ソルティライフ ソルティライフ
ソルティライフ ソルティライフ
イラスト・Tadami
いつでも潮気のある生活を過ごしたい。
MONTHLY COLUMN 体力勝負、精神力勝負。
キャビンの棚 カクテルが飲みたくなる「ヘミングウェイの酒」
船厨 待ってました! 牡蠣の季節「牡蠣の土手鍋」
海の博物誌 「海に生くる人々」葉山嘉樹
Salty One Day Boating 横濱路地裏探訪
YAMAHA NEWS 「Captain’s World TV 」更新!/ヤマハマリンジェット2009年モデル新発売!/「SC-30」グッドデザイン賞受賞!/4ストローク船外機「F300A」「F40F」新発売!/「大漁ネット」更新/「ボート免許+マリンクラブ入会キャンペーン」実施中!
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MONTHLY COLUMN
 先日、オフィスのデスクを整理していたら、1986年にモルディヴの政府観光局から発行されたガイドブックがでてきた。
 冒頭に「モルディヴとはモルディヴをよく理解し、海を理解する人の国で、ハワイやグァムとは全く異なるリゾートです。華やかさを求める人には無理な国です。(中略)エアコンがないバスタブがない食事がまずい等何不自由なく都会の空気に慣れた人たちには似合わない国です。ヨーロッパ人は与えられた環境に順応出来る精神力持っているので充分に楽しんでいます。与えられた環境に満足できない人にはこの素晴らしい自然の国を理解できないでしょう」と書いてあった(句読点原文ママ)。
 なんだか、開き直りともとれるこの文言を、幾分、呆れつつニヤニヤしながら読んでいたのだが、どうもひっかかる。当時は政府観光局も自信を持ってこのような謳い文句を掲載していた。だが、20年後のいま、モルディヴは設備の整ったリゾートも多く、軟弱な僕でも充分に快適に過ごせるようになっている。モルディヴの人たちは、結局、日本人に本当のモルディヴの素晴らしさを理解してもらうことを諦めてしまったのだろうか。ヨーロッパ人が持つ精神力を日本人は持っていないのだから仕方がないと。
 ささやかだけれど、いくつか海外取材を積み重ねてきてできあがった僕のマリンレジャー観のひとつに「マリンレジャーは体力と精神力が必要だ」というのがある。マリンレジャー大国といわれる北米、オーストラリア、ニュージーランドなどと日本を比べるとき、インフラのことがよく取り上げられる。特に、海辺には自由に使用できるスロープがあって、トレーラーごとボートを保管できる広い住宅があるといった話は、実際にその通りだし、その部分において日本には大きなハンディがある。だが、日本においてマリンレジャーが一般に広がらないのは、本当にそんなことが理由なのだろうか。もし、日本に同じようにスロープが整備されて、自宅にボートを保管するスペースがあったとしても、多くの日本人は海に出かけないのではないか。かなり悲観的な想像だけれど。
 朝早く、自宅からボートを出して、海まで出かけてスロープからボートを降ろし、一端、舫ってから車を駐車場に移動させ、それから再びボートに戻って海に出て行く、波を捌きながら海を走り回り、丸一日、潮にまみれて思いっきり遊んで、またスロープに戻り、今度は逆の手順でボートを車に繋ぐ。
 世の中のお父さんは、子どもを連れて海水浴へ行くだけでへとへとになる。日曜日はクーラーの効いた部屋でゴルフ中継を見ている方が幸せだと感じるお父さんには、こんなこと出来るわけがない(僕の父親がそうだった)。
 学生時代、外洋帆走部という体育会のクルージングクラブで過ごしていたときは、やはり体力、精神力を求められた。だが、それを楽しいと思えたのは、やはり、海に出たときの感動や港での寛ぎのひとときが、何よりも素晴らしいと感じることができたからだ。25年前の合コンで出会った女の子の顔は思い出せないが、夜の太平洋の沖でメインセールをかすめて流れた星の軌跡はいまでもはっきりと覚えている。それを他人に語っても、なかなか理解してもらえない。
 いまから20年以上前、一人でも多くの人に海やヨット、ボートの魅力を知って欲しいと願って、いまの仕事を始めた。マリンの世界に劇的な変化が見られることはないけれど、同じような心意気を持つカメラマンや物書き、さらにボートビルダーや営業マンなどが、ヤマハに限らずとも僕の周りには大勢いる。また、最近語られ出した、日本とポリネシアの関係や、白石一郎が著す鎖国以前の日本の海洋国家の有り様を読んだりすると、大いに元気が出る。日本人は海が好きなはずだ。その素晴らしさを享受するにふさわしい精神力を引き継いでいる人も多くいるはずなのだと。
 少なくとも、このメールマガジンを登録してくださっている多くの読者の皆さんは、きっと、そんなDNAを引き継いだ、欧米人に引けをとらない精神力の持ち主に違いない。たかだかネットの世界の話かもしれないけれど、そんな繋がりも大切にしたいと願って、駄文を書いている。

田尻 鉄男●たじり てつお
外洋帆走部に所属しクルージングに明け暮れた大学生活、1年間の業界紙記者生活を経て、88年、プロダクションに入社。以来、日本のボーティングシーン、また沿岸漁業の現場を取材してきた。1963年、東京生まれ。



キャビンの棚
 海好きでヘミングウェイに憧れる人は多い。作品もさることながら、彼のライフスタイルに心酔する人が多いようだ。ヘミングウェイの小説はほとんど自分が置かれた状況をテーマに書かれている。戦争のこと、海のこと、闘牛のこと。そして物語に登場する酒も、ヘミングウェイ自身の好みが表れている。「ヘミングウェイの酒」は、ヘミングウェイが好んだ酒を彼の人生、ライフスタイル、作品の紹介を交えながら綴られたエッセイ。
 男は黙ってスピリッツを飲むものと決めつけている御仁も、これを読めばカクテルを含めていろいろな酒を飲みたくなること請け合い。
 カクテルの素晴らしいのは、その一つ一つに物語が秘められていること。たとえばマルガリータのように。そしてこの書では、登場するす酒の背後に潜むヘミングウェイの思想、思考、生き様までもが紹介されるているのだ。レモンを搾ったなにげないウィスキーサワーがヘミングウェイにとってどのような意味を持つ酒だったのか。ドライ・マティーニのオリーブが男にとってどのような意味を持つのか。
 著者のエッセイスト、オキ・シローはヘミング・ウェイを酒の師と仰ぐが、その愛がひしひしと伝わる好書。イラストの味わいも、またいい。
 「ヘミングウェイの酒」
 著者/オキ・シロー
 発行/河出書房新社
 定価/¥1,600(税別)



船厨
 アール(R)の付く月。つまり9月から4月まで、北半球では牡蠣の季節といわれている(ムール貝も同様だが)。日本の貝は鮑をはじめ、概して旨いのだが、この独特の口当たりがする牡蠣は、やはり特別だ。
 殻ごと焼くのもいいし、水洗いしたのをちゅるっとそのまま口に放り込んでもいいし、ポン酢などのたれに漬けて食してもいい。日本酒、ビール、ワイン、焼酎にも良く合う。
 さて、秋も深まりつつある今回は、土手鍋を愉しんだ。見たとおり、鍋の周りに味噌を土手のように塗りつけることからその名が付いたとというのが一般的だが、調べてみるとそれだけでないらしく、土手某という行商人が考案した鍋だからという説もあれば、大阪の土手で売られてたという説もある。何となく、最後の説、大阪の土手で売っていたというのが、筆者は気に入っている。
 赤味噌と白味噌、そして調味料を加えたオリジナルの合わせ味噌をせっせと鍋の周りに盛りつける。そして味噌を好みの味付けになるよう、鍋の中に崩し落としながら食べる。牡蠣は煮すぎず、生でも食べられるものを用意して、レアの状態でいただくと、これまたいい。
 味噌の風味が日本酒にめっぽう合って、秋の夜長が至福に満ちる。
牡蠣の土手鍋
●材料(4人分)
牡蠣400g、豆腐2丁、白菜1/4個、水菜1束、長葱3本、しめじ1株、だし昆布15cm、合わせ味噌(白味噌30g、赤味噌120g、酒大さじ2、みりん大さじ1)
●作り方
1)牡蠣は洗って水気を切る
2)豆腐、白菜、水菜、しめじはそれぞれ食べやすい大きさに切る。長葱は斜め切りにする
3)合わせ味噌を作る
4)土鍋にだし昆布と水(適量)を入れ、ふちに合わせ味噌を塗り付け、中火にかける
5)煮立ったら野菜を入れ、野菜が柔らかくなったら豆腐を入れる
6)牡蠣を入れ、火を通し過ぎないように気を付け、ふちの合わせ味噌を少しづつ崩し溶かしながら食べる



海の博物誌
 一時、小林多喜二の『蟹工船』がちょっとしたブームになった。同じく海を舞台としたプロレタリア文学の代表的な作品に『海に生くる人々』がある。『海に生くる人々』は、第一次大戦の好況のなか、室蘭~横浜間の石炭運搬船の水夫たちが受けるひどい扱い、彼らのストライキ、投獄と解雇が、いきいきとしたエピソードをはさんで描かれた初期プロレタリア文学の代表的な作品。
 著者の葉山嘉樹(はやま・よしき)は、放蕩・過激・無頼といった物騒な言葉がぴったりの作家だった。1894年、福岡県の官吏の子に生まれ、早稲田大学文学部フランス文学科に入学した。ところが、父が家を売って作ってくれた学費をすべて遊興費に使ってしまう。
 1913年、船員になってストライキを指導し、以後さまざまな職に就きながら、労働争議の応援にかけ回り、3回投獄される。
 『海に生くる人々』は、葉山の代表作『淫売婦』とともに、名古屋の刑務所で1925年に書き上げられた。1934年からは長野県の山村に移り住み、<労農派>を実践。さらに1943年、開拓移民として満洲に渡る。1945年の敗戦直後、引きあげの列車内で病死。52歳だった。



Salty One Day Boating
 港町のイメージが強い横浜。しかし川筋も素晴しい。伊勢崎町や元町、中華街など、横浜の中心街は川で繋がれており、陸地から見る姿とは別のプロフィールを探ることができる。横浜でリバークルーズを楽しむため、横浜・八景島シーパラダイス「シーパラダイスマリーナ」で、お気に入りのAS-21をチャーターし、根岸湾に向けて出航した。

●苦い思い出

 横浜ヘリポートを左に見ながら、八景島を後にし根岸湾へと向かった。途中向かい波で回転が落ちるが、負けじと噴かす。いつものようにAS-21は機敏に操作に応え、海上にウェィキを大きく広げてゆく。
 今日はSea-Style Lightのメニューを利用。マリーナの山田亮太さんがガイドについてくれた。
 「xx(目標物)に向かって後進してください」
 船舶免許試験の際の号令。
 この指示が苦手で、リモコンレバーを操作し後進ギアを入れて目標物に向かっては、必ず反対方向にそれていた。全く、泣きたくなる。
 そんな私を一級船舶取得の際に、根気強く操船レクチャーしてくれた方が亮太さん。以来、敬愛する先生でもあり、釣り友でもある。もとい、海釣りのお師匠さんだ。この人に釣られない魚は鯨ぐらいだろう(笑)。

●堀割川、エスケープルート

 根岸湾に着き、回転を落とした。市民ヨットハーバーの脇を抜けて、根岸線の高架をくぐる。右手には桜並木の奥に動物検疫所が見える。壁面が黄色いペイントで塗られ、かわいらしい。桜の季節にはピンク色の花色とのコントラストが美しそうだ。
 引き波を立てぬよう、デッドスローで堀割川へと侵入してゆく。
 横須賀街道と並走する堀割川の護岸は低く、両側に並ぶ住宅街と馴染んでいる。
「釣れますか~!」
 亮太さんがハゼ釣りに興じる初老の男性に声をかけると、にっこりと手を振り答えてくれた。
 掘割川は人工的に造られた運河。その昔、横浜港と磯子間を小型船が荷物を運ぶルートとして使用されていた。亮太さんはここを時化たときのエスケープルートとして使っていたらしい。知る人ぞ知る、今でも活用度の高い川だ。

●T字侵入からY字へ

 掘割川の中村橋先で、中村川とT字に合流する。舵を左にとり、千歳橋をくぐる。
 水深も橋高も低いため、20フィート以下のオープンデッキのボートでないとこのエリアは航行が難しい。
 その先の吉野橋はさらに過酷。首都高の花之木ランプの真下、蒔田公園側の護岸はかなりな浅瀬で、干潮時には完全に川底が露出する。反対側を慎重に航行しながら、舵をV字状に右に取る。ここから大岡川に入る。
 堀割川から中村川へT字侵入し、大岡川でY字となるこのルートは、サーキットでいうクランクのようで心が躍る。

●大岡川、歓楽街

 大岡川は横浜市南部に水源を発し、横浜港へと続く河川。その両側には桜の木が並び、春には桜の名勝となる。
 京急本線の赤い列車を左に見ながら大岡川を北東へ進む。紅葉が始まった桜の木の両脇にはのどかな田舎町的風景が広がり、ゆったりとした時間が流れている。
 末吉橋からゆるく左へと曲がる川の先、黄金橋越しにランドマークタワーが見えたかと思うと、のどかな風情が突然、歓楽街に変わった。夜の原色ネオンが成りを潜めている日の出町の中心部だ。その只中をAS-21で走り抜ける。

●中村川、文化の狭間

 大岡川から横浜港へ入り、山下埠頭先を大きく右に旋回し9号バースから新山下橋を目指す。ここは『横濱路地裏探訪』の締めくくりとなる中村川の下流だ。中村川は元町と中華街の間を流れる川で、前田橋の両側には異文化が発展している。
 神戸の港町を彷彿とさせる「元町」には、鞄や靴など、老舗のファッションブランド店が立ち並び、昔からファッション通な人に人気の街。片や「中華街」は、日本各地から観光客が訪れる中華料理のメッカ。中国の広東・上海から多くの人が移り住んだこともあり、本場広東料理店から気軽な中華そば・中華まんのお店まで楽しめる。
 「あっ、中華街の南門! 豚まんが食べたいですね~接岸しませんか?」
 「この辺に上陸できるスポット、あったかな…」
 結局接岸を諦め、お腹の虫を鳴らしながら掘割川へと進路をとって帰港した。
 来年、開港150周年を迎える横浜港。次回は横浜港で「横濱の味」も探求してみたいなあ。

※横浜の河川はSEa-Styleの航行区域外です。
 お楽しみの際はSea-Style「Light」でガイド付の
 メニューをご利用ください。


取材協力

横浜・八景島シーパラダイス
●〒236-0006 横浜市金沢区八景島
●TEL: 045-788-8888(テレフォンインフォメーション)
●ホームページ:http://www.seaparadise.co.jp/

シーパラダイスマリーナ
●〒236-0006 神奈川県横浜市金沢区八景島
●TEL: 045-781-1012
 ※マリーナ事務所は「ホテル シーパラダイス イン」の中にあります。
●ホームページ:
https://marine.yamaha-motor.jp/Sea-Style/Common/Marina_Common.asp?marina_cd=80389373



シーパラダイスマリーナは会員制のマリンクラブ「Sea-Style」のホームマリーナのひとつ。「Sea-Style」は全国約130ケ所のホームマリーナで気軽にボートをレンタルし、楽しむことができます。


レポート:菊地眞弓(きくちまゆみ)
今は無き伝説のアウトドア雑誌「アウトドア・イクイップメント」編集員を経て、フリーライターに。趣味は旅・食・酒。魚釣りときのこ狩りに費やす時間は人生の宝。東京生まれ。
ちょっと寒くなってきた海風に対抗してショールをしっかり首に巻き、出航
掘割川の入り口に見えた造船所。「港町横浜」らしいもう一つの風景だ
ランドマークタワー下に写る旭橋の裏側には、街の建物をモチーフにしたカラフルな旗とイルミネーションが飾られている。船からでないと間近で観察できないお楽しみ
紅葉が始まる運河沿いの桜並木
「手を伸ばせば獲れそうですね!」二人の目線の先には、なんと、巨大なミカンがごろごろ実っているのです
宮川橋と都橋の間、護岸上に建つ飲み屋ビル。灯ともし頃に活気が戻る
前田橋ごしの中華街「南門」。ここに水上タクシーポートがあれば便利なのに
中華街を背に、名残惜しそうなAS


ヤマハニュース

「Captain’s World TV 」約束の浜~遠州灘 ウミガメ放流会!
マリンレジャーやマリン文化をテーマに最新の映像でレポートするネットTV。

ヤマハマリンジェット2009年モデル新発売!
新しい技術を取り入れたハイパフォーマンスモデル2機種が加わりました。

サロンクルーザー「SC-30」グッドデザイン賞受賞!
海上で過ごす時間が楽しくなる。極上の居住性を提供する滞在型クルージングボートです。

4ストローク船外機「F300A」「F40F」新発売!

漁船や沿岸漁業の情報「大漁ネット」今月は島根県宍道湖 シジミ漁
日本全国津々浦々で行われている沿岸漁業を漁法別にご紹介します。

「ボート免許+マリンクラブ入会キャンペーン」実施中!
免許取得から海の遊びまでサポート。セットでお得なキャンペーンのご紹介です。


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【編集航記】
 10月の終わりに、横浜からボートを出してシーバス・フィッシングを楽しみました。ふと周りを見回すと港内のいたるところにナブラがたち、イナダが狂ったように鰯を追いかけています。この日はシーバスの他にイナダ、マアジとサバ、カマス、タチウオがヒット。ルアーの五目釣りもなかなか楽しいモノですね。(編集部・ま)

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