ソルティライフ ソルティライフ
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イラスト・高橋唯美
いつでも潮気のある生活を過ごしたい。
No.28
感動の海 フィンランド。夏の謳歌と冬支度。
キャビンの棚 日本史ではなく「海の男」としての按針
「航海者 三浦按針の生涯」
船厨 人気ナンバーワンの駅弁に挑戦「イカめし」
海の博物誌 “海里”は地球の寸法を基にした単位
YAMAHA NEWS マリンジェット2006年モデル情報/小型船舶一級取得体験レポート/「マリーナ百景」更新/「カジキ釣り講座」/「ネットTV」公開中
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感動の海
 国土の75%を占める森と湖、そして美しい海。大戦後のフィンランドは飛躍的な経済発展を遂げるが、これらの自然を慈しみ守ることを忘れなかった。1500kmにも及ぶ海岸線と氷河が削り残した3万もの島々が織りなす景観、太古から生き続ける自然は、人の手からなる造形物らと美しく調和している。
 フィンランドに初めて訪れたのは、長く、文字通り暗い冬を目前にした10月のことだった。一日のはじめに、ヘルシンキのホテルで朝食を摂っている時間、外はまだ夜のように真っ暗だった。プレジャーボートやセイリングだけでなく、漁業の取材も経験してきたお陰で、いつも明るい海だけを見てきたわけではなかったが、朝食の時間に夜が明けていないという事実は、少しばかり心を陰鬱にさせた。
 厳しい寒さと海の凍結によってフィンランドのマリンレジャー・シーズンは5月から9月に限られる。7月の日照時間は18時間。長い冬の鬱憤を晴らすかのように人々は夏を楽しむ。そして9月、10月ともなると多くのボートは上架されてしまう。このときは、ちょうどそのような時季の、土曜日だった。
 気を取り直して、曇り空の中、ヘルシンキの海岸沿いの公園へ足を運んだ。公園の遊歩道は海に面していて、そこにはボートやヨットが係留されている。ある男女、3人のグループは寒風が吹きすさぶ中、自分たちでクレーンを操り愛艇の上架作業に精を出していた。別の男は、すでに陸に揚げた小さな木船のハルをぴかぴかに磨き、ウインチをオーバーホールしていた。「船齢は20年を越えるけれど、まだまだ走る。いい船だよ。」
 公園の中のスペースに(当時)、船を揚げ、目を輝かせて整備をする多くの人々の姿に、冬ではあるけれど海から離れることのできない気質を見、暗かった心はかなり明るくなった。国民の7人に一人はボートを所有しているという「マリン先進国」のリアルな姿を、シーズンオフに発見できたことは大きな収穫だった。


 「もしヘルシンキに住んでいるのなら、来年の夏、遊びにおいで。セーリングしよう」
ウインチをオーバーホールしていた男からもらった名刺は無くしてしまったが、そんな会話があったことを思い出しながら、10年後、今度は真夏にヘルシンキを訪れた。
 首都の港では小さなボートが笑顔を満載して行き交っている。土曜も日曜も平日も関係なしに、周辺に浮かぶ無数の島々の合間を縫ってボートが走る。分厚いヘリーハンセンのジャケットにワッチキャップ、という出で立ちでイメージされた僕の中のフィンランドのシーマンのスタイルは、裸でラットやティラーを握る人々にとってかわってしまった。
 その素晴らしい夏のシーンも僕の中では晩秋のヘルシンキから線で繋がっている。だから、このときはフィンランドの人々と同じような気持ちで夏を楽しむことができたように思える。


田尻 鉄男●たじり てつお
外洋帆走部に所属しクルージングに明け暮れたの大学生活、1年間の業界紙記者生活を経て、88年、某プロダクションに入社。以来、日本のボーティングシーン、また沿岸漁業の現場を取材してきた。1963年、東京生まれ。



キャビンの棚
 我々のよく知る三浦按針、本名、ウィリアム・アダムスは、オランダの貿易船に乗って日本にやってきて、徳川家康に召し抱えられた。相模・三浦の国に250石の領地と三浦按針という名、そして妻を与えられ、外交顧問として活躍し、日本でその生涯を綴じた、ということになる。
 しかし、タイトルが示すとおり、この物語に描かれた三浦按針はあくまでも「航海者」である。
 イギリスに生まれたアダムスは12歳にして造船所で働き、成人した後、妻と子を母国に残しオランダの貿易船団に乗り込んだ。西回りの航路で3年以上の航海を経てようやく日本に到着するが(最初の目的地はそもそも日本ではなかった)、その航海は壮絶にして、凄惨を極めた。アダムスはその船団の一隻「リーフデ号」の、優れた航海士であった。「航海者」としての物の考え方、視点。ここには想像もし得なかった三浦按針が登場し、活躍する。そこに新たな共感を覚える。
 昨年逝去した直木賞作家・白石一郎は日本における海洋歴史小説、海洋冒険小説といわれるジャンルを切り開いた作家の一人だった。「航海者 三浦按針の生涯」は、氏の文学の集大成と謳われている。
「航海者 三浦按針の生涯」上・下

著者/白石一郎
発行/文春文庫
定価/581円+税(上下巻とも)



船厨
 北海道の恵山を母港に漁業を営むNさんは、烏賊の漁期となる6月から12月の中旬にかけて、時化で海に出られない日を覗いてほぼ毎日、親子二人で烏賊を取るために出漁している。
 出漁は午後の3時。烏賊の群れを追い、荒波の中、漁場まで走ること3~4時間。時には100マイル以上走らせる。10台以上積んだ烏賊釣りのロボットを駆使し、一晩中、烏賊を釣り上げる。このロボットがなければ二人で操業するのは無理だ。夜半まで操業した後、再び母港を目指し、早朝6時に帰港。昼夜逆転の日々が半年間続く。きつい労働だが、当たれば大きい。「それがこの仕事の魅力だ」と若い後継者は語る。
 普段、何気なく口に運んでいる大衆魚。が、その生産者の苦労や獲り方までに思いをはせて食事することはなかなか無い。大間の鮪のように、豪快故にテレビをはじめとするメディアにしばしば取り上げられる漁ならいざ知らず、例えば烏賊のような大衆魚介ならばなおさらだろう。沖漬け、烏賊そうめん、松前漬け、などなど、その烏賊をおいしくいただくためのメニューが生産者の身近で開発されていく。「イカめし」もその一つ。もともと獲れすぎた烏賊を無駄なく利用しようとこの有名な駅弁が生まれたと聞く。旨い物の背景には様々ドラマがあったりするのだ。
「イカめし」の作り方
●材料(4人分):いか4はい、もち米100g、砂糖小さじ1、みりん大さじ1、酒150cc、醤油大さじ4、昆布だし汁350cc、しょうがの薄切り5枚

●作り方
1)もち米は研いで30分以上水につけ、ざるに上げて水を切る。
2)いかは足を抜き、はらわたと骨を取る。
3)いかの中にもち米を大さじ2くらい入れ爪楊枝で止める。もち米を入れ過ぎるとふっくらと炊けない。
4)厚手の鍋(無水鍋、ダッチオーブンなど)にを並べて入れ、ひたひたになるくらいに昆布だし汁を入れる。
5)砂糖、酒、みりん、醤油、しょうがの薄切りを加え、ふたをして火にかけ沸騰したら弱火にして1時間くらい煮る。



海の博物誌
 陸上で一般に使われている距離の単位・メートルは、“光が真空中で299,792,458分の1秒の間に伝わる距離”とされている。その前はクリプトン86原子から出る光の波長だった。そのまた前は国際メートル原器というものがあった。さらにその前は地球の子午線(北極と南極を結ぶ線)の長さを基にしていた。
 海上の距離は今でも海里を使用している。領海200海里などと言うときの海里がそれで、緯度1分にあたる地球表面の距離である。1海里は緯度の60分の1の長さにあたり、1海里=約1,852メートルと決めている。また、スピードを表わすときはノットを使う。1ノットは1時間に1海里進む速さ。国際的な単位がメートルに統一されている今でも海里やノットを使うのは、海上の位置を“東経160度、北緯45度”のように緯度と経度で表わすためである。たとえば速さ10ノットの船が6時間真北に走ると、緯度1度移動したことになり、わかりやすい。
 なお、海里は英語ではノーティカルマイル、あるいはシーマイルであるが、陸上のマイル(1.6キロメートル)とは異なる。



ヤマハニュース

マリンジェット2006年モデル情報
先進の4ストローク3シーターマリンジェット「MJ-FX Cruiser High Output」をはじめとする2006年モデルの情報を掲載。

小型船舶一級取得体験レポート
モデルや俳優、ライター、カメラマンとして活躍する山下晃和さんが一級取得にチャレンジ、その模様をレポートします。

「マリーナ百景」更新
明石海峡大橋が眼前に迫る神戸フィッシャリーナをご紹介しています。

「ネットTV」公開中
マリンレジャーやマリン文化をテーマに最新の映像でレポートするネットTV「Captain’s World TV 」公開中!


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【編集航記】
イラストレーターのTadamiさんは、毎年、期間を限定してアメリカのニューポートに移住しています。その間のお仕事は、メールや、航空便でのやりとりとなりますが、今回のタイトル画もアメリカから送られてきた物です。何か香りがいつもとが違う? それにしても世の中便利になりました。メールを使って原稿をデータとして送ることができ、航空便でも2日で原画が届くのですから。というわけで、これからしばらくの間、美しく、皆さんの潮気をくすぐるイラストをニューポートからお届けします。ご期待ください。(編集部・ま)

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