ソルティライフ ソルティライフ
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イラスト・Tadami
いつでも潮気のある生活を過ごしたい。
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MONTHLY COLUMN ハンモック式操船席から昼の星を標に願うこと
キャビンの棚 脈々と受け継がれる釣り人の心を捉えた『大江戸釣客伝』
船厨 素材にこだわった「鯖缶のトマトスープ」
海の博物誌 万が一を想定した心の準備
Salty One Day Boating 沖縄にてアジ類最大魚に挑む
YAMAHA NEWS イベントスケジュール /女性会員限定「シースタイルG」ゼロから始めるフィッシング体験レポート /ヤマハボート免許オンライン教室「2級スマ免コース」で免許にチャレンジ!
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MONTHLY COLUMN
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 台風一過。河川からの流水で水面は土色だが、秋の日差しを受ける小型ヨットのセールは直視できないくらいにまばゆい。それに絞りを合わせて写真を撮ると、空は黒ずんで再現される。無数の星が、そこにいる。そんなことを気付かせてくれる空の色は、宇宙の深淵を映しているかのようだ。
 ぼんやりそんなことを思っていると、さっきスタートしたはずのヨットが、セールに風をはらませてはいるものの止まっている。船首は前向きのままで後ろに下がっているものもある。あらら。ここは三重県・伊勢の五十鈴川の河口であるからして、台風26号がもたらした豪雨によって水かさも増し、流速も速い。その影響をまっすぐに受けたヨットは、舵取りをちょっと間違うと、流れに身を任せることになる。
 遷宮で賑わう三重県・伊勢でヨットレースが行なわれた。その名も『平成25年第六十二回神宮遷都奉祝アクセスディンギー大会』。奄美大島や広島、横浜、江ノ島等から17チームが参加した。アクセスディンギーはハンモックのような席に、ツーシーターのクルマのように二人横並びで前向きに座って操船する。ヨットとしては珍しいスタイルだろう。常に揺れ、どちらかに傾く小型ヨットでは、このハンモック式操船席がすこぶる都合がいい。左右どちらに傾いても、ちょっと尻がずれる程度ですむ。それはバランスを取るための移動や、大きな踏ん張りを不要のものにするマジック的シカケなわけだ。つまり老若はもとより、筋力の弱い、弱った人、障害のある人でも、同じ条件でセーリングを楽しめ、ヨット競技に参加できるということである。

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 ヨットの機能はそれとして、どんなことをしてもヨットを走らせるのは、人であることに変わりはない。ヨットにつけた毛糸のような細紐は風向きを教えてくれる。水面に立つシワは風の道を示している。だけど、スタート地点から風上方向に設けられたブイまで通るべき道は敷かれていないから、選手たちは迷い、次々と判断し、決断を求められる。そんなこと、日常にありますか?クスリ屋の角を左に曲がる、2ブロック行ったら右、なんていう駅までの近道を指先の操作ひとつで教えられることに慣れてしまい、毎日、野生を失う私に、「んっで、どうするんですか?」と海は問いかけてくる。大いに迷い、決断することを実は楽しむ。そして学ぶ。そう信じる。そこにITを駆使した過度なナビは不要だ。いや入る隙間がない。お願い入ってこないで。情報提供は拒まないが、決断するのはこのワタクシ。必然的に責任も付いてくる。それが人生だ!いやヨットレースです。

 10月27日、選手、関係者がそろって伊勢参りに行った。“商売繁盛なんてお願いしたらいかんぞ、がんばります、という誓いを立てるんだ”と参拝を済ませた私を捉まえるなり、先輩から見透かされたようなひと言。不惑など、とうに過ぎてしまったものの、まだまだ迷いながらの人生だと思い知るとともに、迷い悩むのもそれほど悪いもんじゃないと、自分を慰めながら大鳥居をあとにした。河口で止まるもよし、下がるもよし。いまこのときにも、ほら見上げてご覧、気がつかないけれど星があるんだよ。そうだね、2020年のヨット競技にアクセスディンギーを、なんていう昼の星を標に進めるような願いも、お伊勢さんならきっと導いてくれますか。もう一度、参拝しよう。


東嶺 義忠●ひがしみね よしただ
海の上では安全第一ながら、陸にいるときは飲むより飲まれることを好む酔いどれヨットマン。半世紀を過ごしたこれからは、21世紀にふさわしい快楽とはなにかを求め、夕暮れの街や週末の諸磯(神奈川)近辺を徘徊。1954年、東京生まれ。



キャビンの棚
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『大江戸釣客伝』
発行:講談社文庫(上・下刊)
著者:夢枕獏
定価:710円(上下刊ともに) 
 時代は生類憐れみの令で有名な徳川綱吉が政を執った元禄時代。津軽藩の藩主、津軽采女は小普請組という閑職の中で、家臣の勧めにより釣りを嗜み、やがては日本最古の釣り指南書と言われる「何羨録」を記す。その采女を主人公に据え、江戸の釣り事情を描いたのが「大江戸釣客伝」である。
 「釣客伝」ではあるが、江戸の時代物に読み慣れた人にはぜひオススメしたい一冊だ。采女の半生の中には、紀伊國屋文左衛門に芭蕉の弟子である宝井其角、絵師の英一蝶(釣りの罪により八丈島へ島流し)との交流や代勤めとしての綱吉や義父としての吉良上野介が登場し、釣りを通じて江戸の文化が爽やかに描かれている。
 この登場人物達は、それぞれの立場から釣りに一家言持っているが、その一家言は嫌みなく、むしろ釣り人であれば、だれもが頷いてしまう道理を述べている。人生に正解がないように、釣りにも釣果はあれど、正解はない。その釣りの楽しみ方や極め方は人それぞれであり、だからこそ釣りはいつの時代も奥深く語られる。
 津軽采女は壮絶な人生を歩んだことが巻末に書かれているが、釣りだけはやめることなく晩年に「何羨録」をまとめ上げた。「釣りは釣果がすべてであり、釣り船の中が世界のすべてである」そう断言する采女と江戸の釣りの風景。そこには日本人の釣りに対する姿勢が凝縮されていた。



船厨
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 前回の船厨で大量の缶詰を入手したので、今回はその中の一つを使った料理を作った。
 さて、神奈川県の葉山で鉄器の専門店を経営し、全国の食材を集めネット販売をしている男がいる。その男は、缶詰にもうるさい。
 都内の串焼きやさんで出されたある鯖の水煮缶の味に惚れ込んだ彼は、その缶詰が製造中止となったと聞くに及んで、青森県八戸の缶詰工場まで出かけ、製造の継続を直訴した。これから記す内容は、すべて彼の受け売りである。
 件のサバ缶の美味さの秘密は「生の秋鯖」を使っていたことだったそうだ。一般的なサバ缶は、大量の鯖を一度冷凍保存して、製造分だけを解凍して使っていく。しかし、その美味いサバ缶は、その都度、水揚げされた鯖を材料にしていた。鯖の他に使うのは塩のみ。だが、生産計画も立てにくく、あまりにも効率が悪かったため、製造中止となってしまったそうだ。
 へこたれない彼は、最高級の生の秋鯖を使った鯖の水煮缶は青森県内に2~3社は残っているとの情報を土産に帰ってきた。
 たかだか缶詰と思うのが普通かもしれないが、こうしてとことんこだわった缶詰はやはり美味いのである。

「鯖缶のトマトスープ」のつくり方
■材料
サバ缶1個、トマト缶1個、タマネギ1個、ニンニク1かけ、水 トマト缶1杯分、白ワイン大さじ1、塩 小さじ1、黒胡椒少々、オリーブオイル適宜、好みでパセリ、パルメザンチーズ

■作り方
1)鍋にオリーブオイルを敷き、潰したニンニクを香り立つまで炒める
2)スライスしたタマネギを加え、しんなりするまで炒める
3)トマト缶(ホールトマトの場合はある程度カットして)と鯖の水煮缶、水と白ワインを加える。
4)一煮立ちしたら出来上がり。
※好みで黒胡椒、パセリをのせます。パルメザンチーズを振りかけてもいけます!




海の博物誌
 太平洋横断を試みたヨットが、鯨(らしきなにか)に衝突して、ヨットは浸水、ライフラフトに乗り移って救助を要請し、生還した方がいた。テレビなどでも盛んに取り上げられていた事故だが、話しの顛末がわかってくると、このヨットに乗っていた二人、特に艇長はシーマンシップに長けていたのだなということがわかってくる。
 どんなに緻密な準備をしていても、万が一の事故は起こる。鯨との衝突は、それこそ万が一であったことだろう。そんな状況に陥っても的確な対処で救出されたのは、万が一を想定した準備をしていたからだ。
 その万が一、天候の急変や座礁などによりプレジャーボートが転覆したらどうするか。まずはとにかく慌てないこと。ボートが沈没していなければ無理に泳ごうとはせず、ボートにしがみつくなどして離れない。捜索者は人よりもボートの方が発見しやすいし、その方が体力の消耗も防げる。
 もしもボートが沈没してしまった場合は、とにかくクーラーボックスなど、ペットボトルでもよいので浮力のあるものを探して捕まって救助を待つ。携帯電話は防水パックなどに入れてすぐに118番通報ができるようにしておこう。救助を要請するのは恥でも何でもない。
 もちろんライフジャケットはどんなときでも着用しておきたいものだ。



Salty One Day Boating
熱帯や亜熱帯に生息する魚なので、多くの人にとっては馴染みの薄い魚かもしれない。が、釣り人にとっては憧れのゲームフィッシュの一つに数えられる。全長は180cm、体重は80kgに達する個体もあるといわれる「浪人鰺」だ。釣り人の間ではGT(ジャイアントトレバリー)と呼ばれることの方が多い。沖縄でシースタイルを利用してのGTフィッシングに挑んだ。

 これまでGTフィッシングと言えばチャーターでなくては釣れないというイメージがあったし、タックルも高額で手軽に取り組める釣りとはいえないのが実情だった。GTは確かに魅力的なゲームフィッシュではあるが、この先、何回できるかわからない釣りの道具に大金をはたくのもなかなかふんぎりがつかないものである。
 ところが、沖縄マリーナではシースタイルの航行範囲内に充分な可能性と実績のあるGTのポイントが点在し、さらにレンタルタックルまで用意されているのだ。利用しない手はないだろう。
 沖縄市にあるシースタイルのホームマリーナのひとつ沖縄マリーナを訪れるたびに、支配人の崎濱さんとGTの話で盛り上がっていたので、ある程度の予習はしてきた。実は崎濱さんの奥さんのお父さんがGTのチャーター船を経営しているという。崎濱さん自身の経験もさることながら、そこから得る知識もかなり役立っているようでアドバイザーとして崎濱さんは大いに信頼できるのだ。
 今回のシースタイル・トリップに選んだ時期は10月の初旬。崎濱さんが勧めてくれた時期である。基本的には1年を通して釣れるゲームフィッシュだが「でも、真夏は暑くてしんどいでしょ」と崎濱さん。もちろん沖縄の海は真夏に限る!という人の気持ちもわかるので、止めはしません。
 タックルがレンタルでOKということがわかって一安心。ルアーはどうだろう。「うちでもレンタルタックルとセットでいくつか用意しています」という。でも、せめてルアーぐらいは自分たちで選び、納得できる釣りがしたい。これも崎濱さんのアドバイスをいただき、また、同行のアングラー・高柳氏と相談の上、ペンシルベイトとポッパーをいくつか入手した。余談だが、いや余談ではないな。実はGTを釣ろうと思うとルアーも高い。人気のルアーは1個7000~8000円ほどする。しかも品薄だ。それでも何とかネットで探しまくり、あれこれ5個ほど購入。高柳さんはさらに中古のルアーをいくつか追加して購入した。これで準備はOK。


 沖縄は快晴だった。真夏のように暑くはなく、かなり気持ちのいい海を体験できた。ただ、心配していた台風が近づきつつあり、風がやや強くなっていた。そう簡単に釣れる魚ではないと考えていたのでボートは2日間抑えてあったのだが天気図を見ると2日目はあきらめた方が良さそうだ。夏から秋にかけての沖縄には台風がある。そして、こればかりはどうしようもない。
 ボートは乗り慣れたYF-23。舫を解いて沖を目指す。といってもポイントはそれほど遠くない。沖縄マリーナでは中城湾内をシースタイルの航行エリアに設定しているが、4回以上の利用者に対しては航行範囲を広げてくれるローカルルールがある。もちろん通常の航行範囲でもGTは狙えるが、使用回数が増えればGTのヒット率はもちろん上がっていく。
 最初は湾内のポイントでキャストを始めた。それにしても、GTフィッシングは疲れる。とにかくキャストし、ジャークを入れながらルアーを曳く繰り返し。高柳さんはスマートな体型で思いルアーを投げ続けるのはきついからと、この釣行が決まる前から筋トレを行ったそうである。
 ポイントごとにひたすらキャストを続けたが、何も起こらない。身体が慣れるまでは相当きつく、ちょっとした時間ですでに絶望的な雰囲気になりかけるが、そんなアングラーにはGTは来てくれないものだ。不思議なことにしばらくすると身体が慣れてきてキャスティングの負担も和らいでくるから不思議だ。そして3カ所目のポイントで、高柳さんのポッパーについに来たのである。
 ポッパーが着水しリトリーブを始めるとすぐにチェイスするGTの姿が見えたらしく、バイトする前に高柳さんは「来た!」と叫ぶ。そして、文字で表すなら「どっか~ん」というアタック。フッキングを入れ、後はひたすら格闘が始まる。
 舷側までGTを寄せた後、その姿に興奮した。「これ、かなりでかくないですか」。大型のランディングネットに何とか収めたが、崎濱さん一人の力では引き上げることは不可能だ。高柳さんがロッドを置き、手を貸す。ようやくデッキに転がり込んだその魚体を見て再び「でっけー!」。 高柳さんは「やったあ!」とガッツポーズをした次の瞬間、デッキに横たわるGTの隣に倒れ込んでしまった。
 仕事で米国に駐在していた高柳さんは元々釣りが好きだったこともあって、これまでに北米のあらゆるボートフィッシングを楽しんできた若者だが、GTは初めてだった。「本当に嬉しい!持ってるなあ、俺」と、本当に嬉しそうな顔で興奮した。
 このGTは38kg。それでこの大きさだ。図鑑に記載された80kgという体重までに育ったら、いったいどんな姿になるのだろう。どんな釣りになるのだろう。
 今回の釣行で崎濱さんからは航行区域拡大の認定をしてもらった。次回はその80kgを夢見て、へとへとになるまでルアーを投げ続けよう。


取材協力
沖縄マリーナ
●〒134-0084 沖縄市泡瀬1-41-12
●TEL: 098-938-3397/FAX: 098-934-1162
●ホームページ: http://www.okinawamarina.co.jp/
■沖縄マリーナは会員制のマリンクラブ「Sea-Style」のホームマリーナのひとつ。「Sea-Style」は全国約140ケ所のホームマリーナで気軽にボートをレンタルし、楽しむことができます。


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今回主に使ったルアー。ヒットルアーは左のポッパー
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ひたすらルアーを投げ続ける
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ボートはYF-23。バウレールが高めで安心してキャストができる
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ついに来た。海に引きずり込まれそうなファイト
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何となネットに収めたが、持ち上げられない
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ガッツポーズ、そして倒れ込んだ
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これが38kg。80kgまで行くとどんな魚体なのか
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祝勝会はマリーナの隣、レストラン「サムズバイザシー」にて
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沖縄マリーナにはフィッシング以外にも沖縄の海を楽しむさまざまなメニューが用意されている



ヤマハニュース

イベントスケジュール
試乗会や展示会などマリンイベント情報をご案内いたします。
https://www.yamaha-motor.co.jp/marine/event/schedule/

女性会員限定「シースタイルG」ゼロから始めるフィッシング体験レポート
今回はいずみさの関空マリーナで開催しました。
https://www.yamaha-motor.co.jp/marine/event/report/2013/0928/

ヤマハボート免許オンライン教室「2級スマ免コース」で免許にチャレンジ!
http://www.yamaha-motor.jp/marine/license/online-license/



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【編集航記】
あるバスプロアングラーが「俺は水たまりにでもルアーを投げる」と語ったそうです。またあるフライフィッシャーは「どぶ川が流れていても魚が気になりチラ見する」と語っていました。そして沖縄にご一緒した高柳さんは、ホテルのロビーにあった水槽を泳ぐ熱帯魚を熱心に見つめていました。何を考えていたのだろうと思って確かめると、案の定、釣り人らしい、ろくでもないことを考えていました。古今東西、愛すべき釣り人の精神構造は似通っていますね。
(編集部・ま)
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