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Vol.21 神の島で河豚を味わう旅

モーターサイクル・デ・フレンチ ツーリングで全国食材探しの旅

2008年1月 取材

一瞬で終わる朝焼けの中を『XJR1300』で走りたい。この瞬間を逃したくはないのだ。

朝5時、携帯電話のアラームがしつこく鳴る。深い眠りの底から意識が浮かび上がってくる感覚……。なんだっけ?? ああそうか、『XJR1300』でツーリングだ!夕べは忙しくて寝たのが遅かったが、すこぶる寝覚めがいい。一瞬で意識をなくし、深い眠りにつけるのは私の得意技だ。(←この技あっての食材探しツーリング・笑)。しかし今朝は寒い。久々に冬らしい冷え込みだ。まだ当分明るくなりそうにない空を見上げながら、とりあえず今日の相棒『XJR1300』を暖機。私も身支度を整える。今回は日帰りツーリングだから、身軽で良い。
今回は、愛知県南知多半島のすぐ先にある篠島が目的地。伊良湖岬から伊勢湾フェリーを乗り継ぐ手もあるのだが、『XJR1300』を楽しむために、あえて行きのルートはハイウェイをチョイス。ほぼ2年振りに乗る『XJR1300』は、フルモデルチェンジしたばかりだ。何がどう変わっているのか、とても楽しみ!さぁー出発だ!!
 
浜松西ICから東名高速で豊田JCTを経由して伊勢湾岸道に入ると、やっと空が明るくなってきた。防寒対策はバッチリしてきたが、手の指先が冷たくてもう限界!観覧車や天然温泉が人気の刈谷ハイウェイオアシスを併設している、刈谷PAで小休止する。何と気温は零度!でも、指先以外は快適そのもの。やっぱりウインタージャケットは良いものに限るね。
ストレッチで体をほぐしてから再スタート。片側3車線もある伊勢湾岸道は、言葉にならないほど快適で気持ちがいい!夜明け前で交通量も少ないからホント、最高だ!! 刈谷PAからは、名古屋南JCTを抜けて知多半島道路方面へ。大府西ICから知多半島道路へ入り、半田ICをスルーして南知多道路を走る。そして終点・豊丘ICで降り、直進すれば篠島の玄関口・師崎港に到着。
朝一番の8時35分発のフェリーまで時間があるので、NEW『XJR1300』をチェックしよう。

美しい空冷パワーユニットは、排気量1,250cm³ ・空冷パラレル4・DOHC・4バルブエンジン。 今回新たにフューエルインジェクション、4-2-1エキゾーストシステム採用にともない、各所を見直し、最適化を図っている。

跨いですぐ感じるのが、シート形状の違い。その分、ハンドルも少し遠くなり、ちょっと前傾になった格好だ。旧タイプのポジションには少し窮屈さを感じていた私には、嬉しいかぎりだ。そして、一本出しマフラーに変更されている点も見逃せない。さらに、誇らしげに輝く最高級品、オーリンズのリヤショック!これがたまらないね。
ハイウェイを150キロほど走っただけだが、旧モデルのシットリと言うか、マッタリしたエンジンフィーリングのイメージとは違うことが体感できた。アクセルを開ければ爽快な加速感を味わえ、良く動く前後のサスペンションはとても上質な感じ。NEW『XJR1300』は、走りにこだわるライダーを、さらに満足させてくれる仕上がりになっている。また、一般道に入り速度を落とせば中低速のバランスがとても良く、港町をゆっくりジェントルに走っているときなどは、心地いいとさえ思えた。これならのんびりバイクを楽しむライダーにも、満足できるものであるはず。もちろん渋滞に巻き込まれたときにも、かなりの快適さを感じさせてくれるだろう。しかし、ひとたびアクセルを開け放てば、大排気量の沸き上がってくるようなパワーを楽しむことができる。
『XJR1300』らしさは以前と変わらず、全体のバランス感と、そこから生まれる安心感———以前旧XJR1300で旅をしたときに思った、日本の道にしっくり来る感覚———も引き継がれているようだ。コイツでカウルやパニアケースを付け旅に出たいなと、ふと思ってしまった。

朝一番のフェリーで篠島に渡る。

そろそろ、朝一番の篠島行きフェリーの時間だ。乗船して行く数台の車に混じって、バイクは私だけ。バイクをつないで船室に上がるが、誰もいない。篠島まで20分足らずということもあるのだろうか?皆、車から出て来ないようだ。この景色を楽しまないなんてもったいない!と思いながら、貸し切り状態の甲板や船室から見える美しい景色を、しばし楽しんだ。
おっ!篠島港が見えてきたぞ。このワクワク感をそのまま『XJR1300』に乗せ、篠島に初上陸!「いかにも港町!」という風情の、おおらかな空気が流れていた。港で出迎えてくれたのは、ここ篠島で17年続く『あつ美やマリンパークホテル』の荒木信昌さん。フグの調理資格を持つ料理人だ。
挨拶を交わしてすぐ、近くの市場へ直行。フグの泳ぐ生け簀で仲買をしている『鮮魚仲買ヤマシン商店』天野峰夫さんが、快く迎え入れてくれた♪季節のナマコや巨大なタイラガイなど、地元の海の幸が生け簀にいっぱい!で、お目当てのフグはどこだ?
おお!一番奥の一段高い場所にいた!いた!しかも、たくさんいるではないか!優雅でちょっとユーモラスに泳ぐフグを見て、思わずニンマリ♪
延縄漁の盛んな篠島は、天然トラフグの漁獲高が日本一になることもあるのだ!遠州灘や三河湾で採れるトラフグは品質も高く評価されている。以前は、消費量6割を誇る大阪やフグの本場下関に出荷されることがほとんどで、地元での消費は少なかった。しかし今では『篠島はフグの島』とPRして、観光の目玉にまでなっている。以前、下関で食べたフグは篠島産だったりするわけだ……。
早速『あつ美やマリンパークホテル』の荒木さんに、フグのフルコースを予約。ゴージャスなお昼ご飯まで数時間あるから、篠島を散策しに出掛けよう。

木島をバックに『XJR1300』と黄昏れてみた。いい感じでしょ♪

篠島は、愛知県と渥美半島のちょうど中間くらいにある、周囲6キロ、人口2200人ほどの小さな島。かつて伊勢神宮領であり海上交通の要所だったこともあり、数多くの史跡が残されている。また、釣り好きにもたまらない場所で、愛知県唯一の海上釣り堀や、秋春の磯釣り、海釣りが楽しめる。もちろん、海水浴も楽しめるとあって家族連れにも人気だ。そして冬は、フグである。年間を通じて沢山の観光客で賑わっているのだ。
荒木さんに頂いた、篠島の観光マップを見ながら島巡り。想像以上に見所があり、驚く。一キロほど続く白い砂浜や、ネーミングに興味を持って行った鯨浜、島をぐるりと囲んで88体もある『島弘法さま』(しまこうぼう)の優しいお顔に癒され……。
どれも良かったけれど、一番気に入ったのが巨大迷路のような島の中心部。バイクを降りて歩き回ったが、真剣に迷子になりそうになったほど。島の外周は6キロだから、トレッキングで一周するのも楽しそうだよね。
そして、篠島に来たなら必ず立ち寄りたいのが、歴史深い『神明神社』。遠い昔、倭姫命が伊勢湾の名地を巡られた際に立ち寄られ、篠島の美しい景色や島のしきたり、素朴な態度や身なりなどに感銘を受け、伊勢神宮領と定めたことから建立されたそうな。
社の改築の際に発見された神明貝塚は、地中6メートル近くに及び、3千年前の層からは釣針や特殊な銛なども発見された。当時の漁師が優れた技術を持ち、古より魚を捕って生活していた篠島の人々が、生き生きと豊かな暮らしをしていた様子が目に浮かぶようだ。 
さまざまな想像を膨らませながらお参りを済ませると、そろそろ約束の時間。『あつ美やマリンパークホテル』1Fにある『ちりめん亭』に行かなくては!バイクで行けるところなら、どこからでも5分ぐらいで到着してしまうんじゃないかな?移動がなんと楽なことか。

てっさを仕上げる、見事な包丁さばきの荒木さん。

『ちりめん亭』に着くと、調理場を見学させてくれるとのお誘い。これはジャンルは違えど同じ料理人として、断る理由がないでしょう!調理場に入ると、料理長の荒木さんがてっさをひいていた。この仕事、とても技術と時間が必要。宴会のときなどは、大変だろう。 調理場を後にし、いよいよ、お目当てのフグのフルコースとご対面!実は朝から、せんべい一枚食べただけだった。もうお腹ぺこぺこ!客席のお座敷には、すでにフグのフルコースが用意されていた♪
いただきま〜す。さすが新鮮、どれも美味しい〜!幸せ〜!
あっという間に平らげてしまった。いかにも「フグはあまり食べたことがない」的なノリで完食したように思われるでしょうが、実は私、10年ほど前から毎年冬にフグを食べるのが恒例になっているのですよ。フフフ……。そんなこともあり、数年前から何となく違いがわかるようになってきた気がするのだ。
冬の寒い時期にバイクでフグを食べに行くなんて、素敵だよね。それも、さらっと日帰りなんかで行けたら、なおのこと。
 
お腹いっぱいになり、少しのんびりしたいところだけど、今日は日帰りだし、フェリーの時間もあるから、だからそろそろ帰らねば。
お世話になった、『あつ美やマリンパークホテル』の皆さんと記念撮影。料理長の荒木昌信さんはこちらのご子息。明日は結納で、お嫁さんの実家のある名古屋へ家族で行くのだそうだ。お幸せに!また遊びに来ま〜す!
後ろ髪ひかれつつ、篠島港から師崎港行きのフェリーに乗る。帰りは、師崎港から伊良湖港へとフェリーを乗り継ぐルート。フグの美味しさを思い出しながら、ゆらり揺られて、のんびり帰るとしよう。

"ヒルマン佐藤"シェフの
これは覚えておくベシ!

◆トラフグとは
 
トラフグはマンボウやカワハギの仲間。
近海では40種類ほど、世界の海では100種類ほどいるそうだが、分類学的には謎が多く微妙なところなのだとか。
フグの毒として代表的なテトロドトキシンは、青酸カリの1000倍以上の威力があるとも言われている猛毒。ふぐの種類によって毒の強さや含んでいる場所もまちまちだが、加熱しても毒性はなくならないところがフグ毒の怖さ。ふぐの刺身は「てっさ」、ふぐ鍋は「てっちり」などと呼ばれるが、「てっ」は「鉄」のことで、鉄砲を表し、当たったら死んでしまうという意味からきているのだ。日本人はフグを縄文時代から食べていたそうで、江戸時代にはフグの毒で死亡する人が多く、フグ禁止令なるものが出たとか。美味しいものを食べるのも命がけ、でもそれだけ美味しいって ことだろうけどね。
写真の料理はトラフグを使った“てっちりブイヤベース仕立て”。何となく無理矢理作ってしまったが、結構いけるんだな、これが♪

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