ソルティライフ ソルティライフ
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イラスト・Tadami
いつでも潮気のある生活を過ごしたい。
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MONTHLY COLUMN 言葉とイメージで海を走る
キャビンの棚 輝かしく、繊細な悲しみ 「海流」「告別の歌」「日没の歌」
船厨 愛情が注がれた名品を素材に「ホタテのムニエル」
海の博物誌 雨の友、カッパ。
Salty Who's Who 「誰も見たことがない写真」を撮るために
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MONTHLY COLUMN
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 考えてみれば、そもそも風は目で見ることができないのだった。ヨット乗りなら、雲の流れや海面の波紋、風見やテルテールというメディア(媒体)を介さなければ風を見ることができない。しかし、風は、目を瞑っていても吹いてくる方向や強さを実感することができる不思議な存在だ。

 2013年5月24日から6月1日まで、神奈川県三浦市のシーボニアマリーナ沖の相模湾で、第8回ブラインドセーリング世界選手権大会が開催された。ブラインドとは視覚障害者のことで、日本では初の開催となる。締切の都合でレース結果は末尾に譲るが、競技参加者らの話を聞いて考えたことなどを紹介したい。
 チーム「makamaka」(ハワイ語で仲間の意)で舵を握る川添由紀さんは1歳の頃に光を失った。だから、ヨットというものを見たことがない。だが、「ブラインドセーリングに出会ったキッカケは」と尋ねると、こう答えた。
 「20年ぐらい前になりますが、ニュージーランドのブラインドセーリングを紹介する番組をテレビで見たんです。もともと海が大好きですし、番組ではブラインドと晴眼者が一緒にセーリングをしていて楽しそうでした」
 なるほど、としばらく話を続けてからようやく、彼女が「テレビを見た」と言ったのに気づいた。
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 「ああ、まあ音声を聞いてということです」
 同チームのメーンセールトリマー、田口秀光さんにも同じ質問をした。現在55歳の彼は、30代から年々、視覚が不自由となって引き篭もり気分だったとき、「テレビをつけたら、ブラインドセーリングがニュースになっていたんです。晴眼のとき、ヨットはあこがれでしたから」と話した。
 ここでも、またテレビである。テレビは見るものではなかったか。

 話は脱線するが、数年前に息子が通っていた小学校で、図工作品のバリアフリー展覧会があった。普通は「触れないでください」と注意書きをする作品に触れてもらう。音がしたり、匂いのする作品もある。耳の不自由な来場者には手話で案内する。そして、視覚障害者には絵を口頭で説明した。
 たとえば、「青い海です。左から白い帆のヨットが進んできます。中央には緑の島があって、空には雲がわきたち…」という具合だ。
 説明役をしながら考えた。「色の名前なんて記号にすぎない。それでイメージできるのだろうか。このお客さんは、島や雲を見たことがあるのだろうか」

 再び、川添さんの話。
 「マークは何時方向だと聞いて、イメージしながら走っています」「相手艇が接近していると聞けば、そこに相手の艇をイメージします」

 【イメージ】image:心の中に思い描く情景。心象。

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 ブラインドセーリングに限らないだろうが、このイメージする力が重要なことが分かってきた。
「言葉の統一は大切です。微妙な表現でも、お互いの認識が一致するようにしておかないと」と川添さんは続けた。
 チーム「うみまる」の戸口孝則さんも話す。彼はサイテッドタクティシャンといって、晴眼者の艇長であり、ブラインドのヘルムとメーンセールトリマーに対して言葉だけで状況を説明し最適な操船を指示する役割だ。
「たしかに指示は出しますが、ヘルムが感じた変化やスピード感がどの程度なのかも問いかけるようにしています。自力で走らせることを目指しているんです」
イメージに必要なのは、耳から入る言葉というメディアだったのだ。
 多くのセーラーが口をそろえたブラインドセーリングの魅力とは、サイテッドとともに闘うこと、そして、フィニッシュのホーンを耳で聞く感動だった。


菅 仁良●かん・きみなが
1962年、愛媛県今治市生まれ。大学時代からディンギーを始める。夕刊フジ記者を経て、現在フリージャーナリスト。マリンジャーナリスト会議副座長。

■日本チームも健闘!
ブラインド セーリングのレースでは、2人の視覚障害者と2人の晴眼者の4名が乗り組み、視覚障害者の2人はヘルムス(操縦)とメインセール(主帆)を担当、晴眼者がジブセール(前方の帆)と、操縦者の眼になって、声で周囲の状況を乗員に伝えたり操船の指示を出します。
レースは同一の規格で建造された25フィート前後のクルーザー(今回はJ-24)を使用し、B1クラス(全盲)、B2クラス(光覚手動)、B3クラス(弱視)の3つのカテゴリークラスに分けて行われます。世界6か国19チームが参加して開催された「2013 IFDSブラインドセーリング世界選手権」は、5月24日(金)から6月1日(土)まで全15レースが実施され、B1、B2クラスはイギリス、B3クラスはニュージーランドが優勝。3クラスに各2チームが参戦した日本チームは、B1(参加7艇)で4位、5位、B2(同5)で3位、4位、B3(同6)で3位、4位を獲得。世界の強豪チームと互角以上に戦い、国別対抗でも3位に入賞するなど実力を発揮しました。



キャビンの棚
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「海流」「告別の歌」「日没の歌」
サリー・バージェス(メゾソプラノ)
ブリン・ターフェル(バリトン)
リチャード・ヒコックス(指揮)
ボーンマス交響楽団
発売:東京エムプラス
定価:2600円(税別)
 海は楽しい。海は美しい。海に行くと気持ちが良くって、ひとを幸せな気分にしてくれる。異論はないが、例えば、愛する人との別れや、人生という嵐に打ちのめされた悲しみを時に思い起こさせるのも、また海だったりする。
 フレデリック・ディーリアスの「海流」は、アメリカの国民的な大詩人、ホイットマンの「草の葉」に寄せて、バリトン独唱、合唱、管弦楽のために作曲された。
 少年が見つけた、つがいの鴎。その鴎が親業に励む姿に、海は祝福するかのように輝く。しかし、ある日、雌の鴎は巣に戻らず、雄の鴎だけが残された。雄は雌の死に戸惑い、夏の潮騒のなか、満月の元、波の間を、戻らぬ伴侶を求めながら飛び続ける。人間の喪失と悲嘆の経験とが重なり合う。こうした海の輝かしさと繊細な悲しみが、バリトンの独唱と合唱に沿って流れて行く。
 「告別の歌」もまたしかり。海の懐の深さを改めて思わされるのだ。



船厨
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 ホタテ養殖発祥の地は北海道の噴火湾だと言われている。昭和41年のことだった。周囲を緑豊かな山々に囲まれ、すり鉢上の地形を持つこの海は、栄養分が豊富でホタテ養殖には絶好の立地だった。
 養殖というと天然ものに劣ると考えられがちだが、それは早計だ。良質な松坂牛や三元豚を育てるのと同じで、魚介の養殖も、手間をかければかけるほど、うまくなる。
 噴火湾のホタテ養殖家たちは、文字通りに休む間もなく手間をかけ、たっぷりと愛情を注いでホタテを育てている。そのホタテは「発祥の地」の肩書きに相応しく、美味い。採種から2年を経て育て上げられたホタテの貝柱を生で頬張ると他の食物では得られない、独特の甘みが口中に広がる。ホタテに対する認識を改めざるを得ない。
 水揚げされたばかりのホタテをムニエルにしてみた。周りはカリッと、熱々の中身はふわふわでジューシーなホタテの貝柱。養殖家たちの愛情は食卓にも届けられているのだと感じられる。

「帆立のムニエル」のつくり方
■材料
帆立 好きなだけ、塩/ コショウ適宜( シーズニングパウダーなどでも)、小麦粉適宜
■作り方 
1)帆立は殻からはずしよく水で洗い、ペーパータオルで水気をふきとる
2)両面に塩コショウする。好みでシーズニング、スパイスなどを用いても良い。小麦粉をまぶしておく
3)プレヒートしたスキレットに多めにオリーブオイルを入れ中火で2の帆立を焼く




海の博物誌
 ボートやヨットに限らず、荒天時に服の上から着るスーツを「カッパ」と呼ぶ。水に親しむ衣類であることから思わず「河童」を連想してしまいそうになるが、漢字では「合羽」と書く。その語源はキリスト教の宣教師が着ていたケープ。ポルトガル語が「capa」だったことから、そのまま日本語で「カッパ」と発音し、そう呼ばれるようになった。
 セーリングの世界ではカッパを「オイルスキン」と呼ぶことがある。これはナイロン素材が発明される以前、19世紀の船乗りたちが着ていた厚手のコットンにアザラシなどの動物の油脂を染み込ませたジャケットが由来だ。このジャケット自体、ほとんど現物は残っていないが、ネーミングだけは脈々と受け継がれ、いまでも多くのセーラーが口にしている。



Salty One Day Boating
写真家
添畑薫
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 「誰も見たことがない写真を撮りたい」というのが、写真家・添畑薫さんの口癖だ。自分だけが知っている世界を映像に焼きつけて、見たことがない人たちに伝えたい。その思いこそ写真家・添畑薫のモチベーションなのである。
 ここ10年ほど、添畑さんが心血を注いだ撮影対象が470級という五輪種目でもあるレーシング・ディンギーだ。オリンピックを目指して470級に取り組む日本の女子チームに密着して、これまでの常識を打ち破る映像や写真を撮りまくった。
 「一般的なヨットのイメージは『優雅』だったり『リッチ』というソフトなもの。でもオリンピックのメダルを目指して活動する選手たちの姿から見えてくるものは『優雅』や『リッチ』などという印象とはかけ離れた、ハードでヘビーなシーンの連続なんです。オリンピックというのは、日頃ヨットに興味のない人にセーリングの魅力を伝える絶好の機会です。だから、ヨットだって他のスポーツに負けないほど、ハードでカッコイイ一面があるということを伝えたかった」。
 アビームコンサルティングの470チームが沖縄の座間味島で行った強化合宿に同行した添畑さんは、6mもある470級のマストがすっぽり隠れるほどの波高の中で必死に練習する選手たちの表情、昼食時も陸に上がることなく高い波の中で握り飯をほおばる姿、さらには沈(横倒し)して海に放り出された選手を海の中から見上げるような視点で撮影した。
 こうした斬新で美しい映像は、オリンピック直前特集を組む各局のニュース番組で取り上げられた。その映像をたまたま見た元ディンギー・セーラーが「自分たちがやっていた競技がこんなにカッコイイものだと初めて気がつきました」と語っていたことを伝え聞いた添畑さんは、これ以上ないほどのドヤ顔で微笑んだ。何年も真剣にディンギー・レーシングに取り組んだ選手本人でさえ気がつかなかった魅力を、写真家という立ち位置から表現し得た。表現者として最高の到達点である。
 「誰も見たことがない写真」で、知られざる世界の真実を伝える。その意味で、添畑さんの作品はすぐれてジャーナリスティックである。一般的に、アーティスティックであることが評価の対象となりがちな添畑さんの作品だが、自身はアーティスティックであることよりもジャーナリスティックであることを志しているように見える。
 そんな添畑さんが次なるフィールドとして照準を定めているのが瀬戸内海。以前、アメリカス・カップのスキッパーとして知られるラッセル・クーツ(ニュージーランド人)をアテンドしてセーリング・クルーザーで瀬戸内海をクルージングしたとき「日本にこんな素晴らしい多島海があるなんて知らなかった。でも、この最高のクルージングスポットに、ほとんどヨットを見かけないのはどうしたわけか?」と言われたことに触発され、日本人が気づいていない瀬戸内海の魅力を映像や写真で表現したいと思うようになった。
 「瀬戸内海の本当の魅力を私を含めた日本人はまだ知らないでいる。瀬戸内海の魅力を伝える仕事を私の最後のライフワークとすることにした」と語る添畑。瀬戸内海のセーラーに「瀬戸内海がこんなに素晴らしいところだと初めて気づきました」と言わせることができたとき、添畑さんのライフワークは完結する。



ヤマハニュース

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【編集航記】
今回のTadamiさんのタイトル画は過去に掲載したイラストを使わせていただきました。実はTadamiさんは右股関節の手術で1ヶ月を越える入院生活を送り退院したばかりです。ご本人曰く「順調なリハビリの成果もあっていまは無事退院。今も仕事場で元気にリハビリ中です。次号から復帰予定です!」とのこと。ファンの皆さま、次号をお楽しみください。
(編集部・ま)
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