛艇にも正月気分を味合わせてやろうではないか。
 正月料理はカンタンが基本。たとえば家からおせちを持ち込んで、現場で作るのは雑煮ぐらいでいいだろう。いつの時代でも、雑煮は正月料理の主役、そしてどこの地方へ行っても、雑煮の主は餅である。しかし、主役の餅ひとつとっても関西では行儀よく丸餅をゆで、関東では切り餅を焼いて使う。さらに四国や九州ではみそ仕立ての雑煮が多く、一方、関東では澄まし汁が主流だ。その調理法や素材は諸国で、さらに村々で、また家庭によって趣を異にしているのが面白い。
 お歳暮にいただいた新巻を使って雑煮を作ってみよう。仙台の“はらこ飯”にあやかった“はらこ雑煮”。味はもちろんのこと、真っ白な餅に、鮮やかな紅のいくら、ピンク色になった鮭の配色が、ご祝儀気分を高めてくれる。



 潮干狩りの名所は、たいてい、干満の差の激しいところと相場が決まっている。そして季節は少し寒いくらいの春と秋がベストだ。というのは、春・秋の方が夏・冬より、干満差が大きいからである。
 日本でもっとも干満差が大きいのは、有明海と瀬戸内海。佐賀県の福富では平均4.9メートル、大牟田では4.5メートル。瀬戸内海の尾道、広島では平均2.9メートル、松山2.8メートル、徳山2.5メートルとなっている。いずれも半島や島で囲まれた海で、しかもその奥に位置している。
 世界では、なんと最大8.3メートル。イギリスとアイルランドに挟まれたアイリッシュ海の、さらに奥まったところ、かのビートルズを輩出したリバプールである。ちなみに2位以下は韓国のインチョンで7.9メートル、ロンドンの6.4メートル、韓国のクンサン5.7メートルとなっている。




国際ボートショー/今年も1000組にチケットプレゼント(1/13~)
間もなく開催される東京、および大阪の国際ボートショー。ヤマハでは出展はもちろんのこと、ボートショーのスペシャルサイトを開設し、皆様に情報を提供してまいります。また、1月13日より、入場券プレゼントの受付を開始します。

マリーナ百景/今回は新西宮ヨットハーバー
各地のマリーナ情報をお伝えする「マリーナ百景」。兵庫県の新西宮ヨットハーバーをレポートしています。

マリン規制緩和情報
規制緩和により、新しい航行区域「沿岸」が設置され、5海里内の航行ならば日本一周が可能となりました。

「海と、光と、風と、舟 Ⅱ」~柏村勲、Tadami、矢部洋一 三人展
ソルティライフの毎号のタイトルイラストを飾る、マリンイラストレーターTadamiと、海の画家・柏村勲、フォトグラファー・矢部洋一による三人展の開催です。三人三様の豊かな海の世界をお楽しみください。
・期日/2005年2月11日(金)~16日(水)
・時間/12:00~19:00(土、日、最終日は17:00まで)
・場所:「銀座アトリエTK」(東京都中央区銀座8-11-13山田ビルB1F)


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【編集航記】
モルディブでのフィッシング&クルーズの思い出を綴った原稿を整理していたら、スマトラの地震による津波の被害をニュースで知った。インドネシアやスリランカ、インドにおける被害が甚大で深刻度を増している。モルディブも空港が封鎖されたとのこと。亡くなられた方々のご冥福と、各国の一日も早い復興を心よりお祈りいたします。(編集部)

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