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Vol.53 初夏の口福、淡路の食材宝箱を開けた旅 その1

モーターサイクル・デ・フレンチ ツーリングで全国食材探しの旅

2011年5月 取材

兵庫県神戸市兵庫区でバイクを買うなら『YSP神戸中央』で!新車から中古まで、お買い得バイクが満載!修理、カスタムも承っております。

湾岸都市を旅しているといつも感じるのは、「どこか似た雰囲気がある」という感覚。
海外の文化がいち早く根付いたことを感じさせるハイカラな街並みと、歴史ある建物が混在する雰囲気は、湾岸都市ならではのものだと思う。その中でも神戸は特に、独特の魅力を感じる地域だ。 そんな魅力的な街にある『YSP神戸中央』から今回のバイク旅はスタート。梅雨入り前だが、天気は雨が降ったり止んだりの気まぐれな空模様……。ツーリング中の雨は嫌いではないけれど、旅立ちからの雨はちと辛い。
そんな気分を吹き飛ばすようなさわやかな笑顔で出迎えてくれたのは、花尾仁正 店長。『YSP神戸中央』は、バイクの点検等のメンテナンスはもちろん、カスタムバイク、ペイントなども得意で、オリジナルカスタムバイクも充実。車両もスーパースポーツからスクーターまで偏りなく販売しているそうで、層の厚いユーザーの存在を感じる。まさに「都会のバイク屋さん」ってイメージにピッタリ。
「バイク好きな整備士やスタッフが新車・中古車販売はもちろん、車検・修理・カスタムまで、お客様に安心して、楽しいバイクライフを過ごしていただけるようお手伝いさせていただきます」とは、花尾店長のお言葉。バイク乗りの味方、頼もしいね♪
そしてついに今回の相棒、オートマチックスーパースポーツ『TMAX』とご対面。カラーはクールなニューカラー、ハイテックシルバー。私好みだ。
さて皆さんに見送られながらツーリングのスタート。「行ってきま~す!」

兵庫県神戸市垂水区東舞子町と淡路市岩屋とを結ぶ、 明石海峡に架けられた世界最長の吊り橋「明石海峡大橋」。

神戸からバイクで淡路島に入るには、明石海峡大橋を渡るルートのみ。以前はフェリーで渡る手段もあったが、現在は残念ながら休航している。
強風と雨の中、(チョット怖々)明石海峡大橋を渡り、淡路SAで小休止。橋を渡ったのだから、既に淡路島に到着しているわけか。そう考えると、あっという間というか、あまりにあっけないと言う方が、私の感覚には合っているかもしれない。以前フェリーを使ったときはとても旅情豊かに感じた。その記憶のためだろうか・・・。
雨の中の走行だったので肌寒く、小腹も空いたので昼食にしようとヘルメットを脱ぐと、「淡路たまねぎラーメン」の文字が目に飛び込んできた。ネーミングに惹かれて迷いなく注文。期待に胸を膨らませて待つこと数分。出てきたのは、オニオンフライとオニオンスライスが乗っているという、シンプルにタマネギを使っているラーメンだ。
食べ終わって外に出ると、西の空が少し明るくなってきた。雲の流れも速い。このまま雨が上がることを祈りつつ、再び『TMAX』に跨った。

エントランスには国道43号北淡高架橋が倒れた再現模型が。 衝撃的だった。

淡路島で最初に向かったのは『北淡震災記念公園』。平成7年1月17日午前5時46分に発生し、死者6,434人という尊い命が奪われた阪神淡路大震災(兵庫県南部地震)によりできた長さ10kmの断層の一部を保存する、震災の恐ろしさや教訓を風化させないための施設だ。
当時の映像や保存されている断層、被害の状況を見て、自然の驚異と都市の直下で起こった地震による災害の恐ろしさを再認識した。
そして思い出した。あのとき私は自分の店を開業したばかりで、いろんな意味で余裕がなく、僅かばかりの募金をしただけだった。

あれから15年。3月の東日本大震災でも私は被災することはなかった。しかし今回は、料理人としてできることは何かを考え、炊き出しという形で支援を行っている。地震大国。災害大国の日本。明日は我が身だ。
難しい話はさておき、シンプルに、そこに倒れている人が居るなら手を差し伸べたいという気持ちを持つことができている。私の中で何かが変わったのか?いや、これも皆様が「ヒルマン」を愛して下さっているからこそ。今、支援できる自分になっていることに感謝。ありがとうございます。

この断層は2000年に一度の周期で活動していることが、地層から伺えるのだとか。 当たり前だけど、地面は動いているんだ。

東北が復興をとげるには、短期間ではなく長期の支援が必要。私は大好きなバイクで旅したことが心の支えになっている。だから、これからもバイクに乗って元気になろう!と思う。
支援する側の心が元気じゃなくちゃね。

この季節、淡路島の道を走っていると、タマネギ畑の青さが際立つ。 左に見えるのは淡路特有の、タマネギを吊るすタマネギ小屋だ。

さてお次は、今回の旅の本題・淡路島のタマネギの生産者のお宅へ。
取材協力場所が分かりにくいとは事前に聞いていたのだが、うん、やっぱりちょっと分かりにくかった。
電話でナビしていただいて、やっと到着。全国的にも有名な『淡路島のタマネギ』で生産者も数多いが、その中でも群を抜いて有名なのが今回お世話になる成井修二さん。その素材の実力から東京の有名果物店で取り扱われたことに始まり、人気TV番組などでも取り上げられ、名実共に日本一をうたえるほど有名になってしまったようだ。

成井さんの勧めで、生のタマネギにかぶりつく。ムム、甘い!さわやかな味だが口の中に旨味が広がり、食べた後も口の中にえぐみが全く残らない。なるほどこれは美味しい!一般的な淡路島のタマネギの糖度は9度ほどだが、成井さんのタマネギはなんと14度を越える!夕張メロンを超える糖度とは言うが、糖度計に反応するのはブドウ糖や直接甘みを感じない分質にも反応するため、食べてメロンより甘い訳ではない。しかしながら驚くべき糖度だ。ゆっくり火を入れて調理したらさぞや美味しいだろう♪

成井さんのタマネギ畑はすぐ分かる。 葉茎が短く、玉は大きいのが特徴。これからさらに大きくなる。

なぜ成井さんのタマネギはこんなに糖度が高いのか?実際、成井さんが管理するタマネギ畑に出向き説明をしてもらった。

「淡路島のタマネギは、タマネギを作った後の畑で米を作るんだよ」
「ええ~~~っ?!」その言葉にまず驚いた。
私の地元ではタマネギを作った後はサツマイモを植えるから、何かの畑ならまだ想像できるが、まさか田んぼになるなんて想像もしてなかった。「普通は、早く田植えをするために、できるだけ早くタマネギを収穫しようとする。その場合、タマネギは完熟の状態とは程遠い状態で収穫することになってしまう。けれど、タマネギの収穫適期は茎が倒れ枯れ始め、タマネギの根も枯れ始める頃。うちはその収穫適期が来るまで半月ほど畑で寝かせ、じっとガマン」業者や常連客から急かされようが、絶対に収穫はしないという。

そしてさらなる秘密が明らかに。
なんと成井さんの畑には、塩や海水が撒かれているのだ!これもまたビックリ!(ちなみに他人の所有地に塩を撒くのは違法行為です。公共物破壊になりますよ!)
たまたま塩害に遭い、糖度の高いトマトが生まれ「塩トマト」という商品になったと言うのは有名な話だが、タマネギの畑に塩を撒くなんて聞いたことがなかった。「塩トマト」と原理は同じようで、塩を撒いてタマネギに適度にストレスをかけることで糖度が増すそうだ。
さらに、タマネギに負荷をかけることで初期生育が制御され、茎の間延びが少なくなる。通常のタマネギよりも背丈が短くなるのだが、そのおかげで日の光がよく当たって風通しも良くなるために病気が少なくなる。また根の張りも良く、収穫期が近くなるとグングン玉が大きくなって来るのだそうだ。他の畑も見たが、そことは茎の長さが全く違うのでタマネギが見えない全く違う風景だ。
塩の加減は大変難しく、成井さんも当初は負荷をかけ過ぎ、タマネギが大きくならないという大失敗をしたと言う。そんな失敗を乗り越え、高品質の『淡路島のタマネギ』を作り、有名になった今でも、エビ・カニの発酵堆肥やら海藻などさまざまな資材を取り入れながら、日々研究を重ねている。

吸い上げられた養分は、タマネギの成長が止まると玉に帰っていき、葉はしおれていく。

収穫適期と思われるタマネギを、ひとつ引き抜いてもらった。根も枯れ始め、まさに完熟を迎えている。ハリがあり、丸々していて、グッと締まった玉はずっしり重い。重さは、普通のタマネギの2回り大きなものと同等くらいはあるだろう。大げさではなく、こんなタマネギは初めて。この存在感は驚きだ!

成井さんは、品質の高いタマネギ作りを始める際、原料としての野菜から商品としての野菜となるタマネギを目指した。なぜなら、二十歳過ぎに始めた刺繍業で培ったブランド力の強さを、野菜の販売にも取り入れたかったからだ。成井さんは、なんとかこのタマネギをブランド化しようと、地道に取り組み続けた。他の農家とは全く違うスタンスで当初は物笑いの種だったが、品質の高いタマネギを作り出し続けたことで、徐々にブランド力がついていった。そして今では、全国の高級スーパーやレストランなどのほか、個人のお客さんも1千軒を超える。取扱業者からは「価格が割高でも品質を重視する消費者から引き合いがある」と、高い評価を得ているのだ。成井さんの情熱が、実になった瞬間。すばらしいね。
「もともと淡路島は、7000年前の白亜紀の土壌が隆起してできた島で、硫黄が土壌中に少ないため、辛みの少ないタマネギができる土地だった。授かったこの土地を上手に生かしたい」そんな成井さんの思いは届くだろうか。良いものを作ることができる恵まれた土地であっても、高齢化や後継者不足が深刻になっている。成井さんの経営方針や実績は次世代の農業を目指す人たちにとっても魅力的なはずだ。これからの動向に期待したい。
しかし良いタマネギだ。帰ってからこのタマネギを調理するのが非常に楽しみである!

そして、成井さん。タマネギの品質も素晴らしいが、初めてお会いしたとは思えない程親近感を覚える人柄もすばらしい方だった。ありがとうございました!

昔からシルバーのバイクは好きだ。昼は周りの風景の色がやさしく移り込むから。

楽しい時間はあっという間に過ぎ、今夜の宿に向かう。神戸淡路鳴門自動車道で西淡三原ICから淡路島南ICまで行き、鳴門海峡にほど近い旅館『いび』さんへ。

何とか日没前に到着。今夜は海の幸を堪能するのだ。ワクワク。いつの間にか雨も上がったので、食事前のお散歩がてら近くの小さな港まで夕日を眺めに出掛ける。景色も『TMAX』もウットリするほど美しい。この季節の気まぐれな空、明日はどんな天気だろうか?

~ 次回「初夏の口福、淡路の食材宝箱を開けた旅 その2」に続く ~

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