ソルティライフ ソルティライフ
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イラスト・高橋唯美
いつでも潮気のある生活を過ごしたい。
感動の海 メキシコの海とビル・エヴァンス
キャビンの棚 大西洋、サイコー。「Atlantica」松田美緒
船厨 美味。釣魚としても人気の太刀魚。
海の博物誌 海を描いたヴィクトル・ユゴー
YAMAHA NEWS 東京国際ボートショー目前/ニューモデル「AG-21BR」新発売/カジキ釣り講座更新
2月の壁紙 『Salty Life』読者限定壁紙カレンダー

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感動の海
 先日、撮り溜めしていたポジの整理をしていたらカンクンの写真が出てきた。そして再び、「海の美しさ」について考えることとなった。
 カンクンはユカタン半島の先端に位置するメキシカン・カリブのリゾートだ。幅がわずか400メートル、全長22キロメートルという細長い砂州によってできた島で(実は島なのだ)、カリブ海と、静かなラグーンに挟まれている。そしてその狭間に高級ホテルやリゾートが、林立している。それらのホテルの窓から見える美しい海。「美しい」という言葉が陳腐と思えるほどに、その海はとんでもない色をしている。
 ダイビングやシュノーケリング、沖へ出ればビッグゲームフィッシングと、マリンアクティビティには事欠かない。中でも多くのリゾート客に人気なのが、小型ボートに乗ってのシュノーケリングツアーだ。二人乗りもしくは一人乗りの船外機を搭載した、水上バイクによく似たボートで運河を抜け、海に出てシュノーケリングを楽しむ。ただそれだけのことなのに、みんな本当に楽しそうだ。休暇を思いっきり満喫している。
 カンクンには二度、旅をした。一度目は97年。二度目は2004年。最初のメキシコの旅で行動をともにしたカメラマンは、その後ちょっとやっかいな病気と闘うこととなり、惜しくも破れ、この世から去っていた。二度目のカンクンでは、海の色に感激し、いつになく饒舌になりながらシャッターを切っていたカメラマンの愛嬌のある目を思い出し、少しセンチメンタルになった。思わず目を疑いたくなるような強烈なアクアブルーを放っているその海は、そのときと変わらなかった。そんなことを思いながら海を見つめていたら、ポケットの携帯電話が震えた。
 でてみたら、大切な先輩の一人が亡くなったという知らせだった。
 
 
 もともとその人も、カメラマン氏と同じ病気だったのだが、三度の飯より酒が好きだったこの先輩は、それほど闘う気もない様子で、のらりくらりと病気とつきあっていたように、そしてしばらくの間は死ぬことなんて無いように─少なくとも仕事仲間からはそのように─見えた。
 僕の海に関する駄文や写真を雑誌などで形にしてくれたアート・ディレクターだったその人は、音楽が好きで、特にクラシックとジャズに造詣が深かった。で、意外にも、ジャズでは誰もがよく知っているビル・エヴァンスが大好きだった。「I WILL SAY GOOBYE」というアルバムに収められた「SEASCAPE」は、ジョニー・マンデルが書いた傑作だが、海が好きならこの曲を聴けと、仕事場で深夜、酒に酔った先輩からよくいわれた。が、聞いても何となくピンと来ない。エヴァンスが弾いた「SEASCAPE」は確かに美しい曲だが、ちょっと暗い感じがして、僕がイメージする海の印象との間にはなんとなく隔たりがあったのだ。が、ここ数年、いろいろな国の、いろいろな海を見るにつけ、特に尊敬していた先輩が消えてしまってからは、先輩が「SEASCAPE」を好きだった理由、そしてなぜ自分が表現しようとする海にこの曲を重ね合わせていたのかが、なんとなくだがわかってきた。とりあえず、自分ではそんなつもりになっている。
 カンクンや沖縄やモルディブのような海は、心から美しいと思う。同じく、インドのコチンで見たどんよりとした朝焼けに霞む水辺も美しかったし、スリランカのニガンボで見た笑顔の漁師たちのたむろす浜辺や、3万人もの人が暮らすブルネイの水上都市も美しかった。吹雪で人気の全く無い青森の海辺、厚い雲の隙間からかろうじて陽が差すキャンベルリバーのモノクロームの海も美しかった。そして、それらの海にはすべて─カンクンも含めて─、エヴァンスの奏でる耽美な「SEASCAPE」がよく似合う。
 人の喜びや悲しみ、愛や切なさ、歓喜や畏れ。それらは概して美しくあるべきだ。これらの感情をも包み込み、優しく覆う海という存在。海の持つ、表面には見えてこない奥深い不思議な力と内面の美を、この曲は掘り出してくれるように思える。訃報を聞いたとき、目の前に広がるカンクンの海はちょっと色あせたように思えた。が、もしもそれが今だったら、その海も美しいと思えたに違いない。


田尻 鉄男●たじり てつお
外洋帆走部に所属しクルージングに明け暮れたの大学生活、1年間の業界紙記者生活を経て、88年、某プロダクションに入社。以来、日本のボーティングシーン、また沿岸漁業の現場を取材してきた。1963年、東京生まれ。



キャビンの棚
 「ある雨の日、どうしようもなく落ち込んでいて、涙が止まらなくなった。そんなとき、車のラジオに手を伸ばしてスイッチを入れたら、とても素晴らしい曲が流れてきて、元気づけられた。悩んでいたことがばからしくなってしまった。聞いたことのない言葉と日本語が混じった女性の曲。『サイコーだよ』いうフレーズがとにかく心に残っている」
 と、心を寄せる美しい女性から聞いて、この曲を探したらすぐに見つかった。松田美緒のファーストアルバム「アトランティカ」。「Saiko」はその4曲目に収められていた。タイトル通り、最高だ。
 この曲は大西洋に浮かぶ小さな島国、カーボ・ヴェルデで歌われている曲なんだそうだ。60年代に、日本のマグロ漁船はカーボ・ヴェルデのサン・ヴィンセンテ島に寄港していた。何もない小さな港町だったらしいが、日本漁船がやってくると港はにぎやかに、華やかになる。地元のクレオールの人々も日本人の船乗りを歓迎し、日本人の船乗りも、心ゆくまでその港での滞在と歓待を楽しんだ。日本人はそんな彼らと仲良くなって“サイコーな奴らだ!”と連発していたらしい。そして「サイコー」という言葉がその島に定着してしまった。このアルバムでは、松田美緒が日本語の歌詞を2番に付けて歌っているが、元は正真正銘のカーボ・ヴェルデの曲なのだ。
 若者が「サイテー!」と吐き捨てるように口にするのを聞くが、言葉としては「サイコー!」の方がずっと素敵だ。船乗りにとってサン・ヴィンセンテ島は本当にサイコーだったのだろうし、現地の人もそのことを感じたから嬉しく思い、こうしたご機嫌な曲が生まれたのだろう。
 松田美緒は大学時代にアマリア・ロドリゲスのファドに魅せられ、ポルトガル語を独学で学んだ。2001年には本場のリスボンに住み、歌手として活動した。ファーストアルバム「Atlantica」はファドを中心としながら、ブラジルのボサノヴァ、サンバ、ショーロ、カーボ・ヴェルデのモルナが入り交じり、まさに「大西洋」を自由に行き交うがごときの作品となっている。
「Atlantica」松田美緒

ビクターエンターテイメント
定価/2,800円(税込)



船厨
「太刀魚のコーンフライ」

●材料
太刀魚2切れ、ショートニング50g、コーングリッツ100g、塩コショウ適宜

●作り方
1)太刀魚に塩コショウをしてコーングリッツをたっぷりまぶす。 2)スキレットにショートニングを入れ、中火で熱して溶かす。 3)2に太刀魚を入れ中火で片面づつカリッと焼きあげる。
 魚といえば、普通は、人が泳ぐときのように横になって泳ぐ。ところが中にはヘソ曲がりがいて、せっかくの流線型の身体を無駄にして、立って暮らす魚がいる。その代表的な魚が太刀魚。名前通りに刀のような細長い体をしているが、立っているから「立ち魚」という説もある。頑丈なあごと犬歯を持ち、小魚はもちろん、海老や蟹まで口に入るものは何でも食べてしまう、どん欲な魚だが、泳ぎはからっきしダメなのだ。
 昼間は水深100メートルほどの海底でじっと立っていて、夜になると海面に浮上してくるが、横に泳ぐときは海ヘビのようにクネクネと身をよじる。こんなんで、よくも他の魚を補食することができるなあ、と感心してしまう。
 どん欲だから、釣魚としても面白い。もちろんルアーにも反応する。一度、太刀魚の延縄漁の取材をしたことがある。海の中でユラユラと、キラキラと、その身体を光らせながら次から次へとあがってくる太刀魚をみて、なんと美しい魚なのだと思ったものだ。
 鱗がなく、美しい銀色の皮につつまれているが、何とその皮の成分から取れるグアニンという輝く物質は、マニキュアや模造真珠の原料になるのだそうだ。なるほど、男を惑わす理由がこれでわかった。
 この太刀魚、もう一つの人気の理由は、なんといっても美味いから。刺身でもうまいが、ムニエルや唐揚げもいける。今回はコーングリッツとショートニングを使って、豊かな風味とさくさくの食感が味わえる唐揚げを作ってみた。



海の博物誌
 ヴィクトル・ユゴーといえばまず思い浮かぶのが、『レ・ミゼラブル』。ロマン派の作家で、フランス近代詩の基礎を築いた詩人でもある。
 『レ・ミゼラブル』に次いで、亡命先の島で書かれた『海に働く人々』は、若い漁師の恋物語で、島の生活や海との闘いなどの現実描写がいかにもユゴーらしく、緻密で迫力がある。
 ユゴーは1802年、ナポレオン軍の将軍を父に、王党派の娘を母に生まれた。そして1820年頃から詩、戯曲、小説を多作するようになった。その作風は母親の影響で王党派およびキリスト教の色彩が濃かったが、1830年の7月革命前後からは自由主義・人道主義に傾いていく。
 また、ユゴーは優れたデッサン家でもあり、1840年頃から描き始めたといわれる絵は約500点にも及んだ。インキの染みや指紋の跡を使った独特の手法により、“嵐の海”などを表現した。
 1851年に後のナポレオン3世のクーデターに反対して追放された後は、イギリス海峡のジャージー島とガーンジー島での19年間におよぶ亡命生活を送った。その後、1870年帝政崩壊とともにフランスに帰国、平和に創作活動を続け、1885年死去、国葬。フランス革命を体現した一生だった。



ヤマハニュース

東京国際ボートショー目前。ヤマハブースへぜひお越しください。
2月9日から12日まで、千葉市の幕張メッセにおいて「2006東京国際ボートショー」が開催されます。ヤマハブースではニューモデルの展示も行います。ぜひヤマハブースへお越しください。

ニューモデル「AG-21BR」新発売
トーイングボートの人気モデル「AEROGEAR」にバウライダータイプがニューモデルで新登場。東京国際ボートショーに出展します。

カジキ釣り講座更新
カジキ釣りの基本的なノウハウを連載中。今回は「正しいポンピング方法」を解説しています。


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【編集航記】
真冬のシーバス・フィッシングを楽しみにしていたのに、今年はまだ一度も出かけられずにいます。来週こそ、などと思っているうちに、ボートショーの開幕が目前に。そういえば、都内から東関道で幕張に向かう際、湾岸を眺めながら「釣りに行きたいなあ」と思うことが恒例になりつつあります。次号では釣行のご報告をこのコーナーでさせていただきたいと思います。(編集部・ま)

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