本文へ進みます


VMAX 開発ストーリー

ヤマハの至宝、怒濤の加速感を追求したマシン、VMAXの開発ストーリーをお伝えします。

VMAXとは如何なるモーターサイクルなのか

VMAXはヤマハの至宝である。これは、開発スタッフはもちろんヤマハとしての共通認識です。会社創立から50年という年月が経過し、これまで様々なモーターサイクルを生み出し続けてきた我々にとって、何故VMAXは至宝と呼ばれる存在になったのか。それは他に比べるモノが無いオリジナリティの結晶だったからです。1985年に初代VMAXをリリースしてから24年が経過しましたが、そのオリジナリティはいまだ薄れることはありません。
初代VMAXはヤマハモーター USAの発案によって開発がスタートしました。当時アメリカの象徴であった流麗なフォルムのボディに、V型8気筒の大排気量エンジンを搭載したアメリカンマッスルカーの魅力を、モーターサイクルに取り込むことができないか、という想いがその発端でした。
そこで採用されたのがV4エンジンであり、極太のリアタイヤであり、グラマラスなボディだったのです。
しかしそれらのディテールが、VMAXを至宝の存在に至らしめたわけではありません。ディテールはあくまで、VMAXの本質を伝えるための手段だからです。

初代VMAXの開発当時、視察のために訪れたアメリカでは即興のストリートドラッグレースに興じていたライダーたちが大勢いました。印象的だったのは、彼らはその場の勝負よりモーターサイクルの強烈な加速を楽しんでいたことです。この姿は初代VMAXに多大な影響を与えました。
こうした背景の中、1985年に発売した初代VMAXは彼らに熱狂的な支持を得、その熱はヨーロッパやオセアニア、日本にも飛び火し、ライダーたちの間で伝説となったのです。また1995年にニューヨーク・グッゲンハイム美術館で開催された『THE ART OF MOTORCYCLE展』において歴代の名車の1台として選出されるなど、初代VMAXの個性的なコンセプトやスタイリングはモーターサイクル界以外からも高く評価されました。
初代VMAXを手にしたライダーたちが酔いしれたのは、唯我独尊の“怒涛の加速”でした。そう、みなさんが初めてモーターサイクルに乗ったときに感じた、右手を捻るだけで得られる、ワープするような加速。その加速が生み出す興奮は、ライダーなら誰もが経験したことがあるはずです。
初代VMAXは、それまで様々なモーターサイクルを経験してきたライダーたちに、大排気量V型4気筒エンジンにVブースト、そしてアップライトなポジションという個性的なアプローチで、加速による興奮を思い出させたのです。 その純度の高い“加速による興奮(加速感)”こそVMAXであり、モーターサイクルの根源的な魅力なのです。
VMAXを手に入れること。それは根源的なモーターサイクルの魅力を手に入れることとイコールなのです。

怒濤の加速感という新しい価値

怒濤の加速感。これはニューVMAXに与えられた開発時のコンセプトです。四半世紀前に世界を席巻し、世界中のエンスージャストを虜にした加速感をさらに進化させる。そのために導き出した答えでした。しかし、この単純明快なコンセプトゆえに、開発は難航しました。
このときすでに、VMAXは次世代のヤマハを象徴するモデルとして位置づけられ、パフォーマンスからデザインにいたるまで、その全てがヤマハを象徴するモーターサイクルでなくてはなりませんでした。
また初代から何を受け継ぎ、何を壊すのか。それを見極め、決して妥協することなく、技術的に成り立つポイントを見つけ出さなければならず、それはまさに“矛盾”との戦いでした。
そもそも加速感とは何なのか。そして様々な加速感の定義に対して、VMAXはどんな加速感を核とするのか。また加速感のさらなる進化を求めながら、強烈な加速には不向きなアップライトなポジションを採用すること。大型であり、フレーム搭載時の前後分布加重に対して自由度が少ないV型4気筒エンジンを採用することなど、新しいVMAXに求めるイメージとVMAXらしさが常に背中合わせであり、歩み寄りがたい矛盾に満ちていたのです。

その結果、ニューVMAXを発表するまでに、結果として二度の開発プロジェクトと24年もの時間を要しました。今から数年前の開発プロジェクトでは、様々な矛盾を試作車にまとめ上げたこともありました。しかし排気量2,000ccのエンジンを抱いたその試作車は、当時の技術力や先述の矛盾に対するギャップにより、ついに製品化されることはありませんでした。ニューモデル開発において、それは異例なことでした。
しかし我々は、様々なアプローチでコンセプトを煮詰め直し、時代とともに技術力を磨き、注ぎ続けました。
そうして、その後あらたに開発を行ったのが、いま皆さんに紹介しているVMAXです。いまヤマハが持てる全てを注ぎ込んで“怒濤の加速感”を実現した理想のモーターサイクルです。

我々がいう“加速感”とは加速の体感を指します。スロットルを開けたとき、ライダーにどんな印象を与えながら加速していくかに重きを置いたのです。“怒濤の加速感”とは、これまで誰も体感したことのない加速感であり、興奮と感動を与える加速のこと。加速を測る物差しとして用いられる、直線区間タイムではありません。もちろん、仮にニューVMAXをサーキットに持ち込みタイムを計れば、誰もが納得する数字を記録するでしょう。しかし、開発時にはそれをあえて重視しなかったのです。なぜなら区間タイムは数字です。加速の体感を示すものでは無いからです。
そして“怒濤の加速感”をみせながらも、ゆったりとクルーズする気持ち良さも加えました。また絶大な安定感と安心感を持ちながら、コーナーにおいてもモーターサイクルを操る楽しさがある。かつて開発者を悩ませた矛盾は、新しい技術を投入することで解決したのです。
そう考えると、長く苦しみ、完成させることができなかった過去のプロジェクトも、問題点を洗い出すために必要なステップでありチャレンジだったのです。

困難を極める開発でしたが、次世代VMAXを探す旅は無事終えることができました。
しかしニューVMAXは、“怒濤の加速感”を実現するだけではなく、新しい価値を併せ持つモーターサイクルにしたいと考えていました。だからこそパフォーマンスにもデザインにも、寸分の妥協も許さず徹底的に作り込んだのです。 そこで強く意識したのは、日本発のものづりという発想でした。
VMAXの起源は、先に述べたように、アメリカのパフォーマンスカルチャーでした。しかし今回のプロジェクトでは、全てをゼロベースで見直し、VMAXの魅力、ひいてはモーターサイクルの魅力を徹底的にブラッシュアップしていきました。
それは、我々開発スタッフが、ライダーとして納得出来るプロダクトにしたいという強い想いからでした。だからこそ車輌を構成する各パーツの素材選びから製造方法、形状や仕上げにまでこだわり抜いたのです。
そこでニューVMAXを支えたのが、日本の高い技術力でした。他のプロダクトでは不可能とされる部分も、VMAXだからこそ、日本だからこそ可能になったのです。
それによって日本が発信する高性能、高品質を手にする価値を込めることができたのです。ニューVMAXを作り上げた今、改めてそう確信しています。

新型エンジンの理想型

エンジン開発においてもっとも注力したのは“加速感”の作り込みでした。コンセプトである“怒濤の加速感”を実現するためには、一定以上の排気量が必要でしたが、必要以上の排気量はエンジンを大型化させてしまうだけでなく、増大したエンジン出力によって駆動系にも高い耐久性が求められます。さらに加速感の源であるトルク特性にも影響を及ぼしてしまうのです。
アメリカンマッスルカーをみると分かりますが、大排気量のV型多気筒エンジンは比較的低回転域で最大トルクを発生します。この特性をそのままモーターサイクルに置き換えると、ライダーが加速感を得る間もなく最高回転数に達してしまい、加速感を楽しむことができないのです。
そこで改めて“加速感”に必要な要素を分析し解明したのが、トルク上昇の仕方。トルクの盛り上がり方と、トルクが出続ける時間の関係を見直すことでした。
ライダーが凄いと感じる加速には、エンジン回転の上昇とともにトルクが加速度的に盛り上がり、かつその時間が長く続くことが必要だったのです。

それを実現するため、開発終盤にボアアップするという異例の決断を経て、ボアストロークを90×66mmとし、排気量は1,679cm3に決定しました。これだけの大排気量とロングストロークのエンジンであるにもかかわらず、最高出力は7,500回転、最大トルクは6,000回転で発生。高回転域まで使うことで、エンジン回転とともに上昇するトルク=加速感をしっかりと得られる仕様としました。またより加速感を得るためにクランクマスを増やし、トルクカーブとライディングフィールを摺り合わせながら何度も走行実験を繰り返しました。

エンジンの存在感と車体との関係

ニューVMAXのエンジンは、初代VMAXに比べ排気量が481cm3拡大したにも関わらず、エンジン高は6.5mmの拡大に留め、エンジン前後長は7mm短くすることができました。
その要因は、エンジンバンク角の変更です。ニューVMAXのエンジンバンク角は65度。初代VMAXのエンジンに比べ5度狭角化しています。
またカムシャフトの駆動方法も変更しました。DOHCエンジンの場合、シリンダーヘッド上部に配置された吸気/排気のカムシャフトそれぞれに駆動用カムチェーンが掛けられます。しかしニューVMAXは吸気側のみをチェーンで駆動。排気側は、吸気側カムシャフトと連結するギアで駆動しています。それによりシリンダーヘッドが小型化でき、結果としてエンジンのさらなる小型化が実現したのです。

エンジンの圧倒的な存在感が重要となるVMAXに対し、なぜエンジンを小型化する必要があったのか。その理由は、走行安定性を高めるためなのです。 加速時や高速走行時に車体を安定させるためには、前輪への分布加重を増やす必要があります。それにはエンジンをできるだけ車体前方に載せることが有効なのですが、V型エンジンは張り出した前側シリンダーによってそれが難しいという問題点がありました。
そこでエンジンを小型化することで車体前方に搭載することができ、目標としたフロント加重を得ることができたのです。
これは1980年代以降ヤマハに根付く、個々のメカニズムを一つのユニットとして捉え設計する技術思想「GENESIS(ジェネシス)」によるものです。
その結果、加速感を得ながらも、直進安定性が向上。そればかりかコーナーリング性能も高まり、ニューVMAXの走行フィールドをさらに広げることができました。

電子制御がもたらす効能

ニューVMAXのエンジンには、YCC-T(ヤマハ電子制御スロットル)とYCC-I(ヤマハ電子制御インテーク)という最先端の電子制御技術が採用されています。すでに海外向けスーパースポーツモデルに採用されているこれらの機構は「G.E.N.I.C.H.(ジェニック)」という思想に基づいており、アナログでは達成できない操作領域を電子的に補完し、人間の感性により近づけるための概念です。
YCC-Tとは、スロットル操作によるライダーの意志伝達を、スロットルワイヤーに代わり、スロットルセンサーと電子信号、そしてスロットルバルブ(FIの空気流入の調整弁)のDCモーターによって行う制御装置スロットルシステムです。
一方YCC-Iは、電子制御によりエアファンネルの長さを切り替えるシステムです。エアファンネルとはキャブレターやFIの空気吸入口に装着するラッパ状パーツのことで、吸気する際、吸入口付近の気流の乱れを抑え、円滑な吸気を行うことができ、その長さによって、出力特性を変化させることができます。
これら2つの電子制御技術を使うことで、エンジンに必要な空気の流入量をコントロールしているのです。

電子制御技術によって、エンジンの本質的な性能や性格が変わることはありません。あくまでも燃料供給や点火を行うために、より良い環境を作り出す。それが電子制御技術の役割なのです。
YCC-Tは、スロットル操作に対するエンジンの過剰な反応を抑制します。それによって渋滞や路面状況の変化に合わせ、スロットルのON/OFF等の微妙な操作を必要とするとき、ニューVMAXをしっかりと操作することができるのです。
そして渋滞路を抜けたときや高速道路、ワインディングにさしかかったとき、大きく捻ったライダーの右手にもすぐさま反応します。
YCC-Iは、長短2種類のファンネルが6,650回転で切り替わります。ここは中低回転域を得意とする長いファンネルと、高回転域を得意とする短いファンネルのパワーカーブがシンクロする回転域。切り替わり時のパワーの落ち込みがごく僅かで、切り替わったことに気付かないほどの滑らかさです。
2種類のファンネルをコントロールすることで、低回転域を多用する市街地から高回転域を使うワインディングや高速道路にいたるまで、全域にわたって高いパフォーマンスと扱いやすいエンジン特性を発揮することができたのです。

実はオートバイに搭載されるV型4気筒エンジンは、各気筒の条件を揃えるのが難しいのです。その理由は、スペースが限られているがゆえに、V型エンジンの前側と後ろ側で排気管長や冷却条件が異なってしまうから。V型4気筒エンジン特有の不等間隔爆発も要因の一つです。そこでVMAXは、3つのCPUを駆使し、シリンダー毎に燃料噴射マップを作成しました。それによって均一な燃焼条件を作り上げ、4つのシリンダーをより高い次元で同調させることができたのです。
 そのうえでライディング時に好ましくない挙動を丁寧に無くしていきました。スロットルを開けたときの反応をじっくりと造り込みながら、人間の感性を刺激するセッティングに仕上げることができたのです。
国内仕様モデルは、国内の騒音規制および排気ガス規制に適応しています。同時に日本の道路環境に合わせ、中低回転域でのレスポンスやフィーリングにさらに進化させました。その結果、より扱いやすく加速を感じやすい仕様に仕上げることができました。

エンジンを際立たせるフレームの役割

VMAXにとって、エンジンの存在感は絶対的です。それはパフォーマンスにおいてもスタイリングにおいても変わりません。したがって、それを支えるフレームや足まわりは脇役に徹する必要があります。
パフォーマンスにおける脇役的役割とはどういうモノか。それは、フレームや足まわりの存在を意識することなくライディングができる、と言うことです。
ライディング時に感じるのは、ニューエンジンが生み出す“怒濤の加速感”やクルージング時のV4エンジンらしい鼓動感。市街地からワインディングまでを走りきったにも関わらず、気がつけばエンジンの印象のみが際立つ。もしかするとワインディングでは、エンジンの躍動感に魅了され、いつも以上のペースで走っていたかもしれないのに……。これが理想的なインプレッションです。
どんなときでも、強靱なフレームが主張したり、ハンドリングが際立ったりしないこと。これこそ我々が目指したフレームと足まわりの姿なのです。

1,679cm3V4エンジンを受け止めるだけでも高い剛性が求められ、それをライダーが意識せずとも振り回すことができるようにバランスさせるには、高性能なフレームと足まわりが必要でした。
しかし、そのハードルを越えるのは容易なことではありません。例えばエンジンをできるだけ車体前方に積み、フロント荷重を増やして車体の安定性を高めていましたが、VMAX特有のアップライトなライディングポジションによって加速時にライダーの姿勢が起きやすく、フロント荷重が抜けやすくなる。このような様々な要因が重なり、フレームに求められる要件はどんどん複雑になるからです。
我々は全てのフレーム形式を検証しました。しかしそのほとんどが、性能的にVMAXには相応しくなかったのです。
試行錯誤の結果、フレームはオールアルミ製ダイヤモンド型としました。エンジンをフレームの一部として使うこの型式は、十分な剛性を確保しながら、エンジンを過度に覆い隠すことはありません。さらにステアリングヘッドとスイングアームピボットを結ぶライン上にある、エンジンのVバンク中央部に懸架ブラケットを設けることで、理想的な剛性バランスを整えることができたのです。

フロントフォークは、極太のφ52mmながらあえて正立タイプとしました。リアにはリンク式のモノクロスサスペンションを採用。車体取り付け側にリンクを設置するとともに大きくレイダウンしてセット。燃料タンクと排気チャンバーに挟まれた限られたスペースに収めると同時に、リアタイヤをしっかりと地面に押しつけることができる設定を実現しました。
このリアタイヤを路面に押しつける力=トラクションを得るためには、シャフトドライブの設定も大きく関係しています。
シャフトドライブは、その特性から駆動がかかるとリアを持ち上げるような動きをします。そこでスイングアームピボット位置を変更し、ライダーに感じられないレベルにまで調整しました。
またベベルギアの減速比を調整することで、チェーン駆動車のスプロケットの役割を果たす、ファイナルケース内のギアを小型軽量化。リア周りを軽くし、前輪への分布荷重を増やしているのです。
このように様々な要素を組み合わせることでフレームと足まわりの性能を高めると同時に、その存在感を消していったのです。

デザインによって増幅する内なる力

初代VMAXはアメリカのパフォーマンスカルチャーをモーターサイクルのかたちにしました。その結果として、VMAXユーザーは世界中に広がりました。速さや強さに対する憧れは世界共通だったと言う訳です。しかしニューVMAXは、どこか特定の地域だけに向けたモデルではありません。我々は原点に立ち返り、全世界のVMAXファンの皆さんへ送る、日本から発信するプロダクトにしたかったのです。そこで導き出したのが「内在するエネルギーの造形化」というテーマです。これは実に日本的なテーマなのです。
それは和をモチーフにすると言うことではなく、解釈が日本的であると考えたのです。
たとえば奈良東大寺の金剛力士像。頭と四肢という、人間的な形をしていますが、顔、身体のバランス、筋肉の付き方などは人間のスケールを超越し、エネルギーに満ちた躍動感を動的に表現しています。対して西洋の彫刻は実に写実的であり、骨格や筋肉の構成を基準に、人間の美を表現しています。日本人は人間のかたちを題材に深い精神性の表現を目指しているのです。
私たちがニューVMAXに求めたのは、金剛力士像のような、よりエネルギーを発する力の凝縮。そのままの美しさよりも、エネルギーを「感じさせる」ことができる日本の表現方法だったのです。

そこで重要となるのがエネルギーの源であるエンジン。吸排気やリアタイヤといった出力に関連するアイテムまでもエンジンだと考えました。
新しいV型4気筒エンジンは、車体前方に搭載するため小型化したのですが、脈打つ心臓のような象徴的で存在感のあるものにしたかったのです。そこで、エンジンに空気を取り込むエアインテークは、なかで空気が暴れ、捻れて吸入されていくような流れを表現しました。排気管も、エンジンから暴れ出したかのように車体両脇から取り出し、幾つもの曲げ加工を施すことで、まるでエンジンからはき出された排気流が暴れているようなエアフローを表現しました。
またハイパフォーマンスマシンの定石から言うと、通常はエンジンを取り囲むようにフレームを配置するのですが、VMAXではフレームはエンジンに押しのけられているような造形とし、エンジンの存在感を高めました。
そしてグッと排圧がかかったような表情のサイレンサーは、ショートタイプとすることでその印象をさらに強め、V型4気筒の無限大の力を象徴させる∞(無限大)型です。インテークも同じモチーフとし、VMAXの誇り「V4」をアピールしています。
また200mm幅の極太リアタイヤは18インチとし、その存在感を強調。モノクロスサスペンションによってタイヤの露出度も高めました。その結果迫力あるリアビューを実現し、すべてのパーツが、エンジンのエネルギーから生み出されている造形物という印象を作り上げることができたのです。

日本発を印象づける贅沢な素材使い

今回は造形のほかにも、こだわり抜いたポイントがいくつもあります。それがスタイルを作り上げるパーツの素材。通常なら樹脂パーツで構成されがちな部分にも、多彩な金属パーツを採用しました。
そもそもVMAXには「エンジンそのものが走る」というイメージがありました。これはエンジンの存在感が圧倒的であることを表現していますが、それを意訳すれば「車体そのものがエンジンである」と考えることもできるのです。その解釈に基づくとヘッドライトステーやライセンスホルダーに樹脂パーツを選択するという、他のモデルでの方程式が当てはまらないのです。
また私たちは、VMAXにさらなる価値を加えたかった。そこで多彩な金属パーツを用い、その重厚なスタイルを作り上げようと考えたのです。
スーパースポーツなどパフォーマンスに特化するモデルは軽量化が至上命題です。しかしVMAXはモーターサイクルという乗り物の真髄を掴む乗り物。ときに鉄馬と称されるように、モーターサイクルは鉄の塊でありたいのです。なぜなら、それが本来のモーターサイクルの姿だと開発スタッフは考えるからです。
だからこそ様々な金属素材からパーツを成型し、VMAXらしさを追求しました。

今回我々が目指したのは、日本の、そしてヤマハのもの作り。それを実現するためには、こだわった最新素材と職人の高い技術を用いたプロダクトのアートを作り上げる必要があったのです。
それを象徴するのが、アルミで鋳造したエアインテークカバーです。このパーツは、クレイと呼ばれる成型用の粘土をデザイナーが丁寧に削って作り上げた形状をアルミ鋳造で成型。仕上がりの美しさを引き上げるため、素材選びや鋳造方法にもこだわり、ヤマハがCFダイキャスト用に採用している、耐食性が良く、薄肉化が可能な特殊なアルミ材を採用しました。そしてできあがったカバーひとつに職人が30~40分を掛け、手作業による磨き“バフ仕上げ”を行っています。高効率を追求し、ほとんどの部品が5分程度で完成することを考えれば常軌を逸しているかもしれません。しかし妥協はしませんでした。
より完璧なカバーの表現を求め、300近いサンプルを作り、仕上げや製造方法を検討。納得がいくまで徹底的に作り込みました。
手作業で仕上げられたパーツは、他にサイドカバー、タンク上のマルチファンクションパネルカバー、タコメーター&タイミングライトリングなど、実に多岐にわたっています。

また断面を∞(無限大)でイメージしたサイレンサーボディはチタン製。軽量化に貢献するチタン素材に、表面積を広げるこのような凹状加工を施したのはヤマハでは初めてでした。  しかし、これら様々な素材を使うことでニューVMAXは、パフォーマンスとともにオリジナリティを強く打ち出したデザインを手に入れたのです。

VMAXの、終わらない試み

モーターサイクルの開発には根気を必要とします。それは皆さんが乗る市販車でも、トップライダーが乗るMotoGPマシンでも同じです。開発者が何度も自己否定し、時には議論に長時間を費やし、頓挫の危機を乗り越えながら開発を繰り返す。市販車とMotoGPマシンでは、その時間が違うだけです。
その幾多ある開発のなかでもVMAXは特別でした。我々が目指すVMAX像は矛盾に満ち、それをクリアするために技術革新とブレイクスルーが必要だったからです。開発に時間を要したのもそのためでした。
しかしVMAXプロジェクトはまだ終わっていません。
VMAXは、その販売方法にも新しい試みを加えました。これは、VMAXによってヤマハが新しい時代を切り開いていくことを意味し、そしてVMAXに関わる全ての人々に新しいチャレンジを課しているのです。
その評価には長い時間が掛かるでしょう。10年、必要かもしれません。それは重々承知しています。そのためにVMAXは、時代によって褪せることのない、モーターサイクルの本質を磨き込んだのです。
だからこそ、永くゆっくり楽しんでもらいたい。VMAXはそれに値するモーターサイクルです。

ページ
先頭へ