本文へ進みます

Vol.39 食材探しツーリングスペシャル 第3話 TMAXで走り抜けた、フランスの庭園、美食の里ロワール その2

モーターサイクル・デ・フレンチ ツーリングで全国食材探しの旅

3回目の今回は、滞在した家庭的なホテルのシェフとお料理を作り、エスカルゴに愛情を注ぐ生産者を訪ねたお話。
レタスクラブ編集長 土屋美和子さんも同行した今回の旅の模様は、レタスクラブネットでも公開されています。女性の視点からのバイク旅もお見逃しなく!

2008年5月 取材

【ロワールで古典料理を楽しむ】
ホテル・ルレ・ル・ロワール

バイクはセキュリティのため、安全な中庭に停めさせてもらった。

今回の旅の拠点、数日滞在したのが『ホテル・ルレ・ル・ロワール』レストラン付きの小さなホテル。家族経営で何ともほのぼのとした雰囲気が和む。毎朝の散歩のあとは、ホテルのオーナーでシェフでもある“パパンさん”の鼻歌を聴きながら、焼きたてのフランスパンとクロワッサン、コーヒーの朝食をとるのが日課。ゆったり時間が流れる雰囲気が心地いい。今夜はこのホテルのレストランでディナーの予定。シェフ パパンさんから「一緒に料理を作ろう!」と願ってもない提案を受け、「ぜひお願いします」と即答でお引き受けした。 このレストランはロワール地方古典料理(クラシック)が食べられると聞いていから、胸が躍った。

取材を終え、一度ホテルに戻る。20時に調理場に集合ってことで、コックコートに着替えて再度出向く。この時期、フランスは9時過ぎまで明るく、気分はまだ夕方。「シェフ パパン、宜しくお願いします!」まずは手洗いから。衛生管理の基本は手洗いから。念入りに洗う。パパンさんのプロ意識を強く感じる調理場は、とても広く、そして清潔だ。それにこの調理場の独特の匂い。私が修行した老舗のフランス料理店と同じ匂いがするのだ。匂いの記憶とは不思議なもので、修業時代のさまざまな気持ちがよみがえって来る。駆け出しの頃の空回りしたような料理に対する熱い気持ち、諸先輩の気合いの入った仕事ぶり。良い仕事をしていなければ香ることのないこの匂い、私にとってなんとも心にしみ入る懐かしい匂いだ。さて、調理開始!一皿ずつ料理を仕上げては、オーナー家族と一緒にテーブルを囲んで食べる方法で食事を進める。料理の皿数は4皿。アミューズ、オードブル、メインデッシュ、デザート。

アミューズは、フレッシュライムの酸味がしっかり効いた「サーモンのマリネ」。

一皿目は「生サーモンのマリネ」。
ライムの酸味の利いた食欲を促進させる一皿。合わせたワインは同じロワール地区南部の「ミュスカデ」。当然、素晴らしい組み合わせ。
2皿目は「ホワイトアスパラガスの
フィユタージュレモンバターソース」。下処理しておいたホワイトアスパラガスは、2種類を使い分け。太いものはフィユタージュの間に、細いものは放射状に盛りつけていく。
パパン シェフ曰く「太いのも美味いが、細いアスパラは味が繊細で好き」。ソースに至っては、生クリームとバターの質が良く、香り・旨味・甘み・酸味と、非常に要素の多い味で余分なことをしなくてもビシッと味が決まる。日本で同じように作っても、こうは仕上がらない。このソースは、ストーブの横で少し保温しながら15分程休ませると酸味が飛び、ふわりとかさが増し更に美味くなるので事前に仕込んでおいたもの。お味は、ほろ苦い太いアスパラガスとフィユタージュの相性は抜群。細いアスパラは柔らかく甘く優しい味わい。そしてソースはバターの旨味とレモンの酸味が心地よく非常に美味しい。まさに夢心地だ。そんな料理に合わせたワインは、アルザスの「ゲベルツ・トラミネール」。ライチや花の香りが素晴らしく、非常にバランスの取れた味わいで、豊かな果実味と濃い旨み、爽やかで落ち着いた酸味がさらに料理を引き立ててくれた。

メインはロワール川で穫れた川魚3種とエクルビス。

3皿目はメインディシュ。ロワール川で穫れた「3種の魚とエクルビス(ザリガニ)」のお料理。
サンドル(川スズキ)、マス、ブロシェ(川カマス科)をそれぞれ切り身にして、バターでソテーしていく。付け合わせはバターライス(長い米。フランスで米といえば、野菜の扱いなのだ)。ワインビネガーとエシャロットをたっぷり使った、白ワインのソースで仕上げ。フランス料理は、このソースにも贅沢な量のバターを使う。
ボリュームたっぷりの地方色豊かなこの皿。魚は骨を抜く処理はしていないので、少々食べるのに苦労するのだが、どの魚も身質がしっかりしている。それぞれの個性がハッキリしていて、とても美味しいし、ソースは当たり前に美味い!なんだろう?このバランス感。長く培われた往年の味と言うべきか?歴史を感じる味わいだ。
合わせたワインは、ラランドポムロール1979年の「シャトー デ シェリフ」。ミディアムボディで、素晴らしく美しく熟成している。絹の様な舌触りにふわりとした優しいスモーキーな味わいは、不思議と魚料理とソースとの相性もいい。ホテルの地下のワインセラーには、100年前のワインも眠るとか。さすがはフランス!日本では、この手のタイプの熟成ワインにはなかなかお目にかかれない。本場ならでは。
4皿目は「季節のフルーツのブロシェット」。
串に刺してグラニュー糖を振りかけたブドウ、ネクタリン、リンゴ、パイナップッル、ブルーンを、たっぷりのバターでソテー。途中、さらににグラニュー糖を好みで振りかける。フルーツに火が入り始めたら、フランボワーズと蜂蜜のビネガーでデグレッセして軽く煮詰めると、ソースになる。最後に季節のガリゲット(イチゴ)とミントを添えて出来上がり。この皿も自然な感じで、とても美味しい。余分な事は一切してない、する必要もない程完成されている♪
甘いデザートが終わると、バスケットに盛られたさまざまなフレッシュチーズが登場!チーズもたらふくいただき、最後の締めのエスプレッソ。さらにシェフ パパンが、先代が作ったリンゴのホワイトブランデーを食後酒に出してくれた。目が覚める程美味しかった!極めつけは今日の記念にと、私の生まれた年のヴィンテージ・ワインをプレゼントしていただいた!エェ~~!ものすごい感動!!感激!!

記念にプレゼントして頂いた、1964年の「サンテミリオン」。

食事の後は、シェフ パパンのご家族も含めて、食文化の話やワインの話、なぜシェフ パパンがクラシックスタイルのお料理を作り続けているのかなど、尽きることのない楽しい話でしばし団らん。
けれど、少し悲しいお話も。なんと、シェフ パパンが引退するとのこと。そのため、数年後にこのレストランを閉めてしまうのだとか!理由はいろいろあるようですが、一番の問題は人材不足。地方都市だと料理を地元で学ぼうとする若者などなかなかいないそう。フランスの法律で、労働時間週35時間制や終身雇用制度などがあることも、経営者側として、さらに雇用しづらい状況を作ったようだ。
フランスののんびりした感じも好きだし、政治に物をいうつもりはないが、一つの仕事を天職と思い、技術を体得するなら、時間はかかって当たり前だろう。私は修業時代、仕事を教えてもらった記憶があまりない。ひたすら見て、感じて、覚える。純粋に疑問が湧くから本を開けば理解できる。だからシェフ パパンと初めて調理場に立っても、いろんな事が理解できるし、何をすべきかも解る。そして非常に楽しいのだ。今回は、料理人である自分に喜びを感じる旅だった。そして料理人として、本当に勉強になった。

【エスカルゴ生産者を訪れる】
ショッケーさんのエスカルゴファーム

湧き立つ雲に青い空、印象深い風景が思い出になる。

麦畑を貫く真っ直ぐな道に、見落としてしまいそうなほど小さな、ナチュラルな感じのエスカルゴの絵が描かれた看板が。これを目印に路地に入ったが、一向に見つからない。約束の時間午後3時はとうに過ぎている……。やっと民家を見つけて聞くと、やはり行き過ぎていたようだ。
苦労しながら、やっと『エスカルゴファーム』に到着。(迷うのも旅の醍醐味♪)この場所を紹介してくれた、『オーベルジュ ポール デ ロッシュ』のルシェール・ティエリさんも、お昼の営業を終えてすでに到着していた。さっそく農場の主・ショッケーさんを紹介してもらう。ショッケーさん、7年前に長く勤め上げたフランス海兵隊を退役し、エスカルゴの養殖をはじめたという。「なぜ?」との私の問いに、「私はずっと狭い潜水艦の中で仕事をしていたから、殻の中に住むエスカルゴに愛着があるんだ。それに美味しいしね(笑)。でも私のエスカルゴたちは狭い場所に閉じ込めて飼うのではなく、出来るだけ自然の中でのびのび育ててあげたいのだ」と目を細めて答えてくれた。ショッケーさんが育てるエスカルゴは『グログリ種』。昨日、ティエリさんのレストランでいただいたのはここのエスカルゴだ。優しい色のマスタードの葉などが生い茂る囲いの中で、エスカルゴは暮らしていた。
中央に黒いシートが何枚も縦に重ねてある箱状のものがある。ここがエスカルゴのねぐらだという。昼間はここでじっとしていて、夜になると動き回り、マスタードの葉やカルキを食べたりするのだそうだ。寝ているエスカルゴを見せてもらったが、畑に入るショッケーさん、エスカルゴを踏まないように慎重に歩いていく。そんな姿に、彼の優しい人柄がにじみでていた。

ショッケー氏。健康なエスカルゴについて熱く語る。

マスタードの葉を食べてみた。柔らかなマスタードの葉は、結構美味しい。これを食べているエスカルゴ、いかにも美味しくなりそうだ。場所を移動して、エスカルゴの産卵小屋へ。人工的に常に雨が降っている状態にしてある中、無数のエスカルゴが元気に行動している。この場所で交尾をさせて、産卵・ふ化させるのだそうだ。白いキャビアと賞賛されるエスカルゴの卵を見せてもらった。瓶詰めのタイプは見たことがあるが、生の状態は初めて。食べようかと思ったが、ショッケーさんに「食べた事あります?」と聞くと、「ない」との返事。お腹を壊してはマズいので、今回は我慢。いつか食べてみたいものだ。続いて、越冬させるための洞穴へ。この地域は石灰質で、至る所に横穴があるのだ。そしてやはり、一年を通して温度、湿度が安定していてる。そう考えると、エスカルゴを育てる環境が良く、自然に整っていることが分かる。全然無理をしていない。燃料を使って温めたり、お金をかけて施設を作ったりなんて全然していないし、する必要がないのだ。自然とそこにある物を利用して、ごくごくナチュラルにエスカルゴを育てている。素晴らしい事この上ない!日本で屋外でのエスカルゴの養殖をするのは法律的に難しいだろうけど、こんなスタイルで出来たなら、日本でも美味しいエスカルゴがもっと身近になるような気がした。

【マルシェは最高】ヒルマン佐藤、料理の腕をふるまう

色とりどりの季節の野菜やフルーツ。見ていて幸せな気分になる。

ロワール川の支流であるル・ロワール川が美しく流れる街中の中心、大きな教会とヘンリー5世の銅像が建つ広場の脇に、マルシェは立っていた。
小さなマルシェながら、さすがフランス。食材は豊富で、野菜・フルーツ・肉・魚・加工肉・花・苗木・ワイン・総菜・乳製品・調味料などなど。その種類も品質もレベルが高い!私の住む地域、いやいや本州では、ほぼ見かけることのないホワイトアスパラは、ちょうど季節も合い、どの店舗にもてんこ盛りで並んでいる。少し日があたって色づいたバイオレットもあった。(アスパラはホワイト、バイオレット、グリーンの三種類がある)。
土屋さんと物色しながらのんびり一回り。さすがレタスクラブの編集長、土屋さんの食の知識はかなり豊富で、一緒に見て回るのはとても楽しいのだ!さて、作る料理も決まったし、買い出しタイム♪サーモン、ホタテ、ホワイトアスパラ、ニンニクにバター,エシャロットに ちりめんキャベツ、マッシュルーム、ハーブを少々。ほしい物はすべてこのマルシェで揃ってしまった!素材も良いし、安いし、買い物が楽しくて仕方がない。私の住む町にもこんなスタイルのマルシェがあったなら、 もっと毎日が楽しくなるし、世の中ももっと良くなるんじゃないかと思った。そんな感じで、仕入れは終了。再び、『ル・マンサーキット』に向かう。

マルシェの中を歩く『CYGNUS-X』と土屋さん。素敵だね。

『TMAX』は相変わらず快適。すべてにおいてレベルが上がった感のある、その走り。ATならではのスムーズかつパワフルな加速感。軽快な切り返し感は、癖になりそうなほど気持ちがいい。アルミフレーム採用で剛性バランスと軽量化を実現。3キロの軽量化はそれ以上の軽さを体感させてくれる。サスペンションやコントローラブルなブレーキはレベルが高く、まさにスポーツバイクの仕上がり。旧型から、すべてが変わっているのに、乗っていて感じる『TMAX』らしさと言うか、このバイクの個性はまさに皆さんの知る『TMAX』そのもの。さらに『TMAX』らしくなったようなイメージすら感じる。これは、私を含め『TMAX』ファンなら嬉しいところではないのだろうか。

我らが、フィアット・ヤマハホスピタリティーブースに到着。

無事、『ル・マンサーキット』に到着。フィアット・ヤマハホスピタリティーブースの客席はゆったりとした雰囲気、カジュアルなのに上質なサービス、そしてスタッフの素敵な笑顔に癒される空間だ。早速、調理場のニキさんに挨拶。ゆったりとした客席とは裏腹に、既にディナーの仕込が始まっていた。料理を作りたい旨を伝えると、スペースを用意してくれたのだが、ディナータイムの始まるまでの、僅か1時間で仕上げて欲しいとのこと!こりゃ、もたもたしてはいられない!早速コックコートに着替え、準備。慣れない調理場、しかも少量の料理に対応した調理器具は全くない。困った……。

出来上がったソースを目の前でかければ、 視覚的にも楽しく、素晴らしい香りが楽しめる♪

しかし!どんな状況でも何とかしてしまうのがプロの仕事。ラッキーさんの、これまたプロの名サポートで、なんなく料理が完成。この料理、私の店『ヒルマン』の定番料理で、多くのファンを持つ人気の一皿なのだ。ニキさん、ラッキーさん共に、大変喜んでもらえた。あ~、良かった。本当に忙しい中、時間を割いてもらい、ありがとうございました!9月にもてぎで開催されるMotoGPには、ニキさんも来日するとのお話。日本で再会できたらいいな~。

【TMAXツーリング】歴史と映画の街

ル・ヴュー・マン(Le vieux mans)は、町中にある旧市街。

『24時間耐久レース』や『MotoGP』で日本人にも馴染みの深いフランスの地方都市 ル・マンは、パリからTGVで1時間、南西に200kmほどに位置するロワール地方 、サルト県の県庁所在地だ。11~15世紀に建てられたサン・ジュリアン大聖堂を中心に広がるル・マンの街には、「Le Vieux Mans」と呼ばれる旧市街があり、14世紀後半に建てられた昔ながらの家々や石畳の通路が残され、数々のフランス歴史映画の撮影場所としても有名なところ。実際、私が訪れた時も映画の撮影が行われていた。サルト川の岸には、3世紀に建設されたローマ建築の城壁と12の塔と門が一つ残っており、1700年前からここ、ル・マンに立ち続けるフランス唯一の遺跡となっている。街の中心部には様々なブティックやカフェ、レストランが立ち並び、複雑に入り組んだ旧市街をバイクを降りて散策するのも楽しいよ。

ここ、ジェドー広場では、水・金・日曜日の午前中に大きいマルシェが立つ。

『TMAX』で市街地を走る。交通量の多い場所や、それなりの速度で走り抜けるロータリーの交差点などでも、『TMAX』はビシッと決めてくれるのだ。バイクから伝わってくるモノが良いと言うか、タイヤの接地感や路面の状況、コーナーリング中のタイヤの位置など、 バイクとライダーとの対話が自然に取れる。これってとても楽しいことだよね。迷路の様な石畳の旧市街地も、その取り回しの良さと、ヨーロッパの石畳を考慮して15インチにアップされたホイールのおかげで、クルクル走り回っていても、ギャップなどで不安定に感じることもなく、快適に観光を楽しめた。立ち寄った店で気軽に買い物をしてもスマートに収納できる。これも『TMAX』の魅力だ。広い道ではビシッと走れて、細い道でもクルクル楽々。『TMAX』は都会の人にもおすすめだね。帰りはパリに立ち寄ったが、『TMAX』が大人気で、かなりの台数を見かけた。ヨーロッパのライダーから高い支持をうけている『TMAX』。聞けば、ヨーロッパでビッグスクーターの流行をつくったのはヤマハだとか。私が『TMAX』で走り、フランスツーリングで体感したこと、そのまんまだ!なるほど……納得

ページ
先頭へ