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MAXシリーズ×甘い缶コーヒーでコラボしたい!→却下でがっかり→NMAXの魅力をインタビューしてみた

2017年7月14日

NMAXの125と155が日本でも発売され、堂々と「シリーズ」を名乗れるようになった感のあるMAXファミリー
ちなみに元祖MAXであるVMAX は、別格かつ孤高のモデルなので、このMAXシリーズには入らない。日本全国におられる200万人の佐藤さんが一つの世帯ではないのと同じである(なんのこっちゃ)。ちなみにボートのエンジンにもV-MAXシリーズ が存在することは意外と知られていない。

そんな中、僕は思った。NMAX155 も登場したし、もっと「MAXシリーズ」を世の中のライダーに知って欲しい。よし、NMAX155導入企画をやろう。そうと決まれば企画書を作成だ。

件名:有名缶コーヒーとのコラボ
内容:甘いことで有名な黄色い缶コーヒとのコラボ企画。バレンティーノ・ロッシ選手がNMAX155で登場し、缶コーヒーをゴクっと飲んで「スイート!そう、NMAXもね」と言ってニヤッとする


 

意気揚々と企画書を上司に提出したところ、結果は見事に

意気揚々と企画書を上司に提出したところ、結果は見事に

であった。
それもそうだ。「ちょっと日本に来てNMAXに乗ってコーヒー飲んでよ」なんて、シーズン真っ只中のMotoGPライダーに言えるわけがない。
仮に僕の後輩がこんな企画書を持ってきたら、こう言い放つだろう。
「スイートなのはお前の頭だな」
と。

...ちぇっ。ロッシの名言 なのに。
しかしそこは優しい上司、「NMAXの魅力をもっともっと探求することが先決では?」というアドバイスをくれた。そんなわけで、開発者にNMAXの開発秘話をインタビューすることになったのだ。



今回お話を伺ったのは、車両実験部プロジェクトグループの梅谷利明さん。『作り手が欲しいと思えるバイクでなければお客様には響かない!』がモットーとの事で、現在は自身が関わったTMAX530・NMAX125のオーナーでもあるそうだ。

梅谷さん。サックスブルーのヤマハの制服が似合う、情熱あふれるナイスガイだ

↑梅谷さん。サックスブルーのヤマハの制服が似合う、情熱あふれるナイスガイだ

Q.ヤマハ発動機販売の落合です。今日は宜しくお願いします。
A.こちらこそ宜しくお願いします。

Q.まずは自己紹介をお願いできますか?
A.NMAX125/155の開発で車体実験プロジェクトチーフを務めました梅谷です。過去には、TMAX530cc化の時の車両実験プロジェクトチーフも担当していました。

TMAX530(4代目TMAX) を駆る梅谷さん。まさに人馬一体。ツナギの色も。

↑TMAX530(4代目TMAX) を駆る梅谷さん。まさに人馬一体。ツナギの色も。

Q. TMAXのスペシャリストでもある梅谷さんに、まずはNMAX125/155の開発の方向性について聞きたいのですが...。
A.NMAXの開発がスタートした際に「MAXシリーズの末弟として、どういうモデルにしたら良いか」を考えました。MAXシリーズということで、走りやハンドリングなどの何かにTMAXとの共通性を持たせなければならないなと。

Q.TMAXとの共通性ですか。ちなみに、TMAXはどんな方向性で開発したんですか?
A.TMAXの開発を担当した中で、最も重要視してきたことは「乗って楽しいこと」です。またTMAXはスポーツATなので、楽しさに加えて普段の実用性も重要です。「実用性と楽しさを両立」することをポイントとし、車体ではハンドリングの安心感・安定感を意識して開発しました。

楽しそうなネオとトリニティ。違うけど。続編では是非TMAXに乗って欲しい

↑楽しそうなネオとトリニティ。違うけど。続編では是非TMAXに乗って欲しい

Q.TMAXって本当に楽しいバイクですよね。一方でNMAX125/155はTMAXと排気量がだいぶ違いますが、開発の方向性も同じなんでしょうか?
A.そうです。NMAX125/155も、先程申し上げたTMAXの方向性に添って開発しました。結果、TMAXと車速域は違えど、125/155クラスでは「ありえない」と言わせられるレベルの車両との一体感・ハンドリング性能を持ったモデルに仕上がっています。

Q.私も乗ってみて、「125ccでも『バイクに乗るのが楽しい、交差点やコーナーが気持ちいい』という感覚を味わえる」ことに衝撃を受けました。
A.テストコース内でポイントとしている箇所があり、そこで色々な条件を試してMAXシリーズの共通点やフィーリングを試行錯誤して完成度を高めました。

Q.やはり、かなり作り込まれたんですね。お話を聞いて納得です。
A.そうですね。「MAX」の末弟として、その名に恥じないモデルに仕上がったと思っています。

BLUE COREのエンジンについて

Q.「乗って楽しい」を実現するための要素について、まずはエンジンのことを教えてください。NMAXではVVA(可変バルブシステム)が採用されていますが、どのような特性になっているのでしょうか?
A. 低速ではトルク感と燃費、高速では伸びを重視したセッティングとし、燃費と出力を高次元で両立することができました。

燃費走行をするなら低回転で走ることがポイントだそうだ

↑燃費走行をするなら低回転で走ることがポイントだそうだ

Q.テスト車の慣らしを行った時、あまり回転を上げないで走っていたのですが、予想以上に燃費が良かったので驚きました。一方で、スロットルを開ければ十分パワーもあるんですよね。ただ、VVAの切り替わる瞬間が全然分からないのですが...?
A.今回採用のVVAについては、6000rpmで切り替わります。ですが、あえて切り替わりが分からないような味付けにしています。

Q.どうしてそのような特性に?
A.エンジンについてはリニアな特性に拘りを持って作り込んだためです。ライダーが「スロットルをこれくらい開けると、これくらい加速するかな?」とイメージした内容と体感が極力リンクするセッティングとしたので、一体感のあるストレスのない走りができると思います。

Q.思った通りに加速してくれるバイクって、本当に楽ちんですよね。

Q.思った通りに加速してくれるバイクって、本当に楽ちんですよね。
A.そうですね。ライディングの楽しさにも直結するポイントなので、妥協せず作り込んだポイントの1つです。

車体もこだわりでいっぱい

Q.車体へのこだわりについて教えていただけますか?
A.車体剛性は開発時に特にこだわったポイントです。ダイレクトなハンドリングを実現させるために、フレームでは主にヘッドパイプ周辺の剛性UPに着目しました。
これにより旋回中の捻りを抑える事ができ理想のハンドリングを実現できました。

カウルの下には夢とフレームが詰まってます

↑カウルの下には夢とフレームが詰まってます

Q.最初に「交差点やコーナーが気持ちいい」と言いましたが、そういった秘密があるんですね。ところで、NMAXにはABSが装備されていますが、このクラスでABS装備というのはかなり珍しいと思うのですが?
A. おっしゃる通り、開発時にも「125/155クラスでABSは本当に必要か?」という議論になりました。

Q.最終的にABS搭載に至った理由はなんでしょうか?
A.アンケートなど様々な調査を行った結果、「"ABS"は今や四輪では当然の装備であり、その恩恵もよく知られている」ことが分かりました。そのため、安全性や安心感といったところでもNMAXに魅力を感じて欲しい、という開発の想いから、ABS搭載モデルを設定するという結論になりました。

ABSの証であるフェンダーのロゴとローターのしましまがドヤ顔ポイント

↑ABSの証であるフェンダーのロゴとローターのしましまがドヤ顔ポイント

Q.ブレーキのフィーリングもとても良いのですが、なにか秘密があるんでしょうか?
A.そうです。ブレーキにも拘りがあり、NMAXが登場するまでリアブレーキはこのクラスでドラムタイプが主流でした。それをディスクタイプにする事で実現できる効力UPとコントロール性向上、そしてABSを追加し安全性も兼ね備える事ができたのもポイントです。

そのカッチリ感は握っただけで男を感じる(ブレーキレバーの話です)

↑そのカッチリ感は握っただけで男を感じる(ブレーキレバーの話です)

Q.NMAXはインドネシアで最初に発売されましたが、評判はどうですか?
A.実はインドネシアでは生産が追いつかないほどの人気のモデルなんです。ブレーキ性能についても、お客様がNMAXの魅力の1つとして感じてくださっていれば嬉しいですね。

Q. 日本でも、もっと「ABSの魅力」が広く認知されると良いなと思うのですが...
A.そうですね。日本ではNMAX125/155いずれもABS標準装備なので、「安心感の違い」を是非ご体感いただければと思います。

Q.ところで、NMAXのフロントブレーキのピストンはなぜ1ポットなのでしょうか?2ポットとか3ポットにした方が性能が良いと思うのですが...
A. 理想とする制動力とフィーリングを実現するために、キャリパーのみならずディスクなど構成部品のトータルバランスで選定した結果です。
キャリパーピストンが多かったり、ディスク径が大きければいいという物ではありません。それに付随して摺動抵抗低減や軽量化にも寄与しており、燃費性能向上に貢献しています。

大切なのはパーツ単体のスペックではなく、それぞれの組み合わせによる車両トータルとして見たバランスである

↑大切なのはパーツ単体のスペックではなく、それぞれの組み合わせによる車両トータルとして見たバランスである

Q他に、スペックに現れないポイントはありますか?
A.NMAXの主仕向国であるアセアンでは日常的な渋滞が発生しており、車と車の間を縫うように走ります。そのような環境ではハンドルの切れ角がとても重要で、同クラス内で比較するとNMAX125/155はかなりハンドル切れ角の大きいモデルとなっています。

左側のハンドルがかなり手前まで来ていることがお分かりいただけるだろうか?

↑左側のハンドルがかなり手前まで来ていることがお分かりいただけるだろうか?

Q.次世代の最強通勤快速マシンというわけですね。
A.そうです。車体の設計者はワイヤーやホース類の配索でだいぶ苦労したようですけどね(笑)

Q.メーターはどうですか?燃費が表示されるのがすごく便利です。
A.実はメーターにも拘りがあるんです。走行中、一瞬の目線移動で必要な情報を得られるよう、シンプルな構成の中に大きめの文字盤を配置することで、メーター本来の機能を損なうことがない様にしました。レンズの角度、表面処理にも写り込みなどで視認性を阻害することのない様に微調整を繰り返して作り込みました。

平均燃費だけでなく瞬間燃費も表示されるので、燃費走行を学べる

↑平均燃費だけでなく瞬間燃費も表示されるので、燃費走行を学べる

Q.それと、NMAXは足を完全に前に投げ出して乗れるのでとても楽なのですが、このあたりにもなにか秘密があるんでしょうか?
A.そうです。ステップの前の斜面部分も、足がはみ出しにくいよう広く確保されているだけでなく、NMAXは人間工学に基づいた疲れにくいライディングポジションを採用しています。

motobot君が足を置いてもほとんど車体からはみ出ない!!

↑motobot君が足を置いてもほとんど車体からはみ出ない!!

Q.NMAXで何度か長距離も走ってみたのですが、前に乗っていた他の125ccスクーターと疲れ方が全然違うんですよね。100kmくらいなら余裕で行けちゃう。
A.そうですね。更に、NMAX155では高速道路も走行できますので、長距離走行でも快適です。もっと遠くに行けますよ。

満を持してのNMAX155発売

Q.いまお話のありましたNMAX155ですが、とうとう今年日本でも導入されました。NMAX155のポイントを教えて下さい。
A.NMAXはもともと155をベースに開発された車両なので、トータルバランスではNMAX125を上回っている、というところが最大のポイントかと思います。もちろんNMAX125も作り込んでありますが、155は125以上に完成度の高いモデルです。

Q.155こそがNMAXの真骨頂、ということですね。NMAX125にはない、NMAX155だけの魅力は何だと思いますか?
A. 125ccでは走行できない高速道路でも、軽量でスリムな車体からは想像できないバツグンの安定感があります。
また登坂、追い越しなどもストレスなく行えます。これは155ccでないと体感できません。

ウイスキーのダブルとかけて、NMAX155と説きます。その心は...「わずか30ccの差でもっと楽しくなれる」です。

↑ウイスキーのダブルとかけて、NMAX155と説きます。その心は...「わずか30ccの差でもっと楽しくなれる」です。

Q.「155だと高速はちょっと怖いかも」という話は聞きますが、NMAX155は100km/h出してもすごく安定していますよね。高速走行では特に「車体の安定感」が重要だってことを改めて感じました。

最後に

Q.開発者として、日本のお客様に伝えたいコメントはありますか?
A. コンパクトで軽量、低燃費、十分な収納を兼ね備えていますので、様々な方にお勧めできるモデルに仕上がったと自負しています。ツーリングユースな女性にもオススメです!

Q.開発者として渾身のバイクであることがよく分かりました。ありがとうございました。
A.NMAXをお選びいただき、末永く乗り続けて頂けることほど、開発者として嬉しいことはありません。こちらこそありがとうございました。



梅谷さん、インタビューの対応ありがとうございました。
色々とお話を聞けてよかった。
単に外観がTMAXに似ていて、名前にMAXをつけただけのスクーターではないのだ。「走り」に対して、もの凄いこだわりをもって開発されたモデルなのである。

それにしても、「乗って楽しい」や「安定感」、そして「楽ちんポジション」など、カタログスペックには全く表れないものばかりである。乗らないとわからない魅力というのは非常に伝わりにくいし、自分の会社ながら、ヤマハって商売下手だよなぁ...、と思ってしまう。
でも僕はそんな自分の会社が好きである。勿論たくさん売れるに越したことはないが、  
 
 


などの書き込みをみると、「伝わる人には伝わってるんだな」ということが分かり、明日も元気に仕事ができそうな気がするのだ。

そんな開発者のこだわりでいっぱいのNMAXとNMAX155。
ぜひお近くの販売店で試乗してみてください。


【関連リンク】
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