ソルティライフ ソルティライフ
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イラスト・Tadami
いつでも潮気のある生活を過ごしたい。
MONTHLY COLUMN いざ、街中の海へ
キャビンの棚 少年時代にあった冒険心を取り戻す「海底二万里」
船厨 世界の珍味を贅沢に「キャビア」
海の博物誌 魚にはバックギアがない
Salty One Day Boating 東京湾の欲ばりな一日
YAMAHA NEWS 「カジキ釣り講座」更新! /「マリン体験レポート」/「大漁ネット」更新!/「海の思い出アルバム2008」募集/「ボート免許+マリンクラブ入会キャンペーン」実施中!
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MONTHLY COLUMN
 マリンスポーツのフィールドは海。海へと行かない限り、どんなスポーツだろうと楽しむことはできない。
 「人生は短い。だから、やりたいコトをやりたい順番にやるんだ」。
 波があればサーフィンへ、風が吹けばウインドへといった具合に、マリンスポーツに没頭していた若い頃は、学業もそこそこ、さらには定職にも就かず、海遊びに興じることが許されていた。
 縛られるのが嫌で、今、考えるとかなり長い間、悪あがきしていたが、一度、定職に就き、社会の仕組みの中に組み込まれると、なかなか思い通りにはいかないもの。せっかく波があるのに、せっかく風が吹いているのに、世の中の大部分の人たちが楽しむのと同じように、仕事のない休みの日にしか、海へと行けなくなってしまった。
 大部分の人たちがそこで楽しむマリンスポーツなのに、まだまだ悪あがきを止めない自分の取った行動は、会社までの通勤を考えずに海際に住まいを借り、片道2時間弱の通勤時間を費やすことを承知で、ゲレンデの近くに住んだ。
「海を近くで感じていたいから」。
 何という悪あがき。おまけにあらためて字面を見返すと、ちょっと顔を赤らめてしまいそうになってしまうが、そんな海に対する忠誠心にも似た心持ちに、今でも救われている気がする。
 雑誌や本を読んだり、道具の手入れをしたり、仕事の行きや帰りに海際を通ってみたり。海に行けない日の、海との関わり方。生業をマリン雑誌編集にしていた頃はまだよかったのだが、今の自分を見てみると、海に関わることのできる仕事の機会はごく限られたもの。どちらかといえば、仕事のフィールドも海から街へ移ってしまっているのだが、「海を感じていたい」という思いがあれば、街にいながらも、そんなチャンスは巡ってくる。

 あまり夜の街に出掛ける習慣のない自分だが、地元にある奄美料理の店へと仕事仲間に連れられて出掛けた。マスターは奄美出身。仲間のハナシによると、ここのマスターは若い頃ウインドの競技者として、かなりの腕の持ち主だという触れ込みだったので、期待して店の中へ。
 どちらかというと朴訥なカンジで取っ付きにくく、初日にはほとんど言葉を交わすことなく店を後にした。もちろん奄美の黒糖焼酎や料理も旨かったのだが、店の片隅に置かれた小さなモニターにずっと映し出されていたサーフトリップのムービーが気になって仕方なかった。
 それから何度か友人と連れ立って、その店を指折り数えて足りるほどは訪れたが、奄美の酒と料理、仲間やマスターとの会話を楽しみながら、いつものように流れるサーフトリップのムービーを眺めるというコトを繰り返していた。が、とある日、チャンスは突然巡ってきた。いつものように酒と料理、時々ムービーを楽しみながら友人との会話を楽しんでいると、業者さんらしきひとが、見たこともない遊び道具を持ち込んできた。カイトボードだった。店の常連客の誰かが買ったものらしく、その納品の現場に立ち会ったのだ。申し訳ないが、料理や酒、友人さえもそっちのけで、その突然訪れた偶然に、今思うと周囲が呆れても仕方ないほど、興奮してしまった。

 小一時間ぐらいは過ぎただろうか、興奮冷めやらぬうちに、店の片隅にあるモニターには、いつものサーフトリップのムービーではなく、カイトセーリングのムービーが。そんなマスターの気遣いが何だかとても嬉しくて仕方なかった。
 それ以降、自由な時間がめっきり減って、季節は移り、ゲレンデも海水浴などで混み合う夏に。結局、カイトの撮影や挑戦というチャンスに恵まれていないが、期待もない偶然から、街の中にも「海を感じるヨロコビ」があるものなんだな、と思えるようになった。
 久しぶりに、今夜は街中の海へ出掛けてみようか。


江上真●えがみ・しん
月刊誌「ヨッティング」の編集部を経て、97年よりフリーランスとして西日本を中心に漁業や農業など田舎ならではの第一次産業分野を中心に取材活動している九州在住の写真記者。マリンスポーツへの向き合い方の信条は、今も昔も、浅く広くそして楽しく。1963年生まれ。



キャビンの棚
 1866年、謎の動く暗礁が、次々と海難事故を引き起こす。その謎の究明のためにパリ科学博物館のアロナックス教授は太平洋に向かう。そこでネモ船長指揮する潜水艦ノーチラス号に捕らわれ、世界中の海を一周する大冒険にまきこまれるという不朽の名作が「海底二万里」だ。
 「SFの開祖」といわれるジュール・ベルヌ。代表作はこの「海底二万里」をはじめ、「十五少年漂流記」「八十日間世界一周」など、いずれも今から120年ほど前に発表された長編で、科学の発達を正確に予言した書として名高い。
 ベルヌは1828年にフランスの港町・ナントで生まれた。父は海事法の専門家で資産家、母は商人と船乗りの家系。しかもナントは世界各国から船員が上陸する港で、小さいころから外国の話を聞き、憧れをつのらせていった。
 その結果、11歳にして西インド諸島域の帆船に乗り組もうと企てる。船に向かってこっそりと漕ぎだしたベルヌ少年は、父親に見つかって連れ戻され、法律の勉強を強いられる。しかし、パリで法律の勉強を終えたあとも故郷には帰らず、貧乏作家の道を選んだ。
 「海底二万里」は、そんな少年時代からの海への憧れと、膨大な資料研究の結実である。
 なお、ノーチラス号のネモ船長のキャラクターは、『白鯨』(メルビル・1851年)のエイハブ船長の影響が大きいといわれる。
 「海底二万里」
 著者/ジュール・ヴェルヌ
 訳/荒川浩充
 発行/創元SF文庫
 定価:945円(税込)



船厨
 世界三大珍味といえば、フォアグラ、トリュフ、そしてキャビア。フォアグラはガチョウやカモの肝臓、トリュフは西洋松露という名のキノコですね。そしてこのキャビアはチョウザメの卵。いずれもヨーロッパの「珍味」であって、我々日本人にとって、その味の評価は実のところさまざまでしょう。トリュフにかわる「無味でありながら薫り高い」キノコは、日本でもすばらしいモノがあるし、魚卵にしても同様です。でも、珍味というだけあって「高級食材」であることには変わりません。さらに、フォアグラは飼育法における強制給餌が原因で「動物虐待」との評価で製造が各国で禁止されたり、トリュフは収穫が激減しているニュースがつい最近話題になったり、キャビアはというと、やはりカスピ海でのチョウザメの個体数が激減したりと、ますます「希少」ムードは高まっています。
 さて貴重な「キャビア」をアゼルバイジャンの知人から頂戴する、幸福な機会に恵まれました。この高価な食材をいかに食するか。ロシアではブリニといわれるパンケーキのようなモノに載せて食べることが多いらしいが、さんざん悩んだ末に選んだのは「キャビア丼」。アツアツのご飯にキャビアを惜しみなくガツンと載せ、わさび醤油を軽くかけ回し、さらに、海苔などをぱらりとふりかける。そう、イクラ丼のイクラの代わりにキャビアを使ってみました。
 昔知人から言われた言葉を思い出したからです。
「キャビアよりイクラの方が旨いという人がいることは理解できる。だが、それはキャビアをイクラ並みにたっぷり食べてから言ってみろ。俺はそう思う」
 知人の「戒め」によれば、これで、筆者も「キャビア」を語る資格を得たわけです。で、その評価は「イクラ」と「キャビア」まったく違うモノです。そしてどちらも、めちゃくちゃ旨い!
キャビア丼
作り方というほどのことはない。アツアツのご飯にキャビアの塩漬けを載せるだけ。もともと塩味が強めなので、そのままでも充分旨いが、好みによって軽くわさび醤油をかけてもよい。惜しみなくたっぷりと珍味を頬張る。



海の博物誌
 ヨットが風上へ向かう場合は、まっすぐに風に向かうことはできず、風向に対しておよそ左右45度ずつの角度でしかセイリングすることができないので、右に走り、左に走り…を繰り返しながら風上に向かう。魚の泳ぎ方はこれに似ている。
 どんな魚でも、長い距離を直線的に泳ぐことは少なく、あっちへスーイ、こっとへスーイという感じで泳いでいる。そしてエサを見つけたときだけはピューと直行する。
 大きな海流に乗って回遊する魚も、直進しないといわれている。海流の中で大きな円を描いて群泳しながら、円全体が海流の方向へ移動していくのである。
 いずれにしても背を上に、腹を下にして泳ぐわけだが、ここにも例外ありで、サカサナマズという背泳ぎの名手がいるし、ヘコアユというのは逆立ちの立ち泳ぎ、タツノオトシゴやタチウオは頭を上にした立ち泳ぎをしている。エサをとるときや敵に襲われたときは、背を上、腹を下にして横向きに泳ぐ。タチウオの場合は蛇のようなクネクネ泳ぎである。
 また、魚は後へは泳げない。バックギアがないのだ。網に突っ込んだような場合でも後ろ向きに泳げないから、ともかくUターンしようとする。それでヒレなどが網にからまってしまう。刺網漁はこの性質を利用したものだ。



Salty One Day Boating
 免許取得後、はじめてレンタルボートでクルージングしたのが八景島。そのときはシーパラダイスマリーナ(横浜・八景島シーパラダイス内)から横須賀市沖にある猿島へと向かった。多くの人工島が存在する東京湾内で唯一の自然島。そこでマダコを釣った。カニの形を模したルアーでがっしり生け捕り。生きたカニも仕掛けたが、殻を残し実だけスルッと抜かれていた。重さは何も感じなかったな。あれから1年になる。操船技術はなかなか自慢できるものではないが、海の素晴らしさは愉快なほど語れるようになったと思う。

●天秤

 AS-21にキス竿とタコの仕掛けをスタンバイさせ、出港。「平成20年8月末豪雨」と命名された連日の大雨で、海は濁っていた。
 流木をよけながらキス釣りポイントへ。サーフコースターの横を4000回転で通過し、快調なボートの走りを楽しむ。
 海上レストラン横のポイントに到着。魚群探知機で4M~5Mの浅場を探るがまったく魚影なし。
 「この辺にしましょうか」
 マリーナのサトウさんに促され、オープンデッキから錨打ちする。天秤を投げ込む。底を意識しながら、少しずつ寄せるが、反応はなし。
 「やっぱり釣れないですね」と振り向くと、ハルの横から無造作に垂らしたサトウさんの仕掛けにヒットしていた。魚影が魚探に映らないのは濁った水のせいらしい。その後は船の真下にいるキスが面白い程かかった。

●造船所でタコを狙うが

 2時間ほどキス釣りを堪能し、次はタコ釣りスポットへ。
 造船所前で仕掛けの生カニを落とす。底に到達すると凧糸から潮の流れが伝わってきた。けっこう速い。しゃくりながら少しでも「異変」を感じたら素早く引き上げる。が、キスのようにうまくいかない。
 「海中に潜ってタコを探した方がラクかも」
 サトウさんがにっこりと笑う。
 マリーナのサトウさんは沖縄で5年の経験を積むダイバーでもある。潜って魚を捕まえるなど、訳もないかもしれない。
 タコ釣りを早々に引き揚げ、クルージングを楽しむことにした。
 猿島を右手に追いやり、第三海保と観音崎の間をすり抜け、ひとしきり雨の降ったあとの澄んだ空気を切り開きながら浦賀水道に入った。AS-21は海面を滑るように走行してくれる。

●東京湾海底谷への想い

 クルージングしながら海流の通り道となる、海岸域の岩肌に想いを馳せた。
 東京湾には12万年から2万年前の古東京川をきっかけにできたといわれる「東京湾海底谷」がある。
 富津、三浦半島から徐々に深くなり、相模灘では水深約1000mの大峡谷(深海)となる。普通、深海は海の砂漠と呼ばれ、生き物が寄り付かないそうだが、「東京湾海底谷」には沢山の生物が蠢きあっている。
 ヘドロが浄化されたことや、江戸川、荒川等から流れ込む生活排水の一定化した水温、外海に面した浦賀水道の水質の良さが相まって、豊富な栄養を称えた「マリンスノー」が深海へと降り注ぎ、豊かな環境を創りだしている。タカアシガニ、アンコウ、カサゴ、他、高級魚介類の漁場としても有名だ。ミツクリザメ等、古代魚も生息している。
 「東京湾海底谷って聞いたことありますか? この下にあるそうなのですが」
 「東京湾の“珊瑚の森”なら、水族館にありますよ」
 東京湾にあるもう一つのサンクチュアリ、シーパラダイスの水族館に向けて、AS-21を緩やかにターンさせた。


●欲張りな一日を実現できる

 「東京湾“珊瑚の森”」は、横浜・八景島シーパラダイス内の「アクアミュージアム」にあった。アカヤギ、オウギヤギ、イボヤギが紅葉した森のように見える。“珊瑚の森”の先には、東京湾海底谷に生息する世界最大級のカニ「タカアシガニ」の水槽があった。 甲幅33cm、生息深度50m~300m。
 「タカアシガニ」が迷惑そうにこちらを観察していた。
 お腹が空いたので、ちょっと早めのディナーに向かった。先ほどのキス釣りポイント横にある海上レストラン「SEMPLICE」をチョイス。意外と知られていない穴場的スポットで、夕日が美しいらしい。店名はイタリア語で「シンプル」を現す。素材そのままのうま味を活かした本格イタリアンが食べられる。
 クルージング、そしてキスやタコの釣り、水族館見学を楽しんで、美味しいディナーに舌鼓。なんと欲張りな一日だろう。こんなことが実現できるのも、シーパラダイスマリーナならでは。忙しい都会の海好きにはたまらないスポットかもしれない。

取材協力

横浜・八景島シーパラダイス
●〒236-0006 横浜市金沢区八景島
●TEL: 045-788-8888(テレフォンインフォメーション)
●ホームページ:http://www.seaparadise.co.jp/

横浜・八景島シーパラダイス内海上レストラン「SEMPLICE」
●TEL: 045-788-9667
●ホームページ:http://www.seaparadise.co.jp/baymarket/semplice.php

シーパラダイスマリーナ
●〒236-0006 神奈川県横浜市金沢区八景島
●TEL: 045-781-1012
 ※マリーナ事務所は「ホテル シーパラダイス イン」の中にあります。
●ホームページ:
https://marine.yamaha-motor.jp/Sea-Style/Common/Marina_Common.asp?marina_cd=80389373




シーパラダイスマリーナは会員制のマリンクラブ「Sea-Style」のホームマリーナのひとつ。「Sea-Style」は全国約130ケ所のホームマリーナで気軽にボートをレンタルし、楽しむことができます。


レポート:菊地眞弓(きくちまゆみ)
今は無き伝説のアウトドア雑誌「アウトドア・イクイップメント」編集員を経て、フリーライターに。趣味は旅・食・酒。魚釣りときのこ狩りに費やす時間は人生の宝。東京生まれ。
久しぶりにあがった雨。雲行きはまだちょっと怪しいが風が気持ちいい
今日はAS-21で釣りとクルージングを存分に愉しむ予定
サーフコースター横を伸び伸びと走る
いいサイズです!
ここは地元で有名なタコスポット
東京湾海底谷入り口の岩肌に生息する“珊瑚の森”
八景島といえばやっぱり「海獣」。アクアチューブ越しに見るイルカ達の姿は幻想的
リバーボートをイメージして造られたクラシカルな遊覧船「パラダイスクルーズ」が気分を盛り上げてくれる




ヤマハニュース

「カジキ釣り講座」 第30回下田国際カジキ釣り大会参戦レポート!
オフショアフィッシングの醍醐味。ボートでのカジキ釣りをご紹介します。

「マリン体験レポート」 全国マリンジェットツーリング2008 松島・金華山など。
ボート、マリンジェットの遊び体験やボート免許取得体験などをご紹介します。

漁船や沿岸漁業の情報「大漁ネット」今月は設計室便りを更新!
日本全国津々浦々で行われている沿岸漁業を漁法別にご紹介します。

「海の思い出アルバム2008」海で見つけた思い出のシーンを大募集!
皆さんの応募作品をアルバムにして、もれなくプレゼントします。

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【編集航記】
 8月の末、関東地方は前線の影響で悪天候続き。おかげで楽しみにしていた釣りの計画も2週続けて中止せざるを得ず、誠に欲求不満な夏となってしまいました。ただ、その前線に伴う大雨により、各地で大きな被害が出たこと、それについてはただ、ただ、お見舞い申し上げるばかり。自然の猛威を改めて実感した夏となりました。(編集部・ま)

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