ソルティライフ
イラスト・Tadami
いつでも潮気のある生活を過ごしたい。
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MONTHLY COLUMN 素朴に楽しむアジアの離島
キャビンの棚 明治の世に行われた決死の漁「珊瑚」
船厨 懐かしい味を新しく「ワタリガニのトマトクリームパスタ」
海の博物誌 航行中に気をつけたい「漁網」
Salty Who's Who 車いすの轍をヨットの航跡に
YAMAHA NEWS ニューモデル「FR-20」登場/ビッグボート「EXULT38 CONVERTIBLE」スペシャルサイト公開/2級免許とるなら「スマ免」!お友達紹介キャンペーン/冬場に腕を磨こう!「マリン塾」操船、離着岸など
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MONTHLY COLUMN
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 世界の海のあちこちを旅してきた。太平洋のリゾートやアメリカやオーストラリアといったいわゆるボーティング先進国は憧れの場所だし、素晴らしいのだが、歳を重ねていくと、結局、アジアの海辺がいちばん落ち着いたりするから不思議だ。
 フィリピン海から東シナ海にかけての海域には無数の島々が浮いている。加えてタイからマレー半島にいたる沿岸のあちこちにリゾートが点在する。先述した先進国や世界の名だたるリゾートに比べ豪華さや洗練さにはいくぶん欠けるかもしれないが、「素朴」を堪能するには充分すぎる施設と人々が待ち受けており、なによりも贅をつくした極上の海が備えられている。
 東南アジアと呼ばれるエリアのほぼ中央に位置するマレーシアは、大陸から東シナ海に突き出るようにのびるマレー半島とボルネオ島の一部からできあがっている。国の面積は日本の9割ほど、人口は2割弱。狭い国土に人口がひしめく日本から見れば、それだけでも贅沢な話だ。また、さまざまな民族、人種が共生するこの国はアジアの中でも独特の風土や文化をはぐくんで、それが我々日本人から見るととてもエキゾチックな印象を受けるのだ。さらに、周囲の美しい海は、まさに自然が贅をつくしてこの国に与えてくれた宝物であるかのような印象を受ける。
 この国の最大のリゾートといえばボルネオ島のコタキナバルだろう。東マレーシア最大の都市で高層ホテルが建ち並び、沖合の島々には日帰りで楽しめるリゾートも点在している。
 ボルネオを中心とする東マレーシアに対して、マレー半島の国土は西マレーシアと呼ばれる。半島の西側にはランカウイ島やペナン島など日本でもおなじみのリゾートアイランドが浮かんでいる。
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 半島の東側はどうか。クアラルンプールから北東に線を引いたその先の海岸にクアラトレガンヌという都市がある。毎年、有名なマッチレースが行われているので、セーラーだったら耳にしたことのある名前かもしれない。ここから25マイル離れた沖の島々を目指す。その中のひとつ、メインアイランドともいえるのがレダン島だ。この島のリゾートは、島の中のさらなる「陸の孤島」。背後はジャングルで、目の前は美しい海が広がる。つまり車では訪れることのできないリゾートエリアなのである。島には空港があるが、そこからもまたボートを利用することとなる。リゾートの砂浜からは海に向かって古びたポンツーンがひとつだけ伸びており、これがこのリゾートと世間を繋ぐ唯一の証しのようなものだ。
 「REDANG PELANGI RESORT」は桟橋の目の前にあった。もっとも大きな建物は食堂(レストランではない)だ。ほかにシンプルな木造2階建ての「シャレー」と呼ばれるマレーシア独特のコテージと、フロント代わりの小屋、売店、ダイビングをはじめとするアトラクションの事務所兼物置がある。
 オーナーは中国系マレーシア人のフーさん。
 「とにかくシンプルが一番。ひとりでも多くの人々に家族でも若者のグループでもなるべく安い料金で楽しく滞在して欲しい。それが我々の施設のコンセプト、マリンスポーツやトレッキングなどアウトドアライフをめいっぱい満喫して欲しい」と胸を張る。そもそも欧米人が好みそうな滞在型高級リゾートとは最初からコンセプトが異なるのだ。
 島をボートで一周してみた。一時間もかからない。景色は単調だ。最新のヤマハ4ストロークを積んだボートはいずれも自家製。モンスーンシーズンでリゾートがクローズとなる10月から12月にかけての3ヶ月間、ボートのオペレーターたちは造船作業に取りかかるという。
 飾り気を一切排除した、アットホームでアクティヴな雰囲気のほかに、このリゾートの魅力は何かを考える。そしてボートオペレーターたちのシーマンシップの質の高さが上げられるように思える。何しろ自分たちで船も造ってしまうのだから。
 もうひとつは目の前に控える極上の海そのものだ。周囲はマリンパークとなっており手厚く自然が保護されている。釣りは楽しめるのだが、ボートで相当走らなければならない。その代わりに、島の周囲は、およそ500種類のサンゴと、3000種類に及ぶ魚類が生息しているといい、シュノーケリングやダイビングを楽しむ者を飽きさせることがない。
 リゾートに滞在する目的は人それぞれだろう。何もせずに海を眺め、ただ時間が過ぎていくのを楽しむ人々もいれば、目の前に広がる自然を大いに満喫しようというアクティヴな利用者もいる。ここは間違いなく後者のためのリゾートだ。だが、時間の感覚が麻痺する点においては共通している。


田尻 鉄男●たじり てつお
外洋帆走部に所属しクルージングに明け暮れた大学生活、1年間の業界紙記者生活を経て、88年、プロダクションに入社。以来、日本のボーティングシーン、また沿岸漁業の現場を取材してきた。1963年、東京生まれ。



キャビンの棚
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「珊瑚」
発行:新潮社
著者:新田次郎
定価:670円(税込み/電子書籍版)
 山岳小説で有名な新田次郎が海を舞台に人間と自然の関わりを描いたのが本書「珊瑚」である。
 明治時代における漁業は帆や櫓を使う、自然の理と密接した漁法であるために、湾外へ出るような漁は限られたものだった。そのような中で、一攫千金を夢見た漁師で賑わいを見せていたのが長崎県・五島列島で行われていた宝石珊瑚漁だ。当時の宝飾品として流通していた珊瑚は主にイタリアなどの地中海産であったが、五島列島沖合に位置する男女群島で珊瑚曽根が発見されると、水揚げ価格の高さから多くの漁師が集まり、一時は300隻を越える珊瑚船が出漁したといわれている。発動機のない時代に、深海珊瑚を採る漁は、その漁場の遠さから生と死が隣り合わせであり、実際に明治38年には1200人、翌年には1000人が遭難する惨事が起こった。そうした当時の漁業と漁師の姿、生き様を新田次郎が独特な筆致で描写している。現代にも通じる漁の本質が垣間見られる作品となっている。



船厨
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 エビ・カニ好きの日本人。いまでこそ、深海性のズワイガニ、北海道産の毛ガニやタラバガニ(厳密にいうとヤドカリらしいが)がネットなどで簡単に手に入るようになったが、数十年前までの関東圏の人々にとって、カニといえば「ワタリガニ」(ガザミ)が主流だった。北海道の南から九州まで幅広く生息するこのカニを愛する人が、編集部のまわりにけっこういる。
 夏、夜になると懐中電灯と長い柄のついた網をもって港へと出かける。岸壁の足下を懐中電灯で照らすと、ワタリガニがふらふらと泳いでいる。それを網で掬うのだ。冬眠するらしいので、夏が旬のようなイメージがあるが、ものの本によると、寒くなってからの雌のワタリガニは卵を抱いており、珍重されるという。また、漁業では刺し網などで捕獲されるが、国産品は年々、貴重品となり、スーパーなどでも輸入品が多いことに気づかされる。
 鍋が恋しくなるこの季節、スーパーの鮮魚コーナーに、バーレン産のワタリガニが並んでいた。鍋はもちろんだが、漁師の間では味噌汁にするのが一番旨いといわれる。今回はパスタのソースにしてみた。気取って食卓に並べたものの、けっきょく最後には手をべとべとにしながらカニのはさみにむしゃぶりつく。こういう料理は、一緒に食べる人との距離を縮めてくれるようでいい。
「ワタリガニのトマトクリームパスタ」のつくり方
■材料
ワタリガニ2杯、白ワイン100cc、トマト缶1個、生クリーム50cc、バター10g、タマネギ1/4個、にんにく2かけ、鷹の爪少々、塩少々、オリーブオイル適宜、ローリエ1枚
■作り方
1)タマネギをみじん切りにし、鍋にオリーブオイルを敷き炒める。しんなりしたらトマト缶を入れ、塩を少々、ローリエを入れて煮る。
2)スキレットにオリーブオイルを敷き、みじん切りにしたニンニク、鷹の爪を入れ、香りが立ったら適当に切ったワタリガニ、白ワインを加え、カニに火が通るまで蓋をする。
3)カニのみをほぐして、はさみの部分など一部を盛りつけように取り除く。
4)2に1を入れ、カニの味が馴染むまで煮込んだ後、生クリームとバターを入れ、さらに煮る。
5)好みの加減で茹でたパスタを4に絡め、皿に盛り、3で取り除いたカニで飾り付けてでき上がり。



海の博物誌
 ボートやヨットで海を航行中に気をつけたい物のひとつが漁網である。流し網、刺し網、巻き網、定置網など、沿岸漁業にはさまざまな形態の網漁がある。もっとも多いのは刺し網漁だろうか。帯状の網を海中に張るもので、その深さ、長さは、魚種によってさまざまだが、網の端と端に、目印となる旗を付けた梵天が浮いている。
 定置網は港湾の近くに設置されているケースが多い。岸に沿って流れる潮を横切らせるように、沖に向かって垣網を設置して魚を誘導し、袋状の落とし網に導く。垣網の長さは数百m、大規模な物になると1kmを超えるという。この複雑な網は値も高く、設計、設置から手入れに至るまで莫大な手間とコストがかかっている。誤って網やロープにプロペラを絡めてしまったりすると、重大な事故に繋がるばかりか、設置者に多大な迷惑をかけることになるので、なるべく離れて航行したい。



Salty Who's Who
団体役員
江戸徹さん
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 愛媛県・松山の高校時代にはボクシングでジュニアフライ級の西日本チャンピオンにもなったという江戸 徹さん、60歳。交通事故で、やむなく車いすの生活となったのはちょうど30歳の時だった。マリンレジャーにのめりこむのは、7年前の三重県・河芸マリーナでの“海のバリアフリーまつり”への参加がきっかけだ。
 「小学生の時は友達とヨットの設計図を描いたりして、漠然とですが子供心にもヨットには憧れを抱いていました。松山の海では、オヤジと一緒によく船釣りに行きました。濃い霧で四方が見えなくても、船頭さんはコンパスひとつで、ちゃんと思い通りの場所にたどり着いている。びっくりしたことをよく覚えています。海に出るのは、ホントそれ以来って感じですが、アクセスディンギーに乗せてもらい、バイクで走っていたときの自由な感覚、爽快感が蘇って、いっきにはまりました」
 その後、ディンギレースに参加するも、苦戦が続く。「同じヨット、同じ風なのに、なんでこんなに差がつくのか。胃が痛くなるくらい悔しかった。そう簡単にはいかないことを思い知りました」。15年前にはボート免許を取得した。そうしてマリンレジャーが徐々に生活の一部になっていくなかで、アフターレースのパーティでとても魅力的な話を聞かされた。「一言でいえばヨットで夜通し海を走るということです。もちろん不安もありましたが、同時に乗ってみたい、行ってみたいというワクワク感を抑えることができず、なんとか実現できるよう、河芸で活動する“海の達人”の大野木博久さんに相談したところ、快く協力してくれることになったのです」
 『海の熊野古道をゆく』と命名された往復約180海里のオーバーナイトクルーズは、10月17日に実現する。河芸の桟橋に舫われた41フィートのセーリングクルーザー《キャプテン55》に集まったのは7人。服部正樹オーナー/キャプテンのもとベテランセーラーの井上季朗さん、水谷節生さんが操船、航海担当。車いす利用は江戸さんと森田薫之さんの二人。そして“楽しくなければ福祉じゃない”を合言葉に活動する社会福祉法人AJU自立の家の白井尚さんがサポート、大野木さんが陸路を先回り、目的地の鬼ヶ城・磯崎で合流するという段取りだ。
 桟橋、陸地とヨットの移動はメインハリヤードを利用する。ヨットで用いられるボースンチェアでは装着・脱時に筋力が必要なので不向きなため、今回、専用に製作されたリフト機材を背中と腿に充てて吊り上げる。コクピット左右にもハーネス用のフックを追加して、複数点で身体をホールドできるようにしてある。「往路は夜中に出航して18日午後3時過ぎに磯崎に入港、復路は19日8時出航で夜中の0時に河芸に舫いを取るまで、楽しみながらも緊張もあった。自分ばかりではなく、お付き合いいただく皆さんも大変で、リスクもある。でも、それを承知で、海の達人を中心にした皆さんのサポートがあって実現できた。今回は天候にも恵まれたこともある。誰もが平等に楽しめるほど自然は甘くはない。でも、お客さんのような位置づけではなく、何か自分たちのできる役目を見つけ、それに必要な技術や知識、そして体力も身に着けて、次はぜひ伊豆七島めぐりをしたい」。クルーのキャップに刺繍されていたNobody guest heartというフレーズが強く心に響いたと言葉を結ぶ江戸さん。車いすの轍は満天の星空のもとに描いたヨットの航跡につながる。航海日誌はさらに充実していきそうだ。



ヤマハニュース

ニューモデル「FR-20」登場
サイズも扱いやすさも丁度いいファミリークルージングボートです。
https://www.yamaha-motor.co.jp/marine/lineup/boat/cruisingboat/fr-20/

ビッグボート「EXULT38 CONVERTIBLE」スペシャルサイト公開
https://www.yamaha-motor.co.jp/marine/exult/exult38/

2級免許とるなら「スマ免」!お友達紹介キャンペーン
https://www.yamaha-motor.co.jp/marine/license/online-license/

冬場に腕を磨こう!「マリン塾」操船、離着岸など
ボートで遊ぶための技術を基礎からしっかり学べるレッスンのご案内です。
http://sea-style.yamaha-motor.co.jp/marinejyuku/



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【編集航記】
日本でもニュースになっていたようですが、11月の終わりに出張中の豪・ブリスベンで、数十年ぶりという猛烈なストームに遭遇してきました。みるみるうちに空が真っ暗になったかと思うと、瞬間最大で39m/sの突風が吹き、視界がほぼ無くなる横殴りの雨に加え、ソフトボール大の雹が凄まじい音を立てて地上にたたきつけられました。過ぎ去ったあとの街は凄惨です。街灯は破壊され、街路樹の枝や葉が道に散乱、ホテルの隣の部屋の窓は割れていました。レスキューや救急車のサイレンが街中に鳴り渡ります。僕はというと幸いなことにすでに海からあがり、ホテルにいましたが、自然の猛威を目の当たりにして、恐怖感というより、畏敬の念を抱いた次第。二度とこんな体験はしたくありませんけれど。
(編集部・ま)
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