ソルティライフ ソルティライフ
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イラスト・Tadami
いつでも潮気のある生活を過ごしたい。
MONTHLY COLUMN 極端な環境が新しい感覚を掘り起こす
キャビンの棚 往時の艦船に思いを馳せる
船の科学館資料ガイド7 「幕末の蒸気軍艦 咸臨丸」
船厨 北前船の交易から生まれた食文化「ニシンそば」
海の博物誌 三交代勤務の元祖・ワッチ
YAMAHA NEWS 「見て、触って、乗って」ヤマハボート展示試乗会に行こう!/クルージングボート「CR-28FB スペシャルパッケージ」登場!/「カジキ釣講座」更新/漁船や沿岸漁業の情報「大漁ネット」更新/船外機ボート流し釣りキャンペーンのご案内
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MONTHLY COLUMN
 以前、シーカヤック専門誌の取材で、瀬戸内海をシーカヤックでツーリングしたことがある。普段、セイリングでのスピードに慣れている身からすると、ロウイングだけで進むシーカヤックのスピードは、いかにも遅々としたものだった。外洋のように海しか見えないロケーションではこのスピードは拷問だろうなあと思いつつ、しかし瀬戸内海のような変化に富んだ多島海では、この歩くようなスピードが何だか妙に心地よく、海上散歩の気分を満喫できた。
 そのとき驚かされたのが、同行したベテラン・シーカヤッカーの潮(潮流)に対する感覚の鋭さである。乗り手の腕っ節だけが動力のシーカヤックに潮流が及ぼす影響はヨットの比ではない。潮の読み一つで目的地への所要時間が大幅に異なり、それはそのまま自分の体力消耗度に跳ね返ってくるのだ。
 だから、彼らは事前に潮の情報を実に丹念に分析する。セイラーが風を読むように、彼らは潮を読む。海上での感覚も実に鋭く、僅かな潮の変化も敏感に感じ取っていた。
「さすがに潮には敏感なんですねえ」
 と感心してみせると、そのベテラン・シーカヤッカー氏は、
「リバーカヤックの連中にはかないませんよ。一度、リバーの連中といっしょに海をツーリングしたことがあるんですが、彼らの『流れ』に対する感覚の鋭さには驚かされました。彼らは常に流れの中で遊んでいますから、潮流の使い方が実に巧いし、流れを見つける感覚も鋭いんです」。
 確かに、川の流れは潮流の比ではない。流れているのが当たり前というゲレンデで育ったリバーカヤッカーが、流れを利用する術に長けているだろうことは想像に難くない。しかし、そんな極端な流れを日常とする人々が、微細な流れにも敏感であるというのは、少々意外な事実だった。
 この言葉を聞いて思い出したのが、大学ヨット部時代のこと。私が在籍していたヨット部には高松(香川県)出身のセイラーが数人いて、彼らの潮に対する感覚は例外なく鋭かった。鋭いというより、他のセイラーにはない感覚を有していると言った方が正確かもしれない。彼らは練習後のミーティングで、他の誰もが気づかなかった微細な潮についてたびたび言及した。
「そんな潮あったっけ?」
 というその他大勢の部員をよそに、
「スターボで走っていると、風下前からピチャピチャきたよな」
「そうそう、特に上マークのあたりね」
 なんて周囲を置き去りに議論していた。
 瀬戸内海の高松付近は複雑で強烈な潮が流れている。時にその海面は、まるで川のようにさざ波を立てて流れている。レース中にアンカーを打つことすらあるという、そんな極端な海面で育った彼らだが、他の誰もが気がつかないほど微少な潮流を感知する繊細な感覚をも身に付けていたのである。
 そんなことを考えているうちに、もう一つ思い出したのが、山中湖育ちのセイラーのこと。大学ヨット部を卒業してから、1年半ほど山中湖でヨットに乗る機会があったのだが、周囲を山に囲まれた湖というゲレンデは海では考えられないような風の変化が日常的で、フルトラピーズでクローズホールドを走っている最中に、いきなりタッキングするほどのシフトに襲われることなど珍しくなく、ひどいときはスピンランの最中に真正面から風が吹いてくることすらあるという極端な水面だった。
 ここでヨットをおぼえた地元の高校生たちは、シフトの使い方が実に巧い。彼らにとってヨットレースとは、他人より速く走らせることではなく、他人より巧くシフトを拾うことに他ならないからだ。そんな極端なゲレンデで育った彼らが、大学に進学して海でヨットに乗るようになると、今度は海風特有のじんわりとしたシフトをも実に巧くとらえて利用したりする。
 これらの実例を並べるに、どうやら極端な環境に身を置く方が、感覚は磨かれるようだ。というよりも、極端な環境が「眠っていた感覚を掘り起こす」と言った方が近いかもしれない。
 と、ここまで考察を進めてきた時点で、もう一つ思い出したことがある。以前、ベテランのヨットインストラクターを取材した際に聞いたことだが、彼が言うには、ヨットを揺らさずにじっと走らせるような練習は意味がないらしい。タッキングやジャイブのように、ヨットを大きく動かすような練習を繰り返すことによって初めてフネをコントロールする感覚が身につくんだそうな。自在にヨットをコントロールする感覚が身につけば、ヨットを揺らさないで走らせるテクニックも身につくということらしい。
 この例もまた、先の極端な環境の例に通底する何かがあるような気がする。
 じっとしていても繊細な感覚など身につかない。極端な環境に身を置くなど、アグレッシブに振る舞うことによって眠っていた感覚が掘り起こされ、さらにその環境に身を置き続けることで感覚は磨かれ、ついには高感度センサーができあがる。なんだか新たなトレーニング理論の糸口となりそうな考察のような気がしてきた。
 その道の専門家ではないので美しい結論を導くことはできないが、これからマリンスポーツにチャレンジしようとする人の何らかのヒントになれば、と思いまして。


松本和久●まつもとかずひさ
1963年生まれ。愛知県出身。ヨット専門誌「ヨッティング」編集部を経て、1995年にフリーランスの写真記者として独立。現在「舵」誌でヨットレー スを中心に取材。ヨットレースの他にも、漁業や農業など第一次産業の取材も得意とする。



キャビンの棚
 幕末の万延元年(1860)、日本の軍艦として初めて太平洋を横断し、アメリカ大陸へと航海した蒸気船「咸臨丸」。黒船の来航に対して江戸幕府が洋式軍艦の配備を決定し、オランダの協力の下、安政4年(1857)に完成した。「咸臨丸」は勝麟太郎(後の海舟)らを乗せてアメリカにわたった後、横浜港の警備や小笠原諸島の調査といった任務を経て、「箱館戦争」にも参加したが、明治4年(1871)、北海道・木古内町の沖で座礁・沈没した。
 「咸臨丸」は広くその名を知られながらも、船舶としての全貌を記す資料が乏しく、写真も残っていなかったが、このほど、船の科学館が「咸臨丸」の建造150周年を記念して資料集「幕末の蒸気軍艦 咸臨丸」を冊子として発行した。これまで詳細が不明だった咸臨丸の全体像に迫り、オランダの海事博物館にあった同型艦の設計図や多くの資料を基に制作された。その誕生から沈没までの歴史のほか、「汽走時の精密側面イラスト」「ボイラ」「内部精密解剖図」「蒸気機関」「帆走時の精密側面イラスト」など船体構造についてのイラストも多く添えられている。とてもわかりやすく、往時の船内の様子を克明に浮かびあがらせている。
 船の科学館ではこれまで同様の資料集をすでに6巻(「黒船来航」「南極観測船 宗谷」「戦艦 三笠」など)発行している。

船の科学館資料ガイド7
「幕末の蒸気軍艦 咸臨丸」
編集・発行/
(財)日本海事科学振興財団
船の科学館
定価/300円(税別)



船厨
 北海道や東北から、経済の中心地・上方への物資は、江戸時代の中期までは福井の敦賀などを経由して、陸路や湖を介して運ばれていた。ところが、17世紀の中頃、西回り航路、つまり、山陰地方から下関、瀬戸内を回って大阪に至る航路を開拓し、以降、その航路が海路交易の中心となった。陸路や水路を何度も経由することから生まれた運送コストを抑え、物資の損傷などを防ぐことになったのだ。
 そして18世紀の後半になると、銭屋五兵衛などの船主で知られる「北前船」が交易船として活躍し始める。北前船は、最盛期で1年間に2~3回の航海を行い、寄港地で荷を積んでは売りさばくという商法を行い、寄港地の庶民の生活は確実に豊かになっていったとされる。家財道具、衣料、日用品、食料など、海からもたらされた交易品の数々は、日本海の各地ばかりでなく上方の文化形成に影響も及ぼした。北海道からは多くの海産物が上方に持ち込まれるようにもなった。ニシンと昆布はその代表である。京都・錦市場に、昆布や、昆布を使った名産品が並んでいるのには、こうした背景がある。また、江差から運ばれたニシンは肥料に用いられただけでなく、干し数の子、干し白子、ニシン油などに使われた。
 京都の名物の一つである「ニシンそば」は北前船の交易によって生まれたといえるが、その歴史は意外と浅く、明治15年に京都の蕎麦やの老舗「松葉」の二代目が編み出した。じっくりと丁寧に煮込んだニシンの棒煮と蕎麦という意外な組み合わせは、瞬く間に人気を呼び、京都の名物として知られるようになった。
 ギャレーでつくる自作のニシンそばは、「松葉」の秘伝には遠く及ばない簡単なものだが、普段は軽食扱いの蕎麦が少し豪華に、そして古を思わせる、ちょっと風情のある馳走となった。
ニシンそば
●材料
蕎麦、そばつゆ、ニシンの棒煮、長ネギ(千切り)、切り餅
●作り方
1)蕎麦を多めのお湯で茹で、ザルで湯を切る
2)椀に蕎麦を盛り、ニシン、長ネギ、焼き餅を飾り付ける
3)そばつゆをかけてできあがり
※蕎麦を自分で打つ、つゆを自作する、ニシンを自ら煮る。手間をかければかけるほど味わいも深かろう。お試しを。
※ニシンの棒煮は甘いので、つゆの味加減も工夫を。



海の博物誌
 自動車に安全運転義務があるように、船にも海上衝突予防法というものがあって、「常時適切な見張りをしなければならない」ことになっている。特に大きい船は、夜も昼も航海を続けるから、見張りを含む全ての業務が交代で行われる。コロンブスの時代の帆船では、4時間勤務4時間休憩が基本。つまり2交代12時間労働だった。このシステムは「シー・ワッチ(航海当直)」と呼ばれ、今も使われている用語だ。当直をオン・デッキといい、非番をビローというのもこのころの名残である。
 やがて汽船が増加すると、これでは厳しすぎるということになり、4時間当直8時間非番という8時間労働3交代24時間操業の体制ができた。しかし、それも同じ時間ばかりに着くと勤務に飽きるということで、夕方4時から8時までを2つに区切り、宿直時間に変化をつける方式が考え出された。これを「ドッグ・ワッチ」という。
 ワッチとは、もちろん Watchのことで、見る、見張り、不寝の意味だが、ドッグの語源は定かでない。



ヤマハニュース

「見て、触って、乗って」ヤマハボート展示試乗会に行こう!
今週末の神戸国際ボートショーを始め、全国のイベントをご案内いたします。

クルージングボート「CR-28FB スペシャルパッケージ」登場!
洗練されたフォルムに、さらにひとつ上のステイタスを目指したスポーツ・クルーザー

「カジキ釣講座」ワンポイントアドバイス更新
ボート遊びの王道!シーズンイン前にチェックをお忘れなく!!

漁船や沿岸漁業の情報「大漁ネット」
設計室便りより、今回はFRP和船の初期開発時代のお話しです。

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オフセットスパンカーで釣果アップ!ボート購入をご検討の方は要チェック!


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【編集航記】
春は、あけぼの。やうやう白くなりゆく山ぎは、少し明りて、紫だちたる雲の、細くたなびきたる。
明け方の東京湾に引き波を描きながら、枕草子を思い出す。清少納言が目にした風景とは全く異なるだろうが、自然の海岸線の極端に少ないこの海辺の空にも春の気配が色濃くにじむ。四季の移り変わりは野山だけに見られるものではない。空の色や、水面につくられるさざ波の表情、空飛ぶ鳥の姿など、彼女が思った四季それぞれのお気に入りの表情は、東京湾にでさえ今も見ることができる。日本の海は素敵だ。(編集部・ま)

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