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Vol.15 沖縄の医食同源に触れる旅 その2

モーターサイクル・デ・フレンチ ツーリングで全国食材探しの旅

2006年7月 取材

『ゲストハウス ベバス』を後にし、朝のR58を走り抜ける。

4日目の朝、相変わらず早起き6時起床。
お世話になった普天間にある宿、『ゲストハウス ベバス』を後にした。ベバスで、「読谷にいい道があるよ~」との情報を仕入れ、とりあえずR58を北上。その場所を目指す。
途中、日本駐留米陸軍唯一の特殊戦闘部隊(グリーンベレー)が使用する『トリイ通信施設』を右に見ながら、しばらく走ると、いきなり現れる2000mの直線! 旧陸軍読谷飛行場の滑走路跡だ。現在は、一般車両も走れる道路として使われているが、ここも米軍基地の中らしい。詳しい事は良く分からないが……。
バイクで走るには気持のよい道だ。クルーザーなら、なおさら雰囲気を楽しめるね。
私が走っていた時間は、ほとんど貸し切り状態。道の両側に格納庫跡と思われるスペースを見つけたので、しばし広がるサトウキビ畑をぼーっと眺めた。
一息ついたところで、読谷の滑走路跡を後にして、ある方に合うため、名護市を目指す。
が、途中で大渋滞に巻き込まれてしまい、30分遅れで待ち合わせの『名護市民会館』に到着!(ごめんなさい!)

実は『アグー』の話より、泡盛の熟成の話で盛り上がっています。

遅れてしまった私を笑顔で迎えてくれたのは、島袋正敏さん。1943年名護市生まれ、『アグー』復活の立役者です。沖縄の文化や財産の保存に強い関心を持ち、活動するかたわら、泡盛古酒の普及に努める『山原島酒之会』でも活躍している。
島袋さんは、1983年開設の名護博物館の初代館長、博物館の構想のため10数年かけて資料収集しているうちに、かけがえのない沖縄の財産『アグー』が足早に失われて行く事に危機感を感じたそう。そして「在来豚を絶やしてはならない!」と、1981年に在来アグーの保護活動をはじめた。
 
戦後、沖縄の食糧事情はとても悪かったと言う。これを改善するため、ハワイに移住した人々から数百頭の白豚が沖縄に送られたのだが、出産数や生産性の良さから、あっという間に生産者も増えて行った。
外来種である白豚は、沖縄の食糧事情に貢献したと同時に、在来種である『アグー』との雑種化が進み、『アグー』は急激にその数を減らしていったのだ。
保護活動当時、沖縄で30頭のアグーが見つかったが、島袋さんが収集できたのはわずか18頭! 理解ある農家に委託して保護活動を始めるも、公的団体からは「そんな島豚を集めて何になる」と、相手にされなかったそうだ。
保護活動も出鼻を挫かれたかと思ったとき、北部農林高校の太田先生が理解を示し、協力してくれることに!
かくして、北部農林高校に集められた『アグー』は、長い時間をかけ、戻し交配(生まれた子豚から原種に近い純度の高いものどうしをかけ合わせていく方法)にかけられ、数を増やし、志ある生産者の元に譲られて行くまでになる。今では『アグー』の数は200頭を有に超えているそうだ。
島袋さんが、『アグー』復活に取り組んでから25年目。やっと沖縄県が在来種である『アグー』の確認登録に本腰を入れ、ブランド化が進められているが、通称名とブランド名が混同されているなど、まだまだ課題は多いようだ。

北部農林高校では、さまざまな動物が飼育されていて、特に和牛は高い評価を受けている。

島袋さんとの『アグー』や島酒、沖縄文化の話は興味深く、尽きることはないので、いつまでも話していたくなるが、我慢。
実際に『アグー』を見に、北部農林高校を案内してもらった。
DSCで島袋さんの車の後をついて行くと、15分ほどで高校の農場に到着。
念願の『アグー』と初対面を果たす。やっと会えた! 独特の表情、金色の目、黒の縮れ毛……。何と、沖縄の食文化の歴史を感じさせる面持ちなのだろう。
子豚や、種豚などもじっくり観察して、幸せな気分♪それから、感心したのは、手入れの行き届いた、素晴らしい環境。もちろん、ペットではなく家畜として育てているそうだ。この学校からは、次世代の良い生産者が多く生まれることだろう。
 
沖縄には『クスイムン』(体にい良い食べ物)という考えがあって、食全般に、その土地にあった医食同源の知恵があふれていてる。
夏を乗り切るために、豚肉のようにわざと体温を上げたりする料理を取り込んだり、泡盛を好んで飲むのも健康効果や病気の予防効果があるからだったり、奥が深いのだ。
沖縄で肉と言えば豚肉のこと。それほどさまざまな調理法で豚を食べる。また、色々な部位を食べることで栄養のバランスを保つのだと言う。沖縄料理は、野菜や肉をバランスよく食べることで、世界的に見ても絶妙なバランスのコレステロール値なのだそうだ。コレステロール値が高いのは万病の元と言うが、コレステロールが低すぎても、脳卒中、脳出血になりやすくなる。
高齢者も食生活に肉をバランス良く取り入れることが、沖縄に長寿が多い理由だというのが、世界的知られるようになった。けれど、1995年に世界長寿宣言をしたあと、皮肉にも長寿1位から、26位に転落してしまったそう。
伝統的な食生活を送る高齢者と、中年層や若い世代とではかなりギャップがあるようだ。

美味しい!ここは、地元のお客様でいつでも賑わっている。

時間は午後1時過ぎ。お腹がすいたので、昼ご飯にしましょう。
名護市役所の近く、R58から一本入った場所にある『宮里そば』は、以前沖縄ツーリング中(プライベート)に偶然見つけたお店で、とても美味しい。結構有名店らしく、凄い混みよう。しかし、観光客の足・レンタカーが止まっていなかったので、ほとんどが地元の方のよう。
三枚肉そばを注文。相変わらず美味い! 手打ちの麺に鰹の香りと旨みがしっかり感じられるスープ。昆布のトッピングも良い。ライスも一緒に食べて、お腹いっぱい。名護に来たら、ぜひまた寄りたいお店だ。
 
腹ごしらえも済んだし、更にR58を北へ、一気に辺土岬まで走る。岬までの道は最高!旅の前半は、車の多い市街地を走ることが多かったので、消化不良気味だった気分も吹っ飛んだ。
今年10周年を迎える『ドラッグスター400』は、ローアンドロングとスムーズなシャフトドライブの感覚、迫力のある大きな車体、そしてなんと言っても、クラス唯一のVツイン空冷のエンジンが魅力。
エンジンの軽快な排気音が刻むリズムに乗りながら、海沿いの道を、風景や沖縄らしい雰囲気を感じながら快走。ほどなく辺土岬に到着した。
バイクを止める場所を探していると、マジェスティ乗りの女の子2人組を発見!すかさず記念撮影。この2人、姉妹だそうで、姉之美さんと妹明菜さんで免許取り立て初ツーリングなんだって。楽しいバイクライフを送ってください!!
沖縄はビックスクーターが大人気。嬉しいことに新旧マジェスティを、ホントによく見かけた。
辺土岬は沖縄本島最北端の地。珊瑚の岩の断崖に荒々しく砕ける波が迫力満点。晴れていると、与論島まで見渡せるのだが、残念ながら、この日は見ることができなかった。

ヤンバルの道は、バイク乗りにはたまらない道ばかりだ。

再びバイクに乗り、辺土岬周辺をふら~っと走り回った。のんびり走るのも良いね。
明日は東村でリバーカヤックを体験予約してあるので、近くまで行ってキャンプをしよう。
今日は沖縄に来て一番長い距離を走った。心地よい疲れだ。
景色の良いビーチを見つけテントを張り、薪を集め、久々に火をおこした。バイク旅を始めた頃は、焚き火のないキャンプはとても味気ないように思え、必ず火をおこしていたっけ。
軽い食事を済ませ、食後のお茶は、もちろん“サンピン茶”さぁー。
飽きることなく火を眺め、十分楽しんでテントに潜り込んで3秒で意識がなくなっていた……明日も晴れるといいな~。ムニャムニャ 。

今日は、良い天気になりそうだ。

5日目。
やった!晴れてる♪
今日は、東村の慶佐次(げさし)川にある国指定天然記念物のマングローブの森で、リバーカヤックを体験。『やんばる自然塾』にお世話になります。
今までいろいろなことにチャレンジしてきた“ヒルマン佐藤”ですが、カヤックに乗るのは初めて。
ガイドの島袋要さんから、簡単なレクチャーを受け、いざ出発!
初めてでも意外と漕げるものです。う~ん楽しい! マングローブの森の中でカヤックを漕ぐのは、以前からやってみたかったことのひとつ。
マングローブとは、熱帯から亜熱帯気候の地域で、淡水と海水が混ざり合う河口付近でも、満潮の時には水につかり、干潮のときには外気にさらされるという、特別な環境の下で育つ植物の総称。知ってました?
マングローブの森では、さまざまな生き物を見ることもでき、バイクとは違った視線を十分楽しめた。3時間のツアーは、ちょっと疲れちゃったけど、次回、沖縄に来たら、海にも出てみたいな~。『やんばる自然塾』では各種コースがあり、ダイナミックなやんばるの自然の醍醐味を体験できて、おすすめ。

同じ東村にある、『ヒロ コーヒーファーム』に向かいます。

再び、ドラッグスターで走り出す。
コーヒー好きの私は、同じ東村にある『ヒロ コーヒーファーム』にお邪魔した。ここは、自家栽培したコーヒー豆を自家焙煎したコーヒーがいただける、沖縄らしい開放的なオープンカフェだ。
国産のコーヒーなんて飲んだことがない!どんなものかと思いきや、これが美味い! 口に含むと優しい風味が広がると同時に、豆に力強さを感じる味だ。
そして、珍しいコーヒーの花のハーブティー。飲んでみると、これがメチャ美味しくて、良い香り。
乗り物好きのオーナー・ヒロさんの人柄も良く、楽しい時間を過ごすことができた。
せっかくなので、コーヒー畑も見学させてもらう。さすが亜熱帯! と思わずにいられない、ジャングルのような畑。台風の被害に遭わぬように、苦労が絶えないそうだ。
バイク乗りも多く立ち寄るそうだから、山原(やんばる)に来ることがあったらぜひ、寄るべし。
 
『ヒロ コーヒーファーム』を後にして、さらに北上。パイナップル畑に寄ったり、途中の集落では、赤瓦と漆喰で作ったシーサーのあまりのできの良さ&安さに衝動買いしたり。
買ったシーサーは、自宅に送ってくれるように頼み、皆で記念撮影。(現在、自宅の玄関に鎮座していま~す)。

海山木→みやぎと読む→宮城さんがオーナーです。

今晩の寝床は、沖縄在住の友人イチオシの民宿『海山木(みやぎ)』。沖縄最北端の村・国頭村の奥に位置する集落で、辺土岬から15分もかからない。
夕食は外の大きなテーブルで、美味しく、優しい味付けのボリュームいっぱい琉球料理。中でも、初めて食べたミーバイのお刺身がものすごく美味しかった。
食事中、『キョーー』とヤンバルクイナの鳴き声が! お次は『チチチチッ~~』とヤールー(ヤモリ)の綺麗でかわいい声。ここが大自然の中であることを実感した。
オーナーの宮城さんと宿泊客での楽しいユンタク。宮城さんの、きついギャクに大笑い。奥さんもとても感じの良い方だ。
お部屋も清潔で気持ちが良い。ふかふかの布団で、あっという間に爆睡。おやすみなさい。

沖縄最終日。今日も気持ちよく走るぞー

6日目。
6時に起きて朝のお散歩。宿の横には川が流れていて、川沿いの道を海まで歩いた。今日で沖縄も最終日。夕方には飛行機に乗らねば。
最後に、『美ら海水族館』を見て帰ろう。
R52を南下途中、大宜味村の道の駅に。ここは農産物が豊富で、地の野菜に出逢える場所。
今の時期は大根やキャベツ、タンカンが旬のようで、山のように積み上げられていた。そのほかの農産物の種類も多く、つい長居をしてしまう。
『美ら海水族館』に近づくと、ひどい渋滞+駐車場も一杯(車の方は大変ですね)。でも私はバイクだから、軽くパスして、到着。
『美ら海水族館』は、沖縄の旅で行ってほしい場所のひとつ。特に世界一の大きさを誇るアクリルパネルの水槽で泳ぐ、7mのジンベイザメやマンタは圧巻!11年前、古い水族館で初めてコイツらを見たときは本当に感動して、1時間以上水槽の前にいたっけ。平成14年に新水族館として生まれ変わり、海の中にいるような感覚になる巨大アクリルパネルも完成。その大きさは高さ8.2m、幅22.5m、厚さ60cm! 世界一の水族館の展示窓として、ギネスブックに認定されているのだ。

併設するカフェで、お茶しながら楽しめる。

水槽の横にはカフェも併設され、贅沢なカフェタイムが満喫できて、幸せ気分♪
その後、この水族館の隠れた人気者・人工ヒレをつけた、イルカの『フジ』に会いに行く。残念ながら、オキちゃんは休憩中なのか、気持ちよさそうにプカプカ水に浮かんでいるだけで、あまり動いてくれなかった。
施設内にあるビーチをしばし歩いて、お土産に珊瑚を拾った。
さて、時間だ。帰りましょうか。空港まではもうすぐ。あっという間の6日間だった。
 
帰りの飛行機から見る沖縄は、ビルが建ち並び、明らかに以前見た沖縄とは違う気がした。沖縄ブームなのか、沖縄への移住者は年間3万人!(そのうち定住者は9%ほど)。来るたびに変化する沖縄に、複雑な思いもあるが、沖縄の文化を大切にしている人たちに出逢えて、改めて沖縄の素晴らしさを感じることができた。
そこに暮らす、ウチナーンチュもヤマトンチュも、沖縄を愛する人のパワーは半端じゃない。沖縄万歳!!

"ヒルマン佐藤"シェフの
これは覚えておくベシ!

■ アグーとは
600年前に大陸から沖縄に伝わり、ずっと育てられてきた黒豚。100キロ前後と小ぶりで成長が遅く、出産数が少なく、生産性が悪い欠点もあるが、粗食に耐え、肉質に優れている。
コレステロールは普通の豚の4分の1と低く、旨み成分のグルタミン酸やアミノ酸は2倍以上多く含まれ、臭みがなく、甘みを感じさせる。近年、沖縄ブームもあってか、非常に評価が高まっている。こんなに旨みがあるものか?と感じさせる味わいは、食べた者にしか解らないと思えるほど、衝撃の味わい。
市場に多く出回っているのは在来『アグー』と西洋種をかけ合わせたハイブリットタイプの豚で、在来『アグー』の特徴を引き継いでいる、とても優秀な豚たちだ。
通称名とブランド名が混同されており、消費者にとって解りづらい状況になっているが、美味しい豚には変わりなく、健康で安全な食材がどんどん食卓にあがるのは、喜ばしいこと。
 
■ 美味しい食べ方
『アグー』を食べて、まず驚くのは、油の融点の低さ。口の中に入れるとさらりと解けて、くどさやしつこさがない。ステーキ、しゃぶしゃぶ、炭火焼きと、まずはシンプルに食べてほしいですね。
火の入れすぎには注意。半生くらいが美味しいよ!
大手スーパーで取り扱いしているし、値段も手頃。食べた人にしか解らない美味さをお試しあれ!
 
■ 相性のよいワイン
ボジョレーの赤でも合うし、アルザスリースリングでもいいね~。

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