ソルティライフ ソルティライフ
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イラスト・Tadami
いつでも潮気のある生活を過ごしたい。
MONTHLY COLUMN エピキュリアンたちの50年
キャビンの棚 人の存在を拒む“海鳥の島”「強力伝・孤島」
船厨 大衆魚なんて言わせない
「真アジのムニエル トマトソースがけ」
海の博物誌 潮汐を起こす力は重力の千万分の一
YAMAHA NEWS 「マリーナ百景」更新/「大漁ネット」更新/「マリンジェット」レンタルスタート!/マリンジェット「S-1グランプリ」
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MONTHLY COLUMN
 ヤマハ発動機の創始者である故・川上源一氏は、「はいむるぶし」などのリゾート施設を造り上げたが、その目玉となるレストランのメニューに「エピキュリアン料理」があった。文字通り、食道楽のための料理だが、自ら「エピキュリアン料理」なる大判の書籍を上梓までしたことを思うと、氏の「食」へのこだわりが並大抵でなかったことがうかがえる。
 こうした氏の「エピキュアニズム=享楽主義」の思想、そしてこだわりは、「食」にとどまらず、いろいろな場面で垣間見ることができる。そもそもヤマハ発動機の代表的な製品のひとつである「船外機」の誕生についても「自分で所有していたヨットで使う海外製の船外機が頻繁に故障することに我慢ならず、船外機の開発をスタートさせた」という逸話が語り継がれている。
 そして「やるなら世界に通用する一流品を創ろう」というのも、氏の口癖であったらしい。
 今からちょうど50年前に発売されたヤマハ初の船外機「P7」もこうした叱咤激励をうけ、開発がスタートした。船外機のことなど何も知らなかったスタッフ達が苦労したであろうことは想像に難くないが、その反面、燃えに燃えて大いに仕事を楽しんでいたことも、以前、当時の開発スタッフにお話を聞いて知った。
 初のボートも船外機と同じく50年前の1960年に発売された。本来、人の力だけでは到達することの不可能な「海」に、ただ海を楽しむ目的のために人を運んでくれるボートは、まさにエピキュリアンのための乗り物だ。比べてしまうといささか原始的かもしれないけれど、飛行機や宇宙ロケットにだって、乗り物としての魅力は引けをとらない。
 1960年に初めて発売されたボートは21フィートのカタマラン「CAT-21」。そしてその3年後にディープV船型を特徴とする名艇「STR-18」が発売された。この2隻は、発売後、発売前にそれぞれ過酷な耐久レースの洗礼を浴びている。
 当時、日本ではモーターボートレースが盛んに行われていた。ヤマハが最初に出場したレースは、1961年に全国モーターボート競争会連合会が主催した「東京ー大阪 太平洋1000キロモーターボートマラソン」。「CAT-21」で出場したヤマハは大型船外機の開発に着手していなかったこともあり、米国スコット社の75馬力船外機を4基搭載してレースに臨んだ。大荒れの海象となったその年、ほとんどの参加艇がリタイアしていく中で「CAT-21」は数少ない完走艇だった。このレースに勝ったことでヤマハボートの技術陣は大いに勇気づけられたに違いない。そしてこの結果、「荒れた海でも走破できる」「闘うことのできる─シーワーズィなボートづくり」というヤマハボートの方向性が生まれたのだった。
 その成果は、翌年の同レースに出場した市販前の「STR-18」プロトタイプが実証した。前年とは逆に大阪─東京間のコースとなった同レースは前年を遙かに凌ぐ荒れたコンディション。12m/sの風に波高6mという海象の中、完走したのはわずかに2隻。その2隻はいずれも「STR-18」だった。
 ハードな耐久レースに出場したのは、“よりよい製品を生み出す”という仕事のためだったが、それは「海で快楽を享受したい」というユーザーのためであったし、出場したスタッフ達もこの強烈な儀式を大いに楽しんでいたフシがある。たとえば「CAT-21」の乗員として参加したボートデザイナーの堀内浩太郎氏に、ヤマハ発動機の創業50周年の折にインタビューしたときなど、まるでこどもが大自然の中で得た特異な体験を自慢げに話すときのように、目を輝かせ、当時を述懐していた。そして氏は80歳を超えた今もなお、バイクのトライアルレースを楽しみ、漕艇のマスターズ世界選手権にチャレンジするなど人生を大いに楽しんでいる。
 “おもしろいもの”“たのしいこと”に目がない人たちが創り出す──、エピキュリアンによるエピキュリアンのための製品は、きっと素敵だ。「快楽主義」「享楽主義」というと、どこか退廃的なイメージがあるかもしれないが、レジャー製品を生み出す人々にとって「エピキュリアン」の称号は半世紀を経た今でも、勲章であっていい。


田尻 鉄男●たじり てつお
外洋帆走部に所属しクルージングに明け暮れた大学生活、1年間の業界紙記者生活を経て、88年、プロダクションに入社。以来、日本のボーティングシーン、また沿岸漁業の現場を取材してきた。1963年、東京生まれ。



キャビンの棚
 「強力伝・孤島」
 著者/新田次郎
 発行/新潮社・新潮文庫
 定価/438円(税別)
 漂流、そしてたどり着いた絶海の孤島。そこは、いかなる困難が待ち受けていようと、海の驚異にさらされ死に直面していた船乗りたちにとって救いの楽園であり、ロビンソン・クルーソーのような海洋小説を数々生み出す舞台となった。
 東京から南へ約600km、八丈島をはるかに超えた向こうにポツリと浮かぶ鳥島もそのひとつ。江戸時代末期、土佐の漁師だった中濱萬次郎は沖で嵐に巻かれ、この島に漂着。およそ5カ月間生き抜いた後、アメリカの捕鯨船に救われた。彼の物語は、井伏鱒二の直木賞作「ジョン萬次郎漂流記」によって広く知られている。
 鳥島は、険しい岩礁に囲まれた円形の火山島で、広さ5平方キロメートル足らず。昔から人が住まない島だったが、アホウ鳥などさまざまな海鳥の一大繁殖地となっており、流れ着いた漁師たちはこの鳥を食べて餓えをしのいだ。ところが明治の初め、羽毛を求めて乱獲が行われ、その祟りか、2度にわたって火山が大爆発。人も鳥も全滅に追い込まれたという。
 新田次郎の短編「孤島」は、戦後に設けられた鳥島の測候所で働く所員たち、15名の生活を綴ったものである。もちろん漂流者ほど過酷ではないにせよ、社会から隔絶され、家族との連絡もできず、食べ物さえ十分ではない環境で、男ばかり6カ月間にわたる「島流し」生活は、ひとりひとりの心にある種の狂気を植え付けていく。けっしてドラマチックな展開が待ち受けているわけではないが、閉じられた舞台設定のなかで、自然との戦い、心の葛藤をリアルに描き出す名手、新田次郎の淡々とした語り口が味わえる作品だ。発表は昭和30年、ヤマハ発動機の創業年である。
 なお、鳥島は国の天然記念物に指定され、測候所も1965年の群発地震で撤退。再び無人となっている。



船厨
 真アジという魚は、防波堤などから比較的簡単に釣れるし、さびきなどで鈴なりに釣れてしまうものだから、いまひとつありがたみが感じられないのかもしれない。鰯やサンマ、鯖などとならんんで「大衆魚」という呼び名からもそのことが伝わってくる。もちろん、いずれも大量に獲れ、手ごろな価格になるから「大衆魚」なのであって、決して味が良くないわけではない。また、最近では関アジ、関サバに代表されるように、高級魚化する傾向もあって、新鮮なものの刺身などは、まことにうまい。
 アジは夏の魚とされていて、暑くなってくるとけっこう立派な体躯になる。そして調理法、食べ方もいろいろで、実はとてもありがたみがある魚なのだ。塩焼き、干物、たたき、酢の物など、和食の食材として注目されるのはもちろんだが、ソースをあれこれ工夫するなどひと捻りするだけで立派な中華やフレンチ、イタリアン、スパニッシュにもなる(アジに限った話ではないのだけど)。
 イタリアンハーブなどを加えたトマトソースを鰺のムニエルに添えてみた、簡単料理。ワインでも用意してBGMにカンツォーネでもかければ、立派なおもてなしになる。
真アジのムニエル トマトソースがけ
●材料(4人分)
真アジ4尾、ダイスカットトマト水煮缶1こ、たまねぎ 1こ、ニンニク2片、コンソメ1こ、ローリエ1枚、白ワイン、塩、コショウ、オリーブオイル、小麦粉(以上適宜)

●作り方
1)真アジはハラワタを取り塩コショウする
2)鍋でオリーブオイルを熱し、ローリエとみじん切りにしたニンニクを中火で炒める
3)みじん切りにしたたまねぎを加えさらに炒める
4)たまねぎがしんなりしたらトマト缶を汁ごと入れ、白ワイン大さじ1、コンソメ、ドライハーブ少々、水100ccを加え煮込み、塩、コショウで味を調える
5)フライパンにオリーブオイルを熱し、薄く小麦粉を付けた真アジを両面こんがりと焼き、皿に取って 4)をたっぷり添える



海の博物誌
 潮の干満は、1日に2回。海水浴や釣り、潮干狩りなどをしていると、あれよというまに満ちたり引いたりして、けっこう忙しい思いをする。
 干満が2回あるのは、地球の、真っ直ぐ月に面した側と、その裏側で満潮がおき、その中間で干潮が起きるから。地球は1日に1回転しているからどこの海でも満潮が2回、干潮が2回おきることになる。
 太陽も同じように潮汐をおこす。しかし、質量は大きくても距離が遠いため潮汐をおこす力は月の半分ほどである。
 月と地球と太陽が一直線に並ぶ新月と満月のときは、両方の引力が同方向に重なるので、潮汐が大きくなる。これが大潮だ。いっぽうで、上弦・下弦の月の時は、互いに打ち消し合うので小潮となる。月の力は最大でも地球の重力の1千万分の1。10トンの水がわずか1グラム軽くなる勘定だ。たったそれだけの重力変化が、世界の海に大きな潮汐をもたらすのである。



ヤマハニュース

「マリーナ百景」 今月は香川県高松市の「瀬戸内マリン神在港マリーナ」
全国に点在するさまざまなマリーナを紹介します。

漁船や沿岸漁業の情報「大漁ネット」
今月はディーゼルエンジンのメンテナンスその2

日本全国津々浦々で行われている沿岸漁業を漁法別にご紹介します。

シーズン到来!マリンジェットをレンタルで楽しもう!
「マリンクラブ・シースタイル」は全国19ヶ所でマリンジェットのレンタルを開始しました。

マリンジェット「S-1グランプリ」
マリンジェット乗り日本一を決める大会をご紹介します。


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【編集航記】
 例のアレが発売されてから、電子書籍の話題があちこちで取り上げられます。端末に漫画や小説、雑誌をダウンロードして持ち歩け、いつでも読める、読み物の価格も安くなるかもしれないのだとか。ただ「もともと本を何冊も持ち歩かない」「文庫本の方が軽い」「本はあくまで本でなければならない」「臭いがしないではないか」などと、すでにメールマガジンとして情報をネットで配信しているくせに、懸命に時代に抗おうとするアナログ人間がソルティ編集部には多い気がします。さて、みなさんは例のアレ、もう手に入れましたか? (編集部・ま)

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