ソルティライフ ソルティライフ
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イラスト・Tadami
いつでも潮気のある生活を過ごしたい。
MONTHLY COLUMN 冬の海を航海!
キャビンの棚 ボートのスピード性能が大切なわけ
怪物ホラー傑作選「千の脚を持つ男」
船厨 悩ましいけれど美味い「カレイの唐揚げ」
海の博物誌 魚の酔っぱらい
YAMAHA NEWS 「大漁ネット」更新/「カジキ釣り講座」更新/出動!マリンクラブ釣査隊
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MONTHLY COLUMN
 冬の日本海を小さなボートで航海することは滅多にない。北からの季節風が強く吹きつけ、海は大時化になることが多いと思っているからだ。一度、ホームポートを出てしまうと時化のために数日間足止めになることも多くなる。気象や海域の状態をよく調べて出航の決断をするが、天気の急変には臨機応変の対応を迫られる。
 ある年、12月初旬に出航して日本海を南下、関門海峡から穏やかな瀬戸内海を抜けて太平洋を北上する航海に出た。
 出航した日から空はどんよりと黒雲が立ちこめ、早くも海は冬の日本海の表情を露呈し始めている。天気予報では波高2~3メートルと聞いた。そのくらいなら走れるだろうと出てはみるが、向かい波の衝撃はもろに身体に応える。スロットルを絞ってスピードを落としてみるが、ボートが波頭から落とされる衝撃で強烈な一撃を見舞う。頭のてっぺんまで響く強烈なパンチングは、脳味噌をバラバラにはじき飛ばす勢いで襲ってくる。これが相当に痛い。パンチングを受けるたびに苦痛に歯を食いしばって我慢する。波がよく見えていると身構えることもできるが、予期せぬ時に突然来るからたまらない。それでもボートは少しずつ前に進んでいく。
 本格的に日本海が牙をむくには少し時期が早かったとはいえ、季節風が雪を運んでくる前に関門海峡を抜けて瀬戸内海に入ろうとするものの、思いのほか距離が伸びない。明るい内に港へ寄港するのをよしとするが、冬の海ではアッという間に暗くなるため、せっかく脚の速いボートに乗っていても、尺取り虫のように港から港へ移動して行くことになる。
 追い波になってからホッと一息ついて、ついに関門海峡へ入ると本船の往来が勢いを増す。冬の柔らかな夕陽を浴びながら関門海峡をくぐり抜けると、瀬戸内海には穏やかな海面が広がっているはずだった。後は一気にスピードを上げて太平洋を北上する冬の海の航海を期待した。
 しかし、そんな想いも束の間に消え失せた。低気圧の影響で瀬戸内海はそのまま大時化となり、強烈な風と波に小型のボートは翻弄され、激しく揺さぶられる。潮波と風波が相乗して相当に大きな白波が立つ。こんなにも激しく猛り狂った瀬戸内海は想像していなかった。東に流れる潮に乗って航行していると、あまり波をかぶることもないのが救いだ。
 小型とはいえ最新の高性能ボートだから不安はないが、古の海の武将や海賊たちがこんな嵐の海を乗り切るには、相当な腕と勇気が必要だったのだろうと、源平の時代にまで思いを馳せながら瀬戸内の島間を駆け抜けていった。
 瀬戸内海の低気圧と格闘しているとき、日本海は6~7メートルの波で大時化だと報じられていた。どのくらいの大波なのか想像もできない。経験したこともない状況だから分からないが、冬の海もまた怖いと改めて思う。
 ただ、冬の海もそんなに悪いことばかりではない。鳴門の渦潮を突き抜けて太平洋側に出ると、低気圧の吹き抜けた冬の海は一変して穏やかな表情で向かえてくれた。 冷たく張り詰めた空気を暖かな冬の日差しが和らげる。ゆったりとした時間が流れていく。味わい深いその時空の中で、至福の航海を大いに楽しみ、時化の海を乗り切った喜びをかみしめていた。
 日本海の名誉のために申し添えれば、あの海にも、たとえ冬であろうと、太平洋と同じような陽気に恵まれ、凪の海が広がることはよくあると聞く。逆に穏やかなイメージの瀬戸内海がこのときのように荒れることもある。結局はどこの海であろうと、様々な顔があり、相応の魅力があるということだ。


大場健太郎●おおばけんたろう
写真家として趣味のヨッティングにかかわり、現在はマリンジャーナリストとしてヨット・ボートの世界にもの申す。株式会社BUFF代表。ボートオブザイヤー選考委員。1947年、茨城県生まれ。東京在住。



キャビンの棚
 SFホラーなどに登場するモンスターは宇宙人(エイリアン)が多い。どれほど科学が進歩しようとも、決して科学だけではすべてを把握することのできない存在である宇宙に対して、人々がありとあらゆる想像を駆使して、そうしたエイリアンを創り出すことは自然なことかもしれない。
 その意味で、このホラー選集「千の脚を持つ男」に、海が舞台となっている小説が多いことはとても興味深い。つまり、これらの小説が書かれた20世紀前半は、海も宇宙と同じように「未知の世界」だったのだ。
 古くは旧約聖書の時代から散見された海の怪物。1500年以上を経た大航海時代になっても船乗りたちはこのレヴィアタン、つまり“リヴァイアサン”を恐れていた。また北欧に伝わる巨大な頭足類の怪物“クラーケン”も同様に船乗りに恐れられていた。
 実は近代でも同様なのだ。科学がいくぶん進歩して、SFホラーといえば宇宙ものが中心になっているが、海が未知であることには変わりはない。この広大で深淵な海洋に巨大な怪物が潜んでいないと誰が言い切れるのか。帆船の時代から自走能力の高い動力船の時代になって、これらの怪物は船を襲うことを諦めただけだと主張する輩も実はいるのである。
 ボートを選ぶ際は、スピード性能は要チェック項目である─もちろん逃足を速めるために─と思わされるほど、これらの小説に出てくるモンスターはけっこう気持ち悪いし、怖い。
 「江戸時代のロビンソン
  -七つの漂流譚-」
 著者/シオドア・スタージョン、他
 編集/中村融
 発行/創元推理文庫
 定価/920円(税別)



船厨
 真ガレイが手に入ったので早速調理することにした。サイズは小振りだが、12インチのスキレットに収まりがよかったので、丸ごと唐揚げにした。「北海道の居酒屋で注文したカレイの唐揚げはこの3倍はあったな」などと思い出しつつ、口にした唐揚げは思いがけず非常に美味で、丸ごとバリバリとかみ砕き、大満足だったのだが、ここに至るまでにすったもんだがあったので記しておく。
 カレイが揚がったので早速皿に盛ってテーブルに置こうとしたところ、どう置いてよいものか、混乱したのである。普段なら何も考えずに頬張ってしまえばすむのだが、この唐揚げはソルティライフの読者の目に触れる、大切なカレイである。
 「魚ってのはふつう頭を左にして置くのが作法だよな」
 「でもちょっと待てよ。左ヒラメに右カレイだから」
 「アレ、ちょっと待て。右ヒラメだったか」
 「いや、カレイが右だ、でも魚の頭を左にするとカレイが逆さになっちゃうな」
と、その味にたどりつく前に、パズルを解くような悩ましさが存在したのである。
 で、結局、カレイのアイデンティティといおうか、彼の「ワタシは右に向いているんです!」という主張に従って、頭を右方に置いてみたのだった。カレイの値がヒラメより安いのは、左向きに置けないからなのかもしれない。
 さて、読者のみなさんはどうされていますか?
カレイの唐揚げ
●材料
かれい、塩、コショウ、小麦粉、サラダ油 適宜
●作り方
1)カレイは鱗を包丁の背で軽く削ぎ落とし、はらわたを取り出す。塩コショウをして小麦粉をまぶす
2)鍋にサラダ油を入れ160~170℃でカレイを6~7分かき混ぜずにじっくりと揚げる



海の博物誌
 昔から船乗りに酒はつきものだ。漁師にも釣り人にも。
 さて、魚は酒を飲まないが、目を回したときには酔っぱらいと同じような外観を見せる。
 いきのいい魚を小さな容器に入れ、レコードプレーヤーのような回転盤で回してやる。20~30秒ほど回してから元の水に戻すと、右にふらふら、左にふらふら、しばらくの間はまっすぐに泳げない。
 また、千鳥足で泳いでいるときに、おう吐することがある。口を大きく開けて、ちょっと後ずさりしながら、ゲーッとやるのである。
 おう吐する前に、エラ蓋をぴりぴりと小刻みに動かすことがあり、これは魚の咳だといわれている。また、胃の調子が悪いときには、大きなあくびをするともいう。 いずれも、人間の悪酔いの症状と同じなのが面白い。



ヤマハニュース

漁船や沿岸漁業の情報「大漁ネット」今月は青森県十三湖のシジミ漁
日本全国津々浦々で行われている沿岸漁業を漁法別にご紹介します。

「カジキ釣り講座」壁紙更新
オフショアフィッシングの醍醐味。ボートでのカジキ釣りをご紹介します。

「出動!マリンクラブ釣査隊」大阪湾・神戸沖のタチウオ、青もの釣り
レンタルボートで楽しむ、日本各地のフィッシングレポートをご紹介します。


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【編集航記】
 先日、広島を訪れた際、海の仲間に誘われて牡蠣を食べに行きました。川のそばにあるオープンテラスのお店だったのですが、これがなかなかいい雰囲気で、えらく気に入ってしまいました。川面に夜景が映るそのシーンは、いつかやはり牡蠣を食べたブリスベーンか、はたまたシンガポールを彷彿とさせてくれました。願わくは、その川にボートが行き交っていて欲しい。ボートで食べに行ければなお良し、でした。(編集部・ま)

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