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Vol.33 バイクの街で小さな白い幸せに出逢う旅

モーターサイクル・デ・フレンチ ツーリングで全国食材探しの旅

2008年1月 取材

和田社長ほか、大勢のスタッフと記念撮影。店長の鈴木さんは毎月第1日曜日に行われるショップのツーリングで不在でした!

私こと“ヒルマン佐藤”の住む遠州地方は、かつて60を越えるバイクメーカーが存在し、ヤマハ発動機を含む3大メーカーの生まれ故郷であり、バイクメーカーの下請けやそれに関連した仕事をしている会社も非常に多い地域だ。
私が小学生のころの教科書には“バイクの町・浜松”と載っていたし、浜松市が誇る産業のひとつとして紹介されていた記憶がある。もちろん今でも、浜松市をPRする際に使われることもあるほどだから、浜松市民にとっては キャッチフレーズのようなもの。
今回は、“バイクの町”と呼ばれる静岡県浜松市にある『YSP浜松』からスタート。私の店『ヒルマン』のすぐ近く、バイクで2分のご近所さんである。
明るく広々とした店内には、最新の試乗車から豊富な中古車まで、魅力的なヤマハ車がずらり。
いつも元気で感じのいいスタッフは好印象で、お客さんの絶えないショップだ。
私自身も20年ほど前から仲良くさせてもらっている。以前乗っていた『SR400』や今も大事に乗っている『セロー225』そして『トリッカー』も、こちらでお世話になっているのだ。
『YSP浜松』のモットーは「モノとヒトを結び、人と人を結ぶ」。スクーターからビッグバイクまで使い方や楽しみ方はさまざま。 そんな魅力的なオートバイの世界に私たちをつなげてくれる、心強く素敵なお店。

2000年にオープンした私の経営する2店目の店『ビストロ ドゥジエム』。 気軽なフランス料理店ですよー。

さて、今日の相棒はブラックの『WR250X』!めちゃめちゃカッコイイ~!細身の車体なのに妙に迫力がある。いかにも造り込まれた感のある17インチ足回りなどを見ているとワクワクしてくる。良いバイクって言うのは見ていて飽きないものだ、うん。
『YSP浜松』をスタートしてまず向かったのは、『ヒルマン』の姉妹店、浜松市街地にある『Bistro 2e ビストロ ドゥジエム』。『ヒルマン』と同じカジュアルなフランス料理をコンセプトとし、まさにパリにいる様な気分にさせてくれる街のビストロ。2000年にオープンして、おかげさまではや8年。年月の流れは本当に早いものだ。仕事上の用事を済ませ、テラスでカフェオレを飲む。定休日が違うので、休日にランチを楽しみに来る。私のお気に入りは、カウンターかテラス。自分のバイクを眺めながらのおいしい食事は、まさに至福のひとときだね。
『ビストロ ドゥジエム』を後にして、市街地を『WR250X』で走る。コイツは素晴らしく良い!オフロードモデルの『WR250R』をベースに、一台のロードモデルとして開発されたバイクであることを、乗り出してすぐに感じることができた。これは明らかに、今まで乗ってきたどのクォーターとも一線を画している。パワフルでフラットなエンジンの特性、もの凄くハイレベルでコントローラブルなサスペンション……揺るぎない程軽快な走行性と安定感は、スーパーモタードを市街地でも楽しむことができる高次元の性能があるからだろう。
私はバイクを選ぶとき、排気量や馬力、スペックなどは全く気にしない。重要なのは、乗って面白いかどうか。趣味でバイクを数台所有しているが、もし所有するバイクを一台に絞れと言われたら、『WR250X』が選ぶべき一台かも?と思うほどに楽しめた。時間があればワインディングに持ち込みたいと真剣に思ってしまった。

『うなぎ なかや』。この道30年の職人技が目の前で見られるのがこの店の売り!

『WR250X』を楽しんだら、お腹がすいた!
今日のお昼は、数日前から無性に食べたいと思っていた“うなぎ”だ!ヤッホー!
せっかく地元を取材するのだから、私“ヒルマン佐藤”行きつけのうなぎ屋を紹介しよう♪
『うなぎ なかや』さん。浜松西インターから東へ直進、突き当たりまでまっすぐ走って信号を左折、500mほど行った左手にある、こじんまりとしたお店。気のいい大将とおかみさんのご夫婦二人三脚で営むうなぎ屋で、創業以来30年、活鰻にこだわり続けている。客の顔を見てから目の前でさばくうなぎは、ひと味もふた味も違う。土佐づくりや刺身、塩焼きも美味だ。
久々のうな重に、お腹も気分も大満足したところで、本題『オニオンヌーボー』の待つ『有限会社ヤママツ鈴木農園(以下、鈴木農園)』に向かおう。
ここからは30分ほど。地元の取材だから、お気軽な感じ♪
『WR250X』の乗り味を楽しみながら、あっという間に到着。

これは根パセリ。ハーブのパセリの根ではなく、別の種類の野菜なのだ。

『鈴木農園』は浜松市の南、篠原町に畑を持ち西洋野菜を数多く生産する農園。
料理を作る上で肉や魚は主役だが、私“ヒルマン佐藤”は、主役と全く同じかそれ以上に野菜を一皿に盛り込むことを心掛けている。
納得のいく野菜を求めて自分の足を使って探し出す。畑に収穫に行ったり、朝収穫した野菜を農家たちの元に買いに走り回ったり……。
なぜこんなに忙しく走り回るのか? ただ単純に、おいしくない野菜をお客様に出すのが嫌だから。
そんな私の考えやこだわりを叶えて、私のような料理人にとって非常に強い味方となってくれるのが、ここ『鈴木農園』。市場を通さないため年間を通じて価格は一定。しかも低く設定してくれているので、鮮度の良い野菜を惜しみなく使うことができるのだ。
もちろん価格だけではない。『鈴木農園』では美味しく安全な野菜を生産するため、さまざまな努力をしている。

ミヨシ菜。アブラナ科のケールと同じ種類で、キャベツの仲間の中国野菜。中華料理に多く使われる。

まずは土作り。野菜がうまくできるかできないかは、土作りで決まるもの。
一度作った畑は、次の収穫の土作りのため一度リセットしなくてはならない。通常は殺菌剤や殺虫剤を使用して土の殺菌を行うのだが、発がん性分質が残留するなど不安の残る方法だ。そのため『鈴木農園』では、化学肥料を使わない土作りを信条とし、90℃の熱湯で消毒する“熱水土壌消毒装置”を採用。
堆肥にもこだわって、地上にあるものを土に返し、海のミネラルも入れてあげることによって、空気の密度の多い土に戻し、まさに“生きた土”を作り上げていくのだという。実際、さらさらとした砂地の畑に足を踏み入れると、大地からの反発を感じることができるほど。
もちろん農薬なども、できるだけ使わない努力をしたうえで、どうしても必要な場合だけ最低限の割合で、細心の注意を払いながら使用しているという繊細さ。
こうして、丹念に土から野菜作りをしている『鈴木農園』は、ことハーブに関しては20年以上のキャリアを持ち、この世界では大御所とも言える存在。
今でこそ身近な食材になっているハーブ。「おいしい野菜が食べたい!」を原点とする『鈴木農園』だったが、ハーブに関しては本物の味が解らなかったそうだ。そこで経験豊かな料理人に試食やアドバイスを受け、改善していって生まれたのが『鈴木農園』のハーブ=野菜たちなのだ。

ハウス内の土壌作り。水はけを良くし、 作付けが増すように数日かけて重機で掘り起こす。大変な作業だ!

昨今の野菜づくりは、色や姿といった、市場で評価されるものに目が向けられがちで、本質的な部分が抜けている物が多い気がする。綺麗でも味や香りが全くしないハーブなどは、その代表格。ハーブは飾りで付けている訳ではないのだからね。
その点、質を重視し、美味しい野菜づくりを目指してきた『鈴木農園』の野菜は、多くの料理人との相互関係の中で作られ、野菜の本質を 引き出しているといえる。
そんな『鈴木農園』の数ある“本物の”野菜の中で、今回は冬の野菜の中で私が一番好きな野菜『オニオンヌーボー』にスポットを当ててみた。
『オニオンヌーボー』は『愛知白(あいちしろ)』という品種でユリ科の多年草、世界一早く収穫される玉ねぎである。ここ静岡県浜松市篠原町の特産品で、ここにしかない物です。明治時代までは年貢の換金作物として作られ、さらにその中でも出来の良いものの種だけを集めて作ることを繰り返して生まれた、まさに地元農家の宝。太い首が特徴で、水分が多く、もっとも甘い玉ねぎとして全国的に知られている玉ねぎだ。
一方、『鈴木農園』では、この『愛知白』を独自の方法と改良を重ねて栽培し、オリジナルの『オニオンヌーボー』として出荷している。この『愛知白』は大正初期にフランスから輸入された『ブラン・アチーフ・ド・パリ』と言う白タマネギがルーツなのだ。これほどまでに素晴らしい、浜松が誇る野菜であるにもかかわらず、柔らかな肉質のため傷みやすく貯蔵がきかないこともあり、生産量は減っているとか。
悲しい……。

冬の遠州灘はたまらなく好きな場所。特に夕日は絶景。

『ヒルマン』では、『オニオンヌーボー』は茹でて下処理をしておき、バターやオリーブオイルで焼き色をつけ、肉や魚の付け合わせなどに使うのが定番。独特な丸い甘みとトロッとした食感がたまらないのだ!
野菜が好きなお客様には、温野菜のサラダでたくさん食べていただくことも。寒くなるほど冬野菜は美味しくなる!季節ごとに育つおいしい野菜たちに感謝!
野菜作りというものは、作り手の「美味しいものを食べたい、食べさせたい」という大きな気持ちによって、よりよい方向へと
改良されてきた一種の食文化だと思う。こうした気持ちを持つ作り手さんがいる限り、これからも野菜作りは進化していくだろう。
『鈴木農園』は、“在来種の種”を守り、その土地に昔からある伝統的な野菜を大切にし、野菜が持つ本来の力を引き出す努力に余念がない。最近では「本当に美味しい本来の野菜の姿を、後世に残してあげたい」との思いは日に日に強くなっているそうだ。「そのためには、利益だけを重視した野菜作りは絶対にしたくはない。生活もかかっていますが(笑)、これからも“本当にウマイもの”を追求していきたい」と言う。
これぞまさに食文化!美味しく安全な野菜を育ててくれる『鈴木農園』に感謝です。
私“ヒルマン佐藤”も、こちらの野菜を使って、おいしい料理を作るべく精進します!

"ヒルマン佐藤"シェフの
これは覚えておくベシ!

オニオンヌーボーとハンガリー産ガチョウのフォアグラのソテー マデラワインソース

タマネギとは?
アジアから地中海沿岸が原産のユリ科の野菜。原産地からヨーロッパヘ、そして16世紀には米国ヘ伝わり、日本には江戸時代に長崎に入ったとされる。本格的に栽培され始めたのは明治4年、米国系の品種『イエロー・グローブ・ダンバース』が北海道で春まき栽培用の『札幌黄』へと品種改良されたのが始まり。その後、明治18年には『イエロー・ダンバース』が大阪で秋まき栽培用の『泉州黄』に、そして大正時代に『オニオンヌーボー』の元となる、フランス系の『ブラン・アチーフ・ド・パリ』が愛知で秋まきの早生種『愛知白』になり、現在の基本品種となった。
タマネギは、血栓溶解作用を持つ硫化プロピルや抗酸化作用を持つケルセチンなど多くの薬効成分を含み、生活習慣病(ガン、糖尿病、動脈硬化、高脂血症)に悩む現代人に最適の野菜と言われている。
ガンの予防、心臓病、脳卒中(動脈硬化)の予防と改善、糖尿病の予防と改善・気管支ぜんそくの発作抑制・骨粗しょう症の改善にも効果があると言われ、タマネギに多く含まれるオリゴ糖は低カロリーで、
熱に強く、腸内の善玉菌の働きを助ける作用も。
料理では、デザート以外なら何でもこいの万能野菜。調理法もさまざまで、辛みが少なければ生食もできるし、スープ、炒め物、揚げ物、ホントにいろいろ。
『ヒルマン』では毎年、新タマネギを大量にスライスし、飴色になるまで炒め、一年分のストックを作ります。ランチで出すカレーやオニオングラタンスープの味のベースに使うのです。使いみちが多く体にもいい事ばかりのまさに“たまねぎ”は野菜の王様ですね♪

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