ソルティライフ
イラスト・Tadami
いつでも潮気のある生活を過ごしたい。
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MONTHLY COLUMN ● 漁船のカッコよさについて考えた
キャビンの棚 ● かわいい子には船旅をさせよ 「いかだ満月」
船厨 ● 極上キハダを調理する「マグロのステーキ」
海の博物誌 ● 船の大きさの単位
Salty One Day Boating ● 日本海を代表する極上の海に遊ぶ
海の道具 ● 洋上のロデオ
YAMAHA NEWS ● たまにはヤマハドキュメンタリームービーをお楽しみください/「YAMAHA Sailing Team始動!」/秋はボートイベント目白押し!横浜ボートフェア2016など/「マリン塾」操船、離着岸、ボートフィッシングなど
10月の壁紙 ● 『Salty Life』読者限定壁紙カレンダー

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MONTHLY COLUMN
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 ヤマハ発動機のマリン事業では、皆さんがよくご存じのプレジャーボートや船外機といった製品のほか、漁業で使用する漁船を製造している。その歴史は古く、開発を始めたのは1965年。量産艇として最初に製造したのは、船外機を搭載して走る、いわゆる「和船」だ。当時、木船が主流だった漁師たちにとって、FRP製の和船の登場はそれなりに衝撃的だったようだ。いまでこそFRPは「丈夫な素材」として認知されているが、当時の木船ユーザーは「プラスティック」に不信感を抱いたのだ。そこでヤマハの営業マンたちは、各地の漁港にFRPの板を持ち込んで、漁師さんたちにその上でジャンプしてもらい、FRPの強度を理解してもらうキャンペーンを行ったりしていたそうだ。
 ディーゼルエンジンを搭載した大型漁船の量産を開始したのは1970年。有明海の海苔養殖の専用船だった。FRP製の海苔養殖船の普及は、スピードや積載量など海苔養殖の作業効率を大幅に改善した。いまでも有明海の各地に浮かんでいる海苔養殖用の漁船は、その多くがヤマハ漁船である。また、いまや日本人にとって、なくてはならない存在になりつつあるコンビニのおにぎりは、「有明海苔使用」を打ち出しだものが目立つ。つまりコンビニのおにぎりとヤマハは深いつながりがあるのである。

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 さて、歴史のあるヤマハのFRP漁船だが、いまでも各地の漁業の形態に合わせたラインナップを有し、全国各地に進水している。その漁船も機能性だけでなく、最近では「見た目のカッコよさ」も重視されるようになっている。
 今年、有明海にデビューした「DW-480」という海苔養殖船は作業性や安定性、走行性能、積載量が自慢のようだが、デザイン性も現地で話題になってる。まず目にとまるのは「ブリッジ」。流れるような美しい曲線はまるでプレジャーボートのようだ。そしてこの漁船には、ヤマハの多くのプレジャーボートと同じく「スクエアバウ」というデザイン要素が採用されている。
 有明海の海苔養殖はなかなかいい仕事で、若い後継者が育っている。そして若い漁師たちは、自分の漁船にグラフィックを施したりしながら、お洒落に仕事を楽しんでいた。そこへ登場したのがDW-480である。注目もされるだろう。
 北へ目を向けると青森県の陸奥湾は全国でも有数の養殖ホタテの産地である。ヤマハはここでも注目の漁船を発売している。我々が普段口にするホタテもまた、ヤマハと深い結びつきがあるのだ。
 陸奥湾のホタテ養殖作業船は「DX-53」を中心とする「DXシリーズ」。現地の担当者によると「シアーラインが前方へ向かってせり上がる、いわゆる“コブラシアー”が人気」なのだとか。もちろん有明海の漁船と同じく機能性や走行性も抜群と言うが、デザイン性が注目されるのもまた同じである。
 浜が変われば船も変わる。これは昔から耳にしていたことだが、それは、それぞれの漁法に対応した機能性の違いだけではない。地域によって漁船のデザインに対する嗜好もまた変わってくるのだ。
 職人は道具にこだわる。漁師は船にこだわる。機能性を高めながら楽しくかっこよく仕事ができる漁船はこれからも生まれていくのだろうか。

田尻 鉄男●たじり てつお
外洋帆走部に所属しクルージングに明け暮れた大学生活、1年間の業界紙記者生活を経て、88年、プロダクションに入社。以来、日本のボーティングシーン、また沿岸漁業の現場を取材してきた。1963年、東京生まれ。



キャビンの棚
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「いかだ満月」
■著者:山本一力
■発行:ハルキ文庫
■参考価格:600円(税別)
 江戸の河岸の様子や舟運文化を垣間見ることができるのは時代小説の魅力のひとつ。山本一力の「いかだ満月」は深川の川並鳶の技量を競う「満月腕比べ」のシーンで幕を開ける。
 江戸時代に「義賊」として名を馳せた鼠小僧次郎吉。彼が獄門になった後、相棒であった材木商の祥吉が、次郎吉の忘れ形見である大二郎、そして木場の川並鳶の健次とともに、材木の買い付けのために江戸から新宮へと向かう。どこまでも正直で義理と人情に厚い男たち。嫌みのない粋な登場人物たちは山本一力の真骨頂ともいえるが、この小説の大半は、彼らの航海と寄港地での物語だ。
 航程は7日間。江戸を出て下田湊へ。その後遠州灘を北上して、御前崎湊へ。次は南に進路を取り、一気に紀伊新宮を目差す。と、まるでヨットのクルージングのようなコース取り。夏ならば新宮への向かい風を避けて御前崎は省くかも。下田に新宮。良好な寄港地というのは、今も昔も変わらないのだなと妙に納得させられる。
 7日間とはいえ、苦難の旅を通して成長する少年とその成長を見守る男たちがすがすがしい。やはり、かわいい子には船旅をさせたい。



船厨
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 9月の初めに「塩釜ビルフィッシュトーナメント」が開催された。日本が世界に誇る豊穣の海・金華山沖が主戦場だ。この大会に、毎月ソルティライフのイラストを描いてくださるイラストレーターのTadamiさんが参加した。残念ながらカジキの釣果には恵まれなかったが、52キロのキハダマグロを大会中に釣り上げた。ボートの真下に深く潜られてしまい、上げるのに90分ほどかかったそうだ。そしてソルティライフのスタッフが、この大切なキハダマグロのお裾分けに預かった。
 お裾分けといっても、かなりの量のブロックで、とても一家庭で食べきれる量ではない。翌日、スタッフのご近所さんの多くが、Tadamiさんのキハダマグロを堪能した。
 キハダマグロというとクロマグロの格下にみられ、味も落ちるようなことが言われるが、実は「まじめに釣った」キハダの身は極上だ。たとえば、沖縄でキハダを専門に釣るある漁師さんは、青森県の大間などで行われているクロマグロの一本釣りと同じ漁法でキハダを獲っている。研究に研究を重ね、釣り上げたあとの処置も素早く丁寧だ。こうしたキハダマグロは、驚くほど美味いのだ。
 Tadamiさんが釣り上げたキハダマグロもそりゃあプロの漁師さんが獲ったモノとは比べられないかもしれないが、かなりの極上品だ。 太平洋クロマグロはいまや絶滅危惧種であるにもかかわらず、なぜか回転寿司などで人気のネタである。読者のなかには巻き網で大漁に獲られたクロマグロを食べるのに罪悪感を感じてしまう人も多かろう。しかし、これだけキハダが美味だと我慢もできそうだ。


「マグロのステーキ」の作り方
■材料
マグロの赤身ブロックなど、、オリーブオイル大さじ2、にんにく1片、塩適宜、コショウ適宜 白ワイン(好みで日本酒)大さじ3、醤油適宜
■作り方
1)マグロは1~1.5cm程度の厚さに切る
2)フライパンにオリーブオイルを熱し、うす切りにしたにんにくを入れ香りをつけ取り出す
3)マグロに塩コショウをして中火で両面を焼く
4)マグロに火が通ったら取り出し、2のにんにくを戻し、強火にして白ワインをいれ煮とばし、火を止め、醤油を入れ味を調え、マグロにかける




海の博物誌
 船舶の大きさを表す単位には通常「トン」が用いられる。15世紀ごろ、フランスからイギリスへとボルドー産ワインを運んでいた時に、その船の大きさを表すために生まれたとされている。船に積める酒樽の量が由来で、酒樽をたたくと「トン、トン」と音がしたことから付けられたという説が有力だ。
 船の大きさを表すトンにも大きく分けると重量トンと容積トンの2種類があるが、一般的に貨物船は重量トンで表され、客船は容積トン。だから「総トン数」でこれら種類の異なる船の大きさを単純に比較することはできない。
 我々が普段使用する小型船舶は容積トンで表される。つまり、船体、船室などによって囲われている空間の容積なのだが、これも厳密に船の容積を表すのではなく、船体の容積は船の長さ(m)×幅(m)×深さ(m)に「0.65」という係数をかけて計算。さらに上部の構造物は最大の長さ(m)×平均の幅(m)×平均の高さ(m)で容積を表す。そしてそれぞれに得られたハルと上部構造物の合計が「総トン数」となる。複雑なようでいて割と簡単だ。
 下級のボート免許では操船できるボートの総トン数は5トン未満と定められていた時代があった。当時の日本のボートビルダーはエントリー向けのボートを生産する際は、5トン未満に抑えることがひとつの条件ともなっていて、設計者はかなりの制約を受けていたのだ。



Salty One Day Boating
9月の関東地方は秋雨前線やら台風やらで、パっとせず、中旬以降は1961年以来の日照時間の少なさという記録まで生み出した。ぐずついた天気が予想されたある週末を控え、天気図を眺めていたら、日本海側が晴れそうだ。晴れた海で遊びたい!東京から約450キロ。富山湾を目差した。

 富山の高岡市を流れる小矢部川の河口に、日本海マリン・城光寺マリーナがある。高岡には前夜に到着。美味い酒と食事で身体をいたわり、睡眠もたっぷり取った。朝の8時半、すがすがしい気分でYF-24に乗り込み、富山湾を目差した。青空が広がっていたわけではないけれども、久しぶりの富山湾は、その日も波のほとんどないフラットな優しい海面で迎えてくれた。
 関東同様、雨が続き、海には多くの流木が漂っていた。アングラーにとって、富山湾の9月と言えばシイラの季節である。例年、メーターを超える釣果が報告されている。潮目に漂う流木を見つけてはキャスト。何投目かでペンシルプラグを曳いてくると、海面がモワっと盛り上がり、背びれが追ってくるのが見える。でかい。ルアーにアタックして反転し、ラインを引き出す。この日に出会った魚で最も大きかったそのシイラは、次の瞬間に高く、そして遠くへ跳躍。ばれた。その後は、なぜか50cmほどの小型ばかりである。それでも魚がかかると楽しい。しかもこんな素晴らしい表情の海で。
 午前中でシイラに見切りを付け、シーバスロッドに持ち替えると岸寄りに戻り、今度は鳥山とナブラを探して遊ぶことにした。これがまた楽しいのだ。富山湾と言えば寒ブリで有名だが、この時期に釣れるのはフクラギ、コズクラが中心だ。関東地方ではそれぞれワカシ、イナダのこと。シーバスロッドを使用することで相手がワカシであろうがエキサイティングな釣りが楽しめる。ルアーは30gほどの小型のメタルジグ。ルアー交換もせず、これをキャストし続ける。結局、鳥山を探したり、ナブラを追う必要はなかった。なにしろボートの周りでひたすら、本当に一日中、小魚がボイルし、それをブリの若魚が追いかけ回しているのだから。
 しかもこの日釣れたのはワカシやイナダだけではない。そこに小型のシイラ、ヒラソウダ、サゴシもアタックしてくる。まさしくルアー五目が楽しめる。この日の最大魚は70cmのサゴシ。このサイズならかろうじて「サワラ」と呼べる。地元の釣り人からすると、外道ばかりかもしれないが、とにかく楽しい。これにつきる。

 富山湾は「有磯海」(ありそうみ)とも呼ばれる。有名な歌枕でもともとは歌人による海のイメージであったらしい。もうひとつ、これが肝心だが「日本海のイケス」との別名も耳にする。それほど魚介に恵まれた海なのだ。キャスティングでサゴシやワカシが面白いように釣れる海の下をのぞいてみたら一体どんな風景が見られるのだろう。
 今回改めて感じたのは富山の海の力、そして海と風土が生み出す食文化の深さ。氷見のワイナリーで生まれたワインはとても優しい味がする。優しい味と言えば、名物の「白エビ」。そして氷見の寒ブリに夏の岩牡蠣、そしてホタルイカもべらぼうに美味い。氷見うどんは日本三大うどんの一つだ。ちなみに食べ物ではないが、高岡大仏も奈良、鎌倉に次ぐ日本三大大仏のひとつ。見所もいくらでもある。
 冬の富山湾も気になる。観光ポスターでみかける、青空に真っ白な立山連峰を背景にした静かな富山湾は、どれくらいの確率で見られるのだろうか。あの景色の海にボートを浮かべるなんて夢のようだ。
 片道約5時間のドライブが疲れないなんて嘘になるけれど、富山湾は海好きにとって充分にその価値がある。


取材協力
日本海マリン 城光寺マリーナ
●〒933-0126 富山県高岡市城光寺120
●TEL:0766-44-8558
●定休日:毎週火曜日 第2・4水曜日(祝日の場合は翌日振替)
●ホームページ:http://www.nihonkai-marine.co.jp


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この日お世話になった「YF-24」。釣りに最適
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河口から海に出るとすぐに鳥が騒いでました
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逃した魚が大きくなっていくのはご容赦。シイラは小型がほとんどでした
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70cmのサワラサイズ。ほとんどは50~60cmのサゴシです
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こちらはイナダ。充分に脂がのっていて美味いです
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富山新港の港口にある海王丸パーク。ボートでアプローチできます
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高岡の金屋町は古い格子戸の建物が今も残ります
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帰り際、日本三大大仏の高岡大仏に寄ってみました
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射水の「道の駅 新湊」で白エビとホタルイカのかき揚げ丼。優しい味です



海の道具 マリンギア四方山話
 ボートで遊ぶとなると釣りを楽しむ方がダントツで多いのだろうが、チューブやボードを引っ張って遊ぶ、というのもマリンプレイの主流ではないだろうか。ことに若いオーナーやゲストにはことのほかウケがいい。
 リゾートでよく見かけるのが、バナナを巨大にして浮かべたような、バナナボート。これは数人で跨いで載り、ロデオよろしく波による上下動を乗りこなす。ドライバーが急旋回などして振り落とすのは、鉄板のオチだ。
 これを大きな浮き輪で楽しむのがビスケットとか、チューブと呼ばれるもの。今はくるくると回転するものや、高速航行にも対応できるものもあるけれど、いずれにしろ、周りの状況や引き波の影響などを考慮して、マナーや安全に気を配りながら楽しみたい。
 “引っ張り物”で言えば、昔なら水上スキー、今ではウェイクボードも人気で、プロ選手やワールドカップもあるほどのスポーツとなっている。
 ウェイクとはいわゆる引き波のことで、上級者は引き波を左右に行き来しながら、その高低差を使ってジャンプしたり回転したりして技を競う。
 ジャンプの高さで言えば、楽々人の頭を越すほどだし、回転にしても縦方向横方向縦横複合の大技だってこなしてしまう。
 プロの技は所詮プロの成せる業。ビギナーはまず、ボードに立つだけでも四苦八苦してしまうが、うまく立てたときの喜びは大きいものだ。
 近頃、新しいことへのチャレンジや、達成感を味わうことがなくなったなと感じているなら、ぜひウェイクボードに挑戦してみて欲しい。
 まだまだマイナーなスポーツだけに、うまくなればヒーローかも。



ヤマハニュース
たまにはヤマハドキュメンタリームービーをお楽しみください
「Vol. 2 たくましく育て! 往復52マイルの冒険航海。」は必見
http://global.yamaha-motor.com/jp/showroom/movingyou/

「YAMAHA Sailing Team始動!」
インターナショナルクラスのヨット「470級」のセーリングチームです
http://global.yamaha-motor.com/jp/sailing/

秋はボートイベント目白押し!横浜ボートフェア2016など
https://www.yamaha-motor.co.jp/marine/event/schedule/

「マリン塾」操船、離着岸、ボートフィッシングなど
ボートで遊ぶための技術を基礎からしっかり学べるレッスンのご案内
http://sea-style.yamaha-motor.co.jp/marinejyuku/



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【編集航記】
このほどWorld Sailing(国際セーリング連盟)主催のセーリングワールドカップが2017年から2020年にかけて日本で開催されることが決定。年間4戦行われるうちの1戦が2017年は愛知県の蒲郡で、2018年から2020年(2020年は2戦を予定)は神奈川県の江ノ島で開催され、オリンピックに採用されている全種目のトップセーラーがやってきます。もちろん日本選手も参加します。11月にはアメリカズカップワールドシリーズが福岡で開催。また白石康次郎氏が単独無寄港無補給世界一周レース「ヴァンデ グローブ」に東洋人として初めて挑戦。話題続きのセーリングから目が離せません。
(編集部・ま)

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