ソルティライフ ソルティライフ
ソルティライフ ソルティライフ
イラスト・Tadami
いつでも潮気のある生活を過ごしたい。
MONTHLY COLUMN 小さなアウトボード・モーターとマリン文化
キャビンの棚 魅せられた海を守るための謀反「絶海にあらず」
船厨 生姜をたっぷり入れて暖まる「つみれ鍋」
海の博物誌 サンタ・マリア号の日常生活
YAMAHA NEWS 「ボートショー2009イン横浜」1000組2000名様ご招待!/「Captain’s World TV 」美ら海の願い~サンゴ再生プロジェクト~/ボート免許と「マリンクラブ・シースタイル」の入会がセットでお得!
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MONTHLY COLUMN
 ロバート・マックロスキーの「海べのあさ(岩波書店/ 原題:One Morning in Maine)」は、メイン州の大自然の中で過ごす家族と自然のふれあいを描いた絵本の傑作だ。これまで、ソルティライフを含めてあちこちで書いてきたので食傷気味の方も多いかもしれないけれど、何度読んでもいい本だと思うので、こちらも何度でも書いてやろうと開き直っている。
 メインの海辺の家で、ある朝、乳歯が抜けて少しだけ大人になった気分の少女を中心に展開する午前中だけを切り取ったストーリーで、お父さんと一緒にハマグリを掘ったり、ボートで町まで買い物に行ったりするシーンが、ソルティ・マインドを刺激する。
 初版は1952年。アイスクリーム屋さんの冷凍庫やサリーの父親(マックロスキー本人だと思うが)が乗る小さなボート、それに付いた船外機などの細かな描写に、当時のマリン文化の香りを嗅ぎ取ることができる。
 スターターロープでエンジンをかけようとしたところ、かからない。お父さんは仕方なく、2本のオールを使って、お母さんに頼まれたミルクを買いに対岸の町まで二人の娘を乗せていく。娘たちは救命胴着をしっかりと着る。船外機を修理するのは町の自動車工場だ。古くなったスパークプラグを交換する。サリーと妹が買ってもらったアイスクリームをボートに乗って食べている間に、お父さんはボートに船外機を取り付ける。今度はまるで新品のように一発で始動。お母さんが用意しているはずのハマグリのスープ(きっとクラムチャウダーに違いない)を食べるために家へ向かい颯爽とボートを走らせる。サリーのお父さんの乗る船は決して立派なモーターボートではない。公園の池に浮かんでいるような小さな手漕ぎボートに船外機を取り付けたものだ。

 さて、アイスクリームといえば船外機。船外機はエビンルードによって1907年に発明された。ミルウォーキーの郊外にある小さな湖で、対岸に住む恋人にアイスクリームを届けようとした彼は、真夏のさなかにボートを漕ぐ重労働に嫌気がさし、同時にすっかり溶けてしまったアイスクリームに悲観して、船外機の開発を決意したのだそうだ。当時、鋳鉄と真鍮に包まれた2サイクルのエンジンは、もともとそんな小さな手漕ぎボートに取り付けるためのモノだった。それにしてもなんて素敵な体験と発想から生まれた機械なのだろう、と思う。

 先日、僕が仲間に入れてもらっているマリンジャーナリスト会議という団体で、マリン業界の方々との懇談会が持たれた。ひとりでも多くの人々にボーティング(セーリング)の魅力を知って欲しいとの熱気のなか、あるメーカーの方が「マリンレジャーを文化として根付かせなくてはならん」と力強くおっしゃったとき、僕は「海べのあさ」と「エビンルード」のことを考えていた。
 僕はマリンレジャーに関わる仕事をしていながらマイボートを持っていない。もっぱら、レンタルボートか、人様のボート・ヨットにお邪魔して遊んでいるクチである。残念ながら、それが現実だ。でも、サリーのお父さん、いや、ロバート・マックロスキーのライフスタイルを思い浮かべるとき、さらにエビンルードが自ら発明した船外機付きのボートで恋人に冷たいアイスクリームを届けることに成功したときの小さな幸せを想像するとき、こんな、ささやかだが素敵なライフスタイルはあながち夢ではないな、と感じる。いつでもそばに海がある、ボートがある生活。そんな感覚が多くの人に根付いたとき、はじめて日本でマリンレジャーを文化と呼べるようになるのだろう。
 とりあえず、小さな船外機でもいいから手に入れたいなあ。
※文中の写真はイメージです。

田尻 鉄男●たじり てつお
外洋帆走部に所属しクルージングに明け暮れた大学生活、1年間の業界紙記者生活を経て、88年、プロダクションに入社。以来、日本のボーティングシーン、また沿岸漁業の現場を取材してきた。1963年、東京生まれ。



キャビンの棚
 「絶海にあらず」(上・下)
  著者/北方謙三 発行/中公文庫
  定価:上・下/各648円(税別)
 平安時代中期に京で権力を握る藤原一族のもとに生まれた純友はある日、伊予国の国府(現在の愛媛県今治市)に役人として赴任することになる。使命は、瀬戸内海を通って京に輸送される陶磁器などの高価な物資を海賊から守ること。純友は徹底的に任務を果たす一方、財力や権力の拡大のみを目論んで海の物流を支配する京の政策に疑問を持ち始める。
 そこには庶民が必要とする物資を輸送しようとはせず、庶民が空腹になることで、一部の貴族が富を蓄える現状があった。海を愛し、自分の居場所だと決心した純友は、海を開放するために水師たちと手を組み京への不満を募らせてゆく。実現したかったのは、全ての水師が思うままに輸送でき、利益をあげられる自由な海の姿。やがて海を開放するための叛乱を起こすことになる。
 主人公の純友は反旗をひるがえすのだが、人柄が生き生きと、豪快に描かれていて、「正直に生き抜く人」の爽快さが伝わって読者に勇気を与える。恵まれた一族に生まれて出世の道もあったが、海を愛したために一族を捨ててまで生きようとすることが、逆に羨ましく映る。
 著者は言わずと知れた北方謙三。自ら海とボートを愛する一面も持っている。ハードボイルド小説で名を馳せた氏は1989年に初めて歴史小説を執筆。以降も数々の受賞作品を生んでいる。



船厨
 我が家の料理の多くには生姜が大量に使用される。特に鍋物には皮を剥いて大きめに切った生姜を、これまた大蒜と一緒に放り込み、出汁に使ったりする。たっぷり入れる日本酒のせいもあろうが、これが、身体のそこから暖まる感じで、なかなか良い。
 生姜は香味野菜として料理に使うだけではなく、薬用としても古くから使われてきた。百科事典で調べたら「芳香性健胃」「新陳代謝機能促進」「鎮嘔」「鼻づまり」「悪寒発熱」に用いられれ、さらに外用薬として「消炎鎮痛作用」、おまけに肉や魚など食物の毒を取り除いてくれる役割も果たすらしい。まさに百薬の長なのだ。
 先日、愉しんだ鰯のつみれ鍋にも生姜を使った。これは出汁ではなくおろした生姜を鰯のすり身に混ぜ合わせる。好みで野菜を混ぜてあるつみれが多いが、鰯と生姜だけを使うのが僕らのスタイル。ただし、市販のすり身を使う場合、その加工法によって、つみれの味がモノによってかなり異なってくる。場合によっては相当どぎつい味になってしまうこともあるのだ。新鮮な鰯を買って、内臓をきれいに取り除き、自分ですり身にすることから始めるのが、確実に旨いつみれにありつく近道かもしれない。
 鍋シーズンもあっというまに過ぎていく(別に夏に愉しんでもいいのだけれど)。過ぎ去る冬を惜しみつつ、団らんと酒と鍋で心から暖まりたい。
「つみれ汁」
●材料
いわしのすり身200g、とうふ1丁(一口大)、長葱1本(斜め切り)、白菜3~4枚(そぎ切)、しょうが1片(すりおろす)、酒大さじ1、味噌大さじ3、だし昆布1枚、片栗粉大さじ2

●作り方
1)鍋にだし昆布と水を入れ沸かす
2)いわしのすり身におろしょうがと片栗粉を入れよくまぜる
3)1)が沸騰したらだし昆布を取り出し 2)のすり身をスプーンで形付けながら入れ、浮き上がったらボールに取る
4)野菜を入れて煮る。柔らかくなったら豆腐を加える
5)酒と味噌を入れ味を整え、3)のつみれを戻し入れる



海の博物誌
 先日、横浜をぶらぶらとクルージングしていたら現役の「日本丸」が横浜港に停泊していた。その堂々たる雄姿に感銘を受けてしまった。帆に風を受けた帆船はもちろんかっこいいけれど、たくさんのロープが整然と巻きつけてあったり、デッキや金具が鈍い光沢を放っていたり、そんなディティールもたまらない。その裏に船乗りの厳しくもプロフェッショナルな働きを感じて、それがまたいいのである。
 しかし、コロンブスの時代の帆船は、今よりずっとシンプルで、のんびりしたものだったらしい。100トンほどのサンタ・マリア号は、提督以下乗組員40人。順調な航海のときは、交代で見張りにつく以外は、朝、賛美歌調の船歌に合わせて甲板掃除をし、ロープやセイルの修理、水をかき出すなどしか仕事がなかった。
 朝の甲板掃除には理由があって、当時の船にはトイレがなかったから、まだ暗いうちに、ふなべりに腰を下ろして大便をした。それで甲板が汚れるわけではなかったが、ともかく日の出とともに清めたのである。
 食事もシンプルそのもの。食品の保存といえば乾燥と塩漬けしかない時代、ビスケットやベーコン、チーズなどが主食だった。水も貴重品で、薬のように大切に味わって飲んだという。
 どの時代も船の上は陸から眺める印象ほど優雅ではない。ま、そこがいいのだけれど。



ヤマハニュース

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【編集航記】
 ニライカナイとは沖縄に今も残る理想郷の言い伝え。日本神話の「常世」のこと。美しい海の向こうには、この世とは別の国があって、人の魂はそこからやってきて、この世で肉体がつきると帰って行くという。先日、海の大好きな友人が亡くなった。いまごろニライカナイでノビノビと大好きだった釣りでもしてるといいんだがなあ。(編集部・ま)

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