イラスト・高橋唯美
感動の海 ヘミングウェイが感じた海
キャビンの棚 沖縄の古語“おもろ語”を駆使した海の詩
「真帆船のうむい」
船厨 マグロを獲る、ということ
「マグロのたたき」
海の博物誌 七つの海は七色の海
YAMAHA NEWS 全国各地のボートショー、展示試乗会のご案内/新製品情報「AEROSPORTS 21」登場/「マリーナ百景」更新/「カジキ釣り講座」更新
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 マイアミから USハイウェイのルート1をひたすら南下、広大な湿地帯を抜け、フロリダキーズへ。キーラーゴ、アイラモラーダ、ロングキー、マラソンといった魅力的な島々から終着点・キーウェストに至るまでの42の島々を橋でつないだ一帯は、ソルトウォーター・アングラーにとって、天国のようなエリアと言って良い。ターポン、ボーンフィッシュは言うに及ばず、スヌーク、バラクーダ、レッドフィッシュなど、フライ、ルアーでフラットボートによるサイトフィッシングを存分に堪能することができる。
 また、ブルーウォーター派にとっても最高のスポットであることは間違いないらしく、たとえば、アイラモラーダのある夏の日曜日、数々のレストランを備えたハーバーには、おそらくマイアミやフォートローダーデールあたりから集まってきたのだろう、ボートやヨットが所々に舫をとっている。あちこちのボートから陽気な曲が流れてきて、それぞれのデッキはちょっとしたカクテルパーティ状態。陽気で明るいが、見方によってはどこか退廃的なムードもあり、そこにまた色気のある幸福の臭いを感じることができる。
 さて、セブンマイルスブリッジを渡り、キーウェストまで足をのばすと、これまでとはまた違った光景が広がり、落ち着いた空気を感じる。

 『老人は海のことをいつもラ・マールと呼んでいた。スペイン語で海を愛情を籠めて呼ぶ場合、海という言葉は女性形を取る。海を愛する漁師たちは、時に海に悪態をつくこともあるが、そうした場合も常に海が女性であることを忘れなかった。』 (老人と海)

 あまりにも有名な、小説の一節。ヘミングウェイは「老人と海」をキューバで書いた。小舟を操る老漁師と巨大なカジキとの4日間にわたる生死をかけた闘いを描いたハードボイルドの傑作には、人間の尊厳とは何かという主題と共に、全編に渡って作者の自然への畏敬の念と、海への愛が垣間見える。
 そんなヘミングウェイの海への、そして大魚への思いを育んだのはキューバへ移り住む前に12年間を過ごしたキーウェストだったはずだ。
 瑞々しい緑の街路樹に覆われた道に面して、今では博物館となったヘミングウェイの家が保存されていた。「失われた世代」の友、ドス・パソスに誘われて訪れたキーウェストの街並みは、今のように優しさを漂わせていたのだろうか。
 ヘミングウェイが愛艇「ピラール」を浮かべていたマリーナは、近代的な施設が整っているわけではなかった。どちらかといえば賑々しく乱雑に船が舫われ、男臭さが漂う。マリーナと少し距離を置いた埠頭に停泊する客船からは夢や冒険心をかき立てられる。
 要するにキーウェストは彼のライフスタイルそのものが凝縮された町なのではないかと思う。
 この街を歩いていると白い髭をたくわえたヘミングウェイのそっくりさんを、よく見かける。物真似をするという時点で、ハードボイルドからはほど遠いと思うのだが、どの男も、ヘミングウェイのように生きていきたいと願っているのかもしれない。メキシコ湾流に浮かぶこの小島は大の男を惹き付ける何かがある。


田尻 鉄男●たじり てつお
外洋帆走部に所属しクルージングに明け暮れたの大学生活、1年間の業界紙記者生活を経て、88年、某プロダクションに入社。以来、日本のボーティングシーン、また沿岸漁業の現場を取材してきた。1963年、東京生まれ。



 沖縄には「おもろさうし」という歌謡集が残されている。首里王府が、16世紀半ばから17世紀の初頭にかけて編纂した最古の歌謡集だ。沖縄の歴史をうかがい知る意味でも貴重な資料とのことだが、美しい数々の古語をこの歌謡集から知ることもできる。たとえば「うりずん」という、沖縄の3~4月の爽やかな風や季節を意味する言葉はよく耳にするが、これも「おもろ語」なのだとか。
 真久田正さんは、このおもろ語を使って、自分の好きな海の世界を表現しようと思った。氏は沖縄でヨットを楽しむセーラーだが、うりずんの海(真久田さんは「うりずむ」と表記している)でのレース中、この「おもろ語」を使った詩を書くことを「琉球の海の神から託宣されたのだと覚った」のだそうだ。そのときの模様は本書の後書きに詳しいが、海に身を置いていると、様々な自然現象、音、生物から、神を感じることは、誰もが共感できることではないだろうか。
 さて「おもろ語」の詩。はじめは読んでも意味が分からないのではないかと思われたが、そうでもない。照れくさいが口に出して読むと、誠に味わい深い。そして、浦安の海から始まる航海の情景が、次から次へと浮かび上がってくる。
「真帆船のうむい・真久田正詩集」

 著者/真久田正
 発行/KANA舎
(TEL/FAX:098-888-3849)
 定価/2,000円(税込)



「マグロのたたき」

●材料:まぐろ(大きめのもの1さく)、塩、あらびきコショウ適宜、粉わさび大さじ2(ねりわさびでもよい)、マヨネーズ100cc、サワークリーム100cc、レモン絞り汁大さじ1、醤油大さじ1
●作り方
1)マグロに塩、あらびきコショウ、粉わさび(少々)をよくすりこみ、ラップして30分ほどおく
2)わさびマヨネーズを作る。粉わさび大さじ2を大さじ1の水で溶いて5分ほどおき、マヨネーズ、サワークリーム、レモン絞り汁、醤油大さじ1を加えてよくまぜる。
3)グリルパンをプレヒートしサラダオイルを薄くひき、1)のマグロを片面につき3~5分中火で焼ききれいな焼き跡をつける。
4)好みの厚さに切り、わさびマヨネーズをかける。
 「マグロ漁」といえば青森県の大間が有名で、漁の勇壮なイメージと、どこか博打を思わせる一攫千金的なムードが番組的には受けるのだろうか、よくテレビに取り上げられる。だが、同じ津軽海峡を漁場とする船団は北海道からもやってくる。マグロは許可漁業で北海道からは40隻が許可を受け操業しているのだ。
 Nさんは恵山を母港とする漁師だ。マグロの延縄を初めて7年ほどになる。「軽い気持ちで申請したら思いがけずあっさり許可がおりた」という。
 操業期間は6月から12月の半年間。毎日捕れる魚ではない。しかし、当たれば大きいのも事実。「半年で20本、最低でも月に1本は揚げたい」という漁だ。見様見まねで初めてマグロ漁に出たその日、Nさんは二本のマグロを揚げた。興奮した。まだ漁の艤装も全て終えておらず、ドラムもない。手で天蚕糸を曳き、マグロを揚げなくてはならなかった。大物になると250kgを越し、ときには釣り針のステンレス製のアイさえも引きちぎるマグロに、その強烈なパワーを思い知らされる。1本のマグロを船上に引き揚げるまでに1時間。腕はパンパンに張り、くたくただったが、「デッキに堂々と横たわるマグロの姿を見て何ともいえぬ充実感がこみ上げてきた」とマグロ初体験を振り返る。そう簡単には釣れないが、「一攫千金」などといって運を天に任せるようなことをするのはテレビの中だけだ。潮の読み、漁具の研究。遊びではない。これは生きることなのだ。
 魚に限らず、野菜や果物にしろ、普段我々が口に運ぶ食材には、常に人の思いがこめられている。そんなドラマに思いを馳せ、今日も有り難く、海の恵みをいただこう。



 日本近海を流れる海流のうち、黒潮は親潮に比べてプランクトンが少ないので、透明度が高く、名前の通り黒っぽい。この場合は澄んでいるために黒っぽく見えるのだが、海水が青以外の色に見えるときはたいてい色のついた物質を含んでいる。
 たとえば赤潮。赤茶色の植物プランクトンが大発生して海水が赤く見えるのをいう。また、アラビア半島とアフリカの間にあって、スエズ運河に通じる紅海は、よく赤潮になるのでそう名づけられたという。
 一方、東京湾の奥で発生してしばしば問題になっているのは青潮。富栄養化の結果、硫黄の粒ができて、その白と海水の青が混ざって水色に見える。
 中国の沿岸、揚子江と朝鮮半島に挟まれた黄海は、黄河から流れ出る泥水のために茶色っぽくなっているので、こう呼ばれる。
 同じ美しい海でも、たとえばカリブ海・カンクンの海の色とインド洋・モルジブの海の色ではこれも異なる。
 あなたの好きな海は何色だろうか?




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今回は、静岡県 用宗フィッシャリーナ。駿河の海で釣りを楽しむなら、最高のロケーションです。

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オフショアフィッシングの醍醐味。ルアーでカジキを釣るための基礎講座を連載していきます。


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【編集航記】
キャビンの棚でご紹介した「真帆船のうむい」の作者・真久田正さんによる詩の朗読を拝聴する機会に恵まれた。おもろ語の独特の語感と節回しが絶妙で、酒による酔いも手伝ってだろうか、思わず、大海原を共に航海してるかのような夢見心地となった。もちろん全ての意味を理解できるはずもないが、それでも伝わるところに、言葉の持つ不思議な力を感じた。(ま)

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