ソルティライフ ソルティライフ
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イラスト・Tadami
いつでも潮気のある生活を過ごしたい。
MONTHLY COLUMN 小型セールボート、いわゆるディンギーのススメ
キャビンの棚 驚きのサバイバルの数々「江戸時代のロビンソン」
船厨 まあ、ウナギでも食って元気を出せ。「鰻丼」
海の博物誌 魚も風邪を引く
Salty One Day Boating 中禅寺湖、紅葉の八丁出島クルージング
YAMAHA NEWS 「マリーナ百景」更新/「カジキ釣り講座」更新/イベント情報「ボート&ゴルフ in 箱根」/2009年マリンジェット「S-1GRANDPRIX」全国選手権大会
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MONTHLY COLUMN
 ディンギーは概して小さな乗り物である。セールに風を受けて自由に水の上を走り回れる不思議な乗り物だ。キャビンやエンジンなどが無く1人から4人くらいの少人数が乗る小型のヨットである。
 エンジンなどの動力を使わずにセールを張って、自然のエネルギーを利用して自由気ままに帆走する醍醐味は、忘れることが出来ない感動を与えてくれる。しかし、現実には日本のヨット人口は減る一方で、ヨット文化など欧米の足元にも及ばないのが現状だ。
 ヨット遊びが一般化しない理由はいくつか上げられるだろう。ヨット遊びは、贅沢な遊びだと考えていないだろうか。値段が高いと思われていないだろうか。置くところが無くて経費がかかり、とても自分には維持が難しいと考えていないだろうか。操船が難しくて自分の手には負えないと思いこんでいないだろうか。泳げないから無理だと思いこんでいないだろうか。危険な遊びだと思われてはいないだろうか。出港や帰港など準備や手続きが面倒くさいと考えていないだろうか。
 人それぞれに色々な理由はあるだろうが、海が好きで自然を愛する気持ちがあれば、ヨッティングという世界に一度はチャレンジしてみる価値は充分にあると思う。
 ディンギーは手の届かない遊びだろうか。キャビン付きのクルーザーと呼ばれるヨットは別にしても、小型ディンギーは30万円前後から買うことができる。中古艇なら数万円で出物を見つけることもできそうだ。友達と共同で買うなど選択肢はいくらでもある。安全に帆走するためには、ライフジャケットは必需品。また、装備品として、風見やロープ類、デッキシューズなど、身の回りの用品なども予算に入れて、せいぜい5万円くらい。
 ディンギーの重量は、30キロから60キロ位で、大人2人で運ぶこともできるが、1人で運べるトレーラーなどがあればさらに便利だ。
 ディンギーは免許も船検もいらないので、セーリングテクニックの講習を受ければすぐにでも乗り出すことができる。教本も発売されているので、独学で動かすことも比較的簡単にできる。レースなどで競うわけでなければ、思った以上に簡単だ。はじめは風の弱い日を選んで練習すれば良いだろう。もちろん、ディンギー教室や経験者の指導が受けられれば上達は早い。
 置き場所は、首都圏の住宅状況を考えると問題はあるが、解決の方法はいくらでもある。マリーナや専門業者に保管を依頼すれば入会金や毎月の保管料などの負担は増えるが、トイレやシャワーなどアフターセーリングの煩わしさからは開放されるし、同じ思いの友人たちとの交流を通して、すばらしい人生を楽しむことができる。そして、経験を積むことで行動範囲も広がり、よりダイナミックな帆走を楽しむことができるようになる。
 ディンギーの楽しみは、水に近いところで、風を感じ、波を感じ、そして何よりも束縛されない自由と自然のエネルギーを肌で感じることだ。
 さあ、思い切ってディンギーに乗ってみよう。


大場健太郎●おおばけんたろう
写真家として趣味のヨッティングにかかわり、現在はマリンジャーナリストとしてヨット・ボートの世界にもの申す。株式会社BUFF代表。ボートオブザイヤー選考委員。1947年、茨城県生まれ。東京在住。



キャビンの棚
 江戸は100万を超える人口を擁し、当時世界最大の都市だったとされている。その時代、海上物流への要求が高まり、物資を運ぶ船は次第に外洋航行へとシフトしていく。しかし位置観測などの外洋航海技術が十分でなかったことに加え、船体強度は高かったため、多くの長期的な漂流が発生していた事実がある。その漂流の様子や無人島でのサバイバルの記録をまとめたものが本書だ。
 どこに漂流したか、何を食料としたか、漂民はいかなる心境だったのか。サバイバルがある種一つの娯楽として楽しまれる傾向があるが、人間社会や文明から離れるとはどういうことなのかをそれら生還者たちの記録は物語っている。 
 なかでも、漂流時に雪駄の裏皮をルアーにして7メートルを超えるサメを釣り上げたというエピソードには感動した。
 ソルティライフ62号(2008年8月発行)で明治の漂流サバイバルに関する本を紹介した。その筆者は、日本が海に囲まれながらも海に関する読み物が少な過ぎると嘆いていた。岩尾氏も同様に、江戸時代の漂流の記録があまり伝えられていないことや、海洋文学が少ないことを疑問視する一人だ。
 本書の序章では、漂流が頻発した原因を当時の時代背景から紐解いており、数々の漂流記には奥深さがある。
 「江戸時代のロビンソン
  -七つの漂流譚-」
 著者/岩尾龍太郎
 発行/新潮文庫
 定価/476円(税別)



船厨
 浜松に住む知人が鰻の蒲焼きを送ってくれた。電子レンジで温めてご飯に載せるだけで無上の味わいを楽しめる。何と便利な世の中か。昭和の中頃まで、鰻は間違いなく高級品であった。多くの人にとって鮨と同じく、滅多に口にすることのない高級食品だったに違いない。
 しかし、鮨と同じく、江戸っ子にとって本来鰻は庶民の食べ物だったらしい。池波正太郎の「剣客商売」の登場人物のなかに又六という男があるが、彼は鰻の辻売りを生業としていた。当時の鰻と言えば、脂っこくてとても食べられたものじゃなかった様が小説から読み取れるが、炭火であぶって充分に油を落とした鰻はグルメでもある主人公の秋山小兵に言わせるとけっこうな美味であったようで、また安く、庶民にはなかなかウケが良かったらしい。
 浅田次郎の「天切り松」シリーズには上野・池之端の鰻割烹「伊豆栄」が頻繁に登場する。江戸末期創業の実在する老舗だが、大正時代にはすでに鰻は高級品になっていたようで、高級感を演出する重箱を使った「鰻重」が登場したのもこの頃らしい。
 いずれにせよ、威勢を付けたいときや、特別な出来事があったときなど、景気づけの小道具として鰻は小説などでよく使われる。
 世知辛い世の中である。高級割烹とまではいかなくとも、むしゃむしゃと鰻丼を頬張っていると、なんだか特別な元気が出てくるような気がするのは確かだ。
鰻丼の食べ方
1)ご飯をどんぶりによそったあと、付属のたれをご飯に半分かける。
2)鰻をご飯に載せたあと、たれの残りを鰻にかける。
3)好みで山椒をかけてできあがり。山椒は臭みを消し、脂濃さを緩和するが、消化を促進する作用も持ち合わせているといわれる。



海の博物誌
 スポーツフィッシングを楽しむ人の中には、キャッチ・アンド・リリースする人が多い。彼らは釣りそのもの、つまり勢いよく飛び跳ね、突っ走る魚とのファイトを楽しんでいる。
 釣り人にとっては、大小にかかわらず元気のいい魚ほど釣りは楽しい。最も、自然の中では怪我や病気をした魚はすぐに大型魚の餌食になるから、そう出会えるものではないが。
 魚ももちろん病気をする。彼らは水温の変化に弱いから、飼い魚はよく風邪を引く。水を取り替えるとき、魚を冷たい水に入れたりすると、てきめんだ。人間のように熱を出したり汗を掻いたりはしないが、ぐったりしてのどが腫れ、皮膚がただれる。気づかずに放っておくと死ぬこともある。
 飼い魚だけでなく、海の魚も風邪を引くことがある。たとえば、いつもは暖かい地方を猛烈な寒波が襲ったような場合。ずいぶん前に伊豆半島では、寒波のせいで水温がぐっと下がり、たくさんの磯魚が風邪で浮かび上がり、漁師は喜んで手づかみにしたという。
 治療法は簡単で、元の暖かい水に戻してやればよい。たいていは治るそうだ。



Salty One Day Boating
 秋の中禅寺湖を最初に訪れたのは小学生の時だったと思う。地味な日光二荒山神社の参拝に飽きて一人でその湖のほとりに足を踏み入れた時、美しさに愕然とした。何年生のときだったかは忘れても、色彩の記憶は今でも鮮やかだ。赤・橙・黄・緑・深緑。真っ青な空を支えるように、色とりどりの木々が上空に向かって伸びていた。風のない青く澄んだ水面は鏡のように、その両方を映し出していた。玉のような小石を踏みしめながら水辺に近づくと小魚が落ちた葉の下に集っていた。
 いつしか鱒釣りにはまり、今では毎年5月ともなると足が向き、禁漁となる9月までレイクトラウトを追いかけている。今年は秋にこの中禅寺湖にやって来た。魚釣りは封印して、ただ紅葉狩りだけのために二荒山神社横のお土産物屋街中央に位置する「レイクリゾート 中禅寺湖(栃木マリン&みはしや)」にボートを予約した。

●八丁出島へ一直線

 当日は雲ひとつない晴天に恵まれ、朝の8時に湖畔の「レイクリゾート中禅寺湖」に着いた。お店の周りは平日だというのに行楽客であふれている。湖のほとりで佇む老夫婦。車をゆっくり走らせながら水際の紅葉を眺めるカップル。遊歩道を駆け回る子供を追いかける夫婦。紅葉を愛でる習慣は、平安の頃の風流から始まったとされているが、今でも慣習しているようだ。
 中禅寺湖は標高1269mという高地にあり、日光国立公園を代表する美しい湖。その昔、男体山噴火時に流出した溶岩が大谷川を堰き止めて、華厳の滝とともにできあがったという。天応2年(782)に日光開山の祖、勝道上人が男体山登頂に成功したときに、山頂から湖を発見した。
 湖中に生息するレイクトラウト、ヒメマス、ニジマスやブラウントラウトは、水中から眺める木々が色づき始める頃、多くは一斉に菖蒲ヶ浜の湯川を目指し、体躯を婚姻色に染めて遡上をはじめる。菖蒲ヶ浜は湖の中央より西側にある。華厳の滝を控える東側が釣りエリア、西側が禁漁区になっている。
 「レイクリゾート中禅寺湖」の桟橋から八丁出島へ一直線に進んだ。あれほど陸にあふれていた人どころか、船もほとんど見あたらない。湖上は西側からの風がやや強く、陸上よりも寒く感じる。それでも陽射しはカラッとして強く、清々しいとさえ感じる。

●禁漁区はまるで桃源郷

 八丁出島横のワンドに入った。風もなく、穏やか。エンジンを停止し、しばらく木々にみとれていた。
 ツタウルシ、サクラ類、カンバ類、ミズナラ、カエデ類、カラマツが、それぞれ紅葉・黄葉・褐葉化し始めるのは、1日の最低気温が10℃以下になる時。そして短い期間に、ぐっと気温が下がり、さらに5℃以下の日が続くと、葉が赤く燃える。中禅寺湖では10月中旬くらいがその時期にあたり、見頃となる。地元の人に聞いたところ、温暖化の影響か、昔のように鮮やかな紅葉はここ数年みられなくなってきたという。だらだらと気温が下がると、燃えるような真っ赤な紅葉になる前に葉を落としてしまうらしい。ぐんと冷え込む朝が続く方がメリハリある配色となるようだ。
 ぽかぽか陽気に眠くなりそうになりながら、緩やかに湖上に浮かぶ赤い落ち葉を眺めていた。
「老人は紅葉より、新緑に感動するらしいですよ。」と、編集さん。
「そうなの?」
「芽吹きに憧れるんですかね。」
 八丁出島から上野島、大日崎、松ヶ崎と進むと、その先は禁漁区。マリンクラブのレンタルボートは遊漁登録船ではないので、ここに入ることができる。観光客の車から排出される排気ガスにさらされない木々の葉は、今までみたことのないほど美しかった。日陰の葉は、まるで蛍光塗料でも塗ったかのように、浮き出し、輝いて見えた。禁断のエリアでの紅葉狩りは最高だった。
 禁漁区を背に、桟橋へと戻った。ボートが加速するたびに追い風の力も借りて、二荒山神社がぐんぐん近づいてくる。世界遺産に紅葉が重なった。子供の頃に見た「地味な姿」はそこにはなく、社殿は華麗な装いで心に刻まれた。
 中禅寺湖の魅力は紅葉のシーズンばかりでない。春の八丁出島周辺にはヤシオツツジやシャクナゲが咲き誇る。夏は新緑が底抜けに美しい。次回は春に訪れるとしようか。


取材協力

レイクリゾート 中禅寺湖(栃木マリン&みはしや)
●〒321-1661 栃木県日光市中宮祠2484
●TEL: 03-3675-4701/FAX: 0288-55-0112
●ホームページ: https://marine.yamaha-motor.jp/sea-style/Common/Marina_Common.asp?marina_cd=80397248
■レイクリゾート中禅寺湖(栃木マリン&みはしや)は会員制のマリンクラブ「Sea-Style」のホームマリーナのひとつ。「Sea-Style」は全国約140ケ所のホームマリーナで気軽にボートをレンタルして楽しむことができます。



レポート:菊地眞弓(きくちまゆみ)
今は無き伝説のアウトドア雑誌「アウトドア・イクイップメント」編集員を経て、フリーライターに。趣味は旅・食・酒。魚釣りときのこ狩りに費やす時間は人生の宝。東京生まれ。
八丁出島の紅葉。赤より黄(黄葉)が優勢
目指せ、禁漁区!
日が高くなるにつれて、西側から雲が湧いてきた
一日の気温差が激しくなり、それが数日続くと葉が燃え出す
風で飛びそうになる帽子を押さえて、ひたすら「気持ちいい!!」
禁漁区から男体山に向かって一直線!
レイクリゾート中禅寺湖の桟橋。正面は八丁出島、背には男体山
日光名物「ゆば」の刺身(左上)と煮物(右下)。日光では湯波、京都では湯葉と表記する
男体山麓、中宮祠の高台から八丁出島を望む


ヤマハニュース

「マリーナ百景」 今月は伊予灘、豊後水道を望む愛媛県の「マリーナ・ブルーエンジェル」
全国に点在するさまざまなマリーナを紹介します。

「カジキ釣り講座」 ティザーの使い方、ワンポイントアドバイス
オフショアフィッシングの醍醐味。ボートでのカジキ釣りをご紹介します。

イベント情報「ボート&ゴルフ in 箱根」
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2009年マリンジェット「S-1GRANDPRIX」全国選手権大会


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【編集航記】
 八丈島近海で乗組員8人が行方不明となった漁船の転覆事故で、3名の生存者が発見され、救出された。逆さまになった船室にできた空気溜まりで寒さと飢えを凌いでいたのだという。アメリカ軍の『サバイバルマニュアル』には、遭難したときの心得として、必ず生還するのだという強い意志を持てと、繰り返し説いていると聞く。海に限らず山や戦場でも、遭難者が死亡するのは飢えや寒さのためよりも、遭難してしまったという恐怖とショックによることが多いのだそうだ。そのような究極の状況で生存した3名も意志の力で生き延びたのだろうか。11月3日の時点で残る4名は行方不明のままだが、一日も早い発見を祈らずにいられない。(編集部・ま)

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