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Vol.38 食材探しツーリングスペシャル 第2話 TMAXで走り抜けた、フランスの庭園、美食の里ロワール

モーターサイクル・デ・フレンチ ツーリングで全国食材探しの旅

前回に引き続き、欧州で発売されている『TMAX』で行くフランスツーリング、美しいロワール地方を巡る旅。
フランス料理を堪能しワイナリーや肉屋と食材を見学、出会った料理人や生産者は実に素晴らしい方たちばかりでした!
レタスクラブ編集長 土屋美和子さんも同行した今回の旅の模様は、レタスクラブネットでも公開されています。女性の視点からのバイク旅もお見逃しなく!

2008年5月 取材

【ロワールで美食を楽しむ】
オーベルジュ ポール デ ロッシュル

オーベルジュ『ポール デ ロッシュ』すてきな所だった。

フランスの庭園と呼ばれるロワールは、緑豊かで恵まれた気候と美しい田園風景が印象的な地方。ゆったり流れるロワール川の周辺には、フランス王朝の華麗なる歴史を伝える美しい古城が点在し、中世からルネッサンス期までさまざまな王や貴族が城館を建てたことからも、ロワールがどれだけ人々を惹きつける場所だったのかを思わせる。さらにロワール地方は美食の里としても名高く、パリとはまた違う古き良きのどかなフランスを感じさせてくれるのだ。ロワール川の支流ル・ロワール川には、かつて切り出した石を運ぶ港だった場所にテラスを設けた、宿泊もできるオーベルジュスタイルのレストラン『ポール デ ロッシュ』が佇んでいる。『TMAX』でフランスを走り出して、最初の食事はここ。予約しておいたディジュネ(昼食)を食べに来たのだが、思わぬ展開に!

胴回りがありすぎて、エプロンの紐がギリギリだった!(痩せねば!)

挨拶に来てくれたシェフのルシェール・ティエリ氏は、ミッテラン大統領の時代に大統領官邸の料理長を務めていた経歴を持つ、腕利きの料理人だ。まず案内されたのは、客室と調理場。庭に面し明るく優しい色遣いの客室、そして調理場からは、数組の食事を終えたグループがさも満足げに雑談している様子が伺えた。良い雰囲気だ♪
調理場では私たちの食事の準備が進んでいたが、皆手を止めてくれた。シェフを含め4人で仕事をこなしている。明るく清潔な調理場、プロの仕事場独特の緊張感が私には心地良い。
そしてなんと、話の流れから、お料理のお手伝いをすることになった!日本から持参したコックコートに着替えるが、さすがにエプロンは持っていなかったので、お借りする。「綺麗なエプロンはないけど」と、シェフは謙遜したが、ビオ木綿のしっかり目の詰まった生地のエプロン。ほつれているところもあるが長く大事に使えるタイプだ。こういう品をチョイスするあたり、この店の姿勢が伺えるね。
いろいろと料理の説明を受け、盛りつけをお手伝いすることに♪ベストな状態でお客様のテーブルに運ぶため、全員で皿を仕上げていく。今、会ったばかりだが、気持ちは一つ。その皿を仕上げるために皆の気持ちはリンクする!「美味しい物を提供したい」。料理人の気持ちは世界共通!気持ちの良い瞬間だった。

意外に塩気が少なく上品な味だ! 私の作る『リエット』も美味いよ~♪

そうして仕上がった料理を、今回の旅に同行してくださったレタスクラブ編集長 土屋美和子さんと共に、川辺のテラスでいただこう。
この地方の名物『豚肉のリエット』のアミューズから始まる。美味い!オードブルは、シュー生地に詰めた『キノコのフリカッセとエスカルゴグリーン バターソース、根セロリの素揚げ添え』。甘い香りのシュー生地に、キノコの旨みがしっかりのったクリームソースが絶妙に合う。エスカルゴ(クログリ種)はやわらかで気品のある香り。バターソースの香りと旨みは、私が日本で使っているバターとは明らかに品質の差を感じる。フランスでは一般的に使用されるのは発酵バターで、日本では非発酵バターという違いがここに出ているのだね。数種類のパンがバスケットで提供されるが、同地区のパン屋のパンがこれまた美味い!餅は餅屋、パンはパン屋というように、専門店が作ったものを仕入れるのがフランス流。レストランではパンをほとんど焼かないのだ。主菜は『サンドルの白ワイン蒸し、温野菜添え』。淡水魚でいちばん美味いとされるサンドル(川スズキ)は地元の川で捕れたもの。しっとりした上品な身質には、少し酸味の効いた白ワインバターソースが絶妙に合う。付け合わせの野菜も最高だ!デザートは『カトルカールを使ったフレンチトースト』。タップリかかったサバイヨンとリンゴのフィアンティーヌが良いアクセントで、それはもう夢心地♪
締めは、プティフール(珈琲と共に楽しむ焼き菓子)で、一人ひとり違うフレーバーのエスプレッソが出される。私はヘーゼルナッツ、土屋さんはバニラだった。これも日本ではあまりお目にかかれないが、美味しく、他のレストランでも出てきたから結構人気があるみたい。

食事も終わり、しばし、シェフとお話。有意義な時間だ。

食事が終わって感じたのは、まずは何より素材が良いこと。全て自国、地元の食材でまかなえるから、輸入食材などをほとんど使う必要がないのだ。そして、全体的に塩分が控えめなこと。使われる食材の素材そのものはもちろん、乳製品も品質が良いから、少なめの塩で十分味が引き立ち、美味しく食べられる。日本では「あれ?もう少し塩分が欲しいな~」とよく感じるのだが、今日のテーブルでは全く感じることがなかった。奇をてらったものもなく、自然体の優しく力強い一皿一皿。ゆったりした、ル・ロワール川の流れと、草木、やさしい風と空気に高い空……。フランスで初めて食べたこの美しい食事で、料理人“ヒルマン佐藤”はフランスにいることを改めて実感!(飛行機で来たし、いまだ北海道あたりの気分だったのだ・笑)。改めて、シェフとお話をした。まずはお料理のお礼。「とても美味しかった、ロワールの自然と あなたの人柄が表れているような、 やさしくも力強い料理でした」と。シェフは地元レストランのシェフたちと『幸せのテーブル』と言うグループを作り、生産者との交流や美食学、人材育成などに力を注いでいる。そうやって、さらなる良い料理を目指しているのだそうだ。オーベルジュ『ポール デ ロッシュ』。次回は宿泊してディナーを楽しみたいものである。正直、許されるなら1年ほど働いてみたいと思ったほど、素晴らしいレストランだった♪

【ワイナリー探訪】ジャニエールワイン/ジョエル・ジグ

今回の旅の天候は今ひとつ。春だから天候が変わりやすいのだ。

フランスと言えばワイン。食事と共に楽しみ、料理の素材としてもなくてはならないもの。調理の下処理に、煮込みやソース、デザートにと、バターや生クリームと同じくしてフランス料理には欠かせない存在だ!今回訪れたのは、『ジョエル・ジグ』さんのブドウ畑。白ワインのJasnieres(ジャニエール)と、赤ワインとロゼワインのCoteaux du Loir(コトー・デュ・ロワール)は共にフランス、ロワール河流域トゥーレーヌ地区で造られるワイン(※1 AOC)である。
※1 AOC-Appellation d'Origine Controlee(アペラシヨン・ドリジーヌ・コントロレ)
法律によって生産区域を定められた、伝統的なワイン産地で造られるフランスワインに与えられる名称。ワインはそれぞれの名称のもとで生産区域だけでなく、ぶどう品種、最大収穫量、最低アルコール度数、ぶどうの栽培・剪定方法、ワインの醸造方法などが、Institut National desAppellations d'Origine des Vins et Eaux-de-Vie(INAO)という国立研究所によって規制・管理されている。ちなみに、Appellationは呼称・名称、Origineは生まれ・産地、Controleeは検査された・管理されたという意味。

この木は『ピノ・ドニス』。興味深いブドウ品種だ。

ジャニエールでは、許可されたブドウ品種はChenin Blanc(※1 シュナン・ブラン)のみで、この土地はシュナンにとって最高の産地であると同時に、限られた小さな地域で、とても価値のある土地。ル・ロワール川に沿って広がる南向きに面した斜面は、円形闘技場のような形をしいて、日照量が特に優れているため温暖な気候条件を備えているのだそうだ。またシレックス(火打ち石)が多く混ざる粘土石灰土壌から、果実味が高く、上品なミネラル感いっぱいのブドウが取れるという。通常は辛口のワインが造られるが、天候に恵まれた年には半甘口や甘口のワインが造られることもあり、貴腐ワインの場合もあるそう。Jasnieres(ジャニエール)は、世界で最高と言える偉大な白ワインができる場所だとも言われる土地。シュナンの良さを引き出すように手間を惜しまずブドウを育て、収穫を多くせず、さらに熟してから収穫すれば、旨みがのり、世界に誇るワインができる。「ここのシュナンは素晴らしい」のだと、ジグさんと跡継ぎの息子さんのリュドヴィックさんとで交互に熱く説明を受ける。彼らがジャニエールワインに強いプライドを持ち、愛してやまない気持ちでブドウを造っているのが十分伝わってきたのだった。
※1 Chenin Blanc(シュナン・ブラン)フランス - ロワール河流域原産の白ワイン用ぶどう品種で、ロワール河流域では辛口のワインから甘口の貴腐ワイン、発泡性のワインまで様々なワインが造られている。

山の斜面を掘り進んだワインカーブ。その佇まいに歴史を感じる。

シュナン・ブラン以外に見せてもらったのが、ピノ・ドニス種。別名シュナン・ノワールとも呼ばれるロワール地方固有の黒ブドウ品種で、今や貴重な存在となってしまっている。この品種はその多くがロゼ用に造られるのが現状で、あまり重要視されていなかったそうだが、近年注目され、ワイン紙で特集が組まれたほど人気が上がっているのだとか。果実の香りが強くフレッシュな味わい、ちょっとエキゾチックな感じでスパイシー、プラムとダークチェリーのほのかな香りとミネラルの香り、繊細な酸、旨味たっぷりでとても個性があるのだ。しかし、ここのワインは実に美味しかった!日本にはほとんど入荷していないようなので、どちらかのインポーターさん、輸入してください!さらに、ブドウ畑から数キロ移動し、山の下を掘った300m近いカーブを見学に。ここには12,000本ほどのワインが保存・熟成され、年間通して温度・湿度がワインにとって理想的な状態に保たれている。凄い空間だ!

※ジョエル・ジグさんのご好意によりTMAXを押し入れて撮影させていただきました。

ワインの匂いに包まれながら、奥へ奥へと迷路のような造り。夏はさぞや涼しいのだろう。小さくても良いから、我が家にもこんな場所があればワインを沢山買い込めるのに……。うらやましいかぎりだ。ガーブの崖はTuf(f)autという砂質の白亜の石材で、ロワール河地方の城作りのために利用採掘されたそうで、その跡を利用した物だとか。『TMAX』でツーリングしている間もよく見かけた。樽熟成される赤ワイン、生産量の少ないスパークリングワインの赤は、温度の低い一番奥にシャンパン方式で造られている。さらにその奥には、ブドウの守り神である“サンヴァンサン”が。感謝の気持ちで手を合わせた。旅の安全と、素晴らしいブドウとワイン、この場所に来られたことに感謝して。

【食肉農場(ポアン農場)】飼育場、加工工場

一面麦畑、そして麦畑!緑が綺麗だ。

ワインでお世話になったジョエル・ジグさんが、地域で非常に頑張っている肉屋があるからと案内してくれたのが、ここボアンさんの農場。七面鳥、鴨、フォアグラ、鶏と、さまざまな家畜を生産している。中でも、そしてこの地域名産の「ルエ」の鶏肉は世界的に有名。ボアンさんの農場は、大量生産ではない職人的な育て方をしていた。そして自ら食肉を加工し、販売もしていた。あまり時間がなかったものの、フォアグラ用の鴨の飼育場所を見学させてもらえることになった。まずはフォアグラ製造の最終段階ガヴァージュ(強制的に餌を与える)。鴨は、ガチョウの食道にはない素嚢(そのう)と呼ばれる器官に餌が多量に入っていると、消化の速度が上がる性質がある。その性質を利用し、人工的にガヴァージュを行う前、10日間ほど好きなだけ餌を食べさせるプレガヴァージュを行うことで、効率よくガヴァージュを進めるのだそうだ。給餌は一日2回で、期間は3週間にも及ぶ。ガヴァージュを行う前までは、野外の牧草地で元気に運動させたりして、十分な体力を付けさせておくのだとか。

鶏の処理施設。小人数ながら効率はとてもよく考えてある。流石だ。

敷地内の加工工場も見学。隣接した販売所に行くと、日本の肉屋とは違いショウケースにはさまざまな精肉が並んでいた。子羊、豚、牛、鶏肉に七面鳥に鴨。加工肉や惣菜もすべてボアンさんが作っているのだと聞いて驚く。その中から、ブータン・ノワールやパテ・ドゥ・カンパーニュなど色々味見させてもらった。郷土の味リエットも非常に美味しかった。そしてさらに驚いたことに、ワインまで造っているという!「まだまだ、やりたいことは沢山ある」と、ボワンさん。勉強熱心だし、半端じゃない知識と行動力に、フランスの職人魂を見た気がした。

【TMAXツーリング】旅の香りと白い牛と麦畑

今回の旅いちばんの青空に、気持ちも空高く上がってく。

今回のフランス ツーリング、『TMAX』で走り始めてからずっと感じていることがあった。それは“匂い”だ。5月の新緑の時期なのか、小さな野花がたくさん咲いているせいなのか、甘い匂いを感じていた。日本をバイクで旅していても、感じるさまざまな匂い。日本だと、大体見当が付くものだが、この匂いはさっぱり分からない?でもイイ匂いなのだ♪集落から集落へと田舎道を走る。500ccの水冷4ストロークDOHC・並列2気筒4バルブF.I.エンジンを搭載するオートマチック・スポーツコミューター『XP500 TMAX』。意外なほどタイトなワインディングもあり、走りごたえのある道が続く。進化した『TMAX』は、そんなロワールの道をクイックに、しかもリラックスして楽しませてくれた。明らかに旧型からの違いを感じるトータルバランスは、『TMAX』がスポーツバイクの要素をスクーターのスタイリングにパッケージした独自の構成なのだと、改めて実感させてくれた。今日はフランスに来て初めての晴天。日本よりも高く感じる空、その青さと真っ直ぐな日差し。気持ちが良いなんてモンじゃない!最高に気分が良い。ワインディングを抜け、小さな集落の教会前広場にあるカフェでペリエをいただく。小高い丘の上に立つ教会から街並みが見える景色が良いね。しばし休憩しよう。

ツーリングするにはベストな季節かもね。美味しい食材もたくさんあるし♪。

『TMAX』を眺める。旧型のデザインも好きだったが、新型のシャープなデザインがとても新鮮で“速さ”を感じさせる。再び走り出し、しばらくすると牧場に白い牛がいるのが見えた。シャロレー牛だ!フランス最古の肉牛で、11の県で飼育されている。シャロレー種の良質の牛肉は評価が高いのだ。しかし、白い牛って優雅に見えるな~。日本は稲穂の国、フランスは麦の国。日本の風景に田んぼが広がるように、フランスではさらに広大な麦畑が広がる。小さな花が咲き乱れ、新緑が綺麗なこの季節にフランスを訪れることができて、ホントに良かった!

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