2017年グッドデザイン賞と、日本ボート・オブ・ザ・イヤー ベストフィッシング部門賞を受賞した「DFR-33」の魅力を、 この艇の開発を手がけた福山さんにお聞きしました。
開発コンセプト、開発の狙いは何ですか?
「良いフィッシングボートは陸上に戻った時の疲労感で決まる」を狙いとして、「長時間の釣行であっても疲れにくい」に徹底的にこだわった開発を目指しました。
走行中の上下動が少ないと、その動揺に対して体を支える労力が減り、視界が広いと、波の動きが良く見えて事前に身構えできるのでやはり楽になります。
シートのホールド性が高いと体のぐらつきも軽減され、また、手元の最適な場所にハンドレールがあれば、更に余計なエネルギーを使わずとも体を保持できる…そういった『疲れにくい』エッセンスを随所に散りばめたのが、DFR-33なんです。
結果、走行姿勢変化が少なく、凌波性の高い船型と、ポイントまでの移動中に疲れにくい室内アレンジメントを達成しました。
ドライバーシートはフィッシングタイプのボートとしては初めてとなるバケットタイプとして体をしっかりとホールドできるようにし、キャビン内のシートは、ご覧の様に足を投げ出したり、片ひざを立てたり、姿勢を崩して楽に座れるようなレイアウトに配慮しました。
ナビシートのフットレストも僅かな張り出しを設ける事で、体の保持のしやすさが全く変わってくる事を実感いただけると思います。
「釣りのしやすさ」という点では、ちょっと見た目だけでは分かり難いかもしれませんが、バウデッキの端の部分を3度上げる事により、バウデッキでのナブラ撃ちを行う時などにこのちょっとした角度変化で踏ん張り易くなっているなど、その理由も分からないまま「あれ、何だか釣りが楽になった」と感じていただけると思います(笑)。
サイドデッキ部分はオープンタイプのガンネルとし、足先が入り易く、安心して釣りに専念できるようにしています。
スターンデッキのイケスハッチは、2分割としておりますが、その内1枚は、バネ式のストッパーを設けています。
これにより、獲物を持ったまま片手でハッチを開け、閉める時はストッパーを足で軽く蹴り込む事で、容易にハッチを閉める事ができます。
このように、釣り好きの方には「使い込めば使い込む程良さが分かる」ような細かい造り込みに配慮した設計となっています。
従来のボートからの変更点や進化した点は?
ブリッジ後部をアンシンメトリ(左右非対称)にする事で、右舷側部分を大きくし、大型15インチの航海計器モニタの設置を可能とし、2ステーションのリモコン・ハンドルの配置も自然な配列とし、操作性をたかめています。また、両サイドのハンドレールも敢えて直線としてロッドホルダーなどの後艤装のしやすさにも配慮しました。
フロントウィンドウはピラーレスの1枚ウィンドウとし、視界の良い走行を可能にしています。
座っている時や、釣っている時だけではない、それ以外のアクションに関しても『疲れにくさ』を意識しています。
キャビンドアからバウバースまでの動線には、キャビンの天井やテーブル上にハンドレールを配し、立っている時や移動中の体のホールド性にも配慮しています。
ラウンジシートの壁面や後部のちょっとした隙間や窪みも意図したもので、タオルやライジャケなどを一時的に置くスペースとして重宝する上に、ベンチシートに横になった時には、その窪みに肘が入る事で、ゆったりと休む事ができます。
トイレルームに関しては、座った時の視覚的な奥行き感に配慮すると共に、1プッシュ自動排水トイレを新たに採用する事で、操作の利便性を高めています。
その他、ちょっとした『気遣い』を織り込むことが、利便性や快適性の向上に寄与しています。
例えば、バウデッキに上がるステップは、本来足を掛けるだけの機能ですが、ステップサイズと向きを調整し、ここに座ってバウデッキシートにルアーケースを置いて、落ち着いてルアーチェンジが出来ます。
また、エンジンルームからの吸気音を極小するために、吸気口をガンネル裏に隠すなどして、静粛性に貢献しています。
この様に、他のボートを使い込んだ方が、このボートに乗って釣行に出かけた時、『おや、このフネは何か違うぞ?』とその良さが五感で感じられるような、細やかな造りこみを随所に織り込んだ自信作が完成しました。
勿論、走行時のドライネス性能や、流し釣り性能、静止安定性などの基本性能も折り紙付きです。
ここで語り尽くせなかった内容はまだまだあります。
是非とも各地の展示会や試乗会で、DFR-33の良さを体感してください。