ソルティライフ
イラスト・Tadami
いつでも潮気のある生活を過ごしたい。
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MONTHLY COLUMN 空虚を埋める夕焼け。明日はきっと晴れる。
キャビンの棚 人なつっこさにあふれたハワイ「Acoustic Soul」
船厨 風味豊か「干し蛸の炊き込みご飯」
海の博物誌 豊かな海をはぐくむサンゴの力
Salty One Day Boating 豊饒の海を独り占め?常磐沖のフィッシング&クルージング
YAMAHA NEWS フィッシングボート「YFR」新発売/「マリーナ参観日」で気になるマリーナを訪問してみよう!!/「マリン塾」操船、離着岸、ボートフィッシングなど
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MONTHLY COLUMN
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 サッカーのワールドカップがたけなわだ。日本代表は健闘実らず、惜しくも決勝トーナメントへ進むことはならなかった。その日本代表が最後にコロンビアと闘ったのがクイアバのスタジアムだった。
 数年前、このクイアバの空港に降り立ったことがある。目的地は、そこからさらに西に位置するカセレスという小さな町だった。道は舗装されているとはいえ、所々に大きな穴が空いていたりして、思うようにスピードが出せない長い道を、西へ西へと走った記憶が甦る。そして湿原でのボーティング。カセレスをベースにボートで走り回ったのは、パンタナル大湿原だった。
 パンタナル大湿原はブラジル、ボリビア、パラグアイの3カ国に跨り、その広さは日本の本州の面積に匹敵する。パラグアイ川、クイアバ川を中心にその支流が無数に入り乱れ、広大な土地に水を運んでいる。それらの川がもたらす栄養分は豊富で、結果、大湿原は、動植物にとって、この上ない楽園となる。ガイドブックによるとこの大湿原には約80種の獣類、約50種の爬虫類、約650種もの野鳥の生息が確認されているのだ。そしてパンタナルをひときわ魅力的にしているのが、約300種にも及ぶという魚類の生息である。そのなかでも「DORADO=ドラド」は世界中の釣り人を魅了している。

 男のための、男の諺。
 一時間、幸せになりたかったら 酒を飲みなさい。
 三日間、幸せになりたかったら 結婚しなさい。
 八日間、幸せになりたかったら 豚を殺して食べなさい。
 永遠に、幸せになりたかったら 釣りを覚えなさい。


 この中国古諺は故・開高健の名著「オーパ!」第6章の末文に引用されていて知った。そして、その6章すべてを割いて語られたのは、パンタナル湿原のファイター「ドラド」についてであった。言い換えれば、「ドラド」は、釣り人という男を熱狂させ、そして幸せにする、そんな魚なのだろう。

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 エル・ドラド(黄金郷)という言葉でもなじみ深いが、ドラドとはスペイン語やポルトガル語で「黄金色」の意味を持つ。シイラをさすこともあるが、もちろん、パンタナルのドラドは淡水魚だ。全長は1メートル前後、体重は7キロほど。が、なかには20キロを超える大物もいるという。性質は獰猛にして果敢、ひとたびルアー(疑似餌)にかかると、リールのラインがドラグの唸りと共に一気に引き出される。巨体をものともせず疾走し、そして跳ぶ。ファイトすれば、ルアーはぼろぼろとなり、スチールでできたフック(釣り針)は引き延ばされている。おそらく、世界の淡水魚の中でも最高峰に位置するゲームフィッシュだ。
 パンタナルにやってくる釣り人は、その目的を果たすためにフィッシングホテルかモーテルをベースにボートをチャーターするが、もう一つ、ホテルボートをベースにするという魅惑的な方法がある。箱船のような大型ボートに寝泊まりしながら、湿原を進み、横抱きにされた小型ボートを降ろしてさらに支流へと釣りの旅に出るのだ。
 「釣りをしながら水浴びをしている牛やそのすぐ後ろを泳ぐワニ、岸からこちらを物珍しそうに見つめるバンビなんかが現れる。美しい数々の鳥にも出会える。たくさんの種類の花が咲いている。パンタナルでは驚く事ばかり」とガイドが自慢していた。
 確かに釣行のさなか、それらの動物、鳥類と出会う昂奮は魅力的だ。
 一通り、カセレス周辺のフィッシングポイントを巡り、自然に魅せられた後は、川面に浮かぶレストランでディナーをとる。メニューは潔いほどシンプルだし、決して豪華な食事というわけではないが、この川で獲れた魚は美味い。
 クイアバという都市の名前から様々な記憶が甦ったが、そのとき、ドラドを釣った記憶は残せなかった。思えば開高健も、オーパ!の旅ではドラドを釣ることができなかったのだ。釣りとはそんなものである。ただし、大魚とのファイトに匹敵する鮮烈なシーンが記憶にある。カセレスからクイアバへの帰り道、東へと向かう車の後方に信じられないような光景が広がった。これまで厚い雲に覆われていた大湿原の空に、度肝を抜くような美しい夕焼けが現れたのだ。獲物に出会えなかった空虚を埋めるのに充分な光景であった。
 負けはしたけれど、得るものはあった。夢は次回のチャンスまで持ち続ければいい。いまの日本のサッカーに対しても、そんな気持ちでいる。


田尻 鉄男●たじり てつお
外洋帆走部に所属しクルージングに明け暮れた大学生活、1年間の業界紙記者生活を経て、88年、プロダクションに入社。以来、日本のボーティングシーン、また沿岸漁業の現場を取材してきた。1963年、東京生まれ。



キャビンの棚
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「Acoustic Soul」
レーベル:Lilikoi Records
価格:1659円(税込み・輸入盤参考)
 昨年、ヤマハの会員制マリンクラブ「シースタイル」のホームマリーナがハワイのオアフ島に誕生し、すでに多くの方々が利用されているようだ。
 Salty Lifeのスタッフは世界中のリゾートアイランドや海辺の観光地の訪問経験が豊富な強者ぞろいと自負するが、ハワイの人気は高い。好まれる理由は、これら島々そのものが持つ「人なつっこさ」にあると思われる。
 ハワイアンのジョン・クルーズの音楽もまた、人なつっこさを感じる。 ジョンはオアフ島の出身。本格的なプロミュージシャンを目指し、様々な音楽を吸収したいとボストン、そしてニューヨークに移り住んだ。そしてハワイに戻る直前の1996年、『アコースティック・ソウル』をリリースした。
 1曲目に収められた「アイランド・スタイル」は、特に人なつっこさに溢れている。ホームシックにかかり、故郷を思って書き上げた曲だというから、余計にそう思われるのかもしれない。
 さて、ハワイ人気のもうひとつの理由は、よくネガティブ要素として語られる「日本人の多さ」による安心感みたいなものがあったりする。でも、ハワイで見知らぬ日本人同士が言葉を交わすことは稀なのではなかろうか。以前、オアフ島でお世話になった現地のご婦人に「なぜあなたたち日本人は、こんなに遠くの小さな島でせっかく同じ国の人と出会っているのに言葉を交わさないの?かっこ悪いわよ」とお叱りを受けた。なるほど、と思う。
 もしもハワイでやたらと人なつっこく話しかけてくる日本人のオヤジに出会ったら、それは私たちかもしれません。その時は、それもひとつの「アイランド・スタイル」だと思ってお付き合いくださいませ。



船厨
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 蛸の炊き込みご飯、いわゆるタコ飯は、以前にも取り上げたことがある。その時に使ったのは活蛸だったが、今回は干し蛸を使った。
 干し蛸は、九州は大分県、国東半島の国見町で漁師さんからいただいた。蛸は日本中の至るところで水揚げされている。東北以北では大きな水蛸が漁獲の中心のようで、西日本では真蛸が主役となる。国見の漁師さん曰く「蛸は安定している」とのこと。様々な魚がとれる海であえて蛸漁を選んで行っているのはそのためで、それだけ蛸は日本人に愛されている。
 干し蛸の作業を手伝わせてもらった。水道水で流しながら、獲ってきたばかりの蛸から内臓を抜き取り、靴下をひっくり返す要領で蛸の頭部をひっくり返す。そして竹製のヒゴと特製の枠を使い、頭の部分を引っ張るように薄く伸ばし、また、足の部分をフレアスカートのように広げて天日に干す。やってみるとヌルヌルしていて力加減がなかなか難しい。
 漁師さんは獲った蛸を組合に水揚げする他、こうして加工品を作り直売もする。様々なことを試みながら、漁師という仕事を次世代へつなぎ渡そうとしているのだ。
 さて、干し蛸で作った炊き込みご飯は、活蛸を使ったものに比べ、かえって風味豊かで、別の美味さがあった。干物の風味を想像していただければよろしい。これもまた、オススメである。
「干し蛸の炊き込みご飯」のつくり方
■材料
干し蛸1枚、米3カップ、酒大さじ1、醤油大さじ1、塩小さじ1
■作り方
1)干し蛸はキッチンバサミで食べ易い大きさに切り、水3カップ に30分漬けておく。
2)米を研ぎ、ざるにあげ、水をきる。
3)炊飯用の土鍋に1)の蛸と米を入れ、蛸の漬け汁3カップ(足りなければ水を足す)、酒、醤油、塩を加え、30分間おく。
4)強火にかけ、沸騰したら中火で5分、弱火で10分炊き、火から降ろして15分ほど蒸らす。



海の博物誌
 いよいよ真夏がやってくる。この時期になるとアンカリングしているボートやヨットから、ドボンと言う音と共に、大きな歓声を耳にすることもしばしばだ。なかにはシュノーケルのセットを身にまとい、海中遊泳に出かけてしまう強者もいるだろう。彼らは魚やサンゴの観察を楽しみとしているが、実はこのサンゴ、植物ではなくクラゲやイソギンチャクなど同じ刺胞動物の仲間だということはご存じだろうか? その容姿こそ異なるが、生命の営みという点ではよく似ているそうだ。
 また、地形を言う場合はサンゴ礁となるわけだが、その割合は地球全体の海洋面積の0.2%にしかすぎない。それでも地球の海洋生物の約25%はこのサンゴ礁に頼っていることから、その役割は、陸上の熱帯林と同じだと言う。サンゴを守ることが海を豊かにすると言われる所以がそこにある。
 この夏はぜひ水中メガネでサンゴの世界をのぞいてみてはいかがだろうか。



Salty One Day Boating
2011年の津波の影響で福島県最大級のマリーナは保管艇とともに消滅してしまった。周囲の漁港やマリーナも、大きな被害にあった。それでも、少しずつ、海の好きな仲間たちは、元どおりのマリンライフを過ごそうと、海に出始め、また、サービスを再開したマリーナもある。そんなマリーナのひとつ「ボートショップ海」はヤマハのシースタイルのホームマリーナでもある。梅雨の真っただ中である6月の終わり、常磐沖の海を満喫した。

小名浜の息吹を感じる

 「いわきの海で遊ぼう」とは、実は前々から企画されていて、編集部でも楽しみにしていた。6月も終盤になってレンタル艇を予約。天気予報を何度もチェックしながらこの日を待った。この時期の週間天気予報は毎日のように変わる。2日前までは晴れマークが出ていた予報も前日になって雨マークが増え、マリーナに到着するとかなり密度のある雨が降り出した。ただ、海で雨に降られるのはそれほど苦にならない。普段は使わないお気に入りの合羽を着込むのも、また楽しいではないか。
 この日の遊びのメニューは航行範囲をめいっぱい走りながら、釣りを楽しもうというもの。おとなり茨城県にある景勝地、五浦海岸の先に立つ六角堂から北へ線を引く。ボートショップ海のあるいわき市の江名港から東に線を引く。その交わりによってできた枠内が、シースタイル艇の航行範囲となる。
 「この時期は霧がかかることもあるので気をつけて」と声をかけながら、スタッフの方が雨の中、手を振りつつ見送ってくださった。
 沖は凪で少し波長の大きなうねりがある程度。風もそれ程なく穏やかで楽しいボーティングの一日が始まった。
 震災後、いわきには何度か訪れているが、こうして沖に出るのは初めてのこと。小名浜の漁港には中型の近海漁船がマリンタワーを背景に停泊していた。おとなりの「アクアマリンふくしま」のある入り江からは観光船が出入りしている。新しい橋が建設中で、工場の煙突からは煙がなびいていた。当たり前のことだけど3年の年月を経て小名浜は活気を取り戻しつつあるんだなあと感じる。
 そんなことを思いながら、小名浜を過ぎ、南へ向かう。いわきサンマリーナの跡地の沖から六角堂のある五浦海岸までは景勝地が続き、目を楽しませてくれる。


トップに飛び出るワラサに興奮

 クルージングをしながらの釣り。ポイントに不慣れなこともあり、じっくり根魚を狙うよりも、手返し良く狙えるキャスティングが良いと判断した。というより、小誌は、もともとこの釣りしかしない。好きなのだ。
 常に周囲を見渡しながらボートを走らせる。ちょっとした海面の変化や鳥の動きを見落とさないように。
 そして出会ったナブラ。よく行くホームの海ではこんな鳥山ができたなら、あっという間に複数の遊漁船が集まってくることが多いが、ここでは独り占めである。シンキングペンシルを投じて高速リトリーブ。一投目でヒット。ワラサである。サイズもそこそこだが、何より思った以上のパワーがある。取り込むまでに時間がかかり、その間にナブラは消えてしまったが、その一尾との戯れは1日分の楽しさに値した。
 その後、同じくナブラ打ちでワラサを追加、帰り際にストラクチャー狙いで70センチクラスのシーバスを一本。満足のゆく充実したクルージング&フィッシングとなった。
 ボートショップ海の水野さんによると「オーナーさんは戻りつつあるけど、海に活気が戻るのはまだまだこれから。なんとなく沖に出てもフネが少ないし寂しく感じるかもしれないけれど、魚はたくさんいますよ。以前より増えているかも」とのこと。
 魚影は濃いのだ。
 帰港後は、小名浜港近くの「みなと食堂」へ。夕方近くで早々と暖簾をしまっているおやじさんに話を聞くと、営業は朝の5時半からなのだそうだ。コンビニで朝飯を済ませてしまったことを後悔した。往生際がわるいと思われそうだが、締めはいわき湯本温泉でひと風呂あびる。硫黄の香りが漂う 少し熱めの風呂。久しぶりに「いい湯」をあびることができた。
 こうして南東北シースタイルの旅を終えた。東京までは常磐道であっという間である。


取材協力
ボートショップ海
〒970-0311 福島県いわき市江名東町1番地
TEL: 0246-55-7236
ホームページ: https://www.yamaha-motor.co.jp/marine/locator/ass/52820.html


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今回使用したYF-23。江名港は静かで離着岸も容易。初心者でも安心
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いわきマリンタワーの展望台は海抜106m。太平洋やいわき市一円を360°のパノラマで一望することができる
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小名浜漁港も活気を取り戻してきた
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かつて存在したサンマリーナの沖合も美しい風景が広がる。三角山の島が照島
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航行エリア最南端の五浦海岸の六角堂。津波によって破壊されたが、その後、再建された
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ナブラ発見、飛び交う鳥と一緒になって狂喜乱舞するつり人
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トップウォーターで釣ったワラサ。サイズもパワーにも満足
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小名浜漁港前の「みなと食堂」は朝の5時30分から営業。朝食にいいかも。閉店も早いので帰港後に行くなら急ごう
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みなと食堂の「のどぐろ煮定食」。うまい!
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いわき湯本温泉。共同浴場の他、日帰りで利用できる温泉旅館も多数。かなり「いい湯」です



ヤマハニュース

フィッシングボート「YFR」新発売
釣りファンの高い要求に応える機能性と装備
http://global.yamaha-motor.com/jp/news/2014/0605/yfr.html

「マリーナ参観日」で気になるマリーナを訪問してみよう!!
ミニクルーズ体験など、海やマリーナの雰囲気を体験するイベントのご案内です。
http://sea-style.yamaha-motor.co.jp/event/visitation/

「マリン塾」操船、離着岸、ボートフィッシングなど
ボートで遊ぶための技術を基礎からしっかり学べるレッスンのご案内です。
http://sea-style.yamaha-motor.co.jp/marinejyuku/



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【編集航記】
「もういくつ寝ると夏休み」。実年齢の割にいささか幼稚な僕の頭の中では、はやくも「お正月の歌」の替え歌が頭の中に流れています。「夏休みにはキャンプして、ボートに乗って遊びましょ」とか。関東では荒れた日の多い梅雨となっていますが、きっといい夏になるはずです。お楽しみに。
(編集部・ま)
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