ソルティライフ ソルティライフ
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イラスト・Tadami
いつでも潮気のある生活を過ごしたい。
MONTHLY COLUMN 島の物語
キャビンの棚 サウダージに満ちあふれた歌声に癒される「ルアール」~海を渡った人たちへのオマージュ
船厨 極上のひととき、干物で一杯。「鯖の干物」
海の博物誌 笛吹けば乗員みな踊る?
Salty One Day Boating 秋晴れ東京湾でボートピクニック
YAMAHA NEWS 「カジキ釣り講座」更新!/「マリン体験レポート」更新!/ヤマハボート全国展示試乗フェア/新製品フィッシングボート「ベイフィッシャー 25」/「ボート免許+マリンクラブ入会キャンペーン」実施中!/「マリーナ百景」更新!
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MONTHLY COLUMN
 日本のダイバーやGT(ロウニンアジ)アングラーにおなじみのパラオ。200もの島々で構成された独立国家だが、人口はわずか2万人ほど。ロック・アイランドをはじめ、美しい海と自然を残す、天国のような島である。
 パラオは、1500年代にスペイン人によって「発見」されたことになっている。我々は、こうした島々に対してごく当たり前のように「発見」という言葉を使うが、もちろん、パラオには1500年代当時、とっくにミクロネシア人が住んでおり、その人々は、「発見」した当の本人が驚かされるほどの航海能力をもって、島々の間を自由に往来していた。
 多くの島には、それが史実であれ、伝説であれ、その島古来の誕生の歴史がある。
 日本列島はイザナギとイザナミが天の橋から矛で混沌をかき混ぜて作ったという、いわゆる国うみの神話が伝わっている。作業が終わって矛を取り上げたときに落ちた滴が淡路島になったというこぼれ話も有名だ。
 世界遺産として知られるベトナムのハロン湾は、かの昔、敵国の攻撃を受けた際、龍の親子が降りたって敵を討った。そのときに龍が吐き出した宝石が海に散らばり、今の美しい島々になったとされている。
 さて、観光ガイド本で知ったのだが、パラオでも同様の伝説があって、それが少しユニークだ。
 パラオにまだ二つの島しかなかった大昔、生まれたときからハイハイするような異常に成長の早いウアブと名付けられた子供が生まれた。その成長はとどまることを知らず、どんどん大きくなる。食欲も旺盛で大飯食らい、そのうち、島の牛や子どもまでも捕まえて食べるようになってしまった。弱り果てた島の人々は、「ご馳走するから」とウアブをだまして連れだし、彼を縛り上げて火をつけた。ウアブは島の端から苦しみながら海に倒れ込んだ。その亡骸はばらばらになり、それぞれ今のパラオの島々になったと伝えられている。焼けた片足はコロール島になった。いまは、観光・経済の中心地でもっとも人口の多い島なのだ。
 パラオの土産物のひとつにストーリーボードという工芸品がある。文字通り、一つの物語を一枚の木版に彫り込んだもので、それを見るとパラオにはさまざまな伝説が残され、それを大切にしているのだということがよくわかる。
 パラオの唯一の繁華街・コロールの外れにあったストーリーボードのアトリエを訪ねた。4~5人の職人が作業をしているところで、もっとも大きな木版に向かって作業をしていた職人のボードを見たら、ちょうどウアブの伝説を刻み込んでいるところだった。そのウアブはまるでガリバーのように巨大に描かれていた。
 このストーリーボードという工芸品は、実はパラオの伝統工芸というわけではなく、土方久功という日本人の詩人であり画家・彫刻家が伝授したものだ。彼はミクロネシアを愛し、長期にわたって滞在し、民俗学的な著書を多く著した。1929年にパラオに渡り、そのときに「イタボリ」、いまのストーリーボードを伝授したとされている。当時、パラオは日本による委任統治の時代。そうした中で、パラオの文化や歴史を消し去ることなく、むしろ尊重し、後世にまで残るストーリーボードを教えようと努力した人がいたことは、同じ日本人として少し嬉しい。
 海ゆくとき、沖に浮かぶ島々を眺めながら、その島の誕生の由来や伝説に想いを馳せるのも、クルージングの一興である。



田尻 鉄男●たじり てつお
外洋帆走部に所属しクルージングに明け暮れた大学生活、1年間の業界紙記者生活を経て、88年、プロダクションに入社。以来、日本のボーティングシーン、また沿岸漁業の現場を取材してきた。1963年、東京生まれ。



キャビンの棚
 今年は、日本人が移民事業としてはじめてブラジルに渡ってから100年目に当たり、「日本ブラジル交流年」として、さまざまなイベントが行われている。今年の5月に発売された松田美緒のアルバム「LUAR」(月光)も、ブラジル移民100周年記念アルバムとして作られ、これまでリリースしてきた3枚のアルバムの集大成として位置づけられている。
 松田美緒は、ファドに魅せられ、ポルトガルで学び、その後、カーボ・ヴェルデ(大西洋の島国)で歌手として滞在、現在は活動の拠点をブラジルに置いている。ブラジルの音楽、ポルトガルのファド、そればかりかポルトガル語圏のさまざまな音楽の歌い手として活躍中。その歌声はファーストアルバム「アトランティカ」の名の通り、大西洋を駆けめぐる風のようだ。
「LUAR」の冒頭に収められたのは「島唄」のポルトガル語バージョン。「遠く離れていても心のなかで固く結ばれたブラジルと日本の関わりを思って録音した」という通り、「サウダージ」の情感に満ちあふれている。「アトランティカ」にも収録された「サイコーだよ」も収録。これは大西洋のカーボ・ヴェルデに定着した、日本のマグロ漁船の乗組員が使った言葉「最高!」をテーマにした歌(詳しくはSalty Life 32号に掲載)。これもまた、文字通り、最高である。
 元気になりたい人にお勧めだ。
 「ルアール」松田美緒
 発売/ビクターエンタテインメント
 定価/¥2,500(税込)



船厨
 たまに出かける東京の新橋に昼間から行列のできる魚の定食屋がある。お気に入りは鯖のいしり干し。いしりとは、能都地方に古くから伝わる魚醤の呼び名だ。魚(またはイカ)をはらわたごと、塩とともに何年間もねかせてつくられたもので、独特の風味がある。いしり干しは、そのいしりに魚を漬け込んでから一夜干しにした干物だ。これが、めっぽうウマいのである。
 干物といえば、庶民の食卓の代表格だが、魚によってはもちろん一枚何千円もする高級干物もあって、あなどれないのである。干し方も、我々にとっては天日干しが一番と思いがちだが、機械干しの方が天候・気温に左右されず、うまい干物が作れるのだと、物の本で読んだことがある。自分たちでも簡単に作れる反面、実は干物は奥が深いのだなあと思わされる。
 山陰・浜田産の鯖の干物を焼いた。見事な姿で、味は繊細。浜田といえば「どんちっち三魚(マアジ、アカムツ、カレイ)が有名だが、鯖もえらくうまい。ちょっとぜいたくな干物をお気に入りの日本酒のアテにしながら、秋の夜長を過ごすのもいい。
干物の焼き方のポイント
●炭火で強火、遠目でじっくり焼きあげる。それだけ。
●網はあらかじめ熱しておけば皮が焦げ付かない。
●グリルで焼くときは中火で。
●いずれも焼きすぎに注意。



海の博物誌
 笛の音はよく通るため、船では古くから作業の合図に使われている。ガレー船のころには漕ぎ手の動作をそろえるために、また、帆船の時代になると操帆・荷役などの作業の指揮をとるときに、船長または水夫長が「ピーヒョロー」とやっていた。
 一般の乗組員がハシゴやロープを伝って乗り降りしていた時代、船長など上級者はイスに座ったまま釣り上げさせて乗船していたもので、その時も笛が吹かれた。日常的に帆船が使われなくなり、イスもなくなった今でも笛だけは残っており、各国海軍では高級士官の乗下船の儀礼として笛を吹いている。



Salty One Day Boating
 今朝はすこぶる晴天。早起きして都内の「勝どきマリーナ」へ向かった。勝どきマリーナは自宅から30分ほどで行ける憩いのスペース。陸・海、双方からアクセスできるクラブハウスは、貸し切りリバーサイドパーティーも可能。昼はカフェ、夜はバーとしても賑わっている。到着するとグッズコーナーを横切り、バースペースを抜けて、明るいテラス席へ。カフェオレをオーダーし、木漏れ日が落ちる運河を眺める。天井のターフが暖かい潮風を受けて波打つと、ボートのハルに当たる水音が聞こえてくる。運河やボートを観ながら日がな一日時間を過ごすのもいいが、やはり海風にあたりながら釣りも愉しみたい! 釣り好きの友人夫妻とともに東京湾のシーバスフィッシング&ピクニックを楽しんだ。

●出航前にデッキでランチ

 「おはよう!」
 少し遅れて夫妻が到着。手には大きなバスケットとロッドが無造作に握られていた。「では、とりあえずはじめますか」と、釣りもそこそこに長いバゲットを手渡してくれた。ありがたい友人である。桟橋に舫ったAS-21に乗り込み、まずはバゲットを刻み始める。カップにマヨネーズとコショウ、ピクルスの刻んだもの、ゆで卵を放り込み、フォークでぐるぐるとまぜる。他のカップにはシーチキンとマヨネーズ、刻み玉ねぎ、コショウ、カレー粉を入れた。我々の定番ディップだ。
 お皿に、チーズ、生ハム、レタスを盛れば、ランチパーティーの主役が揃う。
 「いっただきま~す!」
 陽だまりの下、ボートの揺らぎに任せて摂るランチは、いつもの数倍おいしく感じた。
 ボートの横では、何かの稚魚といっしょにマハゼが和んでいた。

●東京湾奥のシーバスを探る

 早めのランチを終え出航。浜前橋をくぐり、臨港署横を左に旋回した。隅田川の流れは穏やかだ。
 右手には築地市場が見える。すでに荷卸しの船も荷積みのトラックもなく、閑散としている。
 築地市場横にある浜離宮庭園の緑が風にそよいでいる。その先には汐留シオサイトのビル群がそびえ立つ。
 浜離宮越しに見る穏やかな風景からは想像もできないが、夥しい数の車と人が行き交っていることだろう。
 スピードを徐々にアップし、平日で、ほぼ貸しきり状態の東京湾を東京灯標に向けて進む。
 レインボーブリッジ手前で操船を交代。振り返ると浜松町から晴海エリアが秋空の下にひっそりと佇んでいた。
 運河から東京湾へのショートクルーズを経て、いよいよ釣りの本気モードに突入。東京湾はストラクチャーも多く、絶好のシーバス・ポイントが目白押し。連日の雨続き、潮は長潮で、コンディションはイマイチだが、どこを見渡しても、教科書通りのポイントがあって、シーバスが群れをなして潜んでいるように思える。これも東京湾のシーバスフィッシングの魅力の一つである。

●だからやめられない!

 8ポンドのラインにビミニツイストでダブルラインを作り、16ポンドのフロロカーボンのリーダーをつけて、お気に入りのルアーを装着。友人のタックルボックスから“一番おいしそうな”ルアーを拝借した。
 第1投、第2投・・・15投。う~ん、なんの気配もない。
 すかさず他のスポットへと移動。
 第1投目を護岸ぎりぎりに投げ込むが反応なし。第2投目は赤灯台横の深場に投げてみた。
 「ヒット!」
 投げた瞬間、下へぐいっと押し込まれる感覚とともに、ビリビリとした感触が手に伝わってきた。竿を右へ倒しながら、
 グイッと1回、アワセを入れる。
左右に穂先が揺れる感触を手元に感じとりながら、リールの糸を巻き上げた時、なんともいえない感覚でふっと軽くなった。
 「あ、ばらしてしもうた。。」
 ほとんど同時にヒットさせた友人が魚をハルに寄せている。海の神ポセイドンが私たちに与えてくれた魚はどんなだろうと、期待に胸を膨らませネットを差し込みながら覗き込む。
 「かわいい~」
 思わず笑みがこぼれる。45センチほどのセイゴが、大きな目を見開いてこちらをみている。


●アフターフィッシングに秋の訪れを感じる

 「乾杯!」
 勝どきマリーナへ戻り、潮風の中で祝杯をあげた。釣果はいまひとつだったけれど、あくせくせずに、気持ちのいい日だまりの中でランチをいただいて、のんびり釣りに出るのもいい。とはいえ若干、喉を伝うビールが冷たく感じた。そういえば昼に比べて潮風も冷えている。空を眺めながら秋を全身に感じた。

取材協力

勝どきマリーナ
●〒104-0054 東京都 中央区 勝どき3-15-3
●TEL: 03-3531-7833
●ホームページ:http://www.kachidoki-marina.com/



勝どきマリーナは会員制のマリンクラブ「Sea-Style」のホームマリーナのひとつ。「Sea-Style」は全国約130ケ所のホームマリーナで気軽にボートをレンタルし、楽しむことができます。


レポート:菊地眞弓(きくちまゆみ)
今は無き伝説のアウトドア雑誌「アウトドア・イクイップメント」編集員を経て、フリーライターに。趣味は旅・食・酒。魚釣りときのこ狩りに費やす時間は人生の宝。東京生まれ。
浜前橋上から見たマリーナ。ビルとボートが共存している勝どき周辺の運河沿い
AS-21のデッキで昼食。あと4時間ほどで大潮。風も止み、運河は穏やか
羽毛のような雲が上空に拡がる、浜松町・晴海周辺
目まぐるしく変化する東京の水辺の風景。釣りだけでなくクルージングも満喫した
ミノープラグを中心に泳がせた。一度、泳ぐ姿を海中で観察してみたい
「とぉ~っ!!」。東京港内のストラクチャーめがけてルアーを投げ込む
愛くるしい宝物、セイゴ




ヤマハニュース

「カジキ釣り講座」 キハダマグロ壁紙更新!
オフショアフィッシングの醍醐味。ボートでのカジキ釣りをご紹介します。

「マリン体験レポート」 全国マリンジェットツーリング2008 広島・鹿児島など
ボート、マリンジェットの遊び体験やボート免許取得体験などをご紹介します。

ヤマハボート全国展示試乗フェア
全国各地でヤマハボートを体感するチャンスです!この機会にどうぞ。

新製品フィッシングボート「ベイフィッシャー 25」
竿振りに気を遣わない広いデッキスペースと大容量イケスが魅力。

「ボート免許+マリンクラブ入会キャンペーン」実施中!
免許取得から海の遊びまでサポート。セットでお得なキャンペーンのご紹介です。

「マリーナ百景」宮城県塩竃市の「くろしお北浜マリンベース」
全国に点在するさまざまなマリーナを紹介します。


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【編集航記】
 先日、長崎を訪れる機会があって、出島ミュージアムや、長崎歴史文化博物館を見学してきました。鎖国時代においても唯一、海外との交流のあった地として栄えたこの港町のことは遙か昔に歴史の授業で学びましたが、「海洋国家・日本」という視点で見ると、あらためてエキサイティングな港町だと実感してきました。再発見・再感動。歳をとるのも悪くはないなあ。(編集部・ま)

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