ソルティライフ ソルティライフ
ソルティライフ ソルティライフ
イラスト・Tadami
いつでも潮気のある生活を過ごしたい。
MONTHLY COLUMN うみがっこうの夏
キャビンの棚 ベテランボーターも必読の一冊「東京湾 船遊び 入門ガイド」
船厨 ヘミングウェイも愛した「トムコリンズ」
海の博物誌 数値では計り知れない台風の威力
YAMAHA NEWS 「マリンクラブ・シースタイル」WEB入会キャンペーン!/「マリーナ百景」更新/船外機の不具合に関するご案内/「大漁ネット」更新
8月の壁紙 『Salty Life』読者限定壁紙カレンダー
   

※お使いのブラウザでHTMLメールを表示できない場合は、こちらのサイトからもご覧いただけます。

MONTHLY COLUMN
 7月4日午前9時45分、沖縄・那覇の西40キロに浮かぶ座間味島の「古座間味ビーチ」を39艇のサバニが一斉に海へ躍り出す。第11回サバニ帆漕レースがスタートした。
 サバニを押し出す数多の海人(うみんちゅ)が蹴立てた白砂が南の島の日射しにきらめき、舳先が力強く寄せ波を切り裂いたまでは例年と同じでも、その数百メートル先で様相を異にしたのは、せっかく高く掲げた帆(ふぅ)を畳み込む艇がほとんどだったことだ。天気晴朗なれど波高し。波浪注意報が発令された中で開いた今年のレースは、慶良間の島々が守る内海を周回する特別ルールが適用された。いつもならスタート直後からほぼ順風を満帆に受けて那覇まで東進すればよいが、今年はまず風上レグを漕ぎ上げなくてはならない。
 風上レグで飛び出したのは〈新夏丸〉だった。不運にもスタートの号砲の数分前にマストを折ってしまったから、帆走はあきらめて全行程を漕ぐしかない。ただし、風上レグに関してだけいえば、マストに受ける風の抵抗がなく有利に作用した。
 が、横風の第2レグに差し掛かると、アビームで艇をすべらせる〈ざまみ丸〉の敵ではなかった。〈ざまみ丸〉はその後、追い風レグも無難にこなして、ファーストホーム(1h53m)。アウトリガーを備えない伝統サバニでは〈海想〉が優勝(1h58m)した。上位チームでも、帆走レグでの強風に耐えられず、いくつもの艇がマストを折る厳しいレースだった。
 地元の座間味中学校は今年も挑戦した。全校生徒21人は昨年より5人も少ない。彼らにとっても、この特別コースの適用は一段と厳しいレースになったと感じたに違いない。確かに距離こそ那覇へ向かう3分の1程度に短縮されている。しかし、強風に立ち向かうのに中学生の細腕では過酷だ。しかも21人中10人は女子である。制限時間は2時間45分。間に合うか...。
 ところで、この座間味中学生たちのチーム名を〈海学校〉という。白地の帆にもこの3文字を赤く大書している。なかなかいいネーミングではないか。なにも中学生が勉強するのは教室だけではない。海からだって、正義感や責任感など多くのことを学べる。
 「いや、そういうのを含めていろいろな意味はあるんですが、沖縄の人が〈海学校〉って聞いたら、おやまあ、すごい名前を付けたねー、とニヤリとすると思うんですよー」
 同校の許田恵先生が、内地人(ないちゃー)である取材者に解説してくれた。
 なんでも、座間味に限らず沖縄には「山学校」という言葉があるそうだ。隠語には違いなかろうが、学校関係で使われるから、だれでも知っている。辞書に載っていないだけの一般用語ともいえる。意味は、「教室に行かず、山に行って“自習”すること」、ようは「エスケープ」「サボリ」である。その山を海に置き換えただけ。
 座間味中のサバニチャレンジの歴史の中で、だれが名付けたかは聞きそびれたが、大自然から正義感を学ぼう…なんて説教くさいのより、こっちのほうが愉快じゃないか。
 などという軽口も、漕がなくてすむ者の言い草。〈海学校〉の諸君は風に向かって懸命に漕いでいた。愉快などとは感じる余裕はなかったろう。
 レース後、主将の加福大地君(3年)が話した。
 「いゃ、キツかったす。完走は...しましたけど。3時間50分。たぶん、このうち、2時間50分か3時間は風上に漕いでいました。(上マークの)名瀬を抜けたら後は楽勝っした」
 タイムアウトではある。〈海学校〉のほかにも、制限時間内にゴールできなかったのは39艇中25艇。しかし、多くの艇がリタイヤせず、ゴールの座間味港まで漕ぎきった。
 「那覇まで快走した先輩たちより、貴重な経験ができたと思うよ。自信になったんじゃない」
 そう問いかけると、加福君ははにかみながらうなずいた。頭上では、ハイビスカスの大きな赤い花が揺れていた。レースが終わって2時間あまり、座間味の夏はまた、ゆっくりと時が流れる午後に戻っていた。


菅 仁良●かん・きみなが
1962年、愛媛県今治市生まれ。大学時代からディンギーを始める。夕刊フジ記者を経て、現在フリージャーナリスト。マリンジャーナリスト会議副座長。



キャビンの棚
 「東京湾 船遊び 入門ガイド」
 著者/浜中せつお
 発行/舵社
 定価/1600円(税別)
 東京湾と聞いて連想するものは何だろうか? 屋形船でのクルージング? チャーターボートでのフィッシング? 初夏の潮干狩りに客船でのサンセットクルージングなど、その楽しみ方は千差万別。東京湾はそう断言できてしまうほど、遊びの環境とファシリティが整っているマリンフィールドだ。
 この遊びの宝庫をどのようにして楽しむのか、どうしたらもっと面白く楽しめるのだろうか?とだれもが思う八方美人的な問いに、丁寧に答えているのが本書「東京湾 船遊び 入門ガイド」である。入門ガイドとはなっているが、その内容はベテランボーターにもお勧めできるほどで、例えば東京湾の潮流は「左回り? 右回り?」といったベテランでも「あれ」と思う環境についての解説や釣りやクルージングにおけるポイントの詳細説明、さらに屋形船に始まり遊漁船、チャーターボート、レンタルボートの選び方やそれぞれの利用方法まで、この一冊を熟読すればベテランオーナーの知識に匹敵する東京湾というフィールドでの遊び方が習得できる。
 著書の浜中せつお氏は神奈川新聞写真部に勤務した後、1987年からフリーランスのイラストレーター、フォトグラファー、ライターとして各方面で活躍している。その中でもマリンフィールドは氏の最も得意とする分野であり、丹念なフィールドワークから生み出されるイラストや記事は高い評価を得ている。生家は横浜・根岸の釣り餌屋という浜中氏の東京湾への想いが伝わる「東京湾 船遊び 入門ガイド」。この海をプレイフィールドにするすべての人にお勧めする一冊だ。



船厨
  きりっとしたジンベースのカクテルは夏の海に合う。帰港後、クラブハウスのカウンターで仲間と釣り逃がした魚についてほらを吹きつつやる酒にもぴったりだ。といっても我が国のマリーナにはバーが皆無といってよく、実はヨットクラブ、マリンクラブの機能をこれで80%は低下させている気もするのだが、実際のところ、車でやってきて日帰りで帰るオーナーさん達には不要なのかもしれない。
 さて、海の酒ならヘミングウェイに学ぶのが間違いない。彼が愛したカクテルといえば、フローズン・ダイキリが有名だが、その他にも、さまざまな酒が小説に登場していて「ヘミングウェイの酒」(オキシロー著/河出書房新社)に詳しく紹介されている。
 トムコリンズもそのひとつ。へイングウェイは気に入った酒を自分好みにアレンジすることが多かったらしいが、同著によると、彼はトムコリンズにソーダではなく椰子の汁を使うのを好んでいたとう。なるほど、「海流のなかの島々」では主人公のハドソンはこの自己流トムコリンズを好んで飲み、その味を「良く風をはらんだ帆の快味を思わせる酒だ」と表現している。 
 日本のマリーナにはバーはないけれど、ボートやヨットはこのうえないそれとなる。たまには船に泊まる覚悟で、夏の宵をうまい酒と過ごされてはいかがだろう。
トムコリンズ
●材料
オールド・トム・ジン 45ml、レモンジュース15ml、砂糖2tsp、ソーダ適宜、レモンスライス、このみでチェリーなど
●作り方
ジン、レモンジュース、砂糖をシェイクし、氷を入れたコリンズグラスに注ぐ。ソーダを注ぎ、レモンスライスを入れる。



海の博物誌
   「中型で強い台風●号は…」などとという説明で始まる天気予報だが、いったい何をもって台風の中型、小型、大型というのか、また強い、並み、弱いというランクづけをしているのだろうか。
 まず、台風はタイフーン(typhoon)がその名称の源。
 台風は北太平洋西部に発生する熱帯低気圧のうちで、最大風速が毎秒17.2メートル(風力8相当)以上に発達したものを指す。これがインド洋で発生したものをサイクロン、大西洋で発生したものをハリケーンと呼ぶ。
 風力というのは、気象庁の天気種類表のなかで、陸上での風の強さを1から12段階に分類したもの。“中型”というのは毎秒15メートル以上の風が吹く範囲が半径300から500Kmまでのもの、“強い”というのは最大風速が33から44メートル未満のものということになる。これを風力に換算すると、おおよそ風力12以上のレベルだ。
 風力と聞いてもなかなかピンとこないかもしれないが、風力12というのは「被害甚大。記録的な損害がおこる」という説明になる。海上での波の高さは14メートルにもなるといわれる。ちなみに風力6で傘の使用が困難になるそうだ。
 台風の勢力は何となく分かっても、台風付近の状況はその想像をはるかに上回るようだ。



ヤマハニュース

「マリンクラブ・シースタイル」WEB入会キャンペーン!(8/31まで)
5人に1人の方の入会金が無料になるお得なご案内です。

「マリーナ百景」 今月は東尋坊がゲレンデとなる福井県「三国マリーナ」
全国に点在するさまざまなマリーナを紹介します。

船外機「F250D系、F25系」の不具合に関するご案内
免許を取得された方に、ボート免許教室についての感想をお聞きしました。

漁船や沿岸漁業の情報「大漁ネット」 今月はマリンディーゼルその4
日本全国津々浦々で行われている沿岸漁業を漁法別にご紹介します。


今月の壁紙
『SALTY LIFE』読者限定
8月の壁紙カレンダーはこちらからダウンロードできます。


バックナンバー
『SALTY LIFE』のバックナンバーはこちらからご覧になれます。


【編集航記】
 梅雨の時期、私の周りでは「今年は冷夏だ」と、まことしやかに噂されていましたが、ふたを開けてみたら連日の猛暑。今日もオフィスの窓からはもくもくと入道雲が湧いて見えます。山や川もいいけれど、やはり夏こそ海に行きたい。フネに乗りたい。そして夕涼みにトムコリンズを一杯。まもなく編集部も夏休みを迎えます。(編集部・ま)

■ 『SALTY LIFE 』について
メールマガジン配信サービスにご登録いただいているお客様に定期的に配信するマリン情報マガジンです。
■ お問い合わせに関するご案内
『SALTY LIFE』は送信専用のアドレスより配信しております。
「配信の停止」についてはhttps://www2.yamaha-motor.co.jp/Mail/Saltylife/をご参照下さい。
※お使いのブラウザでHTMLメールを表示できない場合は、こちらのサイトからもご覧いただけます。
ページトップへ
『SALTY LIFE』
〒438-8501 静岡県磐田市新貝2500
発行:ヤマハ発動機株式会社


Copyright(C) 2010 Yamaha Motor CO.,LTD. All rights reserved.
掲載文章および写真の無断転載を禁じます。