ソルティライフ ソルティライフ
ソルffティライフ ソルティライフ
イラスト・高橋唯美
いつでも潮気のある生活を過ごしたい。
No.29
感動の海 スリランカ・ニゴンボの漁師、海と心の平和。
キャビンの棚 潮風を浴びながら、デッキにいるかのような心地
「夢のカリフォルニア」/ ウェス・モンゴメリー
船厨 幻の鮭を思いつつ「鮭のミルクシチュー」
海の博物誌 海洋文学「ハーマン・メルビル」
YAMAHA NEWS 船外機流し釣りガイド/「ネットTV」更新/小型船舶1級取得体験レポート/「カジキ釣り講座」更新
11月の壁紙 『Salty Life』読者限定壁紙カレンダー

感動の海
 初めてスリランカを訪れ、漁村を取材するため案内されたのは、随一の都市・コロンボから北へ35、6キロ走ったニゴンボ( Negombo)という町だった。空港に近く、ヨーロッパからのリゾート客やサーファーも訪れる海辺の町だが、少し足をのばすと小さな漁村があちらこちらに点在している。
 海を生活の糧とする漁師たち。彼らもまた船を介して海との深い関わりを持つ人々だった。彼らの多くは船外機を取り付けたボートで刺網漁を営んでいる。アジアやアフリカでは日本のように漁港が整備されていることは希だ。ここでもやはり、漁業のための港の整備は遅れているので、彼らは砂浜からボートを押し出して出漁するのだった。
 早朝、ニゴンボの砂浜で待っていると、次々と漁を終えた漁船が帰ってきた。帰港するときは、砂浜に向かってフルスロットルでボートもろとも突っ込み、上陸する寸前に手動で素早く船外機をチルトアップ、パームツリーの葉を敷いた砂浜に勢いよく乗り上げる。あとで、彼らのボートよく観察すると、船外機のプロペラのブレードがぼろぼろになっていた。思わず苦笑いしてしまう。
 ずいぶん雑に扱っているのかと思ったが、実はそうでもない。多くの漁師は、古い毛布で作った自家製の船外機カバーをカウルに掛け、大切に扱っている。彼らにとって船外機は単なる商売道具を越えた、大切な財産だ。
 ニゴンボの漁船の中には動力船だけでなく、大きな帆船も混じっていた。聞くと、この人たちは近代化に乗り遅れた人びと、というのではなく、未だ帆船で魚を捕ることに誇りを持った、伝統漁法のこだわる頑固者なのだそうだ。こうした光景を見るに付け、船というものが、彼らにとって単に便利な仕事道具に留まらず、それを遙かに越えた存在になっているのだと感心してしまう。


 午後に再び浜を訪れた。日が照りつけ汗だくになって、撮影していたら、船の舳先が作った小さな日陰で網繕いをしていた若い漁師が、ここに来い、と盛んに手招きをする。暑いだろうから隣に来いと。結局、彼と寄り添うように隣に座り、しばしの涼をとった。1週間ほど滞在したスリランカの取材中、このひとときが、どういうわけだか一番心に残っている。
 スリランカの語源は「光り輝く島」という意味だ。イギリスが「セイロン」と呼ぶ遙か以前にこの島を支配していたアラブ人たちは「セレンディブ」と呼んでいた。これは「心の平和」という意味を持つという。
 カルタラ、ベントタ、ヒッカドゥワなど、コロンボから南へ向かう美しいビーチの海岸線にはすばらしい高級リゾートが点在している。きっと快適なリゾートライフを過ごすことができるに違いない。しかし、この島の語源である「輝き」や「心の平和」はこんな小さな暮らしの中にもにあったのだなあと、ニゴンボの漁師たちを思い出しながらふと考えた。


田尻 鉄男●たじり てつお
外洋帆走部に所属しクルージングに明け暮れたの大学生活、1年間の業界紙記者生活を経て、88年、某プロダクションに入社。以来、日本のボーティングシーン、また沿岸漁業の現場を取材してきた。1963年、東京生まれ。



キャビンの棚
 オクターブ奏法というギターの演奏テクニックがある。1弦と4弦のオクターブ・ユニソンを1本の親指でつま弾きながら、同時に間の2、3弦の音を消去する。オクターブの異なる音を重ねて弾くことで、ソフトかつ太い音を出すという方法だ。ジャズ・ギタリストのウェス・モンゴメリーが編み出した。
 楽譜も読めず、音楽理論の勉強すらしたことのない彼は、耳でコピーすることからギターを覚えていったというエピソードがある。
 そういえば、これはフィクションではあるけれど、映画「ドラム・ライン」の主人公も楽譜が読めないのに驚異的なドラムのテクニックを披露していた。天才とはそういう人のことをいうのだろう。
 さて、そんな天才、ウェス・モンゴメリーの、いわゆる「イージーリスニング・ジャズ」の代表的なアルバムの一枚がこの「夢のカリフォルニア」。
 タイトルとなった「夢のカリフォルニア」は1曲目に収められているが、ママス・アンド・パパス(ジョン・フィリップス)の名曲を彼の見事なオクターブ奏法とドン・セベスキーの編曲とオーケストラによって謳いあげている。
 全編を通して、さわやかな潮風を浴びながら航く、船の上にいるかのような心地になる。ジャケットにも惹かれた。
「夢のカリフォルニア」
ウェス・モンゴメリー


ユニバーサルミュージック
定価/1,995円(税込)



船厨
「鮭のミルクシチュー」

●材料
生鮭4~5切、玉葱1コ、ニンニク2片、牛乳400cc、生クリーム200cc、白ワイン50cc、塩、コショウ、サラダ油
●作り方
1)鮭は大きめの一口大に、玉葱は薄切り、ニンニクはみじん切りにする。
2)熱したフライパンにサラダ油を入れ鮭の両面を軽く焼く。
3)なべにサラダ油を入れ温めニンニクと玉葱を中火で炒め、小麦粉大さじ2を加え焦がさないようにさらに炒める。
4)3のなべに2を入れ、強火にして白ワインを加える
5)水200ccと牛乳を加え鮭に火が通るまで沸騰させないように注意して煮る。
6)仕上げに生クリームを入れ、塩コショウ、好みのスパイス(ナツメグなど)で味を整える。
 先日、釧路の和商市場で、ある鮮魚店の主に話しかけられた。「お客さん東京の人? ちょっとだけでいいから、わたしの話を聞いてください。釧路のうまいものの話です」
 そういう話は嫌いじゃないので、10分ほど立ったままでレクチャーを受けた。鮭についての話だった。
 北海道では、秋になると産卵のために鮭が川を遡上しようとやってくる。その直前にとられる秋鮭は、遙か遠くからやってくるために油がそぎ落とされてしまう。本来の旨さはどうしても落ちる(いや、それでも十分にうまいのだが)。このような鮭は北海道の言葉で「ホッチャレ」呼ばれるのだそうだ。
 一方、ここからが主の言いたかったところだが、「とき鮭」または「時しらず」といわれる鮭がある。産卵のために秋に近づいてくる群れから離れ、夏場に北海道の沿岸で捕獲される鮭のことだ。この鮭は、まだ卵や白子をもっていないので身に栄養が行き渡る。タップリと脂の乗った、それはうまい鮭なのだという。
 この後、主は幻の鮭「ケイジ」や「イクラ」、そして「メンメ」の話をいろいろと教えてくれたのだが、その間、唾液が分泌され続け、結局どうしようもなく、まんまと買い物をさせらた。


 さて、秋も深まり、朝晩はかなり冷え込むようになってきた。そろそろ仲間と鍋を囲みたくなる。静かな夜のマリーナ。キャビンで、海の仲間と囲む食卓は本当に楽しい。体の中から暖まってゆく。身も心も温まる、という感覚がここではよくわかる。
 好物の鮭を、ミルクでシチュー風に煮てみた。幻の鮭とはいかなかったが、それも絶品だった。



海の博物誌
 海洋文学というと必ずあげられるのが『ロビンソン・クルーソー』と『白鯨』、それに『老人と海』。いずれも海に関する描写が素晴らしく、読む人の多くを海好きにしてしまう。というのも、海洋文学を書いた作家には実際に海の生活を経験した人が多いからかもしれない。
 たとえば『白鯨』のハーマン・メルビル。早くも11歳で貨物船の水夫になって25歳になるまでの14年間を海で過ごしている。 
 1819年、ニューヨークで生まれたメルビルは、11歳でリバプール行きの貨物船に乗り、次いで捕鯨船に乗り込む。ところが途中で下船して南洋の島で気ままな暮らしを始める。やがてオーストラリアの捕鯨船に拾われた格好で乗り込むが、今度は反乱を起こして、タヒチ島で捕われの身になってしまう。
 釈放後はハワイや南米の海岸を放浪し、アメリカの軍艦に収容されてボストンに帰ったという。
 その後25歳で作家生活に入り、つぎつぎに海洋小説を発表したが、有名になったのは死後30年以上たってからだった。



ヤマハニュース

船外機流し釣りガイド
流し釣りを楽しんでいただくための基礎知識と操船・操作方法をわかりやすくご紹介していきます。

NEW「ネットTV」セレベスの海~楽園の水先案内人
マリンレジャーやマリン文化をテーマに最新の映像でレポートするネットTV「Captain’s World TV 」公開中!

小型船舶1級取得体験レポート
モデルの山下晃和が、チャレンジ! いよいよ試験に突入です。

「カジキ釣り講座」
オフショアフィッシングの醍醐味。ルアーでカジキを釣るための基礎講座を連載していきます。今月はルアーのポジショニングと投入方法の講座(その2)。


今月の壁紙
『SALTY LIFE』読者限定
11月の壁紙カレンダーはこちらからダウンロードできます。


バックナンバー
『SALTY LIFE』のバックナンバーはこちらからご覧になれます。


【編集航記】
秋、世界遺産となった知床半島と釧路周辺を旅した。神秘的な知床五湖や夕日に染まった羅臼岳の美しさ、釧路湿原の丹頂鶴など、北海道の文字通りの大自然を堪能した。しかし、意地汚いせいだろう、案の定「食」のことがもっとも美しい思い出として残ったような気がする。近海のメンメ(金目鯛)、巨大なホッケ、厚岸のカキ、根室の花咲ガニ、時シラズ、イクラ、ホタテ、タコなどなど。海って、本当に素敵だ。(編集部・ま)

■ 『SALTY LIFE 』について
 メールマガジン配信サービスにご登録いただいているお客様に定期的に配信するマリン情報マガジンです。
■ お問い合わせに関するご案内
 『SALTY LIFE』は送信専用のアドレスより配信しております。
「配信の停止」についてはhttps://www2.yamaha-motor.co.jp/Mail/Saltylife/をご参照下さい。
※お使いのブラウザでHTMLメールを表示できない場合は、以下のサイトからもご覧いただけます。
ページトップへ
『SALTY LIFE』
〒438-0016 静岡県磐田市岩井2000-1
発行:ヤマハ発動機販売株式会社


Copyright(C) 2005 Yamaha Motor CO.,LTD. All rights reserved.
掲載文章および写真の無断転載を禁じます。