ソルティライフ ソルティライフ
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イラスト・Tadami
いつでも潮気のある生活を過ごしたい。
MONTHLY COLUMN 水辺の縁日
キャビンの棚 「枯葉」サラ・ボーン
船厨 小説家絶賛のムール貝の食べ方
「ムール貝の白ワイン蒸し」
海の博物誌 黒潮もへそを曲げる?
YAMAHA NEWS 「マリンクラブSEA-STYLE」サイトリニューアル!/「マリーナ百景」 岡山県の宮浦マリーナ/「カジキ釣講座」更新/漁船や沿岸漁業の情報「大漁ネット」更新/ネットTV「Captain’s World TV 」
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MONTHLY COLUMN
 「たとえばイベントの会場に2本の散策路をつくったとします。ともに同じ目的地へと向かう同じ距離のコースなのですが、一方は花に囲まれた道、もう一方は海や池に沿った水辺の道です。すると圧倒的に多くの人びとが水辺の道を選ぶのです―」
 人が水に抱く親しみというテーマについて、ある高名なイベントプロデューサーは自らの経験を引き合いに出しながらこう証明してみせたという。そんな何年も前に聞きかじった話を、私は台湾の北端に口を開く淡水川の河口に立って思い出していた。

 「せっかく台湾まで来てもらったのに、毎日毎日ミーティングじゃもうしわけないな。今日は金曜日だし、電車に乗って淡水あたりまで出かけてみたらどうだろう?」
 それまで熱のこもったプレゼンテーションを続けていたビジネスパートナーの陳さんが、ふと手を止めて思いもよらない提案をしてくれた。正直なところ連日の長い会議に多少うんざりしていたので、私は一も二もなくこの好意に飛びついた。彼はノートの端にさらさらと簡単な地図を書きながら、「いますぐ出かければサンセットに間に合うよ。楽しんでおいで」と、人懐っこい笑顔を浮かべて送り出してくれた。
 淡水は、台北の市内からMRTに揺られて約30分。紅線と呼ばれる短い路線の終着駅だ。紅毛城をモチーフにしたというモダンな駅舎は、淡水川の河口を開発した河濱公園の一角に建っている。
 淡水に向かうMRTの車内は、長い一週間を乗り越えた人びとのはじけるような開放感であふれていた。仕事を終えたビジネスマンや小さな子供の手を引いた母親、着飾ったカップルや学生の集団もいる。その誰もがどこかそわそわしているように見えた。
 週の終わりを淡水で過ごす。水辺で過ごす。きっとそれは台北の人びとにとってとても自然で、またとても楽しいことなのだろう。車内のざわめきからそれが十分に伝わってきた。

 結論から言えば、初めて訪れた淡水は想像していたようなロマンティックな夕陽の名所などではなかった。淡水川に沿って雑多な屋台や出店が無数に並び、雑踏の中で人びとの嬌声が響くにぎやかな場所だった。多い。とにかく人がたくさんいる。
 川べりに腰を下ろしてボラを釣る親子、豪華なボートから優雅にサンセットを楽しむ老夫婦、巨大なアイスクリームの塊を抱えた若いカップルは、いくらかの小銭を払って船外機のついた小型の渡し舟に乗っていった。似顔絵描き、屋外カラオケ、各種の占いに、何万回チャレンジしたところで1等のプレステは当たらないだろうあやしげなクジ屋。ミニスカートの可憐な女子学生は屋台で買った生の貝にかじりつき、にきび顔の少年たちがその娘たちにいつ声をかけようかともじもじしている。
 ああ、これは縁日だ。水辺の縁日だ。そう思った。そして、冒頭のイベントプロデューサーの言葉を思い出したのだった。やっぱり人は水のそばにいるのが好きなのだ。そして涼しい水辺と気の合う仲間たちは、一週間の終わり、その夕暮れどきによく似合う。
 祭りが好きで、雑踏が好きで、買い食いが無性に好きな私は、どこまでも続く屋台を覗き込むのに夢中になりすぎて肝心のサンセットを見逃してしまった。「台湾で一番美しい夕陽だよ」と教えてくれた陳さんには申し訳なく思ったが、楽しいのだから仕方ない。なにしろメダカすくいの出店では日本の夜店で鍛えた技を披露して子供たちから尊敬のまなざしを頂戴した(すくっている途中で気がついたが、泳ぎまわっているのはメダカではなくボウフラ退治で有名なカダヤシだった)し、ボードゲームの店ではルールも理解しないまま大当たりを出して皿いっぱいのお菓子をゲットした。気がつくと、日はとっぷり暮れていた。

 楽しい時間を過ごし、再びMRTに乗って台北に戻ると陳さんからの電話が鳴った。「いま仕事が終わったよ。最後の夜だから一緒に食事しよう」。そう誘っていただいたレストランの中庭には、ハスの浮かぶ池がライトアップされていた。ゆらゆら揺れる幻想的な水面をながめつつ、おいしい台湾料理を腹いっぱいいただく幸福感。陳さんは最後まで夕陽の感想を求めなかったが、台湾料理のおいしさと台湾の女性の美しさを少しだけ自慢した。


高梨 篤史●たかなし あつし
旅と読書と釣りとスポーツを愛するPR誌編集者。プロ野球台湾シリーズの日程に合わせて無理やり出張を組んだものの、高雄ラニューの4連勝で第5戦のチケットは紙くずに。1965年、千葉生まれ。



キャビンの棚
 すっかり人気の少なくなったマリーナ。ボートのデッキに枯葉が一枚、落ちていた。あの、ジャズのスタンダード・ナンバーの歌詞を思い出す。

 「枯葉」は1945年にジョセフ・コスマがバレエ曲「ランデ・ヴー」のために作曲し、後にアメリカの作詞家、ジョニー・マーサーが英語の詞をつけたことで、脚光を浴びたシャンソンだが、マイルス・デイビスが演奏してジャズのスタンダードとなった。何度聞いても飽きないのは、秀逸なメロディのなせる技かもしれないが、多くのアーティストが取り上げ、原曲をイメージさせないほどのアレンジが生まれてきたこともその理由かもしれない。
 1982年に録音されたサラ・ボーンの「枯葉」はその中でも異色と言っていいかもしれない。円熟期に録音されたその「枯葉」は全編、自由奔放なスキャットで歌い上げられている。「凄い」の一言。しかし、その中にも、過ぎた夏の恋を思う哀切が感じ取れるから不思議だ。

 「あなたの唇、夏の日のキス、つないでいた日焼けした手」
 自分の心象、というよりも、しばらくのとき放っておかれたボートが、オーナーに呼びかけているようだ。これを聞いたら足の遠のいたマリーナに出かけてみたくなるのではないだろうか。

「Crazy and Mixed Up」
SARAH VAUGHAN
「枯葉」サラ・ボーン
ビクターエンタテインメント
定価:2520円(税込)



船厨
 代表的なベルギー料理として知られる「ムール貝の白ワイン蒸し」。ムール貝は日本では貽貝と呼ばれ、北海道から九州まで分布するポピュラーな二枚貝だ。価格も手ごろでめっぽう旨いのに、スーパーや近所の魚屋さんではなかなかお目にかかれないのが残念だし不思議だ。
 開高健も「小説家のメニュー」のなかで、パリで食したムール貝を取り上げている。小説家は日本のフランス料理店のそれと比べ、こう書いた。
 「本場のムール貝はもっとざっかけなく、もっと野蛮で、もっとゴーロワ精神にあふれていた。スープストックをとる大鍋に何十個というムール貝を入れ、スープとバターをちょっと、玉ネギとニンニクをわずかに、そこへパセリを刻んだのをパラパラとふりかけ──タイムは入っていたかどうか──、それがドーンとばかりにテーブルに置かれる」(小説家のメニュー/中公文庫)。
 合わせるワインはよく冷えたシャブリであることは言うまでもない。
 小説家はムール貝の別名「東海夫人」という呼び名を紹介しながら、その貝の妖しい姿形を嗤うが、それについてはさまざまな書物に紹介されてる。「百魚歳時記」(岩満重孝著・中公文庫)でもヨシハラガイなど、ユニークな方言を紹介している。
 何はともあれ、ノロウィルスの蔓延で悪役になっている二枚貝であるが、風評に惑わされることなく、冬の味覚を存分に堪能したい。
 
ムール貝の白ワイン蒸し
●材料(2~3人分)
ムール貝1kg、白ワイン100cc、バター40g、エシャロット(またはタマネギ)1個、にんにく1かけ、パセリ少々、ローリエ1枚、胡椒適宜

●作り方
1)貝を掃除し、貝から出ている「ひげ」を取る
2)鍋にバターを入れ中火にかけ、温まったらみじん切りにしたにんにくを入れ、香りがたったらみじん切りにしたエシャロットを入れ、胡椒を加えて炒める
3)ワインを入れてスープを作る
4)ローリエとムール貝を加え、火を強火にして、ふたをして3~4分蒸す。ムール貝に海水の塩分が多量に含まれているので、塩は不要



海の博物誌
 地表の70%を覆う海。世界の7つの海には北大西洋海流や南インド洋海流など、それぞれ大きな海流がある。エルニーニョ現象で海洋と大気の関係がしばしばクローズアップされているが、偏西風の影響を受け南下する親潮や貿易風により北上する黒潮に代表されるように、多くの海水は風速の二乗に比例する「応力」と呼ばれる力が原動力になって流れを作っている。
 日本近海を流れる「黒潮」は北半球の亜熱帯循環の西側を流れる海流の名前で、北大西洋のガルフストリームとならんで世界でも最大の海流である。1秒間の水流はおよそ5000万m3、海流の幅を100kmとすると深さ500mまでの海水が毎秒1mで流れる計算になる。
 海流には、高気圧や低気圧と同じように、温度や塩分の違いにより海面の隆起を表す高圧部と低圧部がある。黒潮の北側と南側ではその差が約1mほどあり、八丈島でも島の北側と南側では水位の差が1mと観測されている。
 また、黒潮には他の海流には見られないへそまがりな特徴があり、「黒潮大蛇行」と呼ばれている。通常は四国から本州南岸に沿って流れる黒潮だが、紀伊半島沖に冷水の湧昇が起きるとそれを迂回するように沖合に蛇行するのだ。世界でも最大級の海流の蛇行は漁業のみならず船舶の運行さえも影響すると言われ、1度へそを曲げると1年以上は続くと報告されている。
 ちなみに黒潮は世界でも「KUROSIO」で通じるそうだ。



ヤマハニュース

「マリンクラブSEA-STYLE」サイトリニューアル!
全国120のホームマリーナで気軽に楽しめる会員制レンタルボートクラブ。

「マリーナ百景」 岡山県の宮浦マリーナ
瀬戸内海のマリンライフを満喫できるマリーナをご紹介します。

「カジキ釣講座」更新
ルアーリギング。その1「スカートのはかせ方」について

漁船や沿岸漁業の情報「大漁ネット」更新
設計室だよりから、小型漁船の技術情報についてご紹介いたします。

ネットTV「Captain’s World TV 」 世界の水辺から「シンドバッドの海 オマ ーン」
マリンレジャーやマリン文化をテーマに最新の映像でレポートしています。


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【編集航記】
新たな年を迎え、皆様いかがお過ごしでしょうか。「初日の出」や「初夢」など何かと「初物」が取りざたされるこの季節ですが、今年最初の海はいつになりそうですか? サラ・ボーンの「枯葉」で取り上げたとおり、いまごろ愛艇があなたを待ちこがれているかもしれません。「初乗り」はお早めに。(編集部・ま)

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