ソルティライフ
イラスト・Tadami
いつでも潮気のある生活を過ごしたい。
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MONTHLY COLUMN クルージングの歓びは万国共通
キャビンの棚 偽りのない海の世界「ターニング・タイド 希望の海」
船厨 夏に合うドリンク「キューバリブレ」
海の博物誌 黒潮に逆行する魚
Salty Who's Who 目が見えるって、なんて不自由なんだろう
YAMAHA NEWS 「マリーナ参観日」ではじめてのマリーナを体験しよう!!/ボートとジェットの免許教室を同時に申込むとお得です。/「シースタイルマリン塾」操船、離着岸、ボートフィッシングなど/締め切り間近!5人に1人入会金無料「マリンクラブ・シースタイル」キャンペーン
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MONTHLY COLUMN
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 前回のソルティライフで初島へのクルージングが紹介されていて、嬉しくなった。しっかり美味そうなものを食ってきているではないか。やはりボートで島へ渡る、行き先で美味い飯を食うというのはみんな楽しく、嬉しいのである。
 初島へのクルージングから、以前、島に渡って遊んだことがある中米のベネズエラを思い出した。初島とベネズエラでは似ても似つかないようではあるが、実はそうでもない、とも思う。
 南米大陸でも屈指の自然の宝庫として知られているベネズエラ(ベネズエラ・ボリバル共和国)は1498年、コロンブスの三回目の航海によって初めてヨーロッパと接触、16世紀半ばにスペインによって植民地化されたのち、1821年に独立した。ベネズエラといえば、日本では「野球」をイメージする方も多いだろう。ヤクルトや巨人、横浜で活躍した人気者のラミレスの故郷でワールド・ベースボール・クラシックなどでもお馴染みだ。
 プエルト・ラ・クルスはベネズエラの中でも沖合に浮かぶマリンリゾートの玄関口として機能している。日本人が一般的に抱くであろうカリブ海のイメージとは異なり、海の透明度はそれほどではないけれど、リゾートホテルが点在し、マリーナもある。また、市内の湾岸エリアの一部には入り組んだカナルが掘られていて、岸辺には瀟洒な家々が建ち並んでいる。ボートを泊めている家も多い。
 マリーナの中の小さなオフィスに出むいた。目の前の岸壁には25フィートから30フィートクラスのチャーター用ボートが数隻、並んで艫付けされていた。そして、この中のひとつをチャーターして、島巡りを楽しむのだ。チャーターボートのオフィスに張り出されたチラシを見ると、ビーチと茅葺き屋根のレストラン、ボートを泊めることのできる桟橋だけの施設がある。それぞれのチラシには嘘か本当か行く先の島の名前が書いてあった。たとえば「Borracha」。
 「ボラーチャ。英語で言うとドランカーって意味だよ」
 一緒にクルージングを楽しむ地元のボートディーラー氏が教えてくれた。「飲んだくれの島」というのはおそらく由緒ある名前ではないだろう。「嘘か本当か」と疑念を抱いたのはそのためだ。

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 島に渡って一日をゆっくり過ごすという行為は、万国共通の人々の楽しみ方なのだ。欧米やオーストラリア、ニュージーランドなどに比べると、ボート人口も少ないベネズエラだが、チャーターボート・ビジネスが成り立つところを見ると「フネで島へ渡る」魅力を求める人々は後を絶たないのではないか。
 エンジンをかけ、舫を解く。港内を沖へと走らせながらフェンダーをあげる。いつもと変わらぬ儀式を経ているわけだが、それでも異国の地でフネを出すとき、こと、島へ渡ろうというときののワクワク感は最高だ。
 カリブ海に浮かぶ島々は乾いていた。ここへ来る前に抱いていたトロピカルなイメージとは裏腹に、サボテンがそそり立つ、どちらかといえばメキシコの北部、バハカリフォルニアなどに近い風景が繰り広げられる。
 いくつかの島をすり抜けて目的地を気持ちよく目指す。平日の午前中の早めの時刻に到着したボラーチャは、ひと気がほとんどなく、静寂に包まれていた。一行を最初に出迎えてくれたのは、イグアナ、そして堂々とした体躯を持つイーグルである。
 あとは、ほんの数人のおばちゃんとおじちゃんがいるだけの小さなレストランで、時間をゆっくりかけて、ボラーチャになるだけである。そのうち時間の流れが止まる。
 翌日は、島でなく、プエルト・ラ・クルスの郊外にあるサンタフェという漁師町を訪れた。これまでに見てきた経験から言うと、一部の先進国を除いて、海外の多くの漁師町には係船施設がない。漁師たちは砂浜からフネを出し、砂浜にフネをあげる。サンタフェもそうだ。この日は風も強く波もやや荒い。プレジャーボートでやってきた我々は砂浜にフネをあげることもできずに、結局岸から10メーターほどボートを離してアンカーを打ち、腰まで水につかって上陸を果たした。真っ先に出迎え、ロープをとって砂浜の椰子の木に結びつけてくれたのは、爬虫類や猛禽類ではなく、れっきとしたヒトである。なぜ、ここまで頑張って上陸したかというと、ここにも魚の美味いレストランがあったからである。そして、しばしボラーチャとなって刻を過ごすためだ。オープンテラスのテーブルにどさりと置かれたとれたてのタチウオのフライ、そしてベネズエラのナンバーワン・ビール、ポラール。キャプテン付きのチャーターボートはボラ―チャにとって都合がいい。
 海と船、美味い料理と飲み物、素敵な音楽と本があれば、本当に人生どうにかなりそうな気がしてくる。堕落なのか超越なのか。ん? これって、Salty Lifeそのものじゃないか。


田尻 鉄男●たじり てつお
外洋帆走部に所属しクルージングに明け暮れた大学生活、1年間の業界紙記者生活を経て、88年、プロダクションに入社。以来、日本のボーティングシーン、また沿岸漁業の現場を取材してきた。1963年、東京生まれ。



キャビンの棚
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「ターニング・タイド 希望の海」
制作国:フランス
配給:ミッドシップ
監督:クリストフ・オーファンスタン
キャスト:フランソワ・クリュゼ、他

【上映スケジュール】
2014年5月31日より「新宿シネマカリテ(東京)」/6月28日より「シネ・リーブル梅田(大阪)」「ピカデリー(愛知)」/7月5日より「みなみ会館(京都)」/8月2日より「ディノスシネマズ(札幌)」他、順次全国ロードショー予定

映画公式サイト:http://turning-tide.com/
 ヨットを素材にした映画はヒットしない、という定説があるらしい。もっと言えば、海をモチーフにした映画はヒットしないというジンクス(?)があるらしい。設定が一般的でなく、演出が難しく、撮影が困難で、何よりも海に興味を持つ人がそんなに多くなく、映画館に足を運ばせる基本的要素が少ないということなのか。
 しかし、過去にトランスパックレースを素材にした「モーニング・ライト」など、素晴らしいヨット映画は何本かある。ジョニー・ディップの「パイレーツオブ・オブ・カリビアン」シリーズも言ってみれば海ものだし。でも、不思議なことに、どっちもディズニーが絡んでいる映画だな。
 そこで「ターニング・タイド 希望の海」の登場だ。
 日本での公開規模はとてもつつましい。東京、大阪、つづいて京都、愛知などでも続くが、今、発表されている公開期間は短い。
 しかし、そのセーリングシーンは迫力満点。単独世界一周ヨットレース ヴァンデ・グローブを舞台に繰り広げられるストーリーを軸に、迫力あるレースシーンが続くこの作品、セーリングファンなら絶対に楽しめる。
 試写会で隣に座ったベテランヨットレーサーも、この映像に嘘はない、と言い切ったほどにリアリティにあふれる。撮影に使用したヨットは2012年に実際にヴァンデ・グローブで使われたヨット。3人のプロセーラーが操船を担当する中、18人ものスタッフが乗り込み、40日以上をかけて撮影を行ったとプレス資料にはある。
 驚くのは主役のフランソワ・クリュゼ。昨年のヒット作「最強のふたり」の車椅子に乗る主人公とは同じ人物とは思えないくらい、セーラー役がピタリとはまっている。いろんな人生を体現できる俳優というのは、まことに恵まれた職業であると思ってしまう。
 そのストーリーを明かすのは興ざめなので「是非、ご覧ください」と言うのにとどめるが、この短い公開期間に本作を見られる方は幸せである。その僥倖に巡りあうためには、映画館に足を運ぶしかない。



船厨
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 ふた昔前までは「ラムコーク」と呼ばれることが多かった。さらにひと昔前までは「キューバリバー」と呼ばれることが多かったように思われる。カクテルの名前の由来などに興味がなければ、「キューバの川」のことだと思っていた人もいたかもしれない。いまは「キューバリブレ」と呼ばれることが多い。海外のバーなどではこれで通じる。
 ラムをコーラで割った単純な飲み物だが、ホワイトラムの爽快かつコクのある香りと味が、コーラを南国の飲み物へと一変させる。また、レモンやライムを用いるが、これは半分ぐらいの大きさに切って、手でぎゅっと握って果汁をグラスに絞り落とし、残りをそのまま放り込む。この豪快さというか無骨さが「甘い飲み物」に男らしさを加えてくれる。
 ちなみに「キューバリブレ」とは「キューバの自由」の意味。キューバがスペインから独立した1898年、米兵が持ち込んだコーラでラムを割り、独立を祝ってみんなで乾杯したことに由来する。でもそれなら全てスペイン語の発音で「クバリブレ」が正しいんじゃないか。すでにそう表記しているバーもあるようだが、ひと昔分の未来には「クバリブレ」が一般的にな呼び名になっているかもしれない。
「キューバリブレ」のつくり方
■作り方
1)ホワイトラム 45ml、ライム・ジュース 10ml、氷グラスに入れ、コーラ を注いでステアする。
2)ライムを添えて出来上がり
※ライムの代わりにレモンでもOK.



海の博物誌
 日本列島の太平洋側を流れる「黒潮」は、「ガルフストリーム(メキシコ湾流)」とならんで世界二大海流ともいわれる。夏になると勢力が増し、カツオやマグロ、カジキなど南方からさまざまな魚を運んでくる(黒潮とともに泳いでくる)ことは、釣り人の間ではよく知られていることだ。黒潮は産卵域にも関係するので、これら回遊魚の他に、さまざまな魚に影響を与えている。
 ところで、カジキやマグロなどいかにも力強い泳力のありそうな魚たちは、黒潮続流と呼ばれる海流に乗って北アメリカまで行き、そのまま南の海へと帰っていく。そのことは比較的容易に想像できるのだが、例えば磯魚としてよく知られるイシダイなどはどうなのだろう。流れ藻で北に運ばれるこの魚は、実はこの扁平な体つきでもしっかりと泳ぎ、黒潮に逆らって南へと帰っていくらしい。しかもなかなかのスピードで。
 考えてみれば、行きっぱなしで、そこから魚がいなくなってしまったら、漁師だって釣り人だって困ってしまう。



Salty Who's Who
ブラインドセーラー
岩本光宏さん
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 昨年6月、TVキャスターの辛坊治郎さんと共に、2人乗りヨットで太平洋横断に挑んだ岩本光弘さん(47歳)。出港5日目、宮城県金華山の約1200km沖でクジラと思われる物体と衝突してヨットは浸水。救命いかだに乗り移り、10時間後に海上自衛隊の救難飛行艇US-2に救助された。
 岩本さんは全盲だが、12年ほど前からヨットを楽しむブラインドセーラーだ。
 海の事情をよく知らぬ世間は、勝手に冒険に挑んだ者を、税金を使って助けるとは何事だ、自己責任を全うしろと揶揄したが、海の仲間は「よくぞ無事に帰ってきてくれた」と2人を称えた。そして、難局を乗り切った2人のシーマンシップに対して、今年3月、MJC(マリンジャーナリスト会議)はマリン賞スポーツ・アドベンチャー部門を授与した。
 航海前、ヨットレーサーのための安全講習を受け、膨張させた救命いかだに触れていたことが今回の遭難時に役立った、と岩本さんは言う。「不思議なくらいに冷静でした。準備というものが、いかに大切かを思い知った」
 しかし、10時間も救命いかだに乗っていると不安が襲う。
 飛行艇のエンジン音が聞こえて助かると思ったが、そのエンジン音が遠ざかったときは動揺した。「過大な期待はするな。実現しなかったらダメージが大きくなる」と2人で話し合ったという。そして再び飛行艇のエンジン音が聞こえたものの、これもまたすぐに聞こえなくなった。当時、波高は約4m、風速は16~18mほど。「この波で着水は無理なんだ」と自分たちに言い聞かせようとしたそのとき、船のエンジン音と「大丈夫ですか!」の声が聞こえた。
 日没直前、ほんの一瞬に訪れた波高の低い時を見計らって着水し、救助に当たってくれたのは11人の救難飛行艇のクルーたちだった。波が高く飛行艇から救命いかだは見えず、上空のPC3との交信によって位置を確認したという。
 「ヒロさんは音に敏感だから、より早く浸水の異常音に気づいてくれた。そうでなければ、もっと深刻な状況になるまで気づかなかった」と言う辛坊さん。さらに「今はこういう状況だけれど、太平洋横断という夢は抱きつづけていいんじゃないか」と言ってくれた。救助を待つ救命いかだの中での会話としては、ちょっと不思議な雰囲気である。この言葉がしみじみと「嬉しかった」と、岩本さんは思い出す。
 この航海で得たものは何だろう。
 「技術的なものもありますが、やはり多くの人々に出会えたことです。(全盲の私が)外洋に出たいと言ったとき、『やろうよ』と言ってくれた人がいた。今回は途中で断念しましたが、焦らず、機会があればまたチャレンジしたい。夢をあきらめず、やり続ければ実現する、そう思っています」
 岩本さんの頭の中には、セーラーとしての「メンタルマップ」という地図がある。
 何回かの経験を通して、デッキの上やキャビンの中、どこに何があるかがインプットされている地図なのだ。目が見えるセーラーよりもキャビンの中で頭をぶつけたりすることが少ない。「目が見えるって、なんて不自由なんだろう」と笑う岩本さん。
 岩本さんが次に挑戦する大洋横断の航海は、どのような「メンタルマップ」が描かれ、実現に向かって進むのだろうか。

(文・豊崎謙)




ヤマハニュース

「マリーナ参観日」ではじめてのマリーナを体験しよう!!
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【編集航記】
夏というと「梅雨が明けてから」という印象を抱きますが、気象業界では6月からを夏というのだそうです。実際に、今年も昨年と同様、はやくも「夏日」を迎えました。もちろん海が楽しいのは夏ばかりではないし、暑いと日常生活も何かと大変なのですが、それでも暑いと海は楽しくなりますね。今月も素敵なマリンライフをお過ごしください。
(編集部・ま)
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