ソルティライフ ソルティライフ
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イラスト・Tadami
いつでも潮気のある生活を過ごしたい。
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MONTHLY COLUMN 海洋国家・日本
キャビンの棚 鯨とともに懸命に生きる海の男たち「巨鯨の海」
船厨 干物の出来は素材の魚の善し悪しが左右する?「金目鯛の干物」
海の博物誌 ライフジャケットを着用しよう
Salty One Day Boating 真鶴、その先へ。
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MONTHLY COLUMN
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 日本はフィリピン海の北の端に浮かぶ島国である。「島国根性」という言葉が示すように、我が国ではそれをネガティヴに捉えることがほとんどだ。確かに海運史の視点で日本を振り返った時、「鎖国」という、海洋国家への道を閉ざした暗黒時代ともいえるおよそ二百数十年間のことを思い出す。その間、日本人はたしかに海に出ることを忘れていたかもしれない。しかし、それ以前の日本は、自前の造船技術をも育みつつあった紛れもない「海洋国家」であったはずだ。
 白石一郎の「切腹」という短編集の中に「朱印船の花嫁」という小説がある。朱印船船主・荒木宗太郎が、ベトナムから連れてきた花嫁・アニオーさんの半生を、下僕として仕えた者を主人公に綴った短編である。この小説のなかの荒木宗太郎は、いわば脇役なのだが、そこに描かれた豪商の姿は魅力的だ。
 17世紀の初め、末次平蔵を筆頭に8名の商人や役人、大名が豊臣秀吉から朱印状を与えられ、主に東南アジアの国々へと航海し、交易を果たしたが、白石一郎は好んで、この荒木宗太郎を取り上げた。その理由について白石一郎は「荒木宗太郎が他の船主と違って使用人や親族を船に乗り込ませ、自分は資金を出すだけというのではなく、自ら船に乗って海外往来を実行した人だからである」と「海のサムライたち」に書いている。また「荒木宗太郎は臆することなく異国の女を船に乗せて同行させ、自分の長崎の屋敷に住まわせてその生涯を全うさせた。」とも。白石一郎は商才に長けた荒木宗太郎を海の豪傑としてイメージしていた。船の上での姿をまさしくシーマンシップに秀でた「海の男」として描写している。


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 「朱印船の花嫁」の中に荒木宗太郎が船乗りたちを甲板に集めて掟を戒めるシーンがある。
 「一つ、交易は人と己を利するものじゃ。人を損いて、己を益するものではない。そのことを忘れるな。二つ、異国は我が国と言語風俗が異なる。しかし天賦の理は同じでないわけがない。同じであることを忘れ、異なるところのみを見て怪しんではならぬ。我も人、彼も人じゃ。三つ、困窮した者を見るときは、異国の人、我が同胞たるを区別せず、身を捨てて助けよ。艱難辛苦の際のさい、我が身独りで逃れようと思うてはならぬ。四つ、酒と色を慎め酒色は人を溺らせるものじゃ。ほどほどにせよ。五つ、陽気を忘れるな。異国では別して陽気暮らしをせよ。楽しげに日々を送れば異国の人々をも楽しい心持ちにする。以上、五ヶ条じゃ。肝に銘じておけ」

 この玉条は実際に他の朱印船で使用されていたものだったらしい。しかし現代にも通じる船乗りの、いや一般人にも通用する内容だ。小説の中で白石一郎が荒木宗太郎に持たせた国際感覚こそ本来日本人が持っていはずの、海洋民族としての気概だったのではないかと思える。
 さらに日本の造船技術についても考えさせる。日本の造船技術は、鎖国によって完全に停滞してしまった。当時、海外から見ると、日本の船は、使い物にならない奇抜な船─との烙印を押されていたらしい。しかし、鎖国前は、違っていた。欧米や中国から貿易船がやってきた大航海時代、日本の船乗りたちは日本人持ち前の勤勉さと器用さを持ってこれら帆船の良いところを取り入れながら、優れた航海能力を持つ帆船を作り上げていたのだ。その代表が朱印船だ。
 小説の中の荒木宗太郎の船は、中国のジャンク船をベースに、スターンには西洋の帆船の構造を取り入れ、バウには日本の奮戦の矢倉の形を取り入れたものだった。マストは二本、バウとスターンにはそれぞれ補助帆を備えていた。当時は「日本前」と呼ばれた、中・洋・和を折衷した帆船だ。そして白石一郎は直乗り船主だった荒木宗太郎を優れた航海術をも合わせ持った船頭だと想像して、当時にして最新型のこの帆船に乗り込ませたのだった。
 「サムライの海」「海狼伝」「海王伝」「 怒濤のごとく」など、白石一郎の海洋小説を読むと、いつも「そうだ日本は本来海洋国家」なのだということを思い出させてくれる。日本人の根底にあった海に生きる姿を描くことで、小説の主人公に大海原を航らせ、その気概と雄志を描き出すことによって、読者とともに「海への熱い想い」を取り戻したい、共有したいと願っていたのだろう。共感する。


田尻 鉄男●たじり てつお
外洋帆走部に所属しクルージングに明け暮れた大学生活、1年間の業界紙記者生活を経て、88年、プロダクションに入社。以来、日本のボーティングシーン、また沿岸漁業の現場を取材してきた。1963年、東京生まれ。



キャビンの棚
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「巨鯨の海」
発行:光文社
著者:伊東潤
定価:1600円(税別)
 紀伊半島の南東に日本一小さな町がある。古式捕鯨発祥の地として世界的に知られる太地だ。1606年に捕鯨を開始し、明治時代に西洋式捕鯨が導入されてからは衰退するものの、それでも、近海で捕鯨が続けられている。文字通り鯨の町。かつては厳格な掟と固い組織力により、閉鎖的とも思える規律が守られていたという。
 昔から太地の鯨捕りたちは漁村に大金を呼び込む鯨を敬意と親しみを込めて「戎様」と呼んだ。その戎様を捕って、殺す。メルヴィルが描く「白鯨」のような鯨と人との関係とは異なる。日本人独特の感覚がそこにはある。
 さて、「巨鯨の海」は、その太地を舞台にした、6話からなる連作短編集だ。江戸時代から明治時代へ、その流れをうかがい知ることができるのは、連作短編ならでは。
 最終章「弥惣平の鐘」は、明治時代に起きた悲劇として語り継がれる「大背美流れ」を題材にしている。不良が続いていたなか、無謀な捕鯨に挑んで船団が遭難し、その中の1艘の漂流の様子を描いたものだ。この事故をきっかけに脈々と受け継がれてきた太地という共同体、そして捕鯨が転換期を迎えることになる。
 鯨とともに懸命に生きる海の男たち、そして市井の人々の暮らしを描いた傑作。緻密に描写された捕鯨シーンは迫力満点、読み応え充分だ。



船厨
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 魚介は養殖物よりも、どちらかというと天然物がもてはやされる。確かに美味いものもあるが、養殖家が愛情を込めて育てた魚介は実は下手な天然物に負けてはいない。考えてみれば牛や豚だって、野生のものより牧畜されたものの方が美味い。
 実は干物についても同じことがいえる。一般に、干物は天日干しが美味いとは良くいわれるが、機械干しも負けてはいないのだ。そもそも美味い干物を決定づけるのは、大元の原料となる魚であることはいうまでもない。さらには塩加減、そして干し加減。その点、天日干しの場合、太陽の加減.風の加減は人間が調節できる物ではないし、それらを考えて干物をつくる職人などそういるものではない。
 関東地方では高級魚である、キンメダイの干物を買ってきた。百貨店にも入っているような有名店で手に入れたので、おそらく機械干しであろう。が、これが美味いのなんの。厳選された素材を使い、研究し尽くされた機械干しで作る干物は美味い。 
 もちろん味の好みには個人差があるのだけれどね。

干物の焼き方
1)魚の身の方から焼く。中火以上の火加減で程よい焦げ目がつくまで焼く。
2)裏返して皮側を若干強めの火で焼く。好みの焼き色になるまで焼いたら出来上がり。
※焼く前にグリルを温めて、網にサラダ油を塗っておくと皮が剥がれにくくなる。




海の博物誌
 海に出ていて気づくようにライフジャケットの着用率が見た目にも増えてきた。法的には、水上オートバイではライフジャケットの着用義務があるものの、ボート、ヨットの場合は「務めて着用すること」とされ、強制ではない。それでも自然のなかで“自己責任”で楽しむマリンレジャーだからこそ、自ら率先してライフジャケットを着用し、安全性を向上させることが、キャプテンの基本の心得といえる。
 さて、かつては水に強い化学繊維で作られた固定式のものだったライフジャケットだが、いまは薄手のベストのように着用できる膨張式ライフジャケットや、ベルトのように腰に付けるタイプもあり、船上での細かな動きでも気にならなくなっている。
 ライフジャケットの効用は海上保安庁などの統計を見ても一目瞭然。たとえ落水しても着けている時と着けていない時では生存救助率が大幅に異なる。



Salty One Day Boating
ふだん行き慣れたマリーナ。いつも通りに船を出し、クルージングや釣りを楽しむ。ただし、この日はいつもより早めにマリーナに戻って、街や自然を散策してみた。真鶴って、こんなところもあったのか。日常と非日常の逆転。ふだん、見慣れた海からの景色を陸から眺め、改めて楽しんだ。

 最近通い慣れた真鶴だが、この日も朝から釣りを楽しむためにボートに乗り込んだ。狙いはシイラだが、最近、西湘沖に出没しているというマグロにも興味があった。マリーナのスタッフに聞いたところによると、湘南の乗り合い遊漁船は、カツオとマグロのおかげでかなり繁盛しているらしい。持参したタックルはシイラ用。20~30kgクラスのマグロが来たらどうしようかなどとと、願望の入り交じった不安もよぎるが、そこは乗り合いと違って、誰に迷惑をかけるものでもない。気兼ねなくライトタックルで何時間でもファイトしてやろうと、これもまた願望だが、そう決めていた。
 とにかく最初はシイラではなくマグロ狙い。以前から聞いていたおおよそのポイントとなる海域にボートを走らせた。この日は文字通りべた凪。波も風もない。鳥もいない。釣れそうな気配が全くない。それでも粘っているとやっとナブラ発見。だがボートを近づけるとルアーをキャストする間もなくあっという間に沈んでしまった。その後も数時間粘ったが、べた凪の海は変化を見せることななかった。マグロは次回、ゆっくり狙うとして、小型のシイラ、いわゆるペンペンと遊び続けることにした。小型といえどもシイラがバイトする瞬間はとても楽しいのだ。
 この日は早めに上がって、真鶴岬を散策することにした。
 マリーナは真鶴の漁港の端にあるが、道路はまだその先に続いている。左手に海岸を眺めながら緩やかな坂を登っていくと、海辺であることを忘れさせるような真鶴岬の原生林の中に入る。クスノキ、県内で最大のクロマツなども自生する森林はウォーキングコースとしても人気があるらしい。
 岬の突端には町立の観光施設「ケープ真鶴」がある。近くには相模湾を一望できるカフェもあった。海は先ほどまで鏡のようだったのに、このときは表情が一変し、所々に白波も見える。そしてカフェには気持ちの良い風が吹いていた。ボートで風は厄介だけど、こんな気持ちのいい風は大歓迎だ。
 それにしてもいつもはボートから眺めている真鶴岬の上はこんなになっていたのか。さらに岬の先端から海に向かって連なる三石も上から見下ろすことができた。ソルティライフ編集スタッフは、仕事柄、海にはよく出る。ちょっと取材が重なると週に2~3回はフネに乗っていた、なんていう月もあったりする。いわば海に出ることは日常であり、ボートで非日常を味わうという感覚が薄れつつある、そんな贅沢な悩みを抱えている。この日はささやかな非日常を味わうことができた。たまにはこんな休みがあってもいい。


取材協力
真鶴マリーナ
〒259-0201 神奈川県足柄下郡真鶴町真鶴1117
TEL: 0465-68-1201
ホームページ: https://marine.yamaha-motor.jp/sea-style/Common/Marina_Common.asp?marina_cd=80393405


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マグロに期待して沖を目指す!
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釣果は小型シイラのみ。それでも釣趣は最高
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真鶴岬を周遊する観光船乗り場。漁村独特ののんびりした雰囲気
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岬の突端にある「ケープ真鶴」。2階には遠藤貝類博物館があり、相模湾や世界の貴重な貝が展示されている
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真鶴は原生林で覆われていおり、海の生態系に影響を与えている
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真鶴の「カフェ見晴らし台」。店名通り、海を見晴らし、一休み



ヤマハニュース

イベントスケジュール
試乗会や展示会などマリンイベント情報をご案内いたします。
https://www.yamaha-motor.co.jp/marine/event/schedule/

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マリンジェットのみのレンタルなら月々1575円です。
http://sea-style.yamaha-motor.co.jp/jet/

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【編集航記】
今年は太平洋側の海水温が例年より高く、台風が発生しやすくなっているのだとか。すでに予定されていたマリンイベントもいくつか中止になっています。言うまでもなく、台風は遠くにあるようでも、海にはうねりなどの影響が出ます。皆さまのボート遊びの計画も無理は禁物。安全第一で楽しんでください。
(編集部・ま)
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