ソルティライフ ソルティライフ
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イラスト・Tadami
A HAPPY NEW YEAR 2013
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MONTHLY COLUMN 楽園とは紙一重の世界が存在する。
キャビンの棚 海賊たちが魅せられたカリブ海の魅力「パイレーツ―掠奪海域」
船厨 冬の香りを楽しみつつ「イカのとも和え」
海の博物誌 荒れた日の横波に気をつけよう
Salty One Day Boating 冬の爽快ボーティング
YAMAHA NEWS 2013ヤマハスポーツボートラインナップが5艇種に!/「シースタイルマリン塾」 操船、離着岸、ボートフィッシングなど/ボート免許更新お知らせサービス(無料)
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MONTHLY COLUMN
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 初夢で好きな海に身を起けるとしたらどこがいいか?などと、子どもみたいな夢想にとりつかれているうちに、一度訪れたことのあるタヒチのことが頭から離れなくなってしまった。
 ヨーロッパとほぼ同等の面積の南太平洋の海に散らばる島々からなる仏領ポリネシアは、その中心となる島の名を取って「タヒチ」とも呼ばれる。あちこちの島国で使われていたりするので少し陳腐かもしれない。それでもこの島々は「楽園」と呼ばれるに相応しいと思うのだ。
 首都・パペーテのあるタヒチ島からムーレア島、ボラボラ島を巡ったことがある。残っているのは目眩を覚えるほど美しかった思い出だ。宗教的創造論と科学的進化論をここで闘わせるつもりは毛頭ないけれど、タヒチの島々と海とが織りなす造形美は、究極のデザインだ。「“誰か”が意志をもって造らなかった」とは、にわかに信じがたい。快適な安全地帯であるリゾートでは、無邪気に海と戯れ、純粋な悦びに浸る。ボートやヨットをチャーターして海に出で、島を眺めれば、大航海時代にこれらの島々を訪れた航海者に思いが行き着く。クックは日記に次のようにタヒチを綴った。
 「涼しい山々があり、あふれるほどの果物がある。海では魚がとれ、鶏や豚も手に入る。タヒチの人々にはなんの心配もない。女性はすべて愛らしい」
 なんていい島なのだ!
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 しかし、そんなタヒチの魅力にうっとりするのと同時に、かつての海の英雄がタヒチで体験した誘惑を、500年たったいまでも同じように感じてしまうのは間違いだろうか。そしてロティやゴーギャンを捕らえた魔力の影響を受けてみたいと思うのは危険なことなのか、などと、複雑な思考が頭の中を駆け巡りもする。
 ボラボラに滞在中のある日、季節はずれの強い雨が朝から降り続いていた。車に乗り込み、水たまりだらけの、でこぼこ道を走って街から離れた小さなレストランに入った。窓の外には輝きを失ったねずみ色の海が広がっていた。それと対比するように、レストランの壁には独特の色彩を放つゴーギャンの絵が飾られていた。タヒチの島々にはゴーギャンのカレンダーやポスターなどの土産物で溢れている。
 ゴーギャンは42歳で西洋文明に失望し、原始的な暮らしを求めてタヒチ島を訪れた。ポリネシアンの少女と内縁関係を結び、そこに暮らし、原始的な精神風土と官能の世界に身を投じながら作品を生み出していった。しかし、ゴーギャンは首都パペーテに代表されるように“フランス化”していくタヒチに失望したのかもしれなかった。タヒチで描かれた彼の作品の一つに「われわれはどこから来たのか われわれは何者か われわれはどこへ行くのか」がある。374.6cm×139.1cmの、パノラマのようなキャンバスに描かれたこの有名な絵は、かつて神学生であったゴーギャンの、自身に対する精神問答を描いたものだといわれている。彼はこの絵を描いた後、一度自殺を試みている。そして最期はタヒチを離れ、さらに原始的だったマルキーズ諸島に暮らした。
 「われわれはどこから来たのか われわれは何者か われわれはどこへ行くのか」。せっかくの美しい自然を目の前にゴーギャンのように深刻に考えることはあまりおすすめできない。でも、迎えた新しい年の始まりに、いまいちど海の前に立ちどまり、自身の新しいソルティライフについて静かに考えてみるのは悪いことではないかもしれない。


田尻 鉄男●たじり てつお
外洋帆走部に所属しクルージングに明け暮れた大学生活、1年間の業界紙記者生活を経て、88年、プロダクションに入社。以来、日本のボーティングシーン、また沿岸漁業の現場を取材してきた。1963年、東京生まれ。



キャビンの棚
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発行:ハヤカワNV文庫
著者:マイクル・クライトン
翻訳:酒井 昭伸
 本書は、パイレーツというタイトルがついているものの、その中身は海賊の話ではなく私掠船の船長を主人公にした物語だ。私掠と海賊は似ていて異なる。政府から許可を得て略奪行為を行うのが私掠船であり、主に強大な海洋国家としてカリブ海の覇権を握っていたスペインに対してイギリスやフランスなどがこの許可を与えて、スペイン国籍の船から略奪行為を行っていた。
 この物語は、そうした情勢を背景として、イングランドの私掠人船長ハンターが、一癖、二癖ある乗組員を集めて、鉄壁を誇るスペインの要塞に守られた財宝をいかにして奪うのかを描いたエンターテイメントで、本格的な海賊小説として読み応えがある。それは海賊と私掠船の違いに始まって、カリブ海を取り巻く環境や、私掠人と政府の関係など、社会の枠組みの中での彼らの生き様がいきいきと描かれているからだろう。
 著者は故マイクル・クライトン。「ジェラシック・パーク」や「タイム・ライン」「大列車強盗」、さらに「ER緊急救命室」(原案・総指揮)といった幅広いジャンルを描き、第一級のエンターテイナーとして活躍した。その彼のほぼ完成形の遺稿として発表されたのが本作であり、これまでサイエンステクノロジーに傾注した内容とは一線を引いている。しかし他のクライトン作品同様に、スピード感のある展開で、正月でニュートラルになった頭を一気に前進させられる、休み明けにはうってつけの作品だ。



船厨
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 エビ、タコ、そしてイカ。いずれも日本人が大好きな魚介として国別の消費量では日本がトップにあげられる。中でもイカは近年、釣りの対象魚として人気が高い。「魚のカタチをしたモノ以外を対象にした釣りには興味がない」という正統派というか堅物のアングラーの知人の顔も思い出すことができるが、どうやらその釣趣と、新鮮な釣りたてのイカの美味さにはまる人は後を絶たないようである。
 小欄はどちらかというと、その堅物タイプでイカ釣りには手を出さないけれど、イカが好物であることには変わりはない。以前もイカめしをはじめさまざまなイカ料理をここでご紹介した。
 農家の知人に「庭でたくさん獲れたから」と柚をいただいた。冬至の「ゆず湯」に代表されるように、その香りは冬の風物詩である。
 思い立って、釣りはしないけど魚屋で新鮮なイカを入手し、奥方にイカの「とも和え」をつくってもらう。しばらく寝かせておけば、そのうちいい塩辛になるだろう。
 熱燗をなめながら「一日二杯の酒を飲み」なんて、河島英五の「時代遅れ」を思いだし、「そのうち魚のカタチをしていないものの釣りでもやってみなくてはならんなあ」などと、ひとり冬の夜に考えてみたりして。
「イカのとも和え」の作り方
■材料
スルメイカ(刺身用)、塩少々、柚、好みで、醤油、味噌、みりんなど
■作り方
1)イカからキモを取り出し、皮を剥いだイカとともに塩を適当に振り、冷蔵庫などに半日から1日冷蔵庫で水分を飛ばす。
2)イカを短冊状に切ってボールなどに移し、キモの中身を絞り出して味を見ながら塩を加え和える。醤油、みりんは好みで適宜。
3)器に移し、刻んだ柚を飾って出来上がり。
※2)を3日から1週間ほど熟成させると「塩辛」になります。



海の博物誌
 波のエネルギーは非常に大きい。高波の被害はときに唖然とするような規模になるし、海水浴で波とたわむれているようなときでも、ちょっと油断してのまれると、押し倒されてしまったりする。
 ボートにとっても大きな波には気をつけたい。小さい波でそれに向かって進んでいる時はいいが、波に追いかけられる格好の時は舵が効きにくくなる。また、急にボートのスピードを落としたときや大波のときは波をかぶってしまうこともある。
 荒れた海の場合は、出港しないことがもっともな対策だが、もしも、航行中に波が高くなった時のために、ある程度の予備知識を持っていたい。
 まずは横波をなるべく受けないように航行すること。ボートが最も舵をとりやすいのは、斜め前方20~30度から波を受ける角度。その角度の維持、また舵が利くスピードを維持することが大切だ。
 なお、波を乗り越えるときは、車で坂を越えるのと同じで、頂上近くで減速し、底の手前からスピードを上げるようにする。
 重ねていうが、出港前に天気予報を確認し、無理そうな時は出港しないことが肝。
 2013年も安全航行を心がけよう。



Salty One Day Boating
 三崎港の朝は早く、観光施設とは別棟にある荷さばき場は早朝から活気に溢れている。こうした港町らしい光景を見ることができたのも、この三崎港のシースタイルは2回目からの利用であれば7時からの利用が可能だからだ。
 今回は冬のボーティングの楽しみ方。神奈川県三浦半島の南端にあたる三崎港は、首都圏のボーティング、セーリングのファンにとっては馴染み深く、デイクルーズの寄港地として人気が高い港。また最近では観光にも力を入れており、マグロの港町として賑わいを見せている。その観光の中心でもある施設、三崎港「うらり」でシースタイル艇を利用した。


 肌を突き刺すような寒さ。朝起きた時に「だれが海に行こうなんて言ったんだ」って、ついついつぶやいてしまうこと。それが冬のボーティングの始まりだ。ただでさえ冬の朝が苦手だと、何を好んでこの時期にと思うかもしれない。それでもあえてお薦めしたいのが冬の海。もちろん海が初めてのゲストや、小さなお子様がいる場合には、いい季節に思う存分楽しんだほうがいい。でもボーティングのベストシーズンに利用したことのある人なら、次は冬空の下でボートを走らせていただきたい。冬は夏と違って、レンタル利用が満隻になることも希で、すんなりと利用できることが多く、風のない凪の日に、クルージングや釣りをすれば、一生とは言い過ぎかもしれないが、その年の記憶に残るボーティングタイムになることは間違いない。そうした期待を抱きながら夜明け前の三崎港に着くと、ボートはすでに準備が整い出港を待つばかり。受付を済ませてさっそく乗り込み、朝日に照らされた城ヶ島大橋をくぐり抜けた。

 今回利用した「うらり」のある三崎をベースにすると、東京湾と相模湾、それに城ヶ島沖など、異なるロケーションが手軽に楽しめる。短時間の移動で、がらりと海が変えられるのは、ボートフィッシングはもとより、クルージング派にとってもうれしい選択肢になるはずだ。釣りが目的ならば、釣果の可能性が大きいポイントは港と出たところから始まるので、天候次第でポイントを変えながら釣りを楽しむという遊び方ができる。クルージングであれば、剣崎沖から城ヶ島、油壺、逗子などが航行エリア内にあるので、ゆっくりとボートを走らせて、入江でアンカリングしてランチ、帰りは釣りをしながら、というプランはいかがだろうか。
 
 また、三崎は海ばかりではなく、町全体も見所が多いので、アフターボーティングの散策も楽しい。シースタイルの受付がある「うらり」は、マグロや三崎の水産物を扱う店が軒を連ね、平日休日を問わず大勢の人で賑わいを見せている。さらに食事処は、迷うほど充実している。三崎ならではのマグロ料理や採れたての時魚の他、最近では三崎B級グルメのマグロラーメンを目的に来る観光客も多いのだとか。そんな数々のマグロ料理をその日の気分次第で選べるのもうれしい。
 
 私たちが利用した日の早朝は爽快そのもの。風の冷たさも気にならないほど、朝日に照らされた三崎の風景を存分に楽しんだ。のちに徐々に北の風が強まり、東京湾では多くの遊漁船が苦戦を強いられていたが、相模湾側では風も弱まり、城ヶ島の南側に至っては北風の影響を受けずに快適なクルージングが楽しめた。風も穏やかで、21フィート艇でも苦にならない、ゆっくりとしたうねり。目と鼻の先に見える大島が間近に感じられる。カッパとフリースを組み合わせただけの防寒着は寒さを遮り、顔に当たる潮風が気持ちいい。これが冬の海の醍醐味といったら大げさかもしれないが、寒気で澄んだ大気が見渡す景色をクリアにして、視覚だけではなく、五感にあらゆるものが存在感を誇示してくる。
 ふだんのクルージングでは気にならない、風の振れ方や潮の流れ、雲の形。透明度の高い澄んだ空気の向こうに見える街並み。子どもの頃、早起きは三文の徳と言われたが、まさにこうした景色に出会えるのであれば、寒い中でも早起きする価値は十分にある。一度は挑戦してみてはいかだだろうか。


取材協力
三崎港「うらり」
〒238-0243
神奈川県三浦市三崎5丁目3番1号
TEL:046-881-6721
定休日:なし
営業時間:9:00~17:00
ホームページ:http://www.umigyo.co.jp/


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城ヶ島大橋を照らす朝日は、素晴らしい一日の始まりを期待させる力がある
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遠くの富士が三崎港の上に鎮座する。これも冬ならではの景色
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剣崎沖にはこの日も多くの遊漁船が集まっていた
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試しに投げたジグで良形の松輪サバとご対面。これも冬の海の贈り物
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剣崎灯台。読み方はつるぎさき灯台。この灯台の周辺が東京湾でも屈指の釣りポイント
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城ヶ島周辺は波がおだやかであれば、五目釣りで賑わう場所。訪れたときは磯漁の真っ最中だった
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この城ヶ島灯台は日本で2番目に作られた灯台。ちなみに1番が同じ神奈川の観音崎、3番が先ほどの剣崎灯台だ
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うらりはマグロの専門店が軒を連ねる。週末には大勢の観光客で賑わいを見せる
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アフタークルージングでいただいた一品。これがB級グルメのマグロラーメン。味はA級だった



ヤマハニュース

2013ヤマハスポーツボートラインナップが5艇種に!
ジェット推進システムで水面を疾走!NEWモデルが2つ加わりました
https://www.yamaha-motor.co.jp/marine/lineup/boat/sportboat/

「シースタイルマリン塾」 操船、離着岸、ボートフィッシングなど
ボートで遊ぶための技術を基礎からしっかり学べるレッスンのご案内です
http://sea-style.yamaha-motor.co.jp/marinejyuku/index.html

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【編集航記】
昨年12月、オランダ人のセーラー、ローラ・デッカーさんが来日しました。ローラさんは13歳のときに世界一周を宣言していますが、若すぎる上に経験が少ないという理由で裁判所から航海を禁じられたニュースはソルティライフでも取り上げたことがありました。結局その後、10ヶ月にわたる交渉の末、最終的にはヨットや装備に関する変更、通信教育を受けることなどを条件に許可され、ようやく夢の航海を成し遂げることができました。若年層による記録は賛否両論あると思いますが、ローラさんは「記録よりももっと大切なものを今回の航海によって手に入れた」と語っています。2013年、みなさんは何を、どこを目指すのでしょうか。新しい素敵なソルティライフの始まりです。
(編集部・ま)
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