ソルティライフ ソルティライフ
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いつでも潮気のある生活を過ごしたい。
イラスト・Tadami
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MONTHLY COLUMN ハードルなんて低い。
キャビンの棚 人が生きることの力強さを謳う 「山背郷」
船厨 釣って二度美味しい「イナダの漬け丼」
海の博物誌 海図の主流はメルカトル図法
Salty One Day Boating 秋。思わぬ獲物との出会い
YAMAHA NEWS

第23回「全国児童水辺の風景画コンテスト」入賞作品発表/マリンクラブ「Sea-Style」入会キャンペーンのご案内(11/30まで)/フィッシングボート「YF-24」イメージ映像公開

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MONTHLY COLUMN
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 観光船や湖に浮かぶ手漕ぎボートなどをのぞいて、初めて「フネ」に乗った時のことを思い出してみる。大学のヨット部の試乗会だった。もう30年も前のことだ。僕はヨット部の勧誘ブースに張り出してあった“世界の”添畑薫カメラマンが撮ったマキシボートのポスターを見て心を動かされていたので、神奈川県の諸磯ヨットハーバーに浮かんでいた25フィートの古びたヨットを見た時はいささかがっかりもした。
 それでも港を出て、セールをあげ、エンジンを止めてフネが風を受けて音も立てずに走り始めた時は、人生でもっとも感激した一瞬だったかもしれない。文字通り「至福」だった。それから海と、フネとの本格的な付き合いが始まった。仕事も縁があって海とフネに関わることのできる職場が与えられた。クルーザーヨットからは遠ざかってしまったけれど、一人乗りのディンギーを買ってセーリングを楽しんだり、友達のボートで釣りを楽しんだり。そうこうしているうちに、レンタルボートクラブができてその会員になった。今はもっぱらシースタイルでボートフィッシングの日々だ。
 夢の中で締め切りにうなされることはあっても、プライベートで海に出ている時に仕事のことを考えたことは、本当にない。それだけ何もかも忘れられるのは、フネで海に出ている時だけかもしれない。
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 海に出るのに迷いは無い。もちろん多々失敗はあるけれど、それでも何をすれば事故に繋がるか、どのような無理をしたらいけないのか、そのあたりは大学の4年間で感覚的に身についたようだ。だからしばらくのブランクを経て、一人でボートを操船するようになっても、それほど躊躇するようなことは無かった。自覚はしていなかったが、僕は、海に関してはかなり特異な環境に包まれながらいまに至っている、ということらしい。
 最近、「海へのハードル」について仲間と話し合う機会があった。シースタイルというレンタルボートのシステムは自分でフネを操り、海を楽しむのに手軽でなかなか良いシステムだが、本当に免許を取ったばかりの人がひとりでボートを出せるのか?そんな疑問が話題の中心を占めた。
 実を言うといままで、そんなことは考えたこともなかった。「そんなもん、行っちゃえばいいんだよ。免許の勉強である程度の知識は得ているんだし、出港前に見せてくれるビデオはかなり良くできていて(これは本当の感想)、あれを見ておけば大丈夫でしょ」といったら、話し相手は「あんたは特殊です」と言い放った。そして話は冒頭に繋がるわけである。
 少しばかり冷静に考えた末の結論を言うと、確かに初心者がひとりでフネを出すことのハードルは高いかもしれない。でも、それはきっと最初の一回だけだとノーテンキな僕などは、そうも思うのである。はっきり言って車と同じだ。しかも、道がない。交通量も少ない。さらに、ハードルを下げてくれる機会は探すとあるものである。
 以前、シースタイルの会員を対象にあるマリーナが合同クルージングというイベントを行っていた。「みんなで一緒にクルージングに行って、美味しい魚を食べて、温泉に入ってきましょうね」という趣向だが、これなどは最初の一歩を踏み出すのになかなか好都合だ。インストラクターが同乗するわけではないがベテランのスタッフが別のフネで先導してくれる。これに参加したら、きっと高かったハードルが、飲み過ぎて午前様になった時の自宅の敷居ぐらいにはなる。
 もう一つ、シースタイルにはマリン塾というのがある。さまざまなボートの操船に対する不安を解消してくれるプログラムだ。先日、「操船マスター」という講座をのぞかせていただいたのだが、ボートの各部の説明や出港前の点検、きっと多くのペーパーキャプテンが忘れかけているであろうロープワークの復習、もちろん沖に出ての操船もインストラクターの指導のもとで体験できる。
 僕がお邪魔したときの講座の生徒さんは、79歳の男性であった。20年前にボート免許を取得したきりだ、という紳士は、積極的に質問をし、忘れていた知識を呼び起こそうと、操船に対する不安を解消しようと必死のようだった。それでもその日の午後には、もうニコニコと笑いながらボートのステアリングを握っていた。
 リズムカルに波を越えながら発した紳士の一言が印象に残った。「最高だね。まさに至福だよ」
 一日で「潮気」さえ身に付けたのではないかと思われるその余裕の表情を見たら「なーんだ。やっぱりハードルなんて低いじゃないか」と思えた。


田尻 鉄男●たじり てつお
外洋帆走部に所属しクルージングに明け暮れた大学生活、1年間の業界紙記者生活を経て、88年、プロダクションに入社。以来、日本のボーティングシーン、また沿岸漁業の現場を取材してきた。1963年、東京生まれ。



キャビンの棚
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「山背郷」
熊谷達也
発行:集英社(文庫)
価格:630円(税込み)
 直木賞、山本周五郎賞を「邂逅の森」で史上初めてダブル受賞したのが2004年。失われつつある日本の風土を克明に描きながら東北地方の一人のマタギの生き様を綴った熊谷達也のこの小説は、多くの男を感動させた。ご紹介する「山背郷」は「邂逅の森」の原点ともなったのであろう「旅マタギ」を含む全9編が収められた短編集だ。
 「山背」とは、東北地方独特の気象現象で、初夏に吹く冷たい風のこと。そこからもわかるように短編の舞台はほとんどが東北地方となっている。さらに9編中4編が、海や船を舞台としている。
 海難で息子を亡くし、失意の潜水士が洞爺丸の遭難を機に生き様を取り戻す「潜りさま」。大戦中から大戦後に生きた宮城の漁師を主人公にした「モウレン船」。北上川を上り下る船に乗る夫婦の静かな愛情を描いた「ひらた船」、陸奥湾のタラ漁に取り組む親子を描いた「川崎船(じゃっぺ)」。
 海や山といった自然を「美しい」「素晴らしい」というのは簡単だ。しかし、大自然と共生し、時に対峙しながら、愛する家族のために闘う人々の姿を敢然と見せつけるこれらの短編は、自然よりも人間の素晴らしさが際立つ。
 登場人物たちが紡ぎ出す東北弁による木訥な語りは、その印象をますます強める。
 きっと涙を流せる。



船厨
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 編集部から最も近い海、東京湾では秋になるとイナダがよく釣れる。例えば湾奥からレンタルボートで行ける距離でも釣れる。鳥山やナブラを探し、見つけたらルアーを早巻きで泳がせるとガツン。魚探でベイトが泳ぐちょっとしたかけ上がりを見つけたら底に沈め、これまた早巻きでガツン。よく走る魚なので、そのあとのファイトもなかなか楽しい。そして何よりも嬉しいのはまるまるとした、ぷりぷりの魚体が旨いのなんの。
 イナダの名前のことを語り出したらきりがないのだけれど、いわずとしれた代表的な出世魚で関西では「ハマチ」といったり「ヤズ」と呼んだり。地域や大きさによって、または人によってまちまちなところがある。ただ、成魚を「ブリ」と呼ぶのは全国的に共通しているようだ。それにしても よくもこんなにぴったりの名前を付けたものだと思う。元々はよく乗った「あぶら」の「ぶら」の部分が訛ったものだと聞かされたことがある。
 この日釣れたのは45センチサイズのイナダ。お裾分けするご近所の面々を思い浮かべながら 5本釣れたところでやめた。何せ若魚だ。釣りすぎは厳禁なのである。
 そして我が家の夕飯は写真の漬け丼。刺身もいいが、この丼飯がめっぽうまいのだ。翌朝は同じレシピで、最後に熱い出汁をかけた茶漬けにしてみた。これもまた、おすすめだ。
「イナダの漬け丼」の作り方
■材料(4人分大盛り)
イナダ 1尾、醤油、酒 各1カップ、のり、大葉、小ネギ 出し昆布 適宜
■作り方
1)イナダは三枚におろし刺身の要領で皮を剥ぎ中骨を取り適当な大きさに切る
2)漬け汁を作る。醤油、酒を合わせて煮切り、だし昆布を入れ冷ます
3)1のイナダの身に熱湯をさっと振りかけ湯霜にする
4)湯霜にしたイナダ身を氷水に漬けてしめる
5)イナダの表面の水分をキッチンペーパーなどでふき取ってから器に移し、冷ましておいた漬け汁を注いで充分に浸るように漬け、5~10分ほど寝かせる
6)茶碗にご飯を盛り、刻んだ海苔とシソを敷き詰め、5のイナダを載せ、好みで小ネギなどを盛り付ける。
7)余った漬け汁、または醤油にわさびを溶き、丼にかけて出来上がり



海の博物誌
 一般に地球は丸いというが、実際には少し歪んでいるのだそうである。また、その大きさ、たとえば赤道半径なども測り方でちょっとずつ違ったりしている。
 地球の半径は、国際海図に使われているヘイフォード式で6,378,388メートル、日本が採用しているベッセルという科学者の数字では6,377,379メートルである。その差は1,009メートル。一見、とてつもない差のようにも思えるが、実際にはこの程度の差は問題にならない。航海に使われている海図(チャート)にはもっと大きなズレがあるからである。
 海図は丸い地球を平面に表したものだが、丸いものを平面に写せば、どのようなテクニックを使っても必ず歪みが出る。海図で最も多く使われているのはメルカトル図法だが、これは緯度が高くなるほど南北が長くなっていくという歪みを持っている。しかし、海図でいちばん大切なことは、実際の方位が平面上で正しく表されていることである。メルカトル図法は、経度方向と緯度方向の歪みが同じになるように考えられているので、方位が簡単に読める。
 そのため、海図のうち港泊図以外はすべてこの図法を使っているわけである。



Salty One Day Boating
 神奈川・湘南の海岸を西へ、西へ。そこには一般的に知られた「湘南」とはちょっと異なる、素敵な海岸や町がある。静岡県との県境に程近い、真鶴そして湯河原。湯河原はいわずと知れた温泉地、真鶴は新鮮な海の幸の宝庫。このふたつの町のほぼ中間から相模湾に向かって半島が突き出している。その半島の東側、静かな漁港と隣接するようにして「真鶴マリーナ」はあった。


 10月の中旬にさしかかろうという休日。秋が確実に足を速めてやってくる。そんな気配を感じながら西湘バイパスを西へ。海岸を左手に見ながら走っていると、右手の山がだんだんと道路に迫ってくる。真鶴の市街地を抜け半島にも半ばにさしかかると、次第に磯料理の看板を掲げた食堂や民宿、旅館の軒数が増えてくる。「海にやってきた」。都心のマリーナに向かう時とは少し異なったワクワクした思いが、いつになく心を浮き立たせる。
 マリーナで出迎えてくれたのは真鶴マリーナの代表・高橋敏光さんだ。
 「もう用意はできていますから。いつでも出せますよ」。
 指さす先には、今日一日お世話になるYF-21が浮かんでいた。
 真鶴沖は魚が豊富なことで知られている。この小さな港に水揚げされる魚をざっと列挙すると、アジ、スズキ、タチウオ、サワラ。イナダ、ヒラマサ、キハダ、メジ、カツオ、サバ。メバル、カワハギ、などなど。高橋さんも「これだけいろいろな魚が泳ぐ海も滅多にないだろう」と胸を張る。
 真鶴の魚が豊富なのには理由がある。箱根の火山の外輪山の一部が海に出て突き出た半島の周囲は高さが20メートルほどの断崖で、原生林に覆われている。この原生林から雨水とともに流れ出る豊富な栄養分が、半島が形作る駆け上がりに注ぎ込み、多種多様な魚が育てられるというのだ。最近は豊かな森と豊饒の海との関係は常識になりつつあるが、真鶴でも古くからそのことに気づき、漁師たちは「魚付き保安林」として森を大切にしてきたのだという。

 さて、この日は鳥山やナブラを探しながらルアーでも投げて、イナダでも釣れれば楽しそうだと、脂ののった刺身の美味を思いだしつつ、真鶴マリーナからフネを出した。
 マリーナから出て、半島を伝うようにして高橋さんに教えてもらった「最近イナダが釣れた」ポイントへと向かう。天気は良く、素晴らしい凪だ。海の水はとても澄んでいる。この上ないボート日和。巡航で気持ちよくボートを走らせていると、水面をサッと何かが動いた。見覚えのある独特の美しい緑色。シイラだ。
 秋も深まりつつあるのに、まさかシイラがこんな岸寄りを泳いでいるとは思わなかったけれど、オフショアロッドにペンシルをセットして、すかさずロングキャスト。リールを巻きはじめるとルアーの向こうの海面がフワッと盛り上がり、そしてバイト。強烈な引き。あがったのはメータージャストの雄のシイラだ。西伊豆でもそうだったが、最初のシイラは疲れる。でも、これがこの日の準備運動。そして釣り運を決めてしまったようだ。つまりイナダが欲しかったのに、その後はシイラのヒットの嵐。鳥山に遭遇しても、ナブラを見つけても、ルアーを変えても、アクション、レンジ、いろいろ試したが、まるで人なつこい子犬のようにシイラがつきまとってくるのだ。
 でも、その日の外道とはいえ、楽しくないはずはない。途中からは開き直って、狙いをシイラ一本に切り替え、夕方近くまで強烈な引きを存分に楽しみつくした。
 シイラと遊び疲れてマリーナにもどると桟橋で高橋さんが出迎えてくれた。一本だけ持ち帰ったシイラを見て「まあまあのサイズじゃないか」とねぎらってくれたのだが、そのあとの一言に愕然とした。
 「真っ昼間に港の中にナブラが入ってきてイナダが追い回していたよ。今も、ほら」
 灯台もと暗し、とはよくいうが、たったいまフネで通ってきたばかりの港口の外に、何者かから逃げ惑う小魚の群れがあった。
 森が育てる海がここまで豊饒だったとは。必ずまた来よう。


取材協力
真鶴マリーナ
●〒259-0201 神奈川県足柄下郡真鶴町真鶴1117
●TEL: 0465-68-1201
●ホームページ: https://marine.yamaha-motor.jp/sea-style/Common/Marina_Common.asp?marina_cd=80393405


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朝の真鶴港。日によっては港の中にまでイナダが小魚を追って入ってくる
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飾り気のない港町。よく知られた湘南とは別の表情が気持ちを和ませる
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真鶴岬の沖に連なるのは三石と呼ばれる洗岩。様々な伝説が残る
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強烈な引きを楽しむが、日頃の運動不足が応える
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小型のシイラだがつい美しさに見とれてしまう
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この日最初の釣果はメータージャスト
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主にペンシルを使用したが活性型が高く何を使っても追ってきた
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真鶴マリーナの高橋さん。アットホームな雰囲気で居心地がよいマリーナ
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この日を締めくくったのは、五種類の地元産の刺身を盛りつけた割烹旅館・まるなかの定食。これで1人前。高橋さんもおすすめ


ヤマハニュース

第23回「全国児童水辺の風景画コンテスト」入賞作品発表
http://www.ymfs.jp/project/culture/contest/2011/?tab=3

マリンクラブ「Sea-Style」入会キャンペーンのご案内(11/30まで)
http://sea-style.yamaha-motor.co.jp/

フィッシングボート「YF-24」イメージ映像公開
ロー&ワイドなフォルムにヤマハの持つ最新の技術を凝縮しました。
https://www.yamaha-motor.co.jp/marine/lineup/boat/fishingboat/yf-24/


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【編集航記】
 先月でお知らせした100号記念プレゼントには、多くの皆さまにご応募いただき、まことにありがとうございました。また、アンケートでは、多くの貴重なご意見ご感想をお寄せいただき、編集部一同、とても励まされました。なお、当選者へのプレゼント発送は11月中旬頃を予定しています。今後とも、ソルティライフをよろしくお願いいたします。
(編集部・ま)

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